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インドアからアウトドアへ

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「キャンプにでも行くか?」


まさかの提案は、夫から。
家にいれば、「フロ・メシ・ネル」の彼が、まさかアウトドア派だとは知らなかった。
いや、ツーリングを始めたことで意識が変わったのかもしれない。それか、仲間に触発されたのか?
良く分からないけれど、正直、この夏休みに特別な予定が無かったことが気がかりだったので、素直に嬉しかった。
本音では、上げ膳据え膳の旅館やホテル、または行ったことの無い地への旅行に行きたい。しかし、子がピアノを始めたりと何かと金が掛かる今日この頃、私の方からそんなお願いなんて出来るはずもなかった。 そして、ふと過ぎったのが、義姉達ー。彼女らと行くのではと思い尋ねてみたが、珍しく家族水入らずで考えているらしい。

夫は、早速張り切ってスマホでアウトドアグッズを物色している。
そして、翌日から次々と購入したものが届いたのだ。どでかい段ボールに、テントやタープ、バーベキューセットなどなど。細かいもので言えば、寝袋やランタン、飯盒やキャンプ食器など。 翌々月のカード明細が怖くなる程だ。しかも、そのひとつひとつが有名アウトドアブランドの物で、正直、それらの総額でちょっと贅沢に海外旅行に行けるのでは?と思う程。

夫の金の遣い方に、私は口出し出来ない。ただ傍観しているのみだ。続くかどうかも分からない趣味?に、ここまで掛けるのか?レンタルで十分ではないかと思う。
しかし、ここで水を差せばキャンプ自体お流れになる可能性は大だ。


ー思い出は、金に代えられない。


子と過ごす夏休み。中学で部活動に入れば、その部によっては毎日練習。となると、こうして親の都合であれこれ予定を決められるのも今回を入れてあと3回きり。
それを思えば、キャンプであろうが絶対に行って良かったと思えるはず。
インドア専門の私だが、しかし、ネットでキャンプの心得を検索したりしてワクワクしているところもあるのだ。




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専業主婦の仕事

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着信は、学校からだけではなく、夫からもあった。そして予想通り、帰宅した夫に叱られた。


「会議中だったんだぞ。学校から掛かって来たって俺は何も出来ないし、あなた一体何してたの?」


「お中元を見に出てて・・携帯を家に忘れてたの。ごめんなさい。」


「専業主婦で家にいるのに、肝心な時に電話一本に出られないんじゃ意味ないな。」


吐き捨てるように言うと、苛つきながら洗面所で手を洗いうがいをする夫。酒が入り酔っていないだけまだましだったが、素面なのもある意味辛い。
責められても仕方がない。夫が怒るのも最もだからだ。


「もう少し、自覚をもって家のことをしてくれないと。」


ドタバタと大きな足音を立てて風呂場へ向かう。ドアの開け閉めも乱暴だ。出て来てから、またネチネチと責められるのだろうと思うと吐き気がした。
こそこそと戸棚の後ろに隠しているワインの蓋を開けて、グイッと喉に流し込んだ。水分をしばらく取っていなかったこともあり、毛穴ひとつひとつにまで吸収されていく気がする。
一瞬、頭がくらっとし、これで夫のお説教に耐えられるというところまで飲むと、また元の場所にそれを置いた。

母親失格だって、言われなくても分かってる。でも、少しもミスは許されないのか?人間だもの、どうしたって気が緩むこともある。今回、子は安全な保健室で休ませて貰っていた。
例えば、それが外だったりしたら最悪だ。この暑い中、鍵を持たすことも忘れ、玄関でぐったりしていたりしたら、私のミスだ。
なんだか酷く責められているうちに、反発心が湧いて来た。ワインの力もあるのだろう、夫に何か言い返したいような気持ちになる。どんどん気が大きくなり、それまで自分のことを最低だと嘆いていたというのに、矛先はいつの間にか風呂場にいる夫に向かって行くのだった。




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消えた気配

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そういえばー、夫から吉田さんの気配を感じなくなったことに気付いた最近。
体調不良で早退し、一日休みを取り、翌日から出勤。家にいても、あれ程うるさく鳴っていたライン音が聞こえない。
ホームパーティーも、恒例行事になるのではと案じていたが、あれからめっきりそういった話も出ない。
ほっとしつつも、しかし何となく落ち着かない。それはそれである種の「動き」を感じてしまう。
一歩踏み込んだー、そして壊れたー、そんなところだろうかとつい妄想してしまう。

そして、夫がそわそわしなくなったと同時に、また干渉が始まると思うと、それはそれで緊張するし嫌なものだ。カード明細のチェックだとか家計簿の抜き打ちチェック。
そして、最近夫がチェックをしていなかったことによりずさんだったレシート計算。久しぶりに電卓を出してみると合計金額が合わないことはざら。
レシートが出ない買い物だとかをその都度メモすることに怠惰になっているからだ。

色々と面倒なことがまた再開しそうだ。




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間の悪さ、運の無さ

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私は、やっぱり間が悪い。
楽しみな予定を入れれば、大抵何かしらのトラブルが起こりキャンセル。
逆に、憂鬱な予定がキャンセルになることは殆ど無い。天気予報は、週間予定でずっと晴れなのに、楽しみな予定の曜日だけ雨マークだったりもちょくちょくある。
とにかく、ついてない。
そして、今回は敬語ママとのランチ。店の下調べもしっかりして、彼女は忙しい人だから、基本、私が日程を合わせる形。それでもなるべくなら夫が代休で家にいる時以外、そして平日となると、案外、候補日は少ないものだった。
そして、ようやく日にちが決定、ランチ当日ー、まさか、自分がドタキャンするはめになるとは思わなかった。
子は熱も無いし、元気に登校。夫は出勤。後は準備ー
大急ぎで掃除洗濯、一応、そこまで遅くはならないけれど夕飯の下ごしらえをしたところで、携帯の着信ー夫からだった。




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「もしもし、今から帰るわ。」


「え!?」


「具合悪い。仕事にならん。」


「熱は!?」


「分からん。とにかく帰る。」


こちらは質問途中なのに、そんなことはお構い無しで電話を切る。普通の妻ならどうするか?夫の体調不良で約束をキャンセルするものなのだろうか?
しかも、私は運転出来ない。私がいても、出来ることは買い出しと看病くらい。しかし、子供じゃないのだー、一人で寝ていても大丈夫だろう?
そう思いつつ、しかし電話だけだとどれ程の体調の悪さなのか分からないのでどうにもならなかった。高熱なのか、病院に寄って帰るのか?もう一度こちらから掛け直すも圏外。
そして、最悪なことに、夫は自宅の鍵を持ち忘れることがある。嫌な予感がして、鍵置き場を見ると、やはり鍵は置かれたままだ。夫の帰宅時間の殆どは深夜ー家族が必ず在宅している時間帯なので、鍵を持つ習慣がそもそも無いのだ。
メールをしても、返信は無い。そして、今の時間は10時20分。夫が病院に寄らずに自宅に直帰したとしても、11時半は容易に回る。
敬語ママとの約束時間が11時半だった。遅刻してでも行くかー、もう潔くキャンセルするかー迷い迷った挙句、遅刻すると言って夫の状態次第ではキャンセルすることになるのなら、今の段階で諦めた方が良いとの直感が働いた。


ー本当にすみません!!!実は、先程実家の親が倒れたとの連絡があり、急遽、病院に連れていかなくてはならなくなりました。残念ですが、今日のランチは行けそうもありません。本当に楽しみにしていたのですが・・・ またの機会にお願いします。本当に本当にごめんなさいー


本当に本当に、ごめんなさいの気持ちは本当だった。しかし、嘘を付いた。夫の体調が悪いからキャンセルーは、何だか言いにくかった。だから、親の名前を使った。その方が、緊急性があるし、当日のドタキャンを受け入れて貰えるかもと思ったのだ。
気分はすっかり暗くなった。
またかーの気持ちと、これが子ならば諦めもつくけれど、大の大人ーしかも男というのが気に入らない。しかし、気持ちを入れ替えて、夫が帰宅したら介抱しなければと思い直す。
私が外に出て働かずに生活出来るのも、すべては夫が大黒柱として一家を支えてくれているのだからと。




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くれ騙し

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「連休だし、たまにはいい店行くか。」


夫からの珍しい提案。遠出をしない分、少し良い店で外食をすることになったのだ。これには子も大喜び。普段、家族で外食とくれば安いファミレスやファーストフード、またフードコートがお決まりの我が家。
そもそも外食をする頻度さえ少ない。平日休みが多い夫は、ただでさえ子と休みが合わない。なのでたまに休みが合えば義実家訪問もお決まりのパターン。
GWは、何日か休暇を取ることが出来た夫。今回は珍しくツーリングの予定も入っていない。1日は義実家、他は久々の家族サービスに充てる気になったのだろう。


「この店、どうだ?」


夫が私と子にスマホから見せてくれた店は、高級焼肉店。価格帯もチェーンの焼肉店よりも倍高い。次に見せてくれたのが、海の近くにある回転ずしでこちらも普通のチェーンのすし屋より割高だ。
そして、一人5千円程するホテルビュッフェ。これには子も食い付いた。いちごフェアのようなものがやっており、美味しそうなスイーツも盛りだくさん。チョコレートファウンテンが子は気になったようだ。
私はホテル自慢の焼きたてパンの数々が気になった。その場で焼いてくれるローストビーフも美味しそう。


「ここがいい!」


子も私も同意見。夫は満足そうに頷くと、ネットで予約を取ろうとした。しかし、少ししてから何か考える素振りを始めた。


「2時間で5000円か。時間制限あるのがちょっとな・・」


正直、2時間もあれば十分だと思う。子だって、もう4年生とはいってもそう何時間も同じ店に居続けるのは苦痛だろう。腹一杯食べてそれくらいの時間は割と丁度いい。店だってそのように計算したうえでの2時間だろう。


「3人で、1万3000円か・・・これ、どう思う?」


私に尋ねる。夫の表情でどのように答えるのが正解なのか、10年以上も妻をしている私には、悲しいことに分かってしまう。




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「高いね。もっと、他のところでもいいかも。」


夫はその答えを聞いて、満足そうに頷く。子は、明らかに不満そうな顔をするけれど、表向きには「パパではなくママが最終決定した」風になっていることもあり、私を見上げてため息をついた。


「チョコレートファウンテン、やりたかったよ。」


「我儘言わないの。他の店、探そう。」


「連休は、いい店はどこも予約で一杯だな。やっぱり、今度にしておこう。」


本当なのかどうか分からないけれど、どこかの店のネット予約画面が満杯だったらしく、その他の候補の店もきっとそうに違いないということですべてがおじゃんになった。
急に金が惜しくなるーいつもの夫の癖だ。最近は仕事が忙しく、そんな機会も無かったけれど、昔はよくあった「くれ騙し」。
あげる素振りを見せておいて、こちらが喜んだ途端取り上げる。何度やられても気分が悪い。期待をさせるだけさせておいて、ぬか喜びで終わるのだ。
連休前に入っている色々な店のクーポン付広告を品定めし、数枚私達の元に持って来た。


「これなんか、いいじゃないか。あと、これも。」


「うん、いいね。」


結局は、毎度お馴染みの店。デザート199円程度の店。それでも、家で作らなくて良いのならよしとしよう。そう気を取り直し、本音を腹に隠して笑顔を二人に向けるのだった。




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