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反面教師

「ふうん」


明らかに、面白く無さそうな声を出す。伝えるつもりでは無かったが、母の口を封じたかった。自分のことならまだしも、子のことをあれこれ指図されることが許せなかったからだ。
実際、思い出したくもないスキー旅行だ。それでも、何かに取り憑かれたかのように、言葉は次から次へと口をついて出る。


「すごく楽しかった。向こうの家族も皆、滑れるの。お義父さんもお義母さんもね。私は久々だったこともあって戸惑ったけど、何度か練習したら勘を取り戻してリフトも乗れたよ。 OOも、すっかり上手になってね。一緒に滑れて楽しかった。家族で滑れるっていいよ。私、こういう経験したこと無かったから、OOには絶対させたくてね。」




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嫌味も言った。母は、未知の世界に足を踏み込むことが出来ない人。何でも出来ると大風呂敷で口にするが、実際は気が小さいだけの見栄っ張りなのだ。
なので、わざわざ無様な自分を周囲に知らしめるだろうスキーなどというスポーツに手を出そうとなんて思わなかった。それがまだ若い頃であってもだ。絶対に上手く行くだろうと確信したもの以外には近付かない。


「私の頃は、スキーなんて流行ってなかったからね。」


苦し紛れの言い訳を言い残し、お互い何となく沈黙が続いたこともあり、電話の向こうで父が何かを母に聞いて来たことをきっかけに電話を切った。
みっともなくてもいい。母の狡さを目の前に、我が子の前で醜態を晒したスキーだが、やって良かったと、ようやく自分を肯定出来た。
母は、反面教師だ。




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予定、キャンセル

春休み、実家へ行く予定はキャンセル。
実母がインフルエンザになった為だ。その電話があった時、心配より先に、行かなくても良い理由が出来たことに安堵した。
気が重かったのだ。

老いて行く両親に、親孝行。その一つに、孫の顔を見せること。
子供としては当然のことなのだろうけれど、長年積み重なった母に対する不満が爆発してからというもの、以前のように自分の気持ちを押し殺すことが出来なくなった。

予定していた日から一週間経ち、すっかり治った母から電話が来た。子の始業式前日。
電話を寄越したのが朝一番だったことから、「これから行くよ。」という言葉を母は期待していたのは分かっていた。それでも、敢えて気付かないふりをし、精一杯の親孝行は長電話に付き合うこと。




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「あんた達、春休みはどこかへ行ったの?」


「うん、お花見とか。色々。」


「なんだ。しけてるわね。旅行とか行かないの?」


駄目出しが始まる。


「OOもいるんだし、引きこもってばかりいないで外出たら?私なんて、普段から毎日出歩いてるわよ。」


ー誰と?どうせ、一人でその辺散歩してるくらいでしょう?


「本当、相変わらず地味な生活ね。私は無理。あんたくらいの時は、働いてたし忙しくしてたわよ。」


ーだから?じゃあその延長線にある今は?満足してるの?不満ばっかりの癖に。


「OOにも、もっと色々経験させないと。親のあんたが出不精だと同じようになるわよ。」


苛々したこともあり、つい、


「この間、スキー行ったし、経験はさせてるつもり。」


「え?誰と行ったの?」


「向こうの家族。」


「・・ふうん。」


気まずい空気が、受話器越しに充満した。




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ゲレンデのピエロ⑤

スイスイ滑る夫や義家族やらを横目に、私はすっかりくたびれやる気を無くしていた。
子に何度も誘われたリフトでさえ、結局最後まで乗ることが出来なかった。


「レンタル代、勿体無かったな。明日は滑らなくていいから。」


ため息交じりに夫に言われ、何も言い返せなかった。しかし、明日はもう滑らなくていいのかと思うと、途端に解放感に包まれた。
夕飯は、ホテルバイキング。これも正直憂鬱だった。大テーブルを義家族らと囲む。義姉達は、やはり真っ先に私のことをネタにして酒を飲む。


「OOさんのスキー、マジうけた!」


末の義姉が腹を抱えて笑う。私もヘラヘラする。内心、怒りと悔しさと情けなさで一杯だった。それを隠すかのように、ビールジョッキをグイグイ開けた。




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「今日、飲むね。」


次女が私を横目で見ながらチェックを入れる。しかし、もうそんなことまで気にしてはいられない。まさに、浴びる程飲んだ。久しぶりの飲みっぷりだったと思う。
ビールジョッキ3杯にワイングラスを5杯くらいだろうか?突然ぐるぐる天井が回りだし、慌ててトイレへ向かう。
一気に、吐いた。何度も吐いた。ワインで真っ赤に染まった便器を目にし、また吐き気が襲う。

愛嬌のある嫁なら、義姉達の突っ込みや笑いも、逆においしいネタに変えてしまえるのだろう。自分をネタにして笑いに変えることも出来ない、ドンくさくて不器用な嫁。
愛される人間と愛されない人間の違いを知りながらも、私のちっぽけなプライドがあちら側に行くことを許さないのだ。




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雪面の屈辱

まるで、つかまり立ちを覚えた赤ちゃんのように、ゲレンデの麓にあるネットの手すりにつかまりながら、斜面を横歩きで登る。
皆、どこにいるのだろう?上級コースだろうか?夫と子は恐らく初級コースだろうが、それにしてもへっぴり腰になりながら、恐る恐る歩く自分の姿を思うと無様で情けなかった。
また、この状況に似つかわしいド派手なウェアーも嫌だった。せめて、グレーだとか黒目の地味で目立たない恰好でいたかった。周囲からは滑稽な姿に見えているかもと思うと、一人、ホテルに戻りたい気分だった。


「ママー!」


子が夫と滑り降りて来るのが見えた。両手を挙げて手を振りながら滑り降りて来る。夫はその後ろから義父母とマイペースに降りてくる。手にはスマホを持ち、子の動画を撮りながらのようだ。 子は、私の元まで来ると、


「ママ、大丈夫?一緒に滑ろう。」


優しく声を掛けてくれた。なぜか、涙が出そうになった。まるで、親子逆転ではないか。 夫は、


「俺、あっち行ってくるから。」


そう言い残して、上級コースのリフト乗り場の方へ向かって行った。私のことなど目もくれずにーいや、こんな運動音痴な妻を持ったことが恥ずかしく、一緒にいるのも嫌悪感で一杯なのかもしれない。 マイナス思考はどんどん膨らんでいくばかりだ。




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背後から、甲高い笑い声が複数聞こえて来た。


「やだー!OOさんって、もしかして運動音痴!?」


「スキー、初めてだった!?うけるー!」


義姉達が、大笑いする。姪っ子や甥っ子も私の姿を見て笑っているようだ。というか、このゲレンデ中から笑われているような気になり、穴があったら入りそのまま冬眠してしまいたい気分だった。 末の義姉が一際馬鹿にしたような笑い声を立て、


「目立つ、目立つ!動画撮りたいー」


そう言いながら、私にスマホを向けた。頭からつま先まで震え、屈辱感で一杯だった。
こんなことなら、どうにでも言い訳して参加すべきではなかった。スキーなんて大嫌い、義家族なんて大嫌い。ゴーグルの下は、涙でぐちゃぐちゃだった。
出来ない人間の気持ちが分からない、心無い奴ら。そんな家族の元で育った情の無い夫。
子だけは、優しい。差し伸べてくれた手は、いつの間に私の手の大きさに追いついていた。それにつかまり、何とか表面上は精一杯の笑顔を保った。




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雪面の浦島太郎

時代遅れでド派手なウェアーに包まれて、ゲレンデへ向かった。義姉達は、今風のお洒落なウェアーに身を包み、既にスキー靴やスノボ靴を履き、装着まで済ませている。


夫は、子の靴をスキー板に装着しているところであり、私はまるで浦島太郎状態。靴すらうまく履けずに四苦八苦。


「じゃあ、一先ず滑ってくるわ。」


義家族らは、私達家族と義父母を置いて、颯爽とリフト乗り場へ向かって行った。


還暦をとうに過ぎた義父母も、昔からスキーに慣れ親しんでいたようで、誰の手を借りるでもなく既に準備万端。子のことを待ってくれているらしい。


「よし、行くか。」


子の準備を終え、夫がリフトへと向かう。このままだと、一人、取り残されてしまう。


「待って・・」


「は!?何やってんの?」




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私が、まだ靴も履いていないのを知り、夫が信じられないという表情でこちらを見る。顔から火が出そうだった。義父母も、気まずい沈黙でこちらの様子を窺っているのが分かる。


「先、滑ってるから。」


助けてくれることも無く、さっさと行ってしまった。惨めな気持ちになりながらも、必死になり周囲を見渡すと、親子連れが隣で子どもに靴にスキー板を取り付けていることろだった。 それを、盗み見しながら、なんとか自分も靴を板に装着することが出来た。
しかし、そこから先が問題だった。ある意味、身動きが取れない状態になる。


ー怖い


想像以上に雪面が滑る。スティックで体を支えながら何とかその場を立つも、滑るどころかリフト乗り場へさえ向かうことが出来ない。
というよりも、リフトに乗るということは、降りるということ。このレベルで斜面を滑るだなんて、危険過ぎる。無い知恵を絞って、どうにかこの場を逃げ切る方法を考え始めていた。




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