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忘年会ランチ

かおりとのランチ。
楽しかった。

彼女がお勧めしてくれた、イタリアンの店。リーズナブルだが、とても雰囲気が良く、平日ということもあって並ぶこともなくすんなり店内に入ることが出来た。
スプマンテをまず頼み、乾杯。体にも心にも染みる。気心知れた女友達と向かい合って飲む酒は、ただただ美味しい。

ご主人は、再就職が決まり、現在共働きで忙しい日々とのこと。子どもも3人いるし、パワフル母さんといったところか。

かおりは働き出して、より一層洗練された。
バッサリとベリーショートに近いヘアスタイルに、大振りのハラコ素材のピアス。質の良さそうなー恐らく、カシミアの真っ白なニットに黒のパンツにヒールを合わせていた。シンプルな服装なのだが、お洒落に見える。
アクセントに真っ赤なレザーのバッグを持っていたのも恰好良かった。
対して、私は相変わらずのボーダーにジーパン。例の緑のバッグをアクセントにしたのはかおりと一緒。数年前に購入した、もっさりとしたエコファー素材のミドルコート。
自宅の鏡で見た時は、もう少しマシなはずだったのにー外のガラスに映った自分が、かおりと並ぶとなんだかみすぼらしく見えた。
だが、目の前に次々と料理が運ばれ、かおりの楽しい近況を聞いているうちに、もうどうでも良くなった。


「ワイン、白と赤どっちにする?」


「今日は、赤って気分。」


「私も。じゃあ・・ボトル頼んじゃおう♪すみませーん!」


かおりは店員を呼ぶと、私達好みの「辛口」「重め」の赤をリクエストした。


「でしたら、こちらはどうですか?」


「はい、お任せで~」


店員がカウンターに向かったので、かおりにどのワインを頼んだのか聞いた。何気なく値段を見ると、5800円。高過ぎる。




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「え!こんな高いの無理!」


咄嗟に声が出た。しかし、こんな言葉を躊躇なく言えるかおりは、貴重な存在。


「いいいのいいの。ボーナス出たんだから。ワインは奢るって!」


「そんなの悪い!」


「私が飲みたいの。黙って奢られなさい。」


申し訳無さで、最初の一杯はグビグビ自分のペースで飲めなかった。これは、グラスにしたらいくらだろう?800円以上するのではないか。
ほろ酔いの頭で、電卓を叩いていたのは最初のうちだけ。次第に頭がぼーっとしてきて、久々の酒ということもあり、楽しい気持ちを優先することが大事なのだと思い直した。

かおりは、家庭も仕事もママ友関係も何もかも、順調そうに見えた。愚痴といえば、少々子どもの出来の悪さくらいで、しかし深刻そうでもなかった。

私は、奢ってもらった分何かお返しをーそう思い、不幸話を提供した。
夫の経済的DVや子の反抗期諸々、それに、思い切ってママ友関係が最悪なことも。彼女はそれを全て「笑い」に変換してくれた。深刻な出来事も、なんだか絵空事のように思えた。
だが、一つ大失敗をした。つい、スネ夫そっくりのママがいると口が滑った。検索されたら、ここにたどり着きはしないかーそう思うと、背筋が寒くなった。
大丈夫だと思うが、酔いがすっかり醒めた今、一抹の不安が残った。




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スケジュール機能

かおりから、ラインの返事がやっと来た。
誘ってから何度も確認するが、既読スルー。諦め掛けていたところだった。


ーごめんごめん!インフルになってて返事遅くなっちゃった!いいね!忘年会ランチしよ!昼間っから飲みたい気分♪


嬉しくなってすぐに返信しようとするが、敢えて我慢する。レスポンスが早過ぎれば、がっついていると思われる。それに、かおりも返事が遅くなってしまったことに対して罪悪感を持つかもしれない。
そんな考えが頭に浮かぶこと自体、なんて面倒な奴だと自分が嫌になる。こんな奴と飲んでも楽しくないとも。
自分なりに一泊置いてー結局5分足らずでメッセージを送った。




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ースケジュール、都合良い日を教えてね。


卒対や子ども会で、ランチや飲み会の日程調整として使われるスケジュール機能を真似て使う。初めて使ったが、便利な機能だ。正直、これまで厄介だと思っていたこの機能、自分が楽しい予定の為に使うとなると素晴らしい。
卒対や子ども会の打合せは事前に決まっているが、敢えてその日も含んだ日程を組み入れた。すると、かおりの希望する日程といくつかかぶった。


ーかおりの希望する日程でOKだよ!


これで、堂々と打ち合わせに出ずに済む。かおりと会うということは、電車を使うということ。自宅でサボるより、精神衛生上ずっと気が楽になる。




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確かな存在

引っ越し前のママ友から、台風被害を心配するラインが届いた。
日本全国を震撼させた、大きなニュース。こんな私のことを気に掛けてくれたことが、ただただ嬉しかった。

台風の後、子ども会での集まりでは、皆がラインの嵐だったことを自慢している訳ではないのだけど、競い合うように言い合っており、特に会長のスマホはそれによって充電が切れてしまったと聞いた。
もしも停電などしていたら、安否確認の連絡は、途端に迷惑なものになる。

そうしたことを踏まえてなのか、引っ越し前のママ友は、こちらの状況が落ち着いた頃にラインで連絡をくれたのだと思う。




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正直、義実家や実家との安否確認はあったものの、プライベートでは何もーしかも夫からすら連絡が来なかったので、子と二人きり、まるで孤島にいるかのような一夜を過ごした。誰からも来ない着信音の代わりに、警報メールが続々と届き、それがかえって恐怖心を増進させた。
とても寂しく、そして心細かった。PCを開いても、メッセージはどこからも来ておらず、メールを開けば、企業からの営業メールばかり。
こんな時に、肉やら洋服やらサプリなど選ぶ余裕など無いに決まっている。事前にメール送信設定をしているのかもしれないけれど、KY過ぎる内容に苛立ちが募った。


ーこちらは全然大丈夫だったよ!心配してくれてありがとう^^


返信を送る。すぐに既読になる。


ーいろんなところで被害が出てるね。これを機に、備えの見直ししないと!みんな、早く落ち着くといいよね。


リアルで会話しているかのようなレスポンス。それに対して、あれこれ考えずメッセージを返せること。こんな友達が身近にいないことが悔やまれる。それでも、距離はあってもこうして思いやる存在があることは幸せなことだと思えた。




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誘い

かおりから、ランチの誘い。
素直に嬉しい。

学生時代の友人と、こうしてまた繋がれること。数年前お、思い切って同窓会に出た自分を褒めてやりたい。

もう、ママ友関係を築くことは諦めた。それでも、まだまだ人生は長い。
夫と仲良く縁側という関係でもない。
ならば、別の場所で長く付き合える友人を持てればいい。

いつでも受け身の私。
だが、そういう私にも躊躇なく声を掛けてくれる、貴重な存在。




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優しさに触れて

小包が届いた。引っ越し前のママ友から。
箱の中身は、北海道のかぼちゃやじゃがいもなどの野菜。それに、デパ地下などでよく見掛ける北海道老舗のお菓子。
そして、彼女お手製のハンドメイドアクセサリーと手紙が入っていた。
手紙には、私の体を気遣い、また機会があれば会いたいという内容だった。
今回、夏に彼女はこちらに帰省していたのだ。だが、精神的心のゆとりが無く、私の方から会うことを拒んだのだった。
こうして彼女の温かみに触れると、勝手だが、会っておけば良かったかもと悔やまれる。
ただでさえ友達が少ない私なのだから、この繋がりを大事にしなくてはと。




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それでも、会いたいと思える時に会うーそれでいいじゃないかと一方で思う。気を遣い、気分ではないのに会うのは失礼ではないかと。
お互い主婦になり、特に彼女の方は子供の数も多ければ仕事もある。限られた時間の中で、私と会う時間を何とか作ってくれる。その貴重な時間を、そんな気持ちで使わせてしまうことに抵抗があった。

ぐるぐるぐるぐる。
考える。
友達って?気分じゃない、疲れる。でも会おうー実際会ってみたら、スカッとした。楽しかった。気分が晴れた。
そういうものなのでは?

中年になり、いまだ、友達との距離感が分からない。




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