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授業参観

小学校初めての授業参観、子の学校での様子を知ることが出来るチャンスのひとつだ。
科目は算数だった。
算数といってもまだ足し算や引き算などの計算問題ではなく、数の概念を学ぶというもので就学児前でも殆どの子供が知識として得ているものだと思う。

担任は先日の家庭訪問とはまた違い、保護者達に囲まれての授業だからかいくらか緊張しているように見えた。
子供達も園時代の参観日とは違って、どこかしゃんとしているようで行儀良く椅子に座り落ち着き無く走り回る子は皆無だった。
子の席を見遣ると、私を探してなのかやたらと何度も振り返る。
少し遅れてしまったこともあり、教室のドアの近くにいたのでなかなか気が付かなかったようだった。
目が合い、小さく手を振ると嬉しそうに、そしてほっとしたように笑い黒板に体を向け直した。
母親達はこそこそ何かを話している群れから、授業の様子を集中しながら見ている人など様々で、やはりスネオママの群れはど真ん中を陣とっていながらもこそこそ何か話しては笑いを繰り返し正直目立っていた。
肩を叩かれ振り向くと、素敵ママだった。


「お疲れ、遅れちゃった。」

「今始まったばかりだよ。」

小さな声で返す。


「では、この答えが分かる人ー?」

担任が質問するとクラスの半数くらいの子供達がこぞって手を挙げる。
その中にはスネオママの子もおり、彼女の方を見てみるとどこか自慢気な表情をしていた。


「すごい、R君積極的だね。」


素敵ママの子も元気良く挙手していた。そして担任に指されると、答えを述べ正解を貰い嬉しそうにこちらにいるママを見ているのが子供らしく微笑ましかった。
それに対し我が子は手を挙げたいようなでも恥ずかしさが先行し思うように挙げられないようで、もじもじしながらも結局最後まで発言することはなかった。
園時代のようにはりきった姿を見ることは出来なかったが、これも成長の一貫なのだと思う。ただ静かに座って授業を聞いていられたことだけでも褒めてあげたい。
授業が終わると帰りの会、それから親子で帰宅という流れになったのだが、R君とスネオママの子が戯れ合って盛り上がりなかなか帰りの支度をしようとしない。
その様子を見て、素敵ママはR君のところまで声掛けに行ったようだ。するとそれに釣られるかのようにスネオママも子供の席に行き、そこでお互い挨拶をし合い談笑を始めた。
当初の予感は的中した。これをきっかけに彼女達が仲良くなるのではないかという思いで一杯になり胸の奥がざわざわした。そして何よりも深い仲になった彼女達が私のことを噂するのではないかという被害妄想まで膨らみ、そうなるとどうにも止まらず帰りの支度が既に整った子の手を引っ張り教室の外に出た。

帰り道ー、そんな妄想を振り払うように子に話し掛けた。
きちんと授業を聞いていられたことを褒めた。


「手、恥ずかしくって挙げられなかった。」


子は子なりに後悔が残ったようで力なくつぶやいたので、


「大丈夫、まだ1年生なんだもん。直に挙げられるようになるよ。ママも恥ずかしくて挙げられなかったことあるもの。それに今日はたくさんのお母さんがいたんだもの、しょうがないよ。」


お互い心にモヤモヤを抱えながら家路を辿る。暑かったので帰り道スーパーでバニラアイスを一つ買った。自宅に戻り半分こにしたアイスを小さなグラスに盛り付け、いちごとチョコポッキーを刺して簡単パフェの出来上がりだ。
疲れた頭を甘いものが癒してくれる、いつの間に子にも笑顔が戻り夕飯の支度を手伝ってくれるというので並んでキッチンに立った。
学校で積極的ではなくても、家ではこうして自発的にお手伝いをしてくれる子の気持ちを今は大事にしたいと思った。
2人で協力して作ったハンバーグはいつもにも増して美味しく感じた。





























ゼリー作り

ここ数日の暑さといったらまるで夏日。
子が帰宅する正午過ぎは一日のうちで一番暑く、帰宅すると早々冷たい飲み物を催促される。
我が家は普段ジュースなどを買い置きしていないので、専ら麦茶。
節約の為、勿論ティーバッグで作るものだけれど、夫はこのティーバッグで煮出すタイプの麦茶を嫌う。私の淹れ方が悪いのか確かにペットボトルで買った麦茶とは風味が格段に違うかもしれない。
夫用にはミネラルウォーター、ウイスキーなどに入れる氷と共に常備してある。私と子は氷も特段こだわりはないので、浄水器からの水で製氷機を使い作った氷を飲み物に入れて使っている。
そろそろかき氷の出番かな、そう思いながら今日のおやつは何にしようか考える。
まだ慣れない小学校生活で疲れた子を癒すのはおやつタイムだと思っているので、何かひんやりするお菓子はないかと思い、ゼリーを作ろうと思い立った。
子供達に人気のプリキュアゼリーなど、小さなカップに入ったゼリーもいいけれど手作りもいいものだと思う。
今日も家から出ないつもりだったけれど、スーパーのチラシの特売で紙パックジュースが1本69円だったのでこれは買いだと思い、午前中それとゼラチンを買いに自転車を走らせた。
きっと子がいなければ一日中晴れた日だというのに布団にくるまっているところだろうけれど、帰宅して、ぱぁっと咲く笑顔の為ならフットワークも軽くなる。
先日の運動会での出来事での負い目もあったのかもしれない。


ちゃちゃっと昼ご飯を済ませ、(今日は薄くマーガリンを塗ったトースト1枚の簡素なランチ)早速ゼリーの作り方をネットで調べて作り始めた。
思ったよりもとても簡単、基本混ぜて冷やすだけのおやつだから、オーブンも使わず電気代も掛からない。
経済的なおやつだ。
1L分、タッパーに作り冷蔵庫で冷やした。
後からネットでもっと効率的な作り方を発見した。それは、紙パックにそのままゼラチンを入れて混ぜて冷やすというもので、洗い物も出ないし、出来上がったら紙パックを適当にハサミで切り、大きめのスプーンで食べる分だけすくうらしい。
ちなみに今回作ったのはぶどうゼリー。子が大好きなぶどうジュース味だ。
ジュースが固まっただけのものといえばそれまでだけれど、お気に入りのガラス容器に出来上がったそれを盛り付けるだけで特別なおやつになる。

さて、そろそろ子が帰宅する時間だ。
冷蔵庫を開けると、ぷるぷると固まりつつあるキラキラのぶどうゼリー。
今日も笑顔で玄関のチャイムを鳴らしてくれますよう、祈るような気持ちでそわそわ子の帰りを待つ私がいる。













































運動会

この週末は運動会だった。
直前まで夫の仕事がどうなるか分からず、今年も2人きりなのかとハラハラしたがなんとか夫も都合をつけて来てくれた。
幼稚園の時とは違い、小学校の運動会は比較的あっさりしており、子の競技もサラリと行われた。
むろん園の時のような、何ヶ月も練習を費やしたものではないからなのだろう。
しかし見ごたえは別の意味であった。
高学年の騎馬戦やリレーなどは、知人がいなくても十分楽しめたし迫力もあった。あと数年後には子がこうなるのだなとシュミレーションしてみたりもした。

朝は早起きして3人分の弁当を作った。子のリクエストでお稲荷さんと唐揚げ、それからサンドイッチ。
夫は夜勤明けで疲れがたまっているようで、しきりに運動会最中に寝るからを連発していて感じが悪かった。レジャーシートとそれに+夫が寝れるようにクッション枕も持参。嵩張るし荷物になるし、それなのに自分で持って行くという発想が無いことにイライラした。
子だけ先に学校に行ったので、夫と久しぶりに朝の時間並んで歩く。
とくに話すこともなく、黙々と歩いた。
隣で何度もあくびばかり。疲れた、眠いを連発していたけれど全て無視して少し前を歩く。


「おはようー。」

「あ、おはよう。」


たらたら歩く私達を追い抜くように颯爽と通り過ぎる素敵ママ夫婦。
素敵ママは妊婦なので手ぶらで、ご主人が大きなアイスボックスとおそらく奥さんが座る用のキャンピングチェアーを持ち、にこにこしながら私達に会釈する。
本当にここのご主人は感じが良い。そして夫婦で仲良しだ。
楽しそうに何か話しながら歩く二人の背中を見ながら、やっぱり私達は黙々と歩いた。


子の競技は徒競走とダンスに玉入れと低学年向けのもの。
さすがに寝ていた夫も子の出番になるとむくっと起き上がり、立ち見席でスマホを構えたりしつつ興奮していたようだった。なんと子は徒競走で1位を取ったのだ。私も嬉しかったし夫も喜んでいた。この時ばかりは「私達はやっぱり家族なのだ」と実感した。
例えそれが子を介してであってもーそうであっても家族なのだ。

校庭が広いことと児童数が多いことで、玉入れやダンスの競技は目を凝らさないと我が子がどこにいるのかさえ分からない状態だったので、カメラを構えることよりこの目で見ることに集中した。

演目を見ている最中、対面側に知っている顔を見た。幼稚園の先生だった。
スネオママやボスママ、まいこちゃんママや役員系のママ達に取り囲まれている元担任。私服だったので今時の若者すぎて分からなかったが、確かにお世話になった担任だった。
お昼休憩になり、子供達が戻って来てー勿論元担任はその流れでボスママらのレジャーシートに連れて行かれ、おそらく弁当を勧められ一緒に食べることになるのだろう。
子を児童席に迎えに行くと、スネオママの興奮した声。

「K!OO先生が来てるから、ほら!早く行くよ!」

引きずられるようにK君は連れて行かれ、勿論スネオママの取り巻きの子供達もそれに付いて行った。
子がそれを耳にし、


「え?OO先生いるの?」


と私に聞いたが、最低な私は素知らぬ顔をしてしまった。


「さあ?ママ見てないよ。それよりパパが待ってるからご飯食べに行こう。お稲荷さんたくさん食べようー。」


横目でスネオママ達の動向を気にしつつ、子に気づかれないよう。
運良く私達が陣取った席と離れたところに彼女らのシートはあったことで、他の家族に紛れて子が気がつくことはなかった。
私達3人は黙々と弁当を食べる。
子はやっぱり元担任が気になるようで、K君達がどこで食べてるのかなと言い出し焦った。
見つけてしまったら、その場に行きたがるに違いない。


「何?先生来てるの?」


夫まで気になりだしたようで、内心汗だく。夫がぐるりと周囲を見渡す。見つかりませんようにと心で祈る。すると、やっぱり私は運が悪い人間だ。


「あれ、OO先生じゃないか?あの集団の中。」

「あ!本当だ!」


やはり見つかってしまい、私は嘘をついた。



「ごめん、ちょっとお腹痛いからトイレ行ってくるね。」


お腹など痛くないのにトイレに逃げた。その場にいたら、子にあの場に連れていかれるのかと思うと本当にお腹が痛くなる思いだった。
夫は不思議そうな顔をした後、多少心配してくれたのか、ここはいいからゆっくりと言ってくれたので殆ど弁当に手をつけないまま席を立った。
トイレはそれ程混んでいなかったのだが、しばらくそこで時間をつぶした。
数十分ーもう大丈夫だろうという頃席に戻ると、そこには誰もいなかった。
まさかーと思ったら、あの集団の中に夫と子がいたのだ。
元担任に挨拶をしていた。スネオママやボスママ達の中に、なぜか違和感なく混ざっていた2人。普段園行事に関わることもなかった夫の方があの集団の中に馴染んでいるようにさえ思え、なんだか釈然としない思いだった。
夫は外面がいい。この時ばかりはそれに助けられたような気がした。
そして、スマホで子と担任の2ショットまで撮っているようだった。
私はそれを遠目で見ながら、なんとなく弁当を食べる気にもなれずただただお茶を喉に流し込んだ。しばらくして2人が戻って来た。
子は嬉しそうに元担任の話をし、再度弁当の続きを食べた。夫も満足げな様子で、父親としてのひと仕事を終えたというような表情だった。


「誰だっけ?N君かな?あのママに保護者リレー出ないかって誘われたけど断ったよ。かなり押されたけど夜勤明けにリレーはきついわ。」


ボスママに話し掛けられたそうだ。それに対し夫はまんざらでもないご機嫌な表情。
私には話し掛けもしないくせに、夫には気軽に声を掛けるのだ。


それから午後の競技は滞りなく催され、私はトイレに逃げた数十分に罪悪感を始終感じながら時を過ごした。


保護者リレーでは、予想通り素敵ママのご主人が颯爽と他チームをごぼう抜きし、周囲の注目を集めていた。
あんな父親だったら子も自慢だろうな。そう思いながらも、父親?いや違う、両親だなと思い直した。
普段心の中でえらそうなことー子の為なら何でも出来ると思っていても、小さなことで足がすくむ弱さから逃げられないということ、普段非協力的である夫に頼らざる得ない状況が生まれてしまうという事実ーそれが私だという現実だ。



子は紅組だったのだが、目出度く勝利した。
子が飛び跳ねて喜ぶ様子が遠目から見て取れた。
特定の友達はまだいないようだったが、それでも学校生活を楽しくやっているのが運動会を通して分かったので、それはそれで収穫だった。

帰宅し、泥だらけになった運動靴をガシガシ洗うことで、自分のこの腐りきった弱い心も真っ白になればいいのにーそう思ってしまう1日の終わりだった。





















































神頼み

ポストに私宛の一通の封筒。
一瞬、旧友かと思い心弾んだが、それは義母からのものだった。
義母からこうして手紙を貰うのは初めてのこと、改まって一体なんだろうと正直警戒する気持ちの方が大きかった。

誰もいない部屋で封を切るー
すると、小さな紙と共にお守りが入っており、それを見て愕然とした。
ー子授け御守り
桃色の小さな、可愛らしいお花の刺繍の入ったものだった。
手紙には、二人目を頑張るようにー何かあれば金銭面では全面的に協力する、私達はあなたの味方だというようなことがつらつらと綴られていた。
味方!?
その言葉に違和感を感じながらも、その御守りを手にするとぶわっと良くわからない感情が湧き出し、気がつくと泣いていた。


一昨日あたりから、お隣さんは帰省先が割とここから近いのか、自宅に戻っているようだ。
昨日は玄関先でばったり会い、挨拶しかしていないけれどだいぶ大きくなったお腹を抱えて大変そうにしていた。臨月間近というところだろう。
バルコニー越しに隣の洗濯物が見えるのだが、小さな小さな肌着やガーゼ、ロンパースなどが天気の良い日に干されており、水通しをしたようだ。
それは正しく幸福の象徴に思えた。

ふと、ネット依存気味の私はマタニティ関連のブログを読みあさった。

「陽性出ました!」
「+反応あり!」
「これがつわり?」

「戌の日」
「マタニティ服購入☆」
「スタイ完成~」

などの表題と共に、嬉々としたブログの数々がそこにはあって、なんだか羨ましい気持ち。
女として、環境や人生を変えることの一番に「妊娠と出産」があるように思う。勿論自分だけにしか出来ない仕事を持っていたり、また人間関係があったりする人もいるのだろうけれど、体と精神がガラリと変化するーそしてこの世にひとつのかけがえのない命を産み落とすという大仕事はそれ以外の何者にも変えられない。
マタニティブログはお花畑状態そのもので、今の自分から遠く掛け離れたところにあるように思えた。
しかし、私には子がいるのでそこまで悲観することもない。それでもどこかざわざわした気持ちになるのはきっと、タイムリミットの年齢が近づいているからだろう。
子宮が悲鳴を上げているー早く!早く!もう時間がないんだよ!!
腹の辺りがじんわりし、また泣けてきた。

義母からの御守りー夫が気がつくよう出窓に立て掛けた。何かしらの反応があるかもしれない。私だけがプレッシャーを与えられるのは腑に落ちない。
夫も平等にそれを与えられるべきなのだ。


























































習い事

「これ買ったの?」

冷蔵庫に入っているジュースを見て夫が言う。
ジュースといっても高級なものでも何でもない、普通のスーパーで買う紙パックのジュースだ。
ちなみに98円で買ったもの。
普段我が家は節約の為にジュースは買わない。夫分のビールは買うけれど。
また無駄遣いを指摘されるのだろうと気分が重くなり、言い訳がましくそれに答えた。


「あ、それ特売で安かったから。OOが家にお友達を呼ぶって言うから。」


また嘘をついてしまった。
友達なんて来ないー子のも私のも。
それでも夫はいまだ私に多くのママ友がいて、家の行き来をしたりランチをしたりしていると思っている。



「友達付き合いも交際費が掛かって大変だな。なんかルールとか作ればいいのに。」


「ルールって?」


「各自水筒と自分の食べる分の菓子持って来るだとか、おやつを食べてから遊びに来るとかさ。だって家によってはおやつがないところもあるんじゃないのか?」


それに対し半ば呆れて無言でいると、


「あー今日も疲れた。こっちは仕事の交際で気疲れ半端ないよ。」


そう言いながらビール缶を出し、ぐいっと一口飲んでテレビに向かう夫。
その背中に冷たい視線を送る私。
最近の夫は仕事がうまくいっていないのか愚痴ってばかりだ。やれ部下の出来が悪いだの、上司が怠慢だの、自分ばかりが損な役回りをしているだの、しかし最終的にはいかに自分が有能な人間で会社に求められている人間であるかを気持ち良く語ることで締めくくりを迎える。
毎度のコースにうんざりしながらも、2缶目のビールを冷蔵庫から取り出し夫に渡しながら相槌を打つのが日課だ。



夫が気持ち良くなったところで切り出した。
最近子が習い事をしたいと言い出したのだ。
前回も習い事では夫と話し合いをしたのだが、平行線。
しかし、今回は子も小学生になり、そして自分からやりたいと言い出したこと。それはダンスだ。
子のダンスは園にいる時から先生達にも一目置かれており、親ながらその才能を伸ばしてやりたい気持ちでいた。
夫もあのダンス大会で輝く子をその目で見て、感動をしていたはず。


「で、いくらくらい掛かるの?」


すぐに金の話になる。


「初期費用でまず3万くらいかな。でも月謝はそんなに掛からないよ。1万掛かるか掛からないか。」


「3万!?ただ踊るだけでそんな掛かるのか?」


「でも、OOがやりたいって・・」


「3万でうまいもん家族で食いに行く方がOOも喜ぶんじゃないのか?」


うまいもん?ーそんな所に行かないくせに。たまに行くとしてもサイゼリアだとかマック。それでも贅沢したという気分にさせられる。


予想通りの答えにうんざりしていると、意外な言葉を掛けられた。


「体験とかないの?まずは体験とか見学させて、それからでもいいんじゃないの?子供なんてあれこれ興味が移り変わるだろう。」


夫の言い分が最もなところもあり、そして少しだけ譲歩してくれた気持ちが嬉しくてとりあえずは見学だけしてみることにした。
一歩前進。


「まあ、OOは確かにダンスうまかったもんな。」


やはり子が可愛いのは夫も同じだ。
今度は子の口から夫にお願いさせてみようか、その前にまずは見学、私も自宅にずっと引きこもっている分そういった外出がいくらかの気分転換になるだろう。
あわよくば、そこで新たな出会いがあればと期待している自分もいる。
そんな自分が実は楽観的な一面もあるのだと思い、ますます人間って分からないものだと感じるのだった。






























ネット依存

雨の日ーそうでなくても自宅に篭ろうと決めた一日はほぼネットに張り付いている気がする。
先日ニュースで女子中高生がスマホ依存に陥っているという特集を観たが、どうやら私もその域に達しているようだ。
携帯からもPCからも、暇があれば常にネット。
ネット、ネット、ネットー家事ーネット、ネットー育児ーネットーその合間に食事や風呂など最低限の生活がそこにあって、最近では寂しさからつい知らない人とチャットのようなものをしてしまった。
勿論後腐れのない、その場限りのおしゃべり。
私がチャットしたのは、一応同じような立場の同性だ。異性としたい気持ちはない。そこにロマンスは求めていない。ただ話し相手が欲しいだけ。
そしてくだらない話をするのだ。
たわいもない話。今夜の夕飯は何がいいかな?だとか最近面白いドラマの話だとか、最強のコンビニスイーツはどこのどれだろうとか。
互いのプライベートは詮索しない。住んでいる場所も勿論。夫がいて子供がいての主婦だということくらいはカテゴリーでお互い暗黙の了解。
ちょっとした家事育児の愚痴は吐くけれど、それ以上はお互い詮索しないし深刻な悩みを吐き出しもしない。
旦那の枕が臭いだとかそんなお気楽な愚痴くらい。

チャットの他はネットショッピング。日用品やら雑貨やら。そして自分が欲しいものを買い物かごに入れたり出したり、お気に入りに登録したりの妄想時間。
そしてブログ村を覗いたりしているとあっという間に子の帰宅時間になる。
トータル何時間ネット遊びをしているのだろう。こうなるともう病的だ。
一度、ネット依存になりつつある自分が怖くなり、携帯もPCも手の届かない所に置いて家事をしようとしたことがある。
しかし、その数分後、夕飯のレシピ検索を名目にすぐさま携帯から検索。そんな自分の意志の弱さを笑った。


ずっと田舎のー電波の届かないような場所に住んでいたら、それはそれで対応出来そうな気もするけれど、それでももうこのネット生活から退くことは水を奪われるようなもの。
中毒を通り越して、私の生活になくてはならないものになりつつある。

























でっちあげDV

でっちあげDVをしてやろうかと思う。
夫の場合、暴力ではなく経済的にーなのだが、いよいよ耐えられなくなりつつある。
ついに私の貯蓄額まで詮索して来た。
そして、それを管理しようとして来たのだ。
正直私の口座に入っている金は10万前後ーそこにライター内職の金の振込が毎月あるのだけれど、通帳には勿論その履歴が記帳されており、それを夫に見せることは内職していることを知らしめることになる。



「最近なんか色々買ってるみたいだけど、金結構あるの?」


私の服や靴を見て気がついたらしい。
それまでは、私個人の金から出した諸々については特に興味がないようだったのに、最近自宅に新しいものがあったり、またちょっといいコーヒーや菓子などの嗜好品があるとそれを指摘する。
家計からは勿論出していない。それなのにあれこれ口うるさく物を言い、終いには生活費を更に削ろうと提案して来た。
給料日前の家計簿を提出すると、レシートと照らし合わせぶつぶつ言いながら首をかしげる夫。



「使途不明金、多すぎじゃない?」



使途不明金は、レシートがない金。例えば子の学用品だったり写真代、また子供会や自治会費などの会費だったり交通費など。一応領収書が貰えるものは貰っているからその不明金も微々たるものだ。
それなのに、私がどこかでくすねてへそくっていると思ったのか、


「あのコーヒーとかさ、家計から?」


「いや、お茶だったりお菓子だったりは私の貯金からだけど・・」


「貯金、まだ結構あるの?独身の頃のだろう?返済でそんな残ってないだろう?」


「勿論、そんなにないよ。減る一方だし。」


「あんま無駄遣いするなよ。俺が持っててやろうか?」



その物言いにぞっとした。
上から目線なうえに、更に私を支配しようとするのか。10万前後でも私にとっては心の余裕を生む金ーそして拠り所なのに、それすら夫は管理したがる。


私が嫌な顔をしたのを察したのか、夫は更に付け足すようにこう言った。


「俺がそれを増やしてやってもいいし。」


意味が分からなかった。増やす?増やすのなら生活費を増やして欲しい。
つい口からそれが出た瞬間、夫は急に立ち上がりダイニングテーブルを「バン!!」と思い切り叩き大声を出した。



「話をすり替えるな!!」


夫の豹変ぶりに驚き、開いた口が塞がらなかった。
それから夫は、レシートをぐちゃぐちゃにまるめ、家計簿を放り出し、そのまま自室に引き上げて行った。
幸い、子はその大きな音に目を覚ますことはなくほっとしたが、私はその後もうまく切り替えが出来ずモヤモヤした。
普段はガス代が掛かるのでしない追い焚きをこの日はし、遅くまで湯船に浸かった。
夫は金のことになると人が変わる。
昔からそうだ。これもDVなのではないか?
怒鳴られて、そのついでに叩かれでもしたら正々堂々とDVだと訴えられるのにーもっと逆鱗に触れてやろうか、様々な思惑が頭を過っては消えていく夜更けだった。




























若葉のエネルギー

梅雨入り前ー
若葉の頃、太陽をたっぷり浴びた生命力に溢れる木々が空に向かって真っ直ぐに伸びている。


天気がいい日に家の中で引きこもっていると罪悪感がある。
週間天気予報で晴れマークが続くと、反比例して気持ちが沈む。
精神が不健康な証拠だ。


晴れてる日ー、図書館へ行ったり市民プールへ行ったり、どれもこれも一人で出来ることばかり。
園時代のような縛りがなくなった分、自由な時間が多く出来た途端、無性に人恋しくなった。
ママ友は1人きりー引越し前の友人だ。
それから独身時代の友人は片手でおさまる程。
それでも急に思い立ち、彼女らに手当たり次第メールをしてみた。
自分から誘うことがなかなか出来ない内気な私は、取り敢えず近頃の近況ー子が小学校に入り楽になったこと、自由な時間が出来たことなどを伝え、今のところ仕事はしていないという締めくくりで、もしお互い都合が合えば会いたいねというような内容をそれぞれに送信した。
レスポンスはなかなかなく、悲しいことに友人の一人のアドレスが変わっていたことがショックだった。
私は友人だと思っていたのだけれど、向こうにとってはアドレス変更を伝えるまでもない知り合いだったのか。

結局その日の日中は誰からも返信はなく、夜更けに数人からバラバラと来たのだがそのどれもが無難なー、私も無難なメールを送ったのだから人のことは言えないが、社交辞令的な「お暇が出来たら会いましょう」的なものばかりだった。
そして具体的に都合のよい日時が記載されているわけでもなく、当分は無理だということがやんわりと伝えられているのが敏感な私にはよく分かった。

引越し前のママ友は上の子と下の子の習い事の送迎に加えて、ハンドメイド仕事に忙しくママ友に手伝ってもらいながらなんとかこなしているとのこと。
納期が迫っていて大変なこと、夏くらいには暇になるかもということだった。

宗教の友人は相変わらず仕事三昧、来月からはボストンらしくその準備で今月は手一杯だそうだ。
その他の友人もあれこれ日々充実しているようで、暇な私が立ち入る隙もなかった。


子がまだ赤ちゃんの頃、支援センターデビューをする前の閉鎖的なあの日々を思い出していた。
引きこもり育児になりそうで、でもデビューするだけの勇気が持てずただ過ぎていく日々に悶々としていた頃。
夫意外の大人と話したいー親密にならずとも軽口を叩けて笑い合えるだけの。
勇気を振り絞り、重い腰を上げてまだ寝返りしたばかりの子を連れてイベントに出掛けたあの日ー神様と運が味方してくれてあの場からのスタートで、私は数年の充実したママライフを送ることが出来た。
実績がないわけではないのだー
それなのに、園時代の躓きが私を踏み止まらせる。


何か始めてみようかー


小学校から配布された「ボランティア募集」の用紙を何気なく眺めていたら、ムクムクと前向きな気持ちが湧いてきた。
これは役員とは別で特に点数にならないもの。
読み聞かせイベントや祭りイベント募集員ー、遠足の付き添いやベルマークなど。
どれも参加出来る時だけでOKらしく、勿論強制ではないので気軽に引き受けることが出来そうだ。
勢いもあり、祭りイベントのスタッフに応募することに決めた。ボランティアの中では一番骨が折れそうだけれど、その分保護者同士親密になれるかもしれない。
ドキドキしながらも、新しい出会いと自分に期待しながら。
自分から動かなければ何も始まらないのだ。
動いて失敗することもあるかもしれないし、また何も収穫がなくがっかりするかもしれない。それでも0から1になる可能性は秘めている。
止まっていてはいつまで経っても状況は変わらない。
「参加する」に丸をつけた募集用紙が明るい未来への道しるべとなるよう願う私がいた。
ふと外を見遣ると、若葉が太陽の反射を受けキラキラ輝いていた。
人だって個では生きていけないー輝くのにはやはり「人」の力が必要なのだ。




































ドッペルゲンガー

ふわふわの砂糖菓子のように甘やかされたい。
そんな願望がごくたまに湧く。
きっかけは元彼の奥さんのブログだった。
最近元彼はSNSの更新をしておらず、なので奥さんのブログから近況を知りたいと夜な夜な夫の帰宅が遅い日に覗いてみたのだ。
こんなことしてもどうにもならないーむしろ虚しくなるだけだと分かっているのに定期的に覗いてしまう自分がいる。
そして予想通り、彼女との生活の違いに愕然とするばかりなのだ。


奥さんは相変わらず彼に甘やかされているようだ。
私の彼だったあの頃もそうだった。彼はいつでも私の味方だったし、あの時間だけはたっぷりあった日々の中で互いの全てを共有し合って生きて来た。
実家で窮屈な思いをしていた私を救ってくれる唯一の光だった。
今思えば、彼は私の前で背伸びをしていたのだろう、大人であろうと必死だったのかもしれない。それに気が付かなかった愚かな私はただただ彼に思い切り甘やかされ、そしていつしかそうされることが当たり前になり、それ以上のことまで要求するようになった。
彼が私の前から消えた時は後の祭りだった。



彼女のブログ、直近では母の日について記されていた。子供達から貰ったメッセージカードにビーズネックレス、そして子供達がパパにおねだりして買って貰ったというピンクのカーネーションにふわふわの生クリームをたっぷり使ったケーキ。
子供達からだけではなく、パパからも彼女が前から欲しがっていたお出かけ用の小さな皮の肩掛けバッグをプレゼントされたということ、それを彼女が気がつかないところで手配していたとのことが詳細に写真と共に綴られている。
想定していなかった宅配が来て、ダンボールを開けるとそこにはラッピングされたそれがあり、思わずパパに抱きついたと記されていた。
サプライズー元彼は私にかつてしてくれたように、妻にもイベント毎にしているのだろう。胸の奥がきゅっと小さく疼いた気がした。
料理や洗濯、そして掃除などの家事も普段から手伝うらしい彼、この日も勿論してくれたようだ。
奥さんはその間美容院とネイルに行ったという。

ふと自分の指先を眺めてみたー
ささくれて、縦線の入った爪。ネイルなんてもう何年もしていない。
夫が嫌うから。
子が生まれてからは危険なので自分の意思で爪は短く切り清潔を保っている。しかし、彼女のブログでアップされていたナチュラルながらも洗練されたネイルの画像を見ているうちに、元彼の優しさに思う存分浸かりきっている彼女と自分が重なり複雑な想いに駆られた。
元彼は、私のネイルを見るといつでも気がつき嬉しそうにしてくれた。

「爪塗るの好きだね、服と合ってる。」




ドッペルゲンガーもうひとりの自分。もしあの分岐点で、道が二つに別れたのと同時に私自身も分かれていたとしたら。実はこの画面の向こうの彼女はもうひとりの自分なのかもしれないと馬鹿な錯覚にとらわれる。
スタンプで隠された彼女、もうひとりの自分。
スタンプの奥にある彼女に会ってみたい気がした。もしかしたら本当に私かもしれない。もう一つの人生を歩く私自身がそこにいるのかもしれない。
しかし、ドッペルゲンガーを見るとどちらかの自身は消えてしまうという。それは分身だからだ。
彼女と私、一体どちらが光で影なのかは歴然としている。消えてしまうのは私だ。


妙な妄想にとりつかれ昨夜はよく眠れなかった。
喉がカラカラに乾き、リビングに水を飲みに行く。こんな日に限って夫は遅い。
もう一度寝室に戻り子の寝顔を見てからそれまで妄想していた自分に嫌悪感を抱く。
心の中で小さくごめんねとつぶやき、子の小さな額に掌を当てた。その確かな暖かなぬくもりにこちらが現実なのだと我に返った。










































インテリジェンス

夫との結婚の決めての一つに、私にはない頭の切れの良さがある。
とはいっても、普段の生活にそれは見られないけれども、職場では割と優秀な人材なのだ。
詳しくは伏せるけれど、金融関係とでも言っておこうか。
経済事情に明るく、付き合い始めの頃は共にニュースなどを観ているとそれに対して自分なりに考察していたりして、知識のない私にとって知性ある素敵な男性に思えたものだ。
結婚し、子を産み、生活を共にすることになり、そうした彼に対しての尊敬に近い焦がれた気持ちは薄くなっていった。
むしろビクビクするようになった。
なぜなら、何かある度に私に質問するからだ。
以前、生活費のことでもめた時も何故かそこから経済関係の話題にすり替えられ、まるで就活生の常識問題のような質問をされたことがある。
うまく答えられずにしどろもどろになった私に対して夫は冷たい横顔でこう言ったのだ。


「新聞の経済欄くらい読めよ、こんな質問に答えられないから金のやりくりも下手なんじゃないのか。」



ショックだった。
あの高圧的なー私をあからさまに馬鹿にしたような横顔は今もまだ忘れられない。確かに私は夫のように知識もないしもう何年も社会から離れている分世間知らずもいいところなのかもしれない。
それでも、日々の家事育児を全力で頑張って、家族の為にと頑張って、その上で贅沢をしている訳でもなく、ただ家計を預かりたかったー預かることが無理だとしても、我が家の総資産くらいは知っておきたかったのだ。
それなのに、無知な私に大事な家計は預けられないと夫は言うのだ。


私は毎朝新聞に一通り目を通している。
勿論読めない日もあるけれど、それでもなるべくいつまた夫から馬鹿にされないか、自分の為にも人の親としても一般常識を身につけることは悪いことではないーそう思うから。


夫の機嫌があまり良くないと、こうした時事問題だとか経済事情についての質問をされる他、意見を求められる時がある。私が見当違いの解答をするーそれに対し呆れ顔をすることで彼の鬱憤が晴れるらしい。

本来、それに対し小気味良くユーモアも交えながら答えられるだけの頭の回転の良さを持つ女性が夫にとっては理想の妻像なのかもしれない。そういった妻になら全てを安心して預けられるのだろう。


夫の理想に近づこうと、経済欄をめくるのだがいつの間にか生活欄やお悩み相談コーナーを読み込んでいる自分がいる。
特にお悩み相談コーナーには、自分と同じような悩みを持つ主婦だとか、むしろ私よりももっと深刻な悩みを持つ人々が藁にもすがる思いで紙面上のカウンセラーに答えを求める。
しかし、どの答えも結局は解決までに至っていないように思う。
カウンセラーは、限られた文字数で分かりやすく彼らの悩みに答えなければならないこともあり、どうもやっつけのように回答している風なのだ。
レスポンスは1度のみ。
しかし、時間を割いて新聞社へお悩みを送る彼らは余程深い悩みを抱えているに違いなく、余計なお世話かもしれないがもう少しカウンセラーとのやり取りが必要なのではないかとも思う。


話は飛んだが、子も小学校に上がったことで、母親である私もある程度の知識は身につけておかなければならない。
いざ子に疑問を投げかけられた時、うまく答えられる母親でありたい。

頭の悪い何の取り柄もない私だけれど、子の為なら頑張れるー
子を育てながら自分ももう一度1年生から勉強を始めよう。













































常備菜とタッパー丼

子が小学校に通うようになってからというもの暇を持て余している。
ライター作業も3月と4月は殆どしていなかったせいか、勘が鈍り集中力に欠けてしまう。
子の弁当作りがなくなったことで弁当作りから解放されるわけでもなく、夫の食べるかどうかも分からない「保険弁当」を毎朝用意しなくてはならず、園時代よりも朝は早くなったことで朝食の準備等相変わらずバタバタする毎朝。
夫と子を玄関先で見送ってから、しんと静まり返った部屋の中でほっとする瞬間ーそして途端においてきぼりにくらったような妙な寂しさがじわじわ湧いてくる。
その寂しさから身を紛らわす為に、家事に没頭する。
本来苦手な家事、掃除も洗濯も好きではない。
料理もセンスが相変わらずなく、見栄えが悪い。
ネットなどで料理ブログを見てセンスを磨こうにも、同じように作って同じように出来上がらない不思議。
終いには、撮影技術が優れているのではないかと一人勝手な言い訳をしてしまうほど。

毎日毎日同じことの繰り返しは、園時代も同様だったけれど、それでも義務的に送り迎えという外出があったからこそ太陽の光を浴び、風を感じ、人々とすれ違うだけでも人として毎日を生きているーそんな錯覚に助けられて来たのかもしれない。
家族以外との会話がない暮らしは、きっとそれで満ち足りた日々を送ることが出来ていたらそう苦ではないのだろうけれど、冷え切った夫婦関係の中でそれは叶わない。


いつかどうにかしなければ。

そのいつかはいつまで延期されていくのか、延期の後消滅していくのか。
悶々とした思いから逃れるように、激安スーパーで買った青菜を次々と大鍋に放り込む。
ぐつぐつと泡を作った湯は徐々に緑色に染まり、キッチン全体は暖かく青臭い空気に包まれる。
お浸し用、胡麻和え用、ナムル用、それぞれタッパーに分ける作業は単純作業で一時の現実逃避が許される。その他にもかぼちゃの煮物やひじき煮など、夕飯の副菜になって弁当のおかずになるような常備菜を次々と作って行った。
気がつくと昼を過ぎており、昼食には出来立ての常備菜を食べる。
優雅な暮らしをしているブロガー達のように、素敵な食器に盛り付けてカメラ撮影をしてーなどではなく、タッパーに冷凍保存している冷ご飯をレンジでチンして、茶碗に入れ替えることもせずにタッパーのままの飯の上にそれぞれを乗っけるのだ。
洗い物を増やしたくないー丁寧な暮らしなど私には不釣り合い。
ずぼらなー、それでいてほっとする常備菜ランチ。


昼のテレビ番組を観ながら、誰と会話をすることもなくタッパー丼は5分であっけなく空っぽになった。
立ち食いレベルの早さで、それでも腹一杯になった。


ふとー、子が更に成長した日のことを思う。
中高生になり、部活などで殆ど家を空け、思春期になり母親との会話も減り、そうなった時このタッパー丼を食べる機会は更に増えることだろう。
誰とも会話をせず、テレビに向かって。



常備菜を作り終えた時の、どこか気持ちの良い達成感はいつの間にか不安感に乗っ取られていた。
結局何をしていても、自分は果たしてどこへ向かうのかばかり考えている今日この頃なのだった。










































スタバよりいちご

午前中、いつものように激安スーパーに買い物に行く。
今月は車税や自治会の年会費徴収などもあったことで家計は苦しい。
夫に普段貰う生活費よりも多めに必要だということを伝えるのを忘れていた為、足りなくなってから気が付いた。
先週から足りないことを訴えているのだが、内訳を説明しても渋々な様子。
私が渡されているクレジットカードは、毎月の生活費7万前後が振り込まれているだけで後は毎回夫にお伺いを立てなければそれ以上は貰えない。


「働いても働いても貯まらないわな。」


溜息をつきながら夫は出勤、数万補充しておいたからそれでうまくやってくれと家を後にした。
空っぽに近い財布片手にATMへ行き、金をおろす。
2万円振り込まれており、胸をなで下ろす。

昨日は夫が買い物に行こうと言い出したのだが、本当に金がなかったので断り家庭内の空気がどんよりとした。
こちらの方がどんよりだというのに。


スーパーで40円のえのき3パック、80円のキャベツなどあれこれ買い込む。このスーパーのお陰でなんとか家計も回っているように思う。
駅前のスーパーには到底出入り出来ない。自転車で時間を掛けても通うだけの価値はあるのだ。
果物売り場ー夫はあまり果物を食べず、果物ならジャンキーな菓子を好む。しかし子は果物が好きだし私も同じく。
今年はいちごが全然出ておらず、あったとしても300円以上。
子の一番好きな果物はいちごで、数日前いちごを食べたがっていたのを思いだし買い物かごに入れては出してを繰り返す。1パック250円のいちごは、隣に並ぶつやつやで大ぶりの398円のとちおとめと比較して見劣りしたが、それでも子はきっと喜んでくれるだろうと結局は買い物かごに放り込んだ。


帰り道、バス停の前を通ると素敵ママに出くわした。
すっかり大きくなったお腹を手に当てながらもう一方の手を振り笑顔で話し掛けてくる。
スタバの紙袋をぶら下げて、検診に行ってきたところだと言う。
昼時だったのでスタバでも寄ろうかと思ったが、なんだか疲れてしまい結局自宅に戻って来たとのことだった。


「体調は、どう?」


「うん、お腹が重くて寝てばかり。検診でも体重管理怒られちゃった。最近甘いものが欲しくて欲しくて。検診終わりはいつもご褒美にケーキ食べちゃうんだけどね、今日はスタバのバナナフラペチーノがどうしても食べたくて。でももう終わちゃってて残念ー。でも新作のも美味しそうだからいいんだけどね。」



私が250円のいちごをあれだけ悩んでいるというのに、彼女はすんなり500円以上もするドリンクを何の躊躇も無く買えるのだ。
心底羨ましいと思う。




彼女と別れ、自宅に戻り自分の為にアイスコーヒーを作った。いつもより少し多めのミルクとガムシロップを入れて。
私にはこれで十分。
子が帰宅するまでに夕飯の下拵えをする。冷蔵庫がパンパンになると心も落ち着く。
空っぽだった冷凍庫に小分けにした肉類を入れる。これで当分大丈夫。
今日のおやつはいちごにミルクと砂糖をまぶしたいちごみるくにしよう。
きっと子も大喜びすることだろう。
それだけでなんとなく心が豊かになって、今週もなんとか乗り切れるような心持ちがした。





























































拒絶と決意の狭間

何年ぶりだろうー
夫から迫られた。それは夫の意思とは思えないそれだった。
ずっと待ち焦がれていた肌のぬくもり、しかし反射的に手を振り払ってしまった。
それはおそらく拒絶だった。


ことの始まりは義実家訪問のあの日。
私が到着する頃には予想通り既に出来上がっている義兄弟達。義姉達もビールからワインに移ったのだろう、翌日も休みということでの開放感からか既にベロベロだった。
私としては、そうであった方が有難かった。泥酔間近の人間に妙な緊張感はない。こちらの緊張感さえ感じる隙もない。
珍しく義母も酔っていたのか、女性陣は一同私を手招きした。
シラフだった私だけれど、歓迎されて嫌な気はしない。むしろ嬉しかった。こんな途中参加ならいつでも大歓迎だ。


「遅い遅いー、何してたの?」


一番上の義姉が言う。


「あ、家事してました。時間掛かってしまいましたが。」



「そうなんだ。連休くらいアイツにやらせればいいのよ。実家にいた頃は色々やらせてたんだから腕前は確かなもんよ。」



そう言いながらワイングラスを夫の方に向ける。
夫の本当はどちらなのだろう。義実家の中で夫は「何でも言うことをきく優しい息子ーそして弟だ。私の前で見せる夫を彼女達は知らない。訴えたところで信じて貰えないだろう。
次女は本格的にパートを始めたらしい。
念願の雑貨店兼カフェでのパートは若い女の子達に混じり、色々な意味で刺激を受けているとのこと。
そのやりがいを鼻息荒く語りながらも疲れるを連発していた。先月は6万稼いだらしく丸々小遣いだそうだ。相変わらずランチ代や洋服、そしてホットヨガやパン教室などの習い事に充てているらしい。
自分だけの為に働き、それでも優しい義兄は家事育児を分担してくれるらしい。休日の料理洗濯は勿論のこと、平日も朝食は義兄担当らしい。フルタイムでもないのに家庭円満だとこうもライフスタイルが違うものか。

長女は反抗期を迎えた子供達の愚痴をこぼしていた。反抗期といってもまだ中学そこそこの女の子。男の子の反抗期とは違いそれ程深刻でもなさそうだ。
それでもいかに自分ばかりが大変かということを訴えー家族の犠牲になっていると言ってストレス解消だとまたカルティエの新しい指輪を購入したと見せて来た。確かこの前訪問した時も新しいネックレスを身につけていたような気がする。
三女は出世をしたらしく、この春からプロジェクトリーダーを任されたことでプライベートの時間がなかなか取れずに恋人とすれ違っている不満をぶちまけていた。
それでも仕事に対してはストイックで、不自由なその状況すら楽しんでいるように見えた。
彼女達は「自分ばかりが大変自慢」をしているように見える。そしてその大変な環境の中でも私達は頑張っているのだとー
それは無能に見える私に対しての自慢にすら思えた。


「OOちゃんももう手が離れて、いつも家で何してるの?」


予想通りのお決まりの質問。


「そうそう、在宅で仕事してるんだよね。それってやっぱり出来高制?フリーランスってやつ?格好いいよね。」


夫には内緒なのでその手の話から逃れようとあれこれ他の話題を探したが見つからず、


「最近はさっぱり声が掛からなくて。お休みしています。」


「ふーん。ねえ、もう兄弟は作る気ないの?」


長女からの突然の質問。その奥で義母が心配そうな表情でこちらの様子を伺っている。
そうかー私がいないところではいつもその話題が持ち上げられているのかもしれない。
何と答えたら良いか分からず、笑顔にならない笑みを浮かべながら勧められたワインを一口飲む。


「まだいけるよ。私だって40そこそこで産んだんだし。ちょっとー!XX(夫)!あんた頑張りなさいよ!OOちゃんに弟か妹作りなよね。このまま一人っ子なんて可哀想よ。」



長女が夫に向かって大声を張り上げる。夫はその声に苦笑いしながらも、ビール缶を次々と開けている。
終いには次女や三女までが参戦し始めた。



「可愛い我が子を天涯孤独にするつもり?お金がない訳じゃないんだからさ。私達だってやっぱり4人兄弟で良かったじゃん。小さい頃は喧嘩ばっかだったけど今は兄弟いて良かったって思えるもん。」



「跡取り!あんた一人がこの家を継ぐ名前持ってるんだから、男の子頑張ってよ、お母さんやお父さんの為にもさ。」


好き勝手にまくし立てる義姉達を前に、夫は切れたりもせずただただ笑みを浮かべながらビール缶を開けている。
義兄達までが夫に向かって何か焚きつけているようだ。



「今夜はOOちゃんうちで預かるよ。明日も休みだしさ、たまには2人でゆっくり夜を楽しみなさいよ。」


長女が親切の押し売りを始めた。こちらの意向をも無視し、子に向かってお泊りを勧めると勿論子は大喜びで万歳のポーズ、私は内心げんなりした。
また無言の夜を過ごすだけではないかー



普段あまり口うるさくない義父母までが、酒に酔った勢いなのか無神経な発言をする。


「出来ないのなら病院とか行ってるの?治療費のことで困ってるならそんなの出すから!一度病院行って来なさい。」


もううんざりだー
酔っ払いにあれこれ言われるのも、内情を知らないくせにー



「私達、冷え切ってますから。」


ワインのせいか、シラフなら絶対口に出来ないことをぶちまけていた。
場がシン・・と静まりかえる。
少しして次女がおちゃらけてその場を取り持とうとする。



「やだー!照れちゃって。冗談。」


「もう何年もそういうのありませんから。私に言われても困ります。病院だとかそういう問題じゃないんです。」



視界の隅っこで、夫が焦りを隠すかのようにビールを喉に流し込むのが見えた。
恥をかけばいい。自分の実家で。なぜいつも私ばかりが気を遣わなければならないのか。私は何度も子に兄弟を作ってあげたいと訴えてきた。それを聞き入れない夫の為になぜ私まで連帯責任を負わなければならないのかー
ワイングラスが空になると、次から次へと夫への不満が爆発した、もう誰にも止められなかった。




それから先のことはよく覚えていないけれど、子を義姉に預けて私達夫婦はタクシーで帰宅した。
その間ほぼ無言だった。
自宅に戻り、それぞれシャワーを浴びさっぱりするといくらか酔いも覚め、後から自分の後先考えない発言に自己嫌悪をおぼえ落ち込む有様だった。
ぼーっと夜のニュースをソファーに座って眺めていると、自室から夫が出て来る気配がした。
前触れもなく、夫はテレビのリモコンを取り画面を消した。
そして、何年ぶりだろうー私に触れたのだ。
途端ー驚いたことに鳥肌が立ったのだ。


「やめて。」


夫は驚いて怯んだ。二人の間にこれ以上とない気まずい空気が流れ、夫はまた自室に引き上げて行った。


私はしばらくそこから動けないでいたが、後からこれで良かったのかと悶々としとうとうその夜は一睡も出来なかった。
夫があのような行動をしたのは、義実家の影響だ。それは私を愛してのことではない。シスコンの彼は姉達に逆らえない。姉達に言われたからしたまでの行為だ。
それを知りつつも、これが最後のチャンスかもしれないーそう思うと居てもたってもいられなくなった。
空が白み始め、郵便受けに新聞が放り込まれる音と共に、夫がトイレに起きたのかリビングで水を飲む音が聞こえた。
意を決し、寝床から起き上がりその音のする方へ向かって行った。



























































家庭訪問

家庭訪問があった。

担任が自宅に上がるーそれだけで緊張。
私が子供の頃、そういえば母親も前日から掃除をしたり茶菓子を買いに行ったりと忙しくしていたっけ。
当日まで親子揃ってそわそわ落ち着かなかった。
たった10分程度のことなのだが、普段から自宅に人を招き入れることに慣れていないせいか、失礼のないようにとせっせと準備をしその時を待った。

時間を過ぎてもなかなか担任はやって来ないので、子に様子を見るようエントランスまで出て行かせた。
しばらくすると、子と担任の話し声が玄関先から聞こえて来たのでどうやら到着したようだ。
ドアが開き、子が叫ぶ。



「ママー!先生が来たよ。」

「はーい。こんにちはー。」


「こんにちは。遅くなりまして申し訳ありません。」


「いえいえ、いつもお世話になっております。お上がり下さい。」




スリッパを履いて貰い、取り敢えずダイニングへ誘導しながら慌てて茶菓子を用意する。
変な汗が出て来るようだった。
子は、なんとなく自分の話をされるのが落ち着かないのか、別部屋に引っ込んでしまった。

担任の第一印象は頼りない風だったのだが、実際はそうでもなくやはり教育者、生真面目だが少々頑固そうな印象。
子の学校での様子を一通り教えてくれ、こちらからも家での様子をあれこれ聞かれたので聞かれた通りに丁寧に答えた。
するとものの5分で会話が終了してしまい、沈黙が流れたー
正面に人が座ると、どこを見たら良いのか分からなくなる。思えば思う程パニックになるのが分かっているので、考えないようにしながら、ダイニングテーブルに乗っかっている菓子に目を落とす。


「OOさんは、内気な方ですか?」

突然の質問に驚き、その質問を更に質問で返してしまった。


「え?何故そうお思いなんですか?」


「いやね、休み時間なんか結構クラスメイトは外で遊ぶんですよね。OOさんはいまだ教室で一人お絵描きや折り紙をしているので。外に行こうと誘ってみるんですが気乗りしないようで。」


子は園にいた頃からどちらかといえば活発で、室内遊びよりもむしろ外遊びの方を好むタイプだった。そのことを伝え、本来運動が好きなこと、お友達が好きなこと、そしてダンスが上手であることなどとにかく本来は活発な性質の持ち主で自分をまだ出せていないのだということを必死に担任にアピールした。」


沈黙から急にまくし立てる私の様子に、担任も少々驚きの表情を見せながら、にっこり笑って言う。


「ああ、そうなんですね。まだ新しい環境に適応しきれていないだけなのかもしれませんね。もう少しすれば段々OOさんらしさが出せるのかもしれません。しばらく様子を見てみます。ご近所には仲良く遊べるお友達とかいらっしゃるんですか?」


更にハードルの高い質問につい嘘をついてしまった。


「ええ、もう約束をして勝手に遊びに行ってしまうくらいです。」



嘘ーはついていないか。実際この間は遊びに行ったし。
それでも、「仲良く」というのは言い過ぎだろう。こういったちょっとした嘘というか見栄というものを張ってしまう自分が嫌いだ。
素直に親子揃って仲良しなんかいませんよーそう言えればどれだけ楽だろう。



「じゃあ、大丈夫ですね。直に慣れて来るでしょう。」


それから10分経ったので、担任は殆ど手をつけていない茶菓子を前に立ち上がった。
私は慌ててネットで調べたように、残された茶菓子を小さな可愛らしいラッピング袋に入れてマステで留めて担任に渡した。
断られるかと思ったが心良く受け取って下さり安堵した。
玄関で子と共に見送りと、どっと疲れが出た。


「お腹空いたー、ねえ、先生何て言ってた?」


「え?ああ、OOのこと褒めていたよ。ちゃんと先生のお話を聞けてるって。それからー」


つい休み時間の過ごし方を聞いてしまいそうになったがぐっとこらえた。
もう少し経ってから聞いた方が良い、また子にとってプレッシャーになってしまう。
そう思い、本当に担任が褒めてくれていたことだけを子に伝えると、子は嬉し恥ずかしいような表情で担任が持ち帰ったのと同じ焼き菓子を頬張る。
私もなんだか疲れて、甘いものが欲しくなりアイスコーヒーとそれを頬張る。
先程まで緊張感で包まれていたダイニングも、来客者が帰ったことでいつも通りの落ち着く空間に戻っていた。
そしてー、私には一言も言わないけれど、子がどんな気持ちで休み時間一人で折り紙をしているのかと思うと切なく胸が締め付けられる思いだった。

元々一人が好きな子ー
外遊びが苦手で、元々折り紙やお絵描きを好む子ー
はじめからそういうタイプなのだったらこんなにも戸惑わない。
そういえばーまだクラスメイトの名前すら聞いていないことに焦りをおぼえる。
早く馴染んで欲しいー、私のようにならないで欲しいー願えば願う程それとは逆になってしまうのではないのだろうかという不安が拭えないでいる。



























泣き所

連休は、母としてー妻としてー嫁としてーそして娘としてー
ただただ気を遣ってばかりの日々だった。

綴りたいことは多くあるけれど、まずは実家のこと。
夫を連れては久しぶりの実家。相変わらずぎくしゃくした雰囲気の中で母の日のプレゼントを渡した。
ストール、思ったより喜んでくれてサプリも効能を説明して渡すと嬉しそう。出だしは好調だった。
ご機嫌な母が、夫にその調子で話し掛けるが夫はそれに対して無愛想。
3回に1回は手短に返事をするが、後の2回は聞こえているのかいないのかスマホをいじりスルーなのだ。これは私の目から見てもかなり感じが悪く気分が悪い。
母の顔色が段々変わるのが見て取れて、心臓がバクバク言い出した。しかしそれに構うこともなくスマホをいじり続ける夫。
子は父と外遊びに出掛け、弟はテレビを観ている。
弟に話し掛けてくれたら少しは状況も変化するのにそれもない。夫はついにスマホのゲームを始めてしまった。
母は、お茶を淹れにキッチンに立ったが、その背中は明らかに憤りを示していた。
オロオロしながら私は母の好きそうな話題を提供する。
母方の親戚の話だ。
母はこの手の愚痴が大好きで、電話でも愚痴り出したら1時間強は続くのだ。これで母の機嫌も直り、この気まずい雰囲気も挽回出来ると踏んでいたが、しかしそれは大きな誤算だった。


「叔母さんのところは元気にしてるの?」


「ああ、この間電話があったわよ。夫婦で旅行三昧らしくてね。OXちゃん(従姉妹)の旦那さんが企画してこの間は皆で北海道に行ったらしいわよ。末っ子だからOXちゃんが一番可愛いんだろうね。やっとそこにも孫が出来て幸せそうよ。旦那さんも気が利くらしいし。」



ーあぁ、始まった。また母のイヤミだ。


「△△ちゃん(従姉妹の姉)のところの旦那さんは一人でも遊びに来るらしいわよ。ちょくちょく来てはお茶飲んでったりね。ちょっと図々しいところはあるけど気さくな旦那よ。この間は小遣いって5万もくれたらしいよ。姉さんも年金生活だからね、孫の為に色々したりも金銭的に大変だし、そういうこと分かってるんだろうね。」



隣で涼しい顔をしつつゲームをしている夫を感じながら、内心冷や汗がダラダラ流れていた。夫に対してのイヤミだ。それはイコール私に対しても。
もっと娘として気を利かせろと言うことなのだろう。
ついにはお年玉のことまで言い出した。




「あそこは孫が多いから大変よ。正月なんかお年玉が大変なんじゃないかと思ったら、子供達が年金生活を気遣ってそれぞれお年玉をくれるらしいよ。だから逆にお釣りが来るって言ってたわよ。育て方が良かったんだろうね。」



頭の奥でガンガン鐘が鳴っている。さっきまで嬉しそうに受け取ってくれたストールとサプリが無造作にテーブルに置かれているようにまで思えた。視界が段々ぼやけてきて、泣いてはならないーそう自分に言い聞かせながら無理やり弟が観ていたアニメ番組に集中しようとするがなかなか出来ない。



母は言いたいことが言えてすっきりしたのか、それからはあそこが痛いここが痛いの健康話や最近のワイドショーネタ、また夫がトイレに立った隙に義両親の近況などを聞いて来たりした。
最後まで夫は自分から何かを発信することもなく、そして母からも発信することはなかった。
互いを意識しながら存在を否定しているーそんな空気だった。
しばらくして父と子が帰宅し、そこで空気は一気に和み救われる思いだった。後は子が中心となり、あれこれしゃべりそれに対して皆で笑うというお決まりの流れと共にその日は終わった。


帰りの車で、夫はほぼ無言だった。
私があれこれ明るく話し掛けてもスルーだった。子は寝てしまったし、沈黙の中で夫が考えていることは大体分かる。心底母に嫌悪感を持ったようだった。
そしてそれは母もだろう。
取り敢えずー両者の仲をどう取り持てばいいのだろう。まずは夫からと数万円母に送金すべきか。お年玉は子に毎年千円貰っているが、母の話だと親へ1万は渡さないとならない。父も入れたら2万。弟も入れたら3万。それを毎年ーそんな金はへそくりの中から出すとしても負担が重い。


「なんか、お母さんが変なこと言ってごめんね。」


取り敢えず夫に謝罪する。
しばらく無言の後、


「次は正月でいいだろう?」


夫がうんざりしながらそれに答えた。
私はそれにただ小さく頷くことしか出来ないでいた。























































途中参加

夫と子は早朝から義実家へ。
私は家事があるので、それらを片付けてから義実家へ。
普通なら揃って伺うところなのだけれど、夫がのろのろ洗濯を干している私にしびれを切らして先に出ると行ってしまった。
義実家でお昼ご飯からのお茶、そしてもしかしたら夕飯も。
いつものことだけれど、普段から通っていない私が悪いのだけれど、やっぱり居心地が悪い。
なんとか頑張って会話に参加しようとしても、やっぱり難しい。
3人の義姉達のリズミカルなトークに割って入る程コミュニケーションに優れているわけでもない。
義母が気を遣って話し掛けてくれることもあるけれど、義母は大体キッチンにいたりするのでお手伝いがてらそちらに行ってもすぐに戻されてしまう。
夫は義兄達と酒を酌み交わし、子は従姉妹達と楽しそうに遊ぶ。
私はといえば、携帯をいじるだけの勇気もなく、ダイニングテーブルに置かれたチラシを見ているだけ。
雑誌でも買って、堂々と皆を気にせず読めるだけの度胸があればいいのだけれどそれもない。
また、興味もないチラシを何枚も何枚もめくるのだと思うと気が重い。


以前、私があまりにも持て余してチラシを見ていたら、それを見た義姉が、


「スーパーとかはしごする人?」



と聞いて来た。
何となく頷かなければ間が持たないような気がして、引き攣り笑いで頷くと、


「そうなんだー。でもさ、10円20円の為にわざわざ時間掛ける分パートでもした方がよっぽど効率的だと思うんだよね、私は。あ、別にそれが悪いとかどうこうじゃなくて運動がてらって考えればまた違うのかもしれないけどさ。」



まだライター内職に出会っていなかった頃は、実際義姉の言う通り非効率的だと思われるスーパーはしごをしていた。
10円でも安いところー専業だから時間はたっぷりある。
でも、要領が悪い私は結局10円安い納豆を買って30円高い肉を買ってしまったりするので結局意味のない自己満足だけのはしごだったけれど。



ふとそんな以前のことを思い出しながらも、そろそろ支度をして義実家へ途中参加をしなくてはならない。
途中参加ー
私が一番苦手な。
園の送迎でもそうだった。
既に教室の前に輪が出来ているーその場にお迎えに行くのが本当に憂鬱で、だったら一番に教室前でスタンバイし、後から出来る輪を感じる方が気楽だった。
どちらにしてもポツンだったけれど、それでも気楽だったのだ。


途中参加の嫌な理由ー
それまでの秩序を壊してしまわないかということ。
何かで盛り上がっている群れが、私が現れたことでしん・・と静まりかえることの恐怖。
義実家がそうだとは言わないけれど、被害妄想でそんなことを考える。
どうにも居心地が悪いのは私だけではなく、あちらも私がいることでなんとなく雰囲気が悪くなるのではないかと思ってしまう。
もっと自然に、笑顔で、楽しくやれるような性質だったら良かった。
細かいことなど気にせずに、あっけらかんと出来る女性だったら良かった。


外はからりと晴れて、ピカピカのお天気。
ひと仕事ー頑張ろう。

























小さなカモ

頬を紅潮させながら帰宅した子。
おやつもそこそこに、今から公園に行くと言う。
誰かと約束したのかと聞くと、登校班メンバーの女の子達と遊ぶと。
正確に言えば、その子達が公園で遊ぶと話しているのを聞き、自分も行きたいとのことだった。
少し不安だったが、本人が行きたいと言っているし、行けば輪の中に自然と入れて登下校とは違ってうまく馴染めるきっかけになるかもしれないー
そう思い、注意点だけ言い聞かせて見送った。

しばらくしてチャイムの音ー


「ママ、皆お茶とかお菓子とか持って来てるよ。OOも持って行っていい?」


楽しそうな子の様子にすっかり嬉しくなり、ホイホイ水筒にお茶を注ぎ、それからジップロックに飴やチョコレート、グミなどのお菓子を交換が楽しめるようにどっさり入れた。
1時間くらい経過しただろうかー
ガチャガチャと戸を開ける音が聞こえた。
チャイムも鳴らなかったのだが、覗き穴を見ると子の髪飾りが見えた。


「OOなの?ちゃんとチャイム鳴らさないと分からないよー。」


そう言いながら玄関のドアを開けると、俯く子。
嫌な予感がしたが、それをなるべく表に出さないようにして部屋に迎え入れた。


「どうした?ジュースでも飲む?」


優しく声掛けすると、いきなり私に抱きついてしくしく泣き出した。
しばらく色々聞きたい気持ちをぐっとこらえて抱きしめてやり、頭を撫ででいた。



「何か言われちゃった?」


それに対し首を振る子ー


何を聞いても首を振るばかりで、私の胸に顔をうずめてしくしく泣いている。
切なくなり、つい子の話を聞く前に誘導質問をしてしまった。あくまでも私の中で勝手な妄想のー


「仲間外れにされたの?意地悪されたの?誰にも言わないからママだけには本当のこと教えて!」


それでも子はなかなか口を開いてはくれず、少し間を置いた方が良いかと思い、テレビを見せて落ち着かせてから風呂に入り湯船に浸かったタイミングでもう一度聞いてみた。
風呂の蒸気ですっかりリラックスした子は、やっと重い口を開いてくれた。



「あのね。皆で内緒話するの。それでね、Aちゃんのお家でシルバニアしに行こうって。OOは駄目って言われた。帰りなって。」



ーやっぱりなと思った。
そんなことだろうとも。
しかし、まだ知り合って間もないお宅にーしかも我が家には呼んでもない子のお宅に我が子を上がらせるのも非常識な気がしたし、それはそれで仕方がないことだと思えた。
それでも子にとっては、それまで遊んでくれていたのに急に自分だけ仲間外れにされた、訳も分からず悲しかったに違いない。


「そうか。でも今日ママとのお約束では公園で遊ぶだけって言ってたよね。公園以外は駄目だよって。OOはそのお約束を守れたんだからとっても偉いよ。」


そう言って頭を撫でた。
子はまたその時のことを思い出したらしく、メソメソしだしたので、ぎゅっと抱きしめてやった。
Aちゃん達が子においでよと誘っていたのなら、私の知らないところで子はお邪魔することになりまた別の意味で頭を悩ませたかもしれない。
でも、誘ってくれてもいいじゃないと子供相手にムカムカする気持ちも湧いた。そして、これがきっかけでハブる楽しさをおぼえる子がいたらどうしようと要らない心配までもがむくむく湧いた。
既に出来上がった仲良しグループに入ること、それは大人であっても子供であっても時間が掛かるし難しいものだ。
今日明日ですんなり溶け込める訳がない。


そう思いながらもー、子が持って行ったお菓子のジップロックの中がゴミだらけになっているのを見逃すことが出来なかった。
中には新品のハイチュウや伸びるグミがいくつか、小さなアーモンドチョコも10個ほど入っていたしペロペロキャンディーは人数よりも多い8個くらい入っていた。その他にもプチゼリーやラムネなども。
それらが全て食べられてゴミだけ。
残っていたのは子供が食べそうもない瓦せんべいだけだった。




「ねえ、これ全部食べちゃったの?」


「ううん、取られたの。」


「え?皆もお菓子を持って来たんじゃなかったの?」


「皆は少しだけだったからたくさん持って来てずるいって言われたの。」



「OOは食べなかったの?」


「うん、皆がずるいって言うからどうぞって言ったら全部取られちゃったの。」


「OOは誰かからお菓子貰ったの?」


「貰ってないよ。あげたけど。」


「自分のお菓子も食べなかったの?」



「うん・・・怒らないで。」



また問い詰めてしまった私の形相に子は怯え、泣きそうな顔になった。
詳細を聞くと、お菓子交換は行われず子のお菓子に皆が群がり全て取られたそうだ。
確かめもせずにたくさん持たせた私が悪いのだが、それでもやはり腑に落ちなかった。
お菓子は貰えるだけ貰って、後はハブるの?
まだ7歳にも満たない女の子達にイライラし、憤りを感じた。
そして子がいいカモになるのではないかーそう思い先行きの不安を感じて昨夜はうまく眠れなかった。



















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