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育児ノイローゼ

今朝もどんよりの天気。
隣のベランダの物干し竿には何もなく、それを確認してはほっとしている妙な朝。
引きこもりにお天気は憂鬱で、更にベビー服など目に入れば切なさも倍増。

しかし、夕飯のおかずに必要な豆腐が切れていて、子と先程買い物に出たのだが、その帰りにばったりエントランスでお隣さんと遭遇してしまった。
挨拶しないわけにはいかず、ポスト前で会釈をすると、


「あー、可愛い赤ちゃん。」

子がお隣さんのベビーカーを覗き込んだ。
私も何か言わなくてはと焦り、

「ご出産おめでとうございます。」

とお祝いの言葉を述べた。


「ありがとうございます。」

嬉しそうに、赤ちゃんを覗き込みながら笑みを浮かべるお隣さん。生後1ヶ月というところか?ふにゃふにゃで可愛らしく、1ヶ月だというのにもうぷくぷくしており二重あごが愛らしい。
無言になるのが怖くて、玄関前まで話題を考えた。


「女の子ですか?」


本当は洗濯物の色合いで分かっていたのだが、お隣さんが自ら話そうとしないので当たり障りのない質問をしてみた。また大抵ー男の子か女の子か分からない時はそう聞くようにしている。間違えたとして、女の子が男の子と間違われるよりもまだマシだと思うからだ。


「はい、でもこの子、ちょっと勘が強いみたいで・・夜中とかうるさかったらごめんなさい。ずっと泣いているんです。」


正直、夜中に何度かお隣の赤ちゃんの泣き声らしきものが聞こえたことがある。それが原因で目覚める程ではないが、気になる人は気にする騒音でもある。


「いいえ、全然。大丈夫ですよ。」

そう答えると、彼女はほっとしたような表情になった。
ついでに、


「母乳ですか?」


と聞いてみた。何気なくー
しばらく沈黙が続き、彼女の表情が強ばったように見えた。


「ミルクです・・母乳出ないんで・・」


ものすごく気まずい沈黙が流れたーが、そこはもう玄関前で、お互い再度会釈をしてそれぞれの部屋に入った。
こちらにとっては何気ない質問だったのだが、彼女には不快なものだったに違いない。子が大きくなり、この手の質問は傷つく人もいるということをすっかり忘れていた。しまったーと思った時にはもう遅かった。
子とおやつを食べながらも、先の出来事を引きずり悶々としていた。
窓を開けていたのだが、赤ちゃんの泣き声が聞こえる。
いつもなら憂鬱になるその声に、なんとなく彼女のことが気がかりで大丈夫かなーなんて思っていた矢先だった。


「いい加減にしてよ!もうやだ!!!ウルサイ!!」


ヒステリックな女性特有の甲高い声が聞こえた。
一瞬赤ちゃんの声が静まり、少しすると更に大きな泣き声が聞こえて来た。

「ママ、赤ちゃん泣いてるね。」

子も心配そうに窓の方を見遣る。私もそわそわし、出窓に近づいてその声を聞く。
赤ちゃんの泣き声に混じり、何やら怒りと悲しみの混じった言葉にならない声が聞こえる。何を言っているかまで聞き取ることは出来なかったが、とにかくノイローゼの一歩手前という感じだった。

何かー力になれたら。
そう思うのと同時に、それまで嫉妬心の塊だった心はすっかり解け、妙な親近感さえわいた。
隣の芝生は青くないー青く見えただけ。その事実に胸が高鳴り、肌寒い日だというのに出窓全開で聞き耳を立てる私がいる。































引き取り訓練

小雨降る中、引き取り訓練に行って来た。
園時代ほどではないが、やはり学校に出向くのは憂鬱で、素敵ママも出産したてということもあり、近所のママ友に引き取りを頼んでいたようだった。
彼女の携帯さえ知っていれば手助け出来るのかもしれないーしかし彼女にはママ友がたくさんおり、私の助けなど不要なのだ。

学校行事でいつも悩むのは、一番早くに到着するか遅くにするか。早ければさっさと用事を済ませて下校出来るし、遅ければ人もまばらで疎外感も感じずに済む。
我ながらとてもくだらないことに気を揉んでいると思う。しかし私にとっては重大なこと。

この日は遅くに到着したというのに教室前に保護者はいないものの、昇降口付近で井戸端会議をしている保護者達がいた。知らない顔ならば大して気にならないが、どれも知った顔。
スネオママらのグループや、AちゃんママやDちゃんママのグループ、どちらも気がつかない振りをして通り過ぎたい思いだったが目の前を通るー
だったらせめて最近交流のあるDちゃんママらのグループに挨拶し、スネオママらには気が付かなかったということにしたい。
そんなくだらないことを考えていたところ、子の方が先にDちゃんらの方に向かって声を掛けた。

「Dちゃん!」

「あ、OOちゃん。」

「こんにちは。」

前方のスネオママらの群れを気にしながら挨拶をする。その輪には、まいこちゃんママや珍しく孤高の人も見えた。一際大きな群れだー

Dちゃんママらは私には分からない内輪話をしているようで、その輪に入るつもりは勿論ない。ただスネオママらに気がつかない振りをしたいがための口実作り。
子は私の思惑通り、Dちゃんに注意が行ったためスネオママらの群れの中にいるまいこちゃんらに気がつかなかった。
ただ、子がAちゃんやDちゃんらと遊び始めようとしたので、それを引き止めるのが一苦労。お菓子で釣って帰宅させた。
素敵ママがその輪にいれば、うまいこと彼女らの群れに入り話せたかもしれないが、私の対人スキルで素敵ママ抜きの輪に入るのは至難の業、無理はしないー卒園と共に心に誓ったママ付き合い。

校門に向かい、背中に母親達の楽しげな笑い声や子供達の騒ぐ声を聞きながら、やっぱり寂しさが残る。


「あーあ、みんなと遊びたかった。今日Dちゃんの家でAちゃん達遊ぶんだって。いいな。まだDちゃんの家行ったことないよ。OOの家ばっかり来るのにね。」

子も釈然としない気持ちを抱えていたのだろう、そんなことをぽつりと言い出した。
防災頭巾をかぶった後ろ姿がなんだか切なく見えた。ポツンという擬音が聞こえてきそうなー


「そうだね、今度OOからDちゃんのママに頼んでみな。ママからは言えないからさ。」

「なんでママから言えないの?」

その答えにうまい言葉が見つからず、なんとなく話を反らした。
子には帰り道のスーパーで好きな菓子をひとつ選ばせた。
しかし子は何でもいいと興味なさそうに言い、菓子を選ぶわけでもなく、ただつまらなそうに私の横でぶらぶらするばかり。菓子よりも友達と遊ぶ時間が欲しいのだ。それは痛いほどよく分かるから辛かった。
早く成長し、子供同士で遊ぶ約束が出来るようになって欲しいと願いながら、私も大して食べたくもないスナック菓子を買い物かごに放り込んだ。



























娘は鏡

「お母さん、がっかりよ。あんたもっと独身の頃はお洒落だったじゃない。」


夏休み中に会った母は、私の身なりを見て開口一番そう言った。
恐らくー、従姉妹のお見舞いに行ってからというものの、彼女の結婚は成功ー娘は失敗、要するに自分の反対を押し切って結婚した私に言わせたいのだ。この結婚は失敗だったと。

従姉妹は入院中も綺麗だった。あのセレブな病室がそう見えたこともあるが、かなり高価そうなパジャマを着ていたしメイクもうっすらしていた。
また、出産前からお洒落に気を配っていた彼女、ママになってもそれは変わらないだろう。


「すっかり専業主婦のおばさんになっちゃって。働いてる時は綺麗にしてたし可愛かった。お母さん、あんたと歩くの恥ずかしくなっちゃったわ。」


カチンーと来た。
私が思う通りに動かないとカチンと来るような言葉を発するのが母。昔からそうだ。
そして、母の言う通り動き、それが例え私の実力で成功したとしても、

「ほらね、お母さんの言った通りになった。お母さんの言う通りにしていれば間違いないのよ。」


結婚後は、母からの過干渉から逃れ(今度は夫からの干渉がそれなりにあるが)、自由に泳いでいると思っているのだろう、だからこそ、失敗したー後悔しているというマイナスの発言が欲しいのだ。
娘からそれが一向に出て来ないことに不満さえおぼえているのだろう。それが分かるから母に愚痴は言えない。
そして、愚痴を聞けないので唯一指摘出来る容姿についてわざとあれこれ口を挟むのだ。

「化粧品も安いの使ってるんじゃないの?顔色悪いわよ。安物使ってると安っぽい女になるわよ。本当あんた痩せこけて。家にいる時はもっとふっくらしてて可愛かったのに。ちゃんとしたもん食べてるの?」


次から次へと続く私への容姿の批判。
母だって年老いたー
自分はいつまでも若々しいと思っているだろうが、白髪は増えたしシミも増えた。私が勧めたサプリで数キロ痩せたと喜んでいても、元は70キロあるのだからまだまだ太っていると言っていい。
第一ー、独身の頃はカードを使って借金して、あれこれ好き放題にブランド物の服やバッグを買いあさっていたのだ。母は知らないが、その頃の私は表向きは綺麗だったかもしれないが中身はボロボロだった。
金メッキが剥がれ、そこを救ってくれたのが夫でもある。
夫の欠点は多くあるし、多少モラハラの気もあるかもしれない。それでもー、あの時救ってくれたのは夫だったし、結婚費用から何から何まで、弟の障害のことも含め理解した上で結婚してくれたのだ。
だから、この結婚は失敗だったなどとは言いたくはないし、これからも母に言うつもりもない。


母は、また新しいゴールドのイヤリングをつけていた。服も勿論新しい。父からのプレゼントらしい。父は一体どこから金を得ているのか?母は家計を握っており、父は自分の小遣いのみでやりくりしているはずだ。
そして、母は常に金がないと騒いでいるにもかかわらず、そうやって無駄使いしている。


「お父さんとね、秋に温泉行くの。」


旅館名を聞けば、誰もが知ってる有名人御用達の宿。1泊何万もするところ。
私もカチンと来て、その日はへそくりから1万円程小遣いを渡そうとしたがやめにしてお茶代だけをご馳走した。
セコセコ内職して、親に小遣いを与えるのもバカバカしくなった。
その金で、自分の身なりを整えれば、母が希望する「綺麗で可愛い娘」に戻れるのだから。































新学期

新学期ー
子は久しぶりのランドセルにワクワクした重みを感じながら登校して行ったようだ。

この数日は宿題のラストスパートだったり、盆に行きそびれていた夫の実家に遊びに行ったりとなんだかんだ忙しくしていた。
絵日記は、大きなイベントも特になく殆どを母子で過ごしたこともあり、何を書かせようか困り果てていたが、子は七五三での前撮りでの出来事を書いていたようだ。

夫と子を玄関先で見送ると、どっと疲れが出た。
しばらく朝の情報番組を観ながら、コーヒー片手にぼーっとしていた。

夏休みの宿題は、その他にも色々あり、特に自由研究は自分自身が子供時代苦手としていたこともあり、延ばし延ばしになっていた。
最終週でやっつけたのだが、情けないことにネットで検索。

「夏休み・宿題・自由研究・工作」なんていうワードでヒットした物を、画像検索して子に見せて、子が作りたいという物を作ることにしようとした。
しかし、廃材を使って何かないかーそう思って色々探したが、子が作りたいと言ったものは少々面倒な万華鏡だったりモザイクタイルだったり。材料もわざわざ買い揃えなくてはならないし、何より面倒。
結局、女の子だし料理にした。
卵で作る料理ーゆで卵やスクランブルエッグ、目玉焼きや玉子焼きやオムレツ、卵掛け御飯などなど、卵とちょっとした調味料だけで作るー子供だけで完成させられる料理(料理と呼べないものもあるかもしれないが)を作り、写真を撮り、レシピを書かせ、食べた感想を書く一連の作業を模造紙上でさせたら、それなりの物が出来上がった。
昼ご飯を作る手間も省けるし、子と時間を持て余すこともなくなるしで一石二鳥の宿題となった。


子とほぼ2人の夏休みは楽しかったが、それなりに疲れたのだろう。
テレビを観ながらうたた寝してしまった。
食器洗いも掃除もせずー雨だからと言い訳をして洗濯もしていない。
また同じ日常が始まるのだという安堵と少しの寂しさ。季節が変わろうとしているせいもあるのかもしれない。
義実家では、相変わらず生き生きとした次女の話を聞かされ、なんだか落ち込んだ。
バイトがよほど楽しいのだろう、若者達に混じって働いているせいか若々しさに磨きがかかっていた。ネイルも夏仕様でキラキラしており、指先までぬかりない。
夏休み中、次女の子供達は殆ど義実家に預けられていたらしい。その間、次女はバイトー飲み会、ママ友とショッピングや地元の幼馴染とカラオケなど有意義に過ごし、ご主人が盆休みに北海道旅行に家族で行ったりと楽しそうだった。
私達も土産にカニとお菓子をいただいた。

長女は子供の受験で忙しいらしく、有名校の偏差値の話ばかり。夏休みだというのに子供は塾三昧らしく、塾代も半端なさそうだ。
毎年行く海外旅行は今年はパスーその代わりに軽井沢で何泊かリフレッシュしたとのことだった。こちらからも土産にジャムやドレッシングをいただいた。

三女は独身貴族なだけあって、この秋に少し遅れた夏休みを取るそうだ。彼氏とハワイに行くらしく、今から楽しみにしているようだった。

我が家だけ、どこにも行かない夏休みだった。
家族旅行ー贅沢は言わないから近場でもいい、温泉でもいい。安い宿でいいから行きたかった。しかし七五三の前撮りでの出費があったこともあり、夫にねだることも出来なかった。
来年はどこか行けたらー子はあっと言う間に大きくなる。成長したらこちらから頼んでも一緒に旅行なんてついてきてくれるかどうか。
今のうち、喜んでついてきてくれるうちに思い出を作っておきたいと思う。


























雑誌の付録

雑誌の付録ブーム、最近は下火になってきたけれど、好きなブランドのポーチだとかバッグなどがおまけでついている時、なんとなくお得感と通常販売されているものと違い一ヶ月で販売終了ということもあり、つい慌てて買い込んでしまう癖がある。
勿論ほいほい雑誌を買うほど金に余裕がある訳でもない。普段は図書館で借りることが多い。しかし付録にときめいてついつい手が出てしまうことがあるのだ。
付録雑誌にはまったのにはあるきっかけがある。何気なく購入した雑誌にトートバッグがついており、それが爆発的に売れて本屋では売り切れ続出、オークションで何倍もの価格で売られているのを知った時からだ。
実際私は売りには出していないのだが、それでもオークションでかなりの高値がつくバッグー例えそれが付録であってもそれを所有していることに満足感をおぼえたものだ。
つい最近も付録目当ての雑誌を購入してしまった。
付録が豪華だと、中身はペラペラ。特に期待していなかったのだけれど、それでも広告ばかりが目立つ内容のなさにがっかりした。
しかし、付録には満足だ。
今の時期重宝する保冷バッグだったのだが、私同様一目惚れした人が多かったのかその本屋ではラス1だった。これは来年の夏用に使うつもりだ。
付録は街中でかぶりまくる事が多く、早速使うのが何となく恥ずかしい。なので、すぐに使わず数ヶ月温めてから使うことが多い。忘れた頃に使うと付録だとばれる確率が低いような気がする。
誰も私の持ち物なんてチェックしていないだろうけれど、まだ店頭に並ぶ付録写真のついた雑誌をその付録片手に見てしまうことの気まずさったらない。

付録付きの読みたくもない雑誌を10冊買ったとしてー、10個のポーチやバッグが手元に残る。約1万円弱ーそれ程の金額を出せば好みの物を一つ購入した方が良いのかもと思うが、数多くその日の気分で気軽に使える付録バッグが私には合っている気がする。
安物買いの銭失いだと思い買うのを我慢していた時期もあったけれど、最近の付録は見本が展示されており、その素材や大きさや使い勝手などを確認してから雑誌を購入することが出来るので失敗は少ない。
見本が出る前に購入した時は、写真で見るよりやけにペラペラだったり、色の濃淡が思っていたのと違っていたり、また臭かったりなど何かと問題があったけれど。
しかし先日、新しく付録バッグをおろした時の夫からの一言ー



「またバッグ?買ったの?」


「うん、でも雑誌の付録だから。」


「似たようなのたくさん持ってるな。エコバッグ?ペラいな。」


「・・・・」


イラッとしたけれどそれに返さずスルーした。
夫は何万もするバッグをいくつも持っている。勿論通勤鞄は革とくれば有名店のものだし、普段使いのリュックやセカンドバッグ、またウエストポーチなども男性ファッション誌に掲載されているお洒落ブランドのもの。夫は付録なんて買う必要ないだろうー好きに給料で自分の欲しいものを買えるのだからー
私もライター内職の金で、うまくいった月には高価な物をポチってしまいたい衝動に幾度となく駆られる。5万前後稼げた時も3万もするポシェットをポチりそうになりぐっと堪えた。
で、結局その物欲を満たすべくプチプラ通販の服を買うに留まった。バッグはいつか金を貯めて本当に欲しいものを手に入れたいと思っている。
それまでは付録で我慢だ。

ー専業主婦だしどこにも出掛けることもないし、エコバッグで十分!
そう自分に言い聞かせている。
































前撮り

念願の七五三前撮りに、夫の代休を使って行った。
夏休みなのと平日だということで、恐らくスタジオは空いているだろうと思っていたが、以外と混み合っていた。
前撮り特典目当ての客が多いのだろう、待合室に入ると思いの他家族連れが多く驚いた。
予約時間になり、衣装部屋に通された。
予め衣装は和装のみと夫と約束していたので、ドレスを試着している親子に羨ましさをおぼえたが、ぐっと我慢をし子と着物のカタログを閲覧した。
夫も子もブルーがいいと言うので、すぐに試着のものは絞られ、促されるまま丈合わせなどをし鏡と合わせた。
鮮やかなブルー、エメラルドグリーンに近いその青は試着させてみると、子に良く似合っていた。
あれ程渋っていた夫も、子に着物を合わせると目尻が下がる。
衣装が決まり、ヘアメイク兼着替え室に入る。男性入室禁止とのことで、夫にはロビーで待ってもらい、私と子だけ部屋に入った。
ヘアメイクはプロの意見に任せた。今風のボリュームのあるアップスタイルになるかと思ったが、しっとりとした大人らしいまとめ髪を勧められ、それならとその意見に従った。
子の髪はくるくるとカーラーが巻かれ、プロの手でいとも簡単に素敵なアップスタイルが出来上がった。化粧は私が子供時代の七五三メイクと違い、ナチュラルメイク。昔は真っ白に顔面ぬりたくられて、それはもうお化けのようだと思った子供心だった。あれはあれで舞妓さんのようで今思うと良かったのだろうけれど。

ヘアメイクが済むと、着付けをして貰い衣裳室を出た。夫がそわそわしながらロビーで待っており、子がそこへ静静と歩いて行く。
夫は子を見遣ると、なんだか花嫁の父親のようなぐっとした表情をし、夫でもこんな表情をするのだなとなんだか胸が暖かくなった。


「OO、可愛いよ。」


夫は嬉しそうにそう言うと、スマホでパシャパシャ子の晴れ姿を撮った。それから係員に案内され、スタジオ内に通され撮影が始まった。
セット内に通されると、子は少し硬い表情になり、いつも私がカメラを向けるようなにこにこ笑顔は消えてしまった。
しかし、その緊張感ー
あえて他人が撮るその張り詰めたような、子とカメラマンの間にある何とも言えない距離感が絶妙で、私としては満足のいくショットが撮れた。
決して満面の笑顔ではないけれど、しかしそれが逆に「きちんとした」感じに思えて良かったのだ。

幾つものセットで幾つものポーズを撮影、勿論家族写真も。
こちらから頼まずとも、何十枚、いやー100枚以上のカットだろうか。
しんーと静まりかえったセットの中、シャッターの降りる音とスタッフの掛け声。
私も撮られ慣れていないこともあって、顔が多少こわばってしまった。
撮影が済むと、子はヘアメイクを落とし、また着物を脱いで楽な格好に戻り、家族で写したデータの閲覧と選択をした。
撮影料が3000円、1カット購入で一番小さいサイズで4000円、大きなサイズで6000円、それにデータが欲しいとなるとプラス3000円。つまりは1カット、一番小さいサイズでデータも欲しいとすると、最低でも1万は掛かる計算だ。
色々なセットで撮ったこともあり、また子の緊張した顔や笑顔、多少慣れて来てリラックスした表情などどれも欲しくなり、夫に交渉してみた。


「データ、要るか?」

「向こうのご両親にも焼き増ししてアルバムにして渡そうかと思うの。節目だし、孫の晴れ舞台を見て貰いたいでしょう?それにーあなたのお義姉さん達からも今まで節目の写真台紙貰ってるしー返さないと。」


それまで、姪っ子達のお宮参りや七五三ーまた入園式や入学式などの写真は台紙にしていただいている。正直自分の子供以外の写真館で写した台紙付きの写真なんて家に置いてあったところで見返しはしないのだがー。しかし、夫からお祝いを貰った手前、お返しと共に渡すのがあちらの流儀なのだろう。
もう何冊もたまっており、私達家族のアルバムの横にひっそり並べ置いてある。
私の意見に珍しく心動かされた夫は、それならーとデータ購入も視野に入れた上で必要最低限のカット数を提示した。
つまりは、子の2カットと家族の1カット。家族の分はデータ無しのキャビネのみの購入だ。
会計になり、前にいた家族が10万も払っているのを目にし驚いた。出すところは出すのだな、と思った。
我が家は2万ちょっとで十分満足のいく撮影が出来て私も嬉しかった。夫を説得出来たことー、そして子に節目をきちんと残してやれたことー、家族らしい写真がまた1枚増えたこと。

出来上がりは半月後になるが、今から楽しみでそわそわしている。
承諾してくれた夫には感謝の気持ちだ。いつも不満だらけで夫を見る自分も、案外現金なものだなと思った。














































託児所扱い?

お盆中だというのに、Dちゃん一家は帰省しないらしく連日我が家に遊びに来るようになった。
こちらから誘った手前、遊びに来れば受け入れているのだけれど、Dちゃんママの「次回はうちへ遊びに」というお誘いはまだ実現されていない。
社交辞令なのか?誘う気持ちがないのなら期待を持たせるようなことはやめて欲しい。念のため子にそういった話があったことは伝えていないのだが、そろそろ子もDちゃん宅に遊びに行きたくなったようで、自らDちゃんに頼んでいた。


「ねえ、今度はDちゃんちに遊びに行ってもいい?」

「うん、でもママがいいって言わないと駄目だし聞いてみる。」


私もつい、Dちゃんに、

「OOも自分のおもちゃばかりで遊ぶの飽きちゃったみたいなんだ。Dちゃんちのおもちゃで遊びたいって。」


そんなやり取りをしたものだから、てっきり今度こそお誘いがあるかと思ったが、結局昨日もピンポンとチャイムが鳴り、玄関を開けるとそこにはDちゃん三姉妹が仲良く並んでいた。
もう三姉妹セットで遊びに来るのが当たり前のようになっている。しかしいくら上の子がいたとしてもまだ1年生、下の子達を連れて外を歩かせていて親は心配ではないのだろうか?
一応到着時間前後にあるメール、

「こんにちは。今日もDがOOちゃんと遊びたいと出掛けて行きました。妹達もお姉ちゃんが遊びに行くのにお留守番は嫌なようなのでついて行ってしまいました。もし都合が悪ければ断ってくださって構いません。よろしくお願いします。」


断ってもいいのだけれど、やはりこの暑い中我が家まで歩いて来たと言えば、お茶の一杯でも飲んで行きなさいとなる。水筒すら持って来ていないようだし、また子も友達が遊びに来れば、何かしら用事のない限り家に上げたがる。


Dちゃんママは、あくまでも子供達が勝手に行きたがっていると言うニュアンスだが、果たしてそうだろうか?普通、連日我が子がよその家に押しかけるようだったら、たしなめるかもしくは今度は自分の家に招くのが普通の神経ではないだろうか?最初は礼儀正しい感じの良いママさんだと思っていたのだが、最近では少し図々しい空気の読めない人なのではないかという疑念がわいてきた。
しかし、子が折角生き生きと友達と遊び、私と2人きりだと見せない笑顔を見てしまうと、もう何も言えなくなる。正直お菓子代もかさむ、一番下の子は相変わらずオムツを外しており、いつ漏らしはしないかとハラハラさせられる。
部屋はすぐに散らかって、Dちゃんはきちんと片づけもしてくれるしお菓子の食べこぼしなどもないのだが、一番下の子は散らかし放題だしお菓子をあちこちに食べ散らかす。
せめてーDちゃんだけ預かるのならこんなにストレスもたまらないのだけど。
真ん中の子は少々困り者で、勝手に冷蔵庫を開けたりする。本人は悪気はなく、お手伝い感覚なのがまた困る。
注意するにも、やってあげたよーと言わんばかりにおかわりのお茶を冷蔵庫から取り出すので、駄目だよと言い聞かせるタイミングが分からず今のところ見て見ない振りで、ますますストレスが溜まる。

そして、Dちゃんは子がDちゃんのおもちゃで遊びたいと言ったのを覚えていたのだろう、DSを持って来た。
我が家にはないDSに、子は目を輝かす。
しかし、Dちゃんは持って来たものの、子に一向に貸してくれる気配がないー
子も最初こそ、貸して貸してとDちゃんに催促していたが、しばらくして諦めたのか、結局下の子達とごっこ遊びを始めてしまった。
しかし、真ん中の子もしばらくすると自分のリュックからDSを取り出し、遊び始めてしまった。
結局子は、まだおむつ外れも出来ていない一番下の子と遊ぶ羽目になり、しかしそれも途中でワガママな末っ子に辟易したのか、DSをしている二人に近づき、再度また貸して欲しいと言う。
子が何度もしつこくDちゃんに頼むので、一度は貸して貰えたようだがすぐに返却を求められた。

「ねえ、おやつ食べたい。」

真ん中の子が言う。
最初はお菓子持参だった子供達も、二度目から手ぶらで遊びに来るようになり、最初は私も子に友達が出来たのだと喜んでどっさりおやつを出していたが、それが何度も続くと家計が痛い。子供のおやつは子供費として計上しており、食費とは別だ。
そしてそのおやつ代は一人っ子である子の分のみだから、一ヶ月あたりの予算は微々たるもの。足が出た分は私の小遣いから出す羽目になる。
以前、夫は「おやつなどは各自家庭から持ち込むべき」というような発言をしていたし、いくら子の為といってもおやつ代に月数千円も大盤振る舞いをしているとバレたら、色々言われるに違いない。

世間は盆休みー
Dちゃん宅も、ご主人はお休みのようだ。


「パパと遊ばないの?」

こんな問いかけに、

「パパ、お仕事で疲れてるんだって。でも明日は遊園地のプールに連れてってくれるから。だから明日は遊べないの、ごめんね。」

「いいなぁ。」

子が羨ましそうに言う。
我が家はDちゃん宅にとって、ひまつぶしの託児所といったところだろうか?
釈然としない思いを抱えながらも、ビスケットと麦茶といういつもより質素なお菓子を出すことで、子供相手に小さな抵抗を試みるのだった。





































専業主婦の行く末

専業主婦という仕事ー
それは慎ましやかで平凡な日々の中にあるー
毎日のルーティン作業をこなし、心此処にあらずとも体は自然と動いていつの間に一日が終わることもしばしば。

くたびれた自分の下着を干しながら、思う。
ドラマの中の主婦、彼女達のプロローグはいつでも私と同じ。
疲れていて、明日も明後日も、そしてずっと先の何年か後の自分をたやすく想像出来て、きっと寸分違わずそれ通りになると疑わない。
しかし実際は、ドラマの中の彼女達にいつでも先を越されるー彼女達には予想外の展開が与えられ、そして蛹は蝶となり、空に向かって羽ばたくのだ。

このまま家に居続けるということは、それなりのリスクを背負うことになる。
夫にもしも何かがあった場合ーそうでなくとも、夫から三行半を突きつけられた時に私は泣いてすがるのだろうか。
専業主婦に対して厳しい世の中になって来た。特に子供がいなかったり少なかったりする女性に対して社会は冷たい。
それぞれに事情があってそうせざるを得なくても、働けと言わんばかりに税金はじりじり上がり、私達の首を絞め不安を煽る。
甘いと言われるかもしれないが、その気になれば仕事はいくらでもあるとタカをくくっている。
資格がなくても、若くなくても、選ばなければ何かしらあるのだ。

今朝、ゴミ捨てをしに外に出ると、団地の清掃員である男性に出会い小さく会釈した。
突然、何かに向かって彼は怒鳴りつけた。一瞬自分に対してなのかと思い、ビクっとした。

「ふざけんなよ!!殺してやろうか!!!」

普段寡黙で何を考えているか分からない人間が、突然このような台詞を大声で叫ぶと身構える。
しかし、それは私に向かってではなく、ゴミ捨て場を荒らしていたカラスに向かってだった。
彼は独り身だろうか。
黙々と日々過ごしているのは私と変わらないような気がする。徹底的に人との関わりを避けているように思う。現に、同じ清掃員の仲間と外れたところで作業を進めており、何度か挨拶するもぶっきらぼうに返される。他の清掃員は割と愛想の良い人達なので彼のその態度はひどく目立った。
毎日のルーティン、しかし私と彼の違うところは、私は少なくとも情がある人間に対して身の回りの世話をし、料理を作り掃除をし洗濯をするのに対し、彼は見ず知らずの顔も知らない人々の出すゴミを片付けるということ。
そして私の方は対価がないのに対し、彼の方は賃金という対価があるということ。
それは何程ストレスの溜まる仕事なのか、それとも割り切って淡々とこなしているのか?
そのストレスを、同じ職場の仲間達と雑談して解消していないとするならば、どうやって解消しているのか?彼に聞いてみたい。そこに何かしらのヒントが隠されているような気がする。

仕事をするということ、集団に属するということ。一人で仕事をするにはそれなりの覚悟と能力が必要だ。凡人であれば、やはりどこかしらに属し、気の進まないことでも積極的に取り組み、上司に愛想笑いをし、同僚や客から受けるストレスも笑って受け流し、その対価として報酬を得る。
私は、能力はないけれど、凡人として働く為に必要な技量は持ち合わせていると自負している。だから、この就職難の中既に何年ものブランクを抱えていながらも切羽詰ったものを感じずにいられるのかもしれない。

ただ、専業主婦としての行く末に漠然とした不安はいつでも持ち合わせている。
この不安を解消するには、働けば良いのかーいやそうでもない。働いても結局のところは不安感は拭えない。いつクビになるか、いつ減給するか、何歳まで雇ってもらえるのかー
どこにいても何をしていても、自分の性格・性質からは逃れられない。

子供がいる主婦には大義名分があるーそれは子育てという大きな仕事。
しかし、そうであっても専業主婦には生産性がないと嘆く人々も多い。対して出産から育児という一人の人間を産み育てることこそ何者にも代え難い生産性だと豪語する人々もいる。
私はこの数年後者の意見に支えられて頑張って来れた。
今この時期にしか出来ないことー、私にしか出来ないことー、社会性を失っても自由を奪われても。後悔することだって勿論あった。それが私の性格だ。おそらく兼業主婦であったとしても後悔はしていただろう。
おかえりと言ってあげられないー
満足なご飯を作ってあげられないー
はじめてのOOをこの目で見てあげることが出来ないー
子の熱が出た時、まず心配より職場へ欠席の連絡をすることに注意を向けてしまうー
想像するだけでいくつも後悔が出てくるのだから、実際働くようになったら更にいくつも思うところがあるかもしれない。

しかし専業主婦をこのまま続けて一番不安なのは、子が成長した時私の背中を見てどう思うか?であることに最近気が付いた。
思春期を迎えた子に、「母さんみたいに何も取り柄がない世間知らずな人間にはなりたくない」と思われる恐怖ー
夫にはいくら馬鹿にされても傷付かない。慣れてしまったということもあるけれど。
しかし、子に同じように思われたらと思うと胸がきゅっと苦しくなる。
私が今、実母を思うようにー何かしら負の感情を私に対して子が持つことは十分有りうる。
そうならない為に何をどうしていけば良いのか、今模索中でいる。


































嬉しい楽しい切ない

引越し前のママ友と会った。

子とお宅にお邪魔したのだが、今回は旦那さんもおらず気楽な時間。手土産に子供達へキャップと可愛い髪飾りのプレゼントとデパ地下で買ったゼリーやケーキなどのスイーツを。
とても喜んでくれて私も嬉しかった。


「久しぶりだよね、全然会えてなかったし。OOちゃんも小学校慣れた?」


「うん、お友達も出来たよ。Dちゃんって子。お家にも遊びに来るよ!」


子は嬉しそうに言う。
友人はそれを聞いてにっこり笑い、楽しそうで何よりだねと私に目配せする。
子供同士は異性でもあり久しぶりの再開にも拘らず、楽しそうに子ども部屋へ走って行った。友人はてきぱきと子供達へジュースや菓子を用意し部屋に運ぶと、私をダイニングテーブルからリビングのローテーブルとソファー席へ促した。


「美味しそうなケーキ、ありがとうね。」


素敵な茶器セットと共に土産のケーキが運ばれて来る。


「可愛いコースターだね。」

「え?嬉しい。実はハンドメイド。」

「え、自分で作ったの?」

「うん、これも。」

そう言いながら、可愛らしいストライプ模様の皿を指す。それはポーラセーツという技法で、皿やカップなどに好きな模様を転写させ、自分好みの世界にひとつだけしかない茶器を作れるというもの。


「はい、これ良かったら使って。」


彼女から、その技法で作ったというマグカップを貰った。箱を開けてみると、私のイニシャルとミントグリーンとピンクのストライプの入ったマグ。可愛くてまるで売り物のようで感激した。

「わー、すごい!可愛い。ありがとう!早速帰ったらコーヒー淹れて飲むね。」

「喜んで貰えて嬉しいよ。」


その後は、それぞれの近況や彼女のご主人のちょっとした愚痴や面白い話ーそれからお互い上の子の小学校生活のあれこれを話したりと久しぶりに楽しい時間を過ごした。


しかしー、少しするとその楽しさも切なさに変わった。
小学校はどこもそうなのだろうーどちらかといえばドライな関係性を持つ保護者が多く、例にも漏れず彼女のところもそうなのだが、だからこそ卒園したというのに園時代のママ友関係はぐっと密になっているようだった。
彼女はハンドメイド部という部活を立ち上げたとかで、ポーラセーツも元はと言えばどこかの教室で習って講師レベルになったママ友が主催し、月に数回材料費のみのサービスで他のママ友らに教えているらしい。
私の友人はハンドメイド部の部長兼ポーチやブローチなどの雑貨をやはり月数回教え、その他にもパンブローチというものやコサージュ教室、ビーズアクセサリーなど、人に教えられるレベルのママ友らが集まり教室を主催する。
ある程度部員がスキルを上げたところで、それをネットショップで販売し利益にする。その利益を部の運営費用に充てるのだそうだ。


「正直最初は自分の制作で手一杯だったんだけどね。そんな話を友達にしてたら、同じ悩みを持ってる子が出してくれたアイデアでーなら部活を作ろうって。その子がポーラセーツの子なんだけどね。で、部員を集めたら結構な数集まって、でも集まりはゆるいの。来れる日に来れる人が来るって感じだから、25人のうちいつも入れ替わり立ち替わり8人前後が集まって制作するって感じかな。
皆器用だから、最初は生徒って感じだったのに今では即戦力になってて、今度ちょっとした期間限定のお店を場所借りて開くことになったの。」

そう言いながら、手作りのチラシを渡された。
おそらくこれも誰かの手作りなのだろうー消しゴムはんこが押されたそのチラシは、学校バザーのレベルを超えた、プロの集団が開く店のチラシのようだった。


「部員には元グラフィックデザイナーだとか美術の先生だった子もいるんだ。秋なんだけど、来られそうだったら是非お友達と遊びに来て。」

彼女に悪気はないのだがー、心の奥がチクンとした。
とても充実している、行動力のあるポジティブな彼女が眩しすぎた。そして、「お友達と遊びに来て」という台詞に、私と彼女との間に1本の線が引かれて、向こう側に彼女とそのママ友達ーそしてこちら側にポツンと私一人という何とも言えない構図が頭に浮かび、1対1の付き合いだったはずの彼女との間にとてつもない距離が出来た気がして、鼻の奥がツーンとしたのを誤魔化す為にトイレに立った。

何気ない言葉ー彼女は悪くない。私の為に手作りでマグカップを作ってくれるような暖かい心の持ち主だ。だからきっと彼女の回りには人が集まるのだろう。そしてきっと取り巻く人々も心が良いに違いない。
しかし、もし私も引っ越さなければーきっと一緒にハンドメイド部の部員として和気あいあいとたくさんのママ友らと楽しく過ごしていたのだな、と思うと引っ越したことが悔やまれた。
所詮それが彼女の力を借りてだったしてもー



トイレから戻ると、彼女は誰かと電話をしている最中だった。それも英語で。
何を話しているのかはちんぷんかんぷんだったが、通話が終わると私に一言謝り、

「ごめんね、実は今英語習ってて。しばらくしてなかったら勘が鈍ってさ。週1なんだけどね、そこで出来た友達。」

帰国子女だったこともある彼女は、いずれ自宅で英会話教室を開きたいと言っていた。そしてその準備をもう始めているのだ。
数年前までは、まだ生まれたての赤ん坊をベビーカーに乗せ、毎日支援センターや公園に通いくだらない話をするだけの呑気な専業主婦仲間だったというのにー
彼女は確実に一歩ーいや数歩先を歩いている。


その日も楽しかった。ポジティブで暖かくて、ちょっと自信満々なところはあるけれどそれも彼女だからこそ鼻につかないし嫌ではない。
ただ、自分の世界と比較すると華やか過ぎて引いてしまう。そしてずどんと落ち込む。

子は久しぶりに会えた赤ちゃん時代のお友達と思う存分、私のような邪気のない心で遊べたようだった。
大人はーいちいち他人と比較して勝手に落ちたり上がったりする。落ちっぱなしの私がいずれ上がることが出来る日は来るのだろうか。

結局その日は予定よりも長居してしまい、晩御飯はカレーになった。彼女と会った日はいつの晩御飯もカレーのような気がした。



































 











余計な一言

受け取る側によって、その一言が有益だったり余計だったりするものでー
先日、家族でショッピングモール内のイベントを見に行った際あった出来事。
観覧席に座り、舞台で行われるプログラムとプログラムの間の小休憩の際、夫が私に向かって前方を指差した。

「おい、あそこにいるのって同じ幼稚園だったお母さん達じゃないの?この間俺、運動会でちょっと話したー」

ギクリとし、そちらを見るとボスママ集団だった。
その日、夫は代休だったので平日。子供達は夏休みということでおそらくママ友同士でこのイベントに参加したのだろう。キッズスペースにはなるほど見慣れた子供達が舞台前で騒いでいるようだった。


「挨拶しに行った方がいいんじゃなの?」

「・・・」


余計な一言。
しかし、全うな人間が聞いたら当たり前の一言、彼女らと親しければ嬉しい一言。
そして偏屈でママ友もおらず人付き合いが苦手な私には、それは余計な一言に他ならなかった。
更に、夫は子に向かっても言う。


「OO、あそこにいるのってお友達のママ達だろう?」

「え、どこー?あ、うん!そうだよ!ママー!!みんないるよ、行こうよ~」


どこかに逃げ出したい心境だった。しかしそれを夫も子も許してくれる訳がなく、その輪に私が行くのが当たり前と思って待つ視線と沈黙。


「な?そうだろ、やっぱり。俺のことはいいからOOとあっち行ってやれよ。また終わったら携帯で連絡くれればいいし。」

そう言って私が向こう側に行くのを促す。必死にそれを断る口実を頭の中でフル回転させるも、さほど頭が切れるわけでもない私が切り抜けられるだけの力はなかった。
おずおずと子に手を引かれ、席を立つ。後ろから夫の視線を感じる。頭は段々とぼーっとして来て、足取りもおぼつかない。急に私が声を掛けたら、あの集団はきっと驚くだろう。
ボスママは無視するかもしれない。いやー、ボスママだけでなく他の仲間も聞こえないふりをして後から私のことを笑うかもしれない。
園の中で一切関わりを持たなかった人間が、外で急に親しげに話し掛けるだなんてありえない話だ。

夫から声の聞こえない距離まで歩くと、子に向かって最低な発言をした。


「ねえ、パパに内緒で好きな物買ってあげるからおもちゃ屋さんか本屋さんに行かない?」

「え?なんで?ママ達のところ行かないの?」

「うんー。今日はママ達だけみたいだし、子供がいないとOOつまらないでしょう?」

嘘をついた。本当は少し離れたキッズスペースに子供達がいたというのに、幸いに子はそれに気がつかなかったことで難を逃れることを土壇場で思いついたのだ。


「何でも買ってくれるの?」

「うん、何でもいいよ。」

子は途端に興味の対象を切り替え、すぐさまおもちゃ屋に行くと言い出した。そして、小走りで人混みを掻き分けその場を離れた。
店内に入り少し落ち着いたところで、子には「パパにおもちゃ買ったことは内緒だから急にお腹が痛くなってトイレに行ったということにしなさい」と口裏を合わせさせた。
おもちゃ屋で子に好きなものを選ばせている時、何度も夫から着信があった。電源を切り、子には夫におもちゃを買ったことがばれないように「ママのバッグに入る大きさのものなら」という条件付きで好きな物を選ばせた。
無事、会計まで済むと再度子に「トイレに行っていた」と刷り込ませ、携帯の電源を入れ直した。
電源を入れた途端、夫から電話がありすぐに応答した。


「おいおい、どこいるんだよ?」

「あ、ごめん、急にOOがお腹が痛いって言うからトイレに行ってたの。ちょっと下痢っぽいしもう帰った方がいいかも。」

「え?なんか悪いもんでも食べたか?」


そんな嘘のやりとりの後、食品の買い物が目当てだったこともありそのままモール内のスーパーで待ち合わせ夫と落ち合った。子は夫があれこれ聞く前に夫の顔を見ると、

「急にお腹が痛くなったんだよね、ねーママ?」


と少しいたずらめいた顔で私を見る。
夫は本当に心配しており、私はともかく子にも嘘をつかせてしまったことにひどく罪悪感をおぼえた。
子はその嘘を大して悪いこととは思っていないようで、むしろ私と共有の秘密を持てていることを楽しんでいるようにさえ見えた。
挨拶すら出来ないーそして嘘つきな母親。
最低なことをしたのは自分だというのに、ただただ最悪な気分の一日だった。












































お見舞い

従姉妹が出産した。
実母と見舞いに行くことになり、一応見舞金もすり合わせ子も連れて予め知らされていた病院ロビーで待ち合わせ。
母は既にロビーにおり、まずは私もだけれどそのホテルのような産院の作りに親子で驚きを隠せなかった。


「今時の病院って感じね。」


「うん、すごい。セレブ病院?」


規模はこじんまりとしながらも、まず受け付けの事務員はホテルのフロント係そのもので、また院内の装飾も言われなければホテルと間違える程の佇まい。
ただ、その待合室に圧倒的お腹の大きい妊婦ばかりがいることで、そこは産院なんだと気がつくばかり。
フロントに面会を伝え、従姉妹の名前を告げると、係員が個室に案内してくれた。
その係員もやっぱりホテルマンのようで、対応も然り、バッチリメイクに話し方も社内教育が徹底されていることを物語っていた。

従姉妹の部屋に案内され、入室するとそこもまたホテルの一室のようで。
その中に見慣れた従姉妹とふわふわの新生児を見つけると、ようやく見舞いに来たのだという実感がわいた。

「おめでとうー!」

「可愛い~」

「わざわざありがとうございます。」


そんなやり取りを交わした後、改めてベビーベットに置かれた新生児を見遣る。
それはとても小さくてか細くて、しかし限りなく強い生命力を持った人間で、すやすや眠るその姿に心底癒される。
子も小さな赤ちゃんを見ると、途端に抱っこしたい!触りたい!と言い出し、従姉妹の了解を得て少しだけ抱っこさせて貰うことにした。
嬉しそうな子ー
兄弟でもいればこんな風に抱っこをしてくれているのかも。
母は早速祝い金を渡し、また花や菓子の土産も渡した。
私からも事前に母に言われていた金額を渡す。ちなみに1万円だ。母からは3万らしい。
私はそれに加え、例のお気に入り子供服ブランドのベビー服を1枚とスタイ、それから小さな靴下のセットをプレゼントした。


「わぁ、可愛い!ありがとう~。」

「この子が今着てる服の店のベビー服なんだ。可愛いでしょう?」

「うん、可愛すぎー」


従姉妹が喜んでくれてほっとした。









「それにしてもホテルみたいな病院だね。」

部屋はとても広くて開放感があり、テレビもベッドも大きく、また備え付けの家具などもセンスのあるもの。


「いくらくらいしたの?」

母がまた金のことを聞いた。しかし従姉妹は嫌な顔もせずに、


「自費で追加20万程ですかね。無痛もしたのでそれを入れると30万、でも都内では安い方ですよ。料理もフランス料理が出たりして。本当のホテルで働いていた料理人が作ってくれるお祝いディナーなんです。デザートもパティシエが作ってくれるし。部屋もシャワーやトイレもついててアメニティも充実してるし、本当30万なんて安いですよ。一生に何度もない大仕事ですからここはちょっと贅沢させて貰いました。」


「旦那さん、理解あるのねぇ。」

母が言う。


「OOなんて正に病院だったもんね。狭いしなんか汚いし。私、病院の薬臭い中でご飯食べたりするの食欲なくなるんだけど、ここなら平気だわ。OOの時はとてもじゃないけど中で物を食べる気になれなかった。実際出されてる食事も不味そうだったわよねー。せめて旦那に言って個室にして貰えば良かったのに、よりによって相部屋なんてさ。」


母はいまだに子の出産の時の不満を口にする。
確かに夫は出産費用を42万に収めようと必死だった。市民病院の予約が取れた時は本当に嬉しそうにしていた。
そこでの看護士はドライで、初産の私がナースコールを押せば煙ったがり、痛みを訴えても真剣に取り合ってくれなかった。母乳が出ないと、つねるようにマッサージされ、常に乳はアザだらけで今でもそれはトラウマになっている。


「失礼致します。」

おやつが運ばれて来て、それはお洒落なカフェで食べるような美しい盛り付けのケーキセットと紅茶。茶器も洒落ており、優雅なアフタヌーンティーを楽しめそうだ。
その後、続いて助産師が入室し、従姉妹にあれこれ指導をしているようだったが、しかしその物腰や口ぶりはお客様に対するそれであり、決して患者に対する対応ではなかった。
膝まづき、お伺いをするといった感じ。
助産師が出て行った後、従姉妹は満足そうに言う。

「この病院はね、旦那が見つけてくれたの。せめて産んだ直後は楽にして欲しいって。エステやサロンもあって、昨日はエステを受けたんだけど気持ちよかった。明日はフットマッサージとヘアサロンでちょっとカットもして貰おうと思って。」

子供を産んだばかりとは思えないつややかでさっぱりとしたその表情は、やはり金があれば女性はいつまでも若さと美しさを維持出来るのかと再認識させられる。
ベビーベットですやすや眠っている赤ん坊ですら、どこかセレブ感漂うように見える不思議。
小一時間程で産院を後にし、母と子と3人で近くのコーヒーショップでお茶休憩をした。

「旦那で人生変わるっていうけれど、当たりくじだわね。」

母が言う。
まるで私は外れだと言わんばかりに。


「赤ちゃん、可愛かったね。」


子が流れを変えてくれ、それからは赤ちゃんの名前のことや従姉妹の実母ー親戚絡みの愚痴など、また母の好きな話題に変わって行った。
私も赤ちゃんを抱っこさせて貰ったが、本当に小さく可愛らしく、そしてやはりまたこの手で我が子をもう一人ーそんな気持ちがわいて止まらなかった。
幸せそうな従姉妹の母になった顔ー既に私は母ではあるけれど、授乳するあの母性の象徴である姿には及ばない。
もう一度ー自分の体を捧げる小さな命を手に入れたいと強く切望するのだった。











































都合の良い保育士

夏休みー、子が待ち焦がれていたDちゃんが妹達とやって来た。
正直、Dちゃんだけを誘ったつもりだったので、他2人が来た事に面食らったが、そこは一人っ子親と複数子親との温度差なのだろう、いちいち気にする私の方が神経質なのかもしれない。
しかし、末っ子はどうやらまだトイトレが完了していないらしく、それなのにおむつもつけずパンツで来たことに驚いた。
Dちゃんに、

「おもらししちゃうかもよー。」

と笑いながら言われてその事実を知ったのだ。
漏らされたら嫌だな・・その不安は見事的中した。
おやつになり、ジュースを与えると、もじもじする末っ子ー、
何度かトイレに行こうかと声掛けしたが、おやつに夢中で私の言うことなど聞こえない。
そして、少し目を話した隙に、子供達の大騒ぎする声がした。

「ママー!!Dちゃんの妹がおしっこしちゃったよー!!」

子供達は末っ子を取り囲み、鼻をつまんで笑っている。末っ子は泣きながらあちこち走り回り、辺り一面びしょびしょ。
私は焦り、とにかくそのまま末っ子を風呂場に連れて行きシャワーで洗い流してやり、子の捨てようと思いながらも捨てられずにいた小さなワンピースを着せ余っていた紙おむつを履かせ、ビシャビシャになった床を雑巾がけした。
正直、子以外の粗相の始末をするのは気が重く、どうして私が・・という気になった。私ならまだトイトレ終了していない我が子をおむつ無しで他人の家に上げたりしないのに。
その他にも、和室にある布団を丸めてジャンプしたりして遊んでいたのだが、これもまた目を離した隙に末っ子がぶどうジュースを大量にこぼした。
いつの間にジュースを持ちながらウロウロしていたようで、これは私がきちんと見ていなかったのも悪かったのだが、よりによって色の濃いジュースだったことに愕然とした。
クリーム色の布団カバーに大きなシミが出来てしまい溜息が出た。
自分から誘っておきながらなんだけれど、都合の良い無償の保育士になった気分でもやもやした。今頃Dちゃんママはクーラーの効いた部屋で一人ゆっくりお茶でも飲みながら雑誌でも見ているのかもしれない、そう思ってついDちゃんに要らぬことを聞いてしまった。

「ママはお家?」

「うん、AちゃんとBちゃんのママもいるよ。皆でケーキ食べてた。」

それを耳にした途端、何とも言えずモヤモヤは更に大きくなりイライラに変わった。

「Aちゃん達とは遊ばなかったの?」

「AちゃんもBちゃんもパパのばあばのお家にお泊りしてるんだって。」

それを聞いて、益々イライラした。
子供を預けて羽を伸ばす母親達ー祖父母に預けてというのは分かるけれど、なんだかそれと同様に自分が使われた気がして不快な気持ちになった。
末っ子の汚れ物を洗濯し、当て付けのようにメモを書いた。


「△ちゃんがトイレを失敗してしまったので、OOの洋服をお貸しします。△ちゃんの物は洗濯しておきました。△ちゃん、あちこちをおしっこで汚してしまいショックで泣いていましたのでフォローお願いします。」

我ながら自分の性格の悪さを思う。
わざわざ「あちこちをおしっこで汚した」なんて書かなくて良いものをーしかしそう書かずには気持ちが収まらなかったのだ。


その日の晩ー、Dちゃんママからお詫びのメールが来た。
そして、3人の子供達はOOのことが好きなのでまたお願いしますとそこにはあった。
正直私の精一杯のイヤミのメモ書きは、彼女に伝わっていないように思えた。
釈然としない思いに駆られながらも、子に友達が出来たのだからと自分に言い聞かせ反省するところもあった日だった。







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