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魂を入れる作業

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30分経ち、しかし多めに取って5分くらいして現場に戻ると、既に屋台は賑わいを見せていた。大きな声で客引きをする酒井さん。それに班長。向こう側にいる人達。
さり気無くテント内に入ると、大騒ぎしている裏方。


「この空気入れ、壊れてる!どうしよう!!」


「さっき、スーパーボールのプール作る時は大丈夫だったのに!!」


長テーブルには、膨らむビニール製のおもちゃがまだ空気を入れられずにのっぺりした姿で大量に置かれていた。見本しか膨らませていなかったようで、皆ざわついている。
すぐに、自宅に空気入れがあることを思い出し、私は声を上げた。


「家に空気入れあるんで、取って来ます!!」


「え、本当ですか!?助かります!!」


私の声に反応したのは、たった一人だったが、他の人達の反応を確かめている余裕など無かった。大急ぎで自転車を走らせ、自宅に向かう。玄関を開け、ただいまも言わずにバタバタと戸棚の奥から空気入れを引っ張り出している私を見て夫は、


「なんだ、なんだ。騒々しいな。」


いまだ寝巻姿でそう呟いた。子は、部屋の奥でピアノをしているのか、綺麗な音色が鳴り響いていた。 猛ダッシュでテントに戻ると、数人が私の手にある空気入れを目にし、待ってましたと言わんばかりの笑顔を向けた。ようやくここに「居場所」を見付けた、そんな気分だった。
空気入れは一つしかないので、それから私は持ち主の責任としてーというのは表向きで、やっと自分の役割を見付けた喜びで、勢いよく次々とおもちゃに空気を入れた。魂を吹き込まれたように、おもちゃは活き活きとした姿を見せ、それはまるで私自身のようだった。
汗だくになり大変だったが、何もすること無く突っ立っている所在無さに比べたら、天国のようだった。


「大丈夫ですか?」


「代わりましょうか?」


要所要所、そんな風に声を掛けられたが、この大役を他に引き渡すことなどこれっぽっちも頭に無かった。
屋台は大繁盛。おもちゃは飛ぶように売れ、スーパーボールすくいは大行列。ひっきりなしの客。


「ママ。」


私が必死に空気を入れているところ、子の声がして振り向くと、なんと夫もそこにいた。二人で祭りを見に来たのだ。子は既に、かき氷を手にしていた。


「忙しそうだな。」


夫からも、労いと捉えられるような言葉を貰えて、ほっとする。あのまま空気入れが壊れず、何もすることが無く突っ立っていたならーそんなところを夫に見られていたとしたら・・
家でも外でも「使えない女」のレッテルを貼られるところだったのだ。

誰とも会話せずとも不自然ではない単純作業を終え、班長からもお疲れ様でしたの言葉と冷たいペットボトルのお茶を貰え、やり切った感がある今年の夏祭りだった。




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