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夫とランチ

約束通り、夫とランチに自由が丘まで。

夫のご機嫌を立て直すのに何日掛かっただろう、それでも本格的にこじれる前にどうにか修正出来たことに安堵感。
街中をプラプラ歩く。
雑貨屋が多いこの街、色々と見たい気持ちもあったが夫といるとゆっくり見ることが出来ない。昔からそうなのだ。
夫はまず、値札を見る。

「え、こんなものがこんなにするの?」

度々言う。それは夫の買う私物について、私からしたら同じ台詞が出るようなものなのだが、しかしやはり夫が稼いだ金だから私が文句を言う筋合いはない。
ランチ前に、なんとなく入った店で雑貨を見ていたら、とても素敵なスープカップを見つけた。欲しいと思って手に取るとすかさず横から夫も手を出す。

「1200円だって、こんなの百均に売ってそうだな。」

そう言われたら、いくら自分の小遣いからといっても買いづらくなる。
それはとても可愛らしいカップで、3人分買うのは確かに贅沢だけれど、私と子の兼用にするだけでも十分幸せになれるカップ。温かみのあるオレンジを基調として、内側に少し大胆だけれど洒落た模様が入っており、全体的にぷっくりしたフォルムがこれから寒くなる時期、ちょっとしたスープを入れるのに良さそうな物だった。
しかし横で夫がまた、


「こんなのに金出すやついるのかな。もう行こうぜ、腹減った。」

1200円は確かに今の自分には高価な買い物なのかも。そう思い直し、後ろ髪を引かれながらもカップを元の棚に置いた。

雑誌で観て、なんとなくいつか行きたいなと思っていた紅茶専門店に到着すると、カフェがある2階に通される。見晴らしの良いガラス張りの店内。生憎の天気だったのは残念だったけれど。
メニュー表には季節のランチ、それから日替わりランチなどと紅茶とサラダとスープがセットでついてくる。それなりの値段に、夫の顔色をメニュー越しに伺うと、やっぱり一言。


「結構するんだな。紅茶だけで1000円近い、俺はこれでいいや。」


そう言って夫が指したのは、一番安いサンドウィッチ単品。セットは最低でも紅茶付きだから1500円以上するので、単品にすれば600円ちょっとで済む。家計からの外食だと一番高いのを選ぶのに、自分のポケットマネーからだとこれだ。
私だって、夫が安いのを選ぶのならそれより高いものは注文しにくい。
結局、紅茶専門店に来たというのに紅茶は頼まず、お互い単品のサンドウィッチのみでタダの水を貰う。


「ドリンクはいかがなさいますか?」

と聞かれ、水を下さいと言うのがなんだか恥ずかしかった。店員は、てっきりビールかワインを夫婦で愉しむのだろうと思って、アルコール類の別メニュー表を持って来たというのに・・

周囲を見渡すと、平日昼間とあって女性達が殆ど。私くらいの年の女性達が賑やかにランチを楽しみ、紅茶を飲み、そして中にはワイングラスを片手に笑い合っている様子が目に入った。そこでもまた、勝手な妄想を広げて勝手に落ち込む。

ーこの3人はママ友なのかな?さっきから子供の話を楽しそうにしてる・・受験の話?ここら辺に住んでるセレブママ達なんだろうな。


ーあっちの4人はうちの母親くらいの年だ。皆お洒落して楽しそうに温泉か何かのパンフレットを見てる。きっと旅行の計画でも立ててるんだろうな。いいな、羨ましい。理想的な老後だな。


目の前の夫は、相変わらずスマホ。料理をオーダーした後、こちらから最近の子のことなど話し掛けるも上の空。必死にスマホ操作するのを見て、なんだか話し掛け続ける自分がアホらしくなったのだ。だから、周囲の人間ウォッチングをしている。


ふと、楽しそうなテーブル席の間に、ポツンと一人の女性が食事をしているのが目に入った。年は私より5歳程上だろうか?薬指に指輪はない。ラフなホワイトのケーブルニットの下にはカッチリ目チェックのシャツ、そしてパールネックレスをしている。なんてことはない恰好なのだが、どこか洗練されている感じ。
スマホを見るでもなく、テーブルに読み物などもない。
あるのは、パスタと脇に置かれたグラス白ワイン。パスタを上品に口に運びながら、ゆっくりとした動作でワインを喉
に流し込むその所作は、優雅で美しく、失礼ながらもじっと見入ってしまった。
ひとりでも、こうしてその時間を楽しめる人間がいるのだ。周りに惑わされることなく、自分のペースで。


「お待たせいたしました。」


店員がサンドイッチをテーブルに置く。はっと自分を取り戻しながら夫を見ると、まだスマホをいじっている。


「ごゆっくりどうぞ。」

店員が去り、2人きりになりサンドウィッチを口にする。トーストされたパンに、しゃきっとしたレタス、トマトと厚切りベーコン、そして卵が入ったよくある組み合わせの物だったのだが、窓越しに見える景色と雰囲気でそれはとても美味しく感じられた。


「美味しいね。」


「ん。」


「これ、家で作れるかも。」


「ん。」


「最近、仕事はどう?」


「別に、普通。」



「そうそう、OOのお友達のDちゃん、毎日のように家に来るんだけど来るばっかりで誘って貰えないってOOが泣いてて・・」


「ふうん。」


片手にサンドウィッチ、もう一方はスマホ操作。まるで思春期の男の子が母親に対するかのような生返事に、イライラしたりするエネルギーはなくなった。
ただ、侘しいだけ。

また、先程の彼女がいるテーブルの方を見遣る。
今度はパスタに替わってデザートがテーブルの上にあった。モンブランと暖かい紅茶。ゆっくり紅茶を蒸らし、それから丁寧にカップに注ぎ入れる。その動作を自ら味わうように、ゆっくり、ゆっくりと。

私もー、そう思い、ゆっくり、ゆっくりとサンドウィッチを味わう。
もし、自分が今も独身だったら彼女のように優雅でいられただろうか?答えはノーだ。
年齢だけが増し、資格も特にない常勤の事務員は、きっと後続の若い女性達に追いやられながら、影でヒソヒソ笑われながらもその場に留まるしかなく、身を小さくしながらも会社にしがみついていたかもしれない。
私よりも一回り若い、女性正社員にコキ使われながらー

それを思うと、今の自分のこの状況が少しはマシに思えるのだった。夫という社会的に守ってくれる存在ー、そして子。私は守られているー


すっかり綺麗になった皿を目の前に、夫に言う。


「ねえ、この間母からたまには夫婦でご飯でも食べに行きなさいって言われてお金貰ったから、一杯紅茶飲まない?ここの紅茶、高いかもしれないけれど専門店だから、きっと美味しいよ。」


一瞬、夫はスマホから目を上げる。店に入って初めて目が合ったのが皮肉だったが、


「ん、同じのでいいよ。」

やっとまともに返事をしてくれたのが嬉しかった。
紅茶を愉しみたかったので、普通にダージリンをオーダーした。
ポットとカップが運ばれ、時間を置いて茶葉が開くのを待ち、夫と自分のカップに丁寧に紅茶を淹れる。


「うまいな。」

夫が一口紅茶を飲み、満足気に言う。


「でしょう?」


熱い紅茶は私の体内でじわっと広がり、ゆっくり、ゆっくりと暖かな充足感を与えてくれるのだった。















































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