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子の習い事、まいこちゃん達と入口で居合わせた流れで、スタジオまで共に歩く。子とまいこちゃんは走って行き、私は彼女と別れるタイミングを見計らっていた。
彼女は、仕事を始めたことで、それまでとは違う装いでキリリとした化粧ー、専業主婦だった時の小奇麗さとはまた違うフォーマルな空気感が漂っていた。

なんとなく子供達の話をしていたら、彼女の取り巻きらも近づき輪が出来た。
優しい印象の小太りママと、以前まいこちゃんママとTDL年パスの件で微妙な感じになった千葉ママだ。なんとなく輪から外れそびれたことに後悔しつつ、しかしその日のまいこちゃんママはまるで素敵ママかの如く、私に向かっても好意的に話を振ってくれたので、それに答えたり笑ったり、また他のママ達も私に向かって話し掛けてくれたことでいくらかリラックス出来た上に、多少会話に愉しむ余裕さえあった。

学校の話ー、役員の噂話ー、最近効果的だったダイエットの話から美容の話・・そしてまいこちゃんママが何気ない風を装って、鞄から1冊のパンフレットを出した。
先日私が見せられたものとは異なり、アンチエイジングや美白を促す基礎化粧品の数々ーそして、それと共にサンプルを私達に配り始める彼女。

千葉ママがそれを受け取りながら言う。


「ありがと~!この間サンプルくれたのすっごく良かったんだよね!1週間しか使ってないのにさ、旦那がエステ行った?って聞いてきたんだよ~。この時期花粉とかで肌もガサガサするのにね、あれ使ったらそれもないしツルツルもっちりだよ。あれ、もうサンプルないし買いたいと思ってるんだけど幾ら?」


まいこちゃんママの表情がぱぁっと輝く。そしていそいそと注文書を取り出し、千葉ママにサインをさせた。いとも簡単にー。
千葉ママは、何の躊躇もなく財布から万札を出し、まいこちゃんママに手渡す。シャネルの財布は新作だろうか?まだ買ったばかりといっても良い程、それは新品のように見えた。


続いてそれに同調するかのように、小太りママはパンフとサンプルを見比べながら、目尻の皺とほうれい線が気になるので、お勧めアイクリームやたるみ取りに効果的なクリームはないかとまいこちゃんママに尋ねる。そして驚いたことに、まいこちゃんママはそれに対し、滑らかに的確なレスポンスを返し、要望に見合う商品を勧める。しかし、彼女のすごいところは、小太りママが1万以上の商品を購入しようとするのを一旦止め、3000円ちょっとのトライアルセットを購入して、それから考えた方が良いのではないかと勧めたのだ。
なかなかのやり手だなーと思った。
本来、ガツガツ営業しようと思えば、言われるがままにその商品が客に与える影響などお構いなしで商品を販売するだろう。しかし、彼女はあえてそうせず、ワンクッション「ママ友」という良好な関係性を置くことで、長い目で見た信用性を売ることにしたようだった。
小太りママは、素直に彼女から勧められたトライアルセットを購入することにし、肌に合えば今後の購入を決めると彼女に伝えたようだ。
他のママ達も、値段はまちまちだがあれこれ商品を購入しているようだった。注文書は何枚もあちらこちらで行き交い、ただただ彼女のセールストークの上手さに驚く。そうかー、彼女にはこんな才能があったのだな、と。


「OOさんにはね、これがお勧め。」


ぼーっとパンフレットを眺めていると、まいこちゃんママが私に全ての商品の中でも一番安いと思われる、美白化粧品のお試しクリームを指し示す。お試しというところがポイントで、価格も彼女達からしたら駄菓子を買う感覚なのだろうー、有無を言わせない空気がそこにはあった。そして「あなたも勿論買うよね?」という周囲の視線に私は負けてしまった。


「ありがとう~、じゃあ、これサインしてくれる?」


サインしながら自分に問う。
なぜ、NOと言えなかったのだろう。
皆購入している中で断る勇気がなかったー場の空気を乱したくはなかった。そして一番安いものを勧められたというのに、それさえ買うことが出来ないと思われたくなかったー、40近くになったのだから、少しは基礎化粧に気を遣った方が良いのではないかというもう一人の自分の気持ち。普段、ドラッグストアで1000円もしない化粧水を使っている。たまには良いではないかー、子の習い事でママ友らに嫌われたら最後、子までまいこちゃん達の輪から外されてしまうかもしれない。
それらの感情が混ざり合い、注文書にサインをしている私がいた。


「絶対効くから。翌日びっくりするよ~」


「くすみが無くなったよね、厚化粧の必要がなくなったよ!私、敏感肌だし心配だったんだけどヒリヒリしなかったし、つけ心地良かった。香りもいいよね。」


取り巻き達が、口々にまいこちゃんママに言う。まいこちゃんママは、嬉しそうにしながら感謝の言葉を皆に向けていた。勿論、私に向かっても笑顔だった。
もし、商品を拒否していたらどうだったろう?考えたくはないが、彼女の冷たい一面を知っている分ぞっとした。元々このグループに私は属している訳ではないが、しかし、子がはぶられるのだけは避けたい。
他のママ達も、我が子の分までお土産を買って来てくれるようになったのは、私とまいこちゃんママが少なからずとも知り合いだと認識しているからだーだから彼女を敵に回すことはナンセンスなのだ。


後日、商品を受け取った。そして早速その日の夜の風呂上りにクリームを塗ってみた。確かにいつも使っている安いクリームと違い、肌に浸透する感じがリアルに伝わる。目を閉じて目の下や目尻にくるくるとクリームを滑らせる。何も考えず、万札を出し商品を購入していた千葉ママの横顔が浮かんだ。
そういえば、彼女は若く見える。以前彼女の干支を何かの会話で知り、私よりも3歳年上だと分かったが、身なりやスタイルや顔の作りが垢抜けているのに輪を掛けて、彼女の透明感とハリのある肌は自分よりはるかに年下に見えた。
ファッションよりも肌質とヘアスタイルが「若さ」を呼ぶ。たるんでハリのない、くすんだ自分の肌。肌が美しくなれば少しは垢抜けるのだろうか?
疑心暗鬼になりつつも、米粒程のクリームを大事に肌に塗り込む。

40直前にして、最後の足掻きだろうか?夫の背後にある女性の影がそうさせるのか?それまで無頓着だった美への執着に火が付いてしまいそうな感覚をおぼえたー





























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