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おばさんの妄想

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高橋さんは親切だ。
昨日も、腰痛がなかなか治らない私に、家で軽く出来るストレッチや生活習慣の見直し、また小さな小さな私の私生活についてのあれこれを、こちらが心地良く話せるような空気を作り、問いかけてくれた。
実際、おばさんの日常に若者がそこまで興味があるわけでもないだろうー営業トークだということも分かっている。それでも、子供のこと、家事のコツや最近観たテレビのことなど、聞かれるがままに答えているだけなのに、彼は楽しそうに聞いてくれるのだ。
男性相手に最初は緊張していた私も、既に10回は通っているだろうー通院するうちにその場の雰囲気や彼の人柄に慣れて来た。
今も多少、会話が止まるとドキドキしてしまうが、しかし彼はプロだ。沈黙を破るのがうまい。そして、私のような詰まらない人間にでさえキャッチし易いボールを投げてくれるのだ。
調子に乗った私は、つい彼が喜ぶであろう話題を投げ掛けた。


「最近、カメラにはまってるんですよね。子供の行事で頻繁に使うし、思い切ってカメラを一眼にしたんです。本当綺麗に撮れてびっくりしてしまって。」


一眼レフを持っているーということは本当のこと。そして、行事で使っているのも。しかし、はまっているといったら嘘になる。しかし、「これからはまるのだ」と自分に言い聞かせ、彼のHP上にあったプロフィールを思い浮かべながら話を切り出した。


「え?本当ですか?僕もカメラが趣味なんですよ。とはいっても、学生の頃からなんでつい最近ですけど。」



学生時代を「つい最近」と言う彼に、果てしない距離感をおぼえた。私にとっては遥か遠い過去のことだからだ。しかし、彼は嬉しそうにカメラについて語る。
そこから先は、彼の独壇場だった。カメラの機種だったり扱い方、また光の取り入れ方だとかの技法を熱く語っている。マッサージを背中に受けながら、楽しそうにしている彼を感じ、私自身も満たされていた。私は今、彼を気分良くしている。肉体的には私が癒されているのだが、精神的には彼を私は悦ばせているー



「詳しいんですね、私は常にオートで撮っているんで。なので全然上達しません。それでも季節の移り変わりだとか空の色だとか、普段気付かない日常に少しは敏感になったような気がします。」



「楽しければいいんですよ!心で撮るんです。僕も正直のところ感性はイマイチで。イメージ通りに撮れた試しがありません。」



あまりにも高橋さんが楽しそうだからー、私との話が楽しそうだからー、



「もしかして、ブログとかしてます?してたら教えてくれませんか?」



「え?ブログですか?ーーー・・いや~、ブログはしてませんね。」



調子に乗り過ぎた。途端に、高橋さんの手がこわばったのを背中越しに感じた。気持ち悪いおばさんだと思われた。ストーカーになるのではないかと怖がらせた。心の中で、「ババア、まじかよ、勘弁。」ーそんな声が聞こえた気がした。



「そうですよね、ブログって面倒臭そうですもんね。」


沈黙が怖く、的外れな返しをしてしまう。面倒と言いながらーほぼ毎日こうして更新しているブログのある私が何を言うか・・


「はい、終わりましたよー。今日のところはここまでです。」



まだ少し続いてもと思うところで高橋さんは切り上げてしまった。心臓がドキドキする。合わせる顔がないというのはこういうことを言うのだろう。
そそくさとカーテンを締めて、自分の服に着替える。カーテン越しに、「ありがとうございました。」の声が聞こえる。私も小さく同じ台詞を返す。
普段なら、お会計場までついて来てくれる彼が、その日はそのまま次の客の案内を始めてしまった。会計にはいつもの綺麗な女性がおり、上目使いで私を見る。



「1450円になります。」


「はい。」


小銭がたくさんあったので、じゃらじゃらと1円まで出して丁度ぴったり。いつもならすっきりする瞬間なのに、この日はモヤモヤが消えなかった。
私が去った後、高橋さんはこの女性とこんな会話をするかもしれない。



『いや~、おばさんに目を付けられたっぽくてさ。キモイんだけど。』

『えー、あの地味そうなおばさん?』

『なんかさ、俺にブログやってたら教えてくれとか言うの。つーか教えるわけないし。ストーカーされんじゃん。怖すぎ。』

『えー!ちょっと刺されないように気を付けてよ~つーか店ん前で待ち伏せとか有り得るかも。』

『犯罪臭プンプンなんですけど。あー、明日も来るのかな。ちょっと優しくしただけで図々しいんだよ!』

『あの年になると、欲求不満の塊なんだろうね。旦那にも相手にされてなさそうだしさ。』



妄想がどんどん膨らむ。恐ろしいくらいにそれはリアルな会話だった。しかし、それ以上に高橋さんのしなやかな掌が忘れられない。
そして、こんな妄想に負けるのは嫌だった。
HPを開くと、変わらぬ高橋さんの爽やかな顔が掲載されていた。この笑顔の裏をまだ知るには早過ぎるーそう思った。







































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