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ホテルランチ

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「もしもし、私よ。」


最近では、電話のベルが鳴るとその音で実母からだと分かる。彼女からの電話は、セールスとは違ったどこか勿体ぶったような鳴り方をするからだ。


「あんた、今家?」


「うん、そうだけど・・」


家だから、こうして家の電話に出ているんじゃないか。分かりきった質問をするところがまた鬱陶しく思わせる。



「私はね、今ホテルラウンジにいるのよ。天気もいいしね、お紅茶でも飲みにと思って。」


ーお紅茶?セレブ気取りだろうか?
聞いてもないのに、嬉々としてそう語る実母に少しの嫌悪感がわく。
実母は金が無いと言いながらも、こうやって無駄遣いをする。私の今月の仕送りだってよく分からないものに消えていくのだろう。釈然としない思いを抱えながらも彼女の話に付き合う。これも親孝行だと自分を納得させてー


「お父さんも誘ったんだけどね、あの人詰まらない人だから家で緑茶啜ってる方がいいって。相変わらず貧乏臭い人よ。私はね、よく来るのよ、ひとりでも。だって気分転換になるじゃない?ホテルならティーバッグじゃないちゃんとしたお紅茶淹れてくれるしね。今ケーキも頼んだのよ。美味しそうよ。」


受話器越しだが、母の精一杯の強がりが伝わる。ひとりでも平気、充実しているー、楽しんでいる。無けなしの金を使ってひとりでホテルラウンジにいることを唯一娘に自慢することが彼女にとっての充実した日々だとしたら、なんて悲しい人生なのだろう。


「ひとりで楽しい?虚しくはない?私だったらホテルじゃなくてもいいから友達と手頃なカフェでお茶出来たら幸せ。」


心の中で母に向かって言う。勿論本当に声に出したりはしない、彼女を傷付けるからだ。表向きは、


「優雅でいいね~、たまには家事を休んでゆっくり自分の為に時間を使うのも気晴らしになっていいよ。年を取ってもそういう場所に足を運ぶのは素敵なことだよ。」


と思ってもいない台詞を吐く。母を喜ばせる為に。しかし、若干意地悪な私もいる。


「でもさ、昔よくお茶してたKさんとか誘ってもいいんじゃない?」


少しの無言の後で、



「Kさん?あの人となんて嫌よ。あの人、ファミレスか小汚いセルフのカフェしか行かないもの。私、ドリンクバーとか嫌いなのよ。洗ってるのかもよく分からない汚いグラスでティーバッグのお茶なんて。家でちゃんとした紅茶飲む方がマシ。あの人とは価値観が違うの。安ければどんな場所でもどんな料理でもいいんだから。」


昔のパート仲間で、働いている頃は頻繁に名前が出ていた彼女のことを非難する。もう何年も会っていないのだろうーKさんは社交的な人で、確か常に忙しそうにしている人だった。付き合いが多ければそれなりに出費も多い。Kさんからしたら母との付き合いはたくさんの友人付き合いのうちの1つー、つまり月に10回ランチがあったとしたらそのうちの1回。だからファミレスでもいいのだろう。ファミレスで1000円使ったとしても、10回にすればそれなりの出費になる。
一方、母からしたらKさんは唯一、付き合いが出来る人だった。1ヶ月に彼女との約束1回を入れるとしたら、ランチに何千円掛けても惜しくはなかったのだろう。
そこに、二人の温度差が生まれ、疎遠になって行ったのかもしれない。そして、プライドの高い母は、彼女の方から疎遠にされることだけは我慢ならず、あくまでもこちら側から距離を置いたのだということを以前、何度も何度も私に訴えた。私からしたらどうでもいい話なのだが。

くだらないプライドというのは、人を寄せ付けない。計算のない、平和主義者の周りには人が集まる。母を見てそう思う。しかし、のんべんだらりと生きて来た自分に平和主義への道のりは長そうだ。
そこに行き着くには、既に絶対的な自信や幸福を得ていたり、また逆に本当の意味での不幸を知ることでしか不可能なのではないかという気がしている。
常日頃つまらない不満を持ち、うじうじ悩んでいる私に、欲を出さずシンプルに生きるということはとてもハードルが高く、困難なのだ。


























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