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偽看板

母の期待が重すぎて、その重圧に耐え切れず私は嘘を付くしかなかった。やっと解放されたと思っていたのに、また私は嘘を付く。 その始まりは、何てことのない電話だった。
子がいる日中に掛かってきた電話ー、この間、墓参りに行った際に車の中に子がアイカツカードを数枚置き忘れたらしく、その連絡だった。正直、もし私が母の立場なら、忙しいであろう娘に気を遣ってそっと手紙に子のカードを封入して送るだろう。いやー、少し美味しいお菓子や季節の果物なども入れて、どちらがついでだか分からない、そんな小包を送るかもしれない。
母と会うのは多くても月1で十分ー、それもあり、つい軽く出た嘘だった。


「ごめん、その日は面接なんだよね。仕事始めようと思って。」


今思えば、無難に学校行事だということにしておけば良かったのにー、ぼんやり漫画を読みふけっていたことと、早く続きが読みたいが為の嘘だった。


「あら?あんた仕事するの?どこ?どこに面接!?」


「うん・・O×電機ー、普通に事務員だけど。」


「すごいじゃない!いいじゃないの、いいじゃないの!!」


ーしまったーそう思った時は既に遅い。なんとなく付けているTVコマーシャルから耳に入ったその会社名を、ただなんとなく使っただけ。しかし、受話器越しに聞こえる嬉々とした声に段々と憂鬱になって行った。


「受かったら、連絡しなさいよ!」


そう言い残して母は電話を切った。また一つ、くだらない悩み事を増やしてしまったー、しかも自らが蒔いた種。自業自得だ。母は一部上場企業ー、いわゆる一流企業だとかまた早慶上智大学などの学歴ー、そういったモノに弱い。まだ金があった頃、私を私立中学に受験させようと躍起になったのもその為だ。子供が有名校に通い、そして誰しもが知る有名企業に入社するーそしてそれを知人に自慢しまくることー、それが彼女のアイデンティティなのだ。




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昔ー、契約社員の期限が切れて、次の仕事が決まるまでの繋ぎに、某企業の短期バイトをしたことがあった。簡単な事務作業で、ちょっとした情報を入力するだけの作業だったのだが、それを知るやいなや、母はまるで私がそこの社員になったかのような振る舞いを周囲に向かってするようになった。

ある時の親戚との会話では、


「いや~ね、娘がね、O×社に決まってね。そうなのよ、すごい難関!大学は失敗したけどね、でもまだまだ挽回はあるってもんよ、分からないわよね人生。」


パート先からシフト変更願いの電話があれば、


「その日はー、ええとね、娘が○×社で残業あってちょっと大変かもしれないからさ、家でご飯作って待っててあげたいのよ。一応確認してからまた掛け直すわ。」


共に買い物へ行く為にバスに乗れば、


「○×社は最近どう?○×社の仕事はやっぱり大変なんだろうね、来週の休日は休めるの?」


いちいち社名を大きな声で、周囲に聞かせるかの如く響かせるのがたまらなく恥ずかしかった。ただのバイトなのに、しかも短期の・・それなのに、まるでそこで娘がバリキャリであるかのように振舞う、そんな母に嫌悪感が湧いていた。それなのに、それを止めることも出来ず、ただげんなりするしかなかった昔のこと。

まともな企業で社員になることも出来ないまま、成り行きで今の夫と結婚し、そのまま子供を産んだ時ー、母は心底失望したのだろう。一縷の望みももう叶わないー、ただの専業主婦になった娘ー、まだ生まれて間もない子を抱きながら、絶望的な言葉を浴びせかけられた。


「ほんと、あんたは失敗作だわ。結局フツーの’’お母さん’’になったんだもんね。」


普通?普通の何が悪いの?私の幸せは誰が決めるの?お母さん?あなたが決めるの?私はあなたの作品なの?え?そうだったの・・?

「母の期待」という名の衣をすっかり脱ぎ捨てたはずの私だったのに、いまだその欠片に足を引っ張られている。これからどうするのだ?どうしたいのだー自分?
面接には落ちたーそう伝えようと決めるも、失望した母の顔が浮かぶ。母の喜ぶ顔を今まで見たことがあっただろうか?遠い記憶を辿ってみる。
あぁ、そうだー、テストで満点を取った時ー、真っ先に浮かぶのは母の笑顔だった。自分の嬉しい感情より何より、先に来るのは真っ先に母の顔色だった。
そろそろ自分が本当に喜ぶことを探してもいいのではないかと思う。母の人生ではない、自分の人生に自信を持つ為にもー




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