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パンケーキと桜

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一生のうち、気持ち良く出会い、また気持ち良く別れられる人がどれだけいることかー
大概、出会いが良くても別れは辛いものだったり、モヤモヤした思いを抱えるものだったりする。
Yさんと、笑顔で別れて来た。
寂しくないといえば、嘘になる。唯一、この地に来て心から信頼、そして尊敬出来た人だった。彼女のポジティブさは、私のネガティブを誘発し過ぎることもなかったし、また憧れが劣等感に変化することもなかった。
親しくなっても、彼女と私の間にはきちんとした「境目」があり、その一線があるからこそ彼女を好きなまま見送ることが出来たのだと思う。
最後のランチは、例のパンケーキの店。Yさんも何度か来たことがあり、お気に入りの店だと聞いて嬉しくなった。少し奮発して、ワンコインモーニングではないパンケーキを注文した。瑞々しいフルーツがふんだんに使われたカラフルなパンケーキ。見ているだけで人を元気付ける。Yさんみたいだな、と思った。


「本当、寂しくなります。Yさんに、いつも元気を貰っていたので・・」


本音だった。


「私も、ここ長かったし、いざ引っ越すとなったら寂しくなって来てね。皆、親切な人ばかりだったし、本当に楽しい思い出しかないんだ。」


ーYさん、それはあなたの人柄がそうさせたんです。


声にならない言葉、今思えば、声に出せば良かったと思う。

Yさんの笑顔を見ているうちに、なんとなくー、最後だからと彼女にあれこれ自分をさらけ出したい欲求に駆られた。

夫とうまくいかないこと、
人付き合いが下手なこと、
子育ての悩み、
実母とのいざこざー、

彼女だったら、どんなアドバイスをくれるのか、聞いてみたかった。意を決し、口を開こうとした時だった、突然彼女の方から思い掛けない「告白」があったのだ。




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「実は私、去年から病気になってね、なかなか良くならなくて・・その専門医が関西にいることも引っ越しの一つのきっかけになったの。」


その病名は、さらりと言葉にするには重すぎるものだった。重すぎて、頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。そして、その底抜けの明るさはー、Yさんが自分を保つ為に必要だったのだと気付く。


「・・・・・」


言葉を失い、ただただ彼女の話に耳を傾ける。私が彼女だったら、耐えられそうもない。そして、それまでそれを知らせない程に、彼女は私に微塵の陰りも見せなかったのだ。彼女は明るいだけではないー、強い女性だったのだ。
すっかり冷え切ったパンケーキ。先程までカラフルに思えたそれは、まるでショーケースの中のサンプル品のように無機質に見えた。彼女に対し、どんな励ましの言葉も薄っぺらなものになる気がして口を噤んでしまう。そんな私に気を遣ったのか、彼女は突然自分の注文したパンケーキを一口私に差し出し、


「ねえ、これ美味しいよ。一口食べてみて!その代わり、OOさんのフルーツのも一口頂戴。」


子供のように、無邪気な笑顔で言う彼女に、胸の奥に渦巻く言葉にならない悲しみが瞳からこぼれそうになり、ぐっと耐えるのに必死だった。


ー私が泣いてはならない、一番泣きたいYさんを差し置いて泣くだなんて、おこがましい。


「美味しい!」


「うん、美味しい!」


私も、彼女を真似て、無邪気な笑顔を作る。すっかり冷え切ったパンケーキだったが、Yさんから貰った一口に、多くの数えきれない感情が混じっている気がして、だから、大事に大事にそれを味わった。
それからは、最近見たドラマの話、関西に行くからか、お笑いの話、お勧めの手抜き料理レシピなど、当たり障りのない、しかし楽しい会話をし続けた。
店を出て、桜の木が目に入った。彼女はスマホを持ち、何枚か撮影していた。私も共に、携帯カメラを花に向けた。その圧倒的な美しさを前に、しかし人間にはどうにも出来ない宿命があるのだと思い知り、胸が苦しくなる。

結局、彼女に気の利いた励ましの言葉を掛けることも出来ないままに、手を振り合い別れることになった。非力な自分自身が情けなく、だから私はいつまで経っても「その人のナンバーワン」になれない、「その他大勢のうちの一人」なのだと思う。
一歩踏み込むこと、それは拒絶されるかもしれない勇気の要る行為。しかし、それをすることによって人との距離感はぐっと縮まることもある。それを分かっていながら、臆病な私は一歩引くことで、自分を守ることを選んでしまうのだ。




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