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筆まめ

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週末、子とショッピングモールをプラプラし、可愛い雑貨屋に寄った。ふと目に留まったポストカード。手に取り、すぐに浮かんだのは彼女だった。


ーYさんに、送ってみようか。


Yさんとさよならして早いものでもう2か月弱。桜もとうに散り、新緑の季節から梅雨の季節にバトンを渡そうとしている。
美しい花の絵のポストカードを見ていると、昔の知人を思い出した。かつて、こんな私にも頻繁に葉書をくれる人物がいたのだ。

彼女は、独身時代に働いていた頃の同僚だったのだが、文房具が大好きで、昼休みになればいつでも会社近くの文具店に寄り、少ない時給分でメモ帳やらレターセットやら変わったデザインの筆記具などを購入していた。三度の飯より1本のシャーペンといったところで、ランチは外食せずに自前の弁当を公園のベンチで食べることが多かったのだ。
そんな彼女は、いつでも何枚かのポストカードと切手を鞄に忍ばせ、思い付いた時にさらさらっと一言書いて、ポストに投函していた。私が退職した後も、彼女からは頻繁に葉書が届いていた。
本当に一言なので、あちらの近況など分かるはずもない。ただ、それを書いている時間は私のことを思ってくれているのだなと思うと、心は温かくなったものだ。
しかし、私も性分なのか、貰ったら返事を出さなければならないーという妙な義務感に苛まれ、次第にポストに彼女からの葉書を見付けると、嬉しさよりも億劫な気持ちが芽生え始めた。頻繁な時はそれこそ一か月に3度も来る葉書。内容はどれもこれも似たような感じ。こうなるとただの「生存確認」のように思えてしまう。それに、どんどんたまっていくそれを、どのタイミングで処分すべきなのかにも頭を悩ませていた。
そして一番は、そこまで彼女と親しいわけではなかったという事実。職場の同僚ではあったが、それこそプライベートで遊んだことなど殆どなく、職場では最後まで互いに敬語を使っていたのだ。また、互いのーその世代にありがちな恋バナだったり結婚観などを語り合うこともなければ、職場の上司の悪口を言い、笑い合うことさえなかった。
そして彼女は、私にだけではない。他の誰に対しても「筆まめ」だったのだ。




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最初は、律儀に返していた返事も、書く内容が殆ど彼女から来た葉書の言葉をオウム返し。それに罪悪感も感じ始めていた。そして、彼女は私の近況を果たして本当に知りたいのか?それとも「葉書を出す行為」自体に満足しているだけなのかとさえ思ってしまう自分にも嫌気がさし始めていた。


ーお元気ですか?葉書、ありがとうございます。散歩するには良い気候になりましたねー


当たり障りのない、しかし失礼のない言葉を選ぶ。互いの共通項がない、葉書だけで繋がる関係。そして子を出産してからバタバタしているうちに何度か返事を書けずにいたところ、いつしかあちらから送って来ることもなくなっていた。しかし、もし彼女が「私にだけ筆まめ」だったのなら、何が何でも時間を作って返事を書いただろうと思う。必要とされる自分がいかに価値のあるものなのかを確認する、その為にも。

購入したポストカードに、Yさんの宛名を書こうとしてから思い留まる。引っ越して間もない彼女は色々とその土地に馴染むのに忙しい時かもしれない。貴重な時間を縫って、返事を書かねばと思わせてはならないような気がした。

そして、ポストカードはそのまま領収書などをまとめている引き出しに仕舞われた。やはり、私は筆まめにはなれそうもない。




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