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会いたい、会えない、空振り

今日も、針金さんに会えなかった。


だが、自宅にはいたようだ。バルコニーに出て様子を伺うと、隣からほのかに聞こえるピアノの音。それに交じり、ギターの音も聞こえたのだ。
ご主人とアンサンブルでもしているのだろうか?時々交じる、男女の笑い声。
仲睦まじい、二人のシルエットを思い出す。
仔猫のことは、気にならないのだろうか?それとも、他の時間帯にあの公園にいるのか?もしかして、避けられてる?
あんなに心が通ったかのように思えた隣人が、一気に遠ざかったかのように思える。距離を縮め過ぎたのだろうか?
意を決して、ラインをしてみた。

ーこんにちは!お久しぶりです!連休中、猫ちゃんに会いましたか?私はいつもの時間に行くように(毎日ではありませんが・・)したのですが、なかなか会えなくて。ちょっと心配しています。

あくまでも、針金さんではなく、心は仔猫にあるのだと強調するような文面にして、相手に重く思われないよう注意した。ストーカー扱いされたら最後だ。

なかなか既読にならない。隣からは、笑い声が聞こえる。スマホなどいちいちチェックしていないのだろう。それくらいに夫婦仲が充実しているのだ。
いつまで経っても既読にならないライン画面になぜか苛つく。一時間程してからもう一度ダメ元でメッセージを送る。

ー猫ちゃん、自治会の人達に見付かってなければいいのですが・・心配なので、今日公園見てきますね!もし良かったらご一緒にどうですか?

結局、既読になり返事が来たのは夕飯も終わった夜更け。


ーこんばんは。ライン、今見ました~時間ある時、また見に行ってみますね^^

やんわりと拒否されているような、もやもやした気持ちに支配された。













流れに身を任せる

期待外れ。結局、昨日は針金さんに会えなかった。仔猫にも、会えなかった。

自宅に戻り、PCでラインから彼女のアイコンをクリックし、トーク画面を開く。彼女のアイコンは、猫。
お子さんは既に大きいので、私達世代のように、子どもの写真をアイコンになどしないのだろう。
この猫が、以前飼っていた猫だろうか?既に彼女はペットロスを乗り越えたようだけれど、時たま見せる仔猫への愛情のある眼差しの中、少しの切なさが入り混じっているのは、やはりまだ引きずっているのだろうかとも思う。
メッセージを書き込んで、送信しようとして躊躇する。
まだ、彼女やそのご主人は連休中かもしれない。また、離れて住む息子さんが帰ってきて家族水入らずかも・・
そんな風に、あれこれ妄想すると、キーボードを叩く指はdeleteボタンに自然と運ぶ。

自然に任せよう。お隣なのだ。急ぐ必要はないし、これまでの人間関係の中であまりにもスムーズにことが運んでいることに浮かれて足元をすくわれないようにしよう。ゆっくりゆっくり、二人の関係を深めていけばいい。縁があれば続くし、なければ途切れる。ただそれだけのことだ。

無敵アイテム

週明け、爽やかな空の元、例の公園へ。

一番乗りの私。仕事探しは相変わらず停滞気味だが、こんなにも晴れた天気の中、ただ一人ぽつんと薄暗い家の中で過ごすのは勿体ない気がする。なので、仔猫や針金さんと会うべく、こうして公園へ向かうルーティーンは、精神面でも健康でいられる分、有難かった。
針金さんが合流し、少しすると仔猫も登場。ほぼ日課になりつつある仔猫の世話。仔猫も腹時計なのか、私達が来る時間帯が分かっているようだ。

仔猫は現金なもので、水と餌を食べ終えると、さっさとどこかへ消えてしまった。

「さて。」

針金さんが立ち上がり、帰る準備をする。しかし、何となく気まずい。お互い、家が隣同士なので、自宅まで一緒なのだ。
てくてくと、敷地内を歩く。

「今日は、これからどこかへ?」

針金さんに聞かれ、特に用事がある訳でもないのに、咄嗟に嘘をつく。

「あ、これから買い物に行きます。」


財布も持っていないのに、馬鹿な嘘をついたせいで、駐輪場の方へ向かう。すると、針金さんも、


「私、もう少し散歩しようかな。」


そう言いながら、私に付いて来た。自転車の鍵も無いので、困ったことになったぞーそう思っている矢先、

「こんにちは。」


駐輪場の自転車を引っ張り出そうとしている酒井さんと目が合う。酒井さんは、引っ越すと言って、今度の役員を逃れておいてまだここにいる。


「こんにちは。」

挨拶されたので、返す。酒井さんは、おやというような表情で私の隣に佇んでいる針金さんをちらっと見る。針金さんは、物怖じせずに愛想の良い感じで会釈をする。その雰囲気が、とても素敵で軽やかだった。


酒井さんと会話は無いものの、私の見る目が少しは変わったような空気を感じ、なんだか誇らしかった。彼女からも、恐らく、友達いない認定されていた私だけれど、そうした偏見から逃れられたような、それ以上になったような、兎にも角にも自分の世界がぱーっと広がったような清々しい感覚。
あれは確か、十何年前に、引っ越し前のママ友と友達になれたあの瞬間に味わったような気持ちだ。


「じゃあ。」


酒井さんと私を残して、針金さんはスタスタと駐輪場を離れた。すると、待ってましたと言わんばかりに酒井さんが、


「あの人、ここの人?」

「ええ。お隣に越してこられたんです。今年度の自治会役員も、越して来て間もないのに快く引き受けて下さって。とっても良い方なんですよ。」


ーあんたと違ってね。

心の中で呟く。少しだけバツの悪そうな表情をした後、そそくさと酒井さんは、

「じゃあ、また~」

逃げるように自転車を漕ぎ、駐輪場を去って行った。
なんだか強気な私。まるで、魔法のアイテムを手に入れたような、ゲームの世界の勇者のようだ。
今の私に、怖いものは何もないーそんな錯覚さえおぼえた。


メロディ

洗濯ものを干していると、お隣からピアノの音が聴こえた。
針金さんだろうか?ピアノを弾けるのだろうか?素敵な音色。一体、何の曲だろう?聴いたことはあるけれど分からない。確かに、有名な曲。
流れるメロディに乗せて、夫のパンツを干すのが勿体無いと思えるくらいに心地良いひととき。
彼女ともっと近付きたい。仔猫を介してではなく、隣人として、友人として。
随分と触っていなかったピアノに触れる。鍵盤に指を乗せる。
人生の趣味になるかもーと、一時、子がピアノを習い始めた時に練習した曲を弾く。喜びの歌だ。勿論、レベルが低過ぎるので、ボリュームは落とす。
しかし、出だしのちょっとで躓く。すっかり弾けなくなっている。慌てて楽譜を取り出し、譜読みをしようとするが、頭に入らない。ゆっくりゆっくりー、だが、素っ頓狂な音が出たりで指がもつれる。次第に苛々が募り、鍵盤の蓋を閉じた。

そんな私の情緒を鎮めるように、針金さんの軽やかなピアノ演奏は続く。
優しく、穏やかな春の陽だまり。薄暗いリビングにいても、それは、私の心を慰めてくれた。


お姉さん

今日も、公園へ。
昨日と同じ時間帯。日中はまるで夏日のように暑く、紫外線が怖いので日傘を持って行く。
到着すると、既に先客。針金さんだ。日傘をさし、リネンのワンピースを着てる彼女は、まるで初夏の女神のように全身から優しい光を放っていた。

「こんにちは。」

「あぁ、お疲れさま。」

針金さんの隣にしゃがみ込む。仔猫が気持ちよさそうにうたた寝しているところだ。そして、彼女は手にブラシを持っていた。


「ノミ取り、してあげようかなって。ちょっとしてたら寝ちゃった。」


「気持ち良かったのかも。」


「座りましょうか。」

「はい。」


二人、並んで古いベンチに腰掛ける。日差しは強く、気温はどんどん上昇している。
遠くから、学校のチャイムの音が聞こえた。のどかな時間ー、ゆっくりと、時が流れている。

「もう、ここ長いんですか?お子さんは?」

こちらからは何となく聞けなかった、プライベートな質問。彼女の方から投げて来たので素直に答える。こちらも質問しようか迷っていると、

「うちはね、息子が一人暮らし。」

「え!お子さん、大きいんですね!」

その驚きは、本当は子どもがいたという点なのだけれど。てっきり子どもがいない夫婦だと思っていたので、そうではない事実にただただ驚いた。
そこからは、不思議だ。何となく、お姉さんが出来たような気になり、自分の身の上をペラペラ聞かれてもいないのに話し始めた。
主に、我が子の悩み相談。
同世代ではない、子どもの世代も違うーその距離感が、丁度良いのかもしれない。
話しやすい人。こんな私にそう思わせる針金さんは、天才だ。








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