今日はパート休み。
ゴミ出しに行き戻ると、針金さんのご主人がドアから出て来て、なんと鬼のお面をつけて、針金さんが家の中から豆をご主人に投げていた。
「鬼は―外!」
驚き過ぎて挨拶も出来ずにいると、家の中にいた針金さんが私に気付き、
「あら!おはよう。ごめんなさいね!後でそこ片付けるから。」
「おはようございます。いやー、ちょっともういいだろう?終わりにしよう。」
ご主人は恥ずかしいところを見られたという感じで、照れくさそうに私に挨拶をすると早々に自宅の中に戻っていった。
でも、なんだか私の方が恥ずかしさと気まずさをおぼえ、ちょっと立ち話をしたそうな針金さんに頭を下げてそそくさと家の中に逃げ込んだ。
そういえばー、豆まき、いつからしてないんだろう。子が小学生の頃まではしていたっけ。夫抜きだったけれど、子と二人で豆をまいた。時に私が鬼役で、子が鬼役で。
段々と、こうした行事ごとをスルーしていくのだと思うと切なくなる。
今年は受験。やっぱり豆まきをして邪気を払い福呼ぼう。
これからスーパーへ豆を買いに行くことに決めた。
パート帰り、塾も休みだったので、クタクタだったけれど子の下着が古びていたので買いに寄った。
ユニ〇ロやしま〇らよりももっと安い店ー、スーパーの併設店へ。
丁度、セールが行われており、半額~80%オフの服がずらり。
寝巻やタオル、それにちょっとした雑貨も販売されている。
目的の売り場へ。
子のブラジャーとパンツを探す。そしてふと思う。
いったいいつまで私が選んだ下着を着るのかと。
今は、地味目なデザインのもの。スクール下着というジャンルのブラにパンツを使っている。
子は胸が小さいので、まだカップ入りのものは身に着けていない。
だが、時期にフリルのついた女性らしいものを好むようになるのだろうか・・・
いったいいつから?高校生?
メイクをするようになってから?
自分の時を振り返ると、記憶が曖昧なのだ。いつの間に自分で買うようになっていた下着。
それに、いつから大人のようにレースの下着を選ぶようになったのかも覚えていない。
スクール下着はブラでも1000円しない。500円~以内といった感じで、しかしレースのものだと1000円は超える。
そういえば、自分自身もしばらくブラを買っていないことに気付く。常にブラトップのような安くて楽なものを身に着けているので、身体の線は勿論、胸も垂れ下がってお婆さんのようだ。
我が子には良いものをー
そう思い、690円のスクールブラと悩んだ挙句、姿勢と身体の線が良くなるブラを購入することにした。1500円程。パンツは二枚一組で600円程度だけれど。
予算オーバーした分は、私のパート代からになってしまうけれど。
年頃の娘を持つ母としては、必要経費だと納得している。
そういえば、空のポストを見て気付く。
連絡先を交換した同期から、年賀状が届いていない。
彼女の方からお願いされ、住所を教えたのにだ。
私は律儀にいつも買う枚数の年賀状に彼女の分の一枚を足してハガキを用意し、年賀シールや一言を書いて出したのに。
夫宛の年賀状も少ないと思ったけれど、それはそうだ。事務所に届くようにしている。
大量のハガキを持ち帰り、お年玉の確認を頼まれたのだった。大量といっても100枚程度か。
結婚したばかりの頃は、もっと多かった夫宛の年賀状。
世の中の風潮が、もう年賀状という文化から離れているのかもしれない。
そんな中、相変わらず届くもう付き合いのない引っ越し前の知り合いママからの年賀状。
子どもも成長し、それでも顔出し。一方的に送り付けるその神経が分からない。芸能デビューしたらいいけれどそうならなかった場合を考えないのだろうか。
片手で数える程ーその中の一枚、昔の友人からの「年賀状じまい」のコメントに悲しくなった。
相手から切られると、なんだか自分を否定された気になる。勿論、年賀状じまいなのだから、皆に向けて書かれたコメントなのだろうけれど。それでも、年賀状じまいイコール「あなたとの縁を切ります」と一方的に伝えられているような、何とも言えない気分になるのだ。
送りつけられるのも、止められるのも、どちらにしても一方的に感じてしまう年賀状。昔はこんなことなかったのに・・・
百均で購入した手帳。その価格とは思えないクオリティで、マンスリーだけではなくウィークリーも付いている。
ひと昔前の百均の手帳といえば、ぺらぺらのマンスリーだけだった気がするのに。
いまや、ちょっとした欲しいものは低価格で手に入る時代。だが、本当に欲しいものにはなかなか手が届かない事実もあるけれど。
ここ数年、ワクワクリストという言葉を耳にする。調べてみたら、自分がやりたいことやしたいこと、欲しいもの、とにかく胸がときめくような叶えたい夢をリストにするのだそうだ。夢というと大袈裟かもしれないが、ちょっとしたことでいい。
1キロ痩せるだとか、新しい靴を買うとか。
明日から仕事始めということもあり、ちょっと時間が出来た今、手帳を開いて気ままにペンを走らせた。
*工場パートを辞めて座り仕事に転職
*美容院は苦手だけれど、綺麗にして貰う
*3キロ痩せる
*一人モーニング
*引っ越し前のママ友に会う
*子と卒業祝いでホテルランチ
しかし、どう頭をひねってみてもこれくらいしか思い付かなかった。誰に見せる訳でもない叶えたいことがこれだけ?
なんだか自分がもの凄く詰まらない人間に思えた。
いや、普段から抑制されている日々だから潜在的に欲求がわかなくなっている?
もっとワクワクすること、叶えたいこと、新しい年だからこそまとめてみたい。
家族で初詣へ。
今回は、子が受験生ということもあるのでいつもより特別。
こうして家族揃って出掛けるのも久々過ぎて、なんだか落ち着かない気持ちで家を出た。
子にとっては、勉強の合間の息抜き程度の外出という感じであればいい。
本当なら、学業の神様が要る神社に行きたかったのだけれど、時間のことを考えて最短距離で済む近くの神社へ。
元旦は過ぎたので少しは空いているかもと期待したけれど、昼過ぎということもあってかまあまあ混んでいた。
「よし、ご祈祷して貰おう。」
夫は「商売繁盛」で会社の分として5万を出し、また子の学業成就に1万を出した。珍しく太っ腹。やはり、いくら反抗されていても出来が悪くても、夫にとっては可愛い一人娘なのだ。
ご祈祷を受けるのには待ち時間も含めたら2時間弱掛かった。それでも終わると身が引き締まり、そして何もかもがうまくいくような気にさえなった。
最後に絵馬に子が願いを記し、そしておみくじを引きたいと言い出した。こんな時におみくじなんて・・凶でも出たらどうするつもりなのかとハラハラしながら見守ったけれど、出たのは「吉」。更に、子は自信が付いたようだったので何よりの結果。
帰りはちょっと外食でもという気分を抑え、さっさと自宅に戻った。
夕食後、子はそそくさと勉強部屋に籠り夫と二人きり。
「あなたもほら、正月なんだし。」
そう言いながら日本酒を勧める夫。
ちょっと飲んだだけで、ぽかぽかと身体が温まる。
沈黙が続き、間を埋めるようにおちょこに口を付ける。
夫婦水入らずという空気には程遠く、それでも今はあの子の父と母としての絆を強く感じた。