経済格差
まいこちゃんママとランチをした。
隣街のスタバで待ち合わせ、私の方が予定より15分程先に着いたのでとりあえずブラックコーヒーのショートを頼み窓際の席を取った。
約束時間にまいこちゃんママは到着し、スコーンとトールの季節限定の飲み物を持ってこちらにやって来る。
「お待たせー、待たせちゃったかな?」
「いえ、今私も来たばかりだから。」
彼女は今日も素敵な装いで、襟元のビジュー付きファーが暖かそう。一見何の変哲もないように見えるボーダーワンピさえ高価なものに見える。
垢抜けている人というのは、何を着ても洗練されており一方私のようにいくら高価なものを着てもどこかイマイチというか決まらない人間というのも存在する。
きっと顔の造作やスタイル、立ち振る舞いによるものが大きいのだろう。
席に着くと、幼稚園の話や世間話ーそしてまたちょっとしたボスママの悪口というか愚痴が始まりぼーっと聞いていたら意見を求められた。
正直私はボスママと個人的な付き合いはしていないし、私もそれほど馬鹿ではないので彼女の欲しい台詞ー同意だったり一緒にボスママをこき下ろすような発言は一切せず、曖昧にぼかした発言でのらりくらりかわして行った。
私が暖簾に腕押しだと分かると、まいこちゃんママはボスママの愚痴を諦めたのか今度は姑の愚痴。
全国共通、嫁ならば誰もが頷く類のあれこれを語りだす。
「いつも旦那に色目使うの。自分の息子にだよ?胸元の大きい服着て谷間見せつけて。まいこがまだ赤ちゃんの時も私が母乳が出なくて悩んでたら、ばあばのおっぱいは大きいからママのよりミルクが出ちゃうかもよーとか旦那の前で言ったりして。すごいムカツク!」
「旦那が仕事中遊びに来た時も、ほぼすっぴんでおばあちゃんの顔で来たと思ったら旦那の帰るよコールが来た途端化粧し始めて。口紅真っ赤に塗ってさ、息子を恋人だと思ってるのか気持ち悪いったら!!」
彼女の愚痴はどんどん加速し、興奮して何かに取り憑かれたかのようなこちらが引くくらいの迫力になって行く。いつものちょっとおっとりした物腰の柔らかい彼女はどこかに消えて、これが地が出るということなのか。
私は殆ど聞き役で、それでもひとしきりしゃべると満足したのかランチへ行くことになった。彼女が予約したというフレンチの店。正直焦る。ファミレスくらいの金しか持ち合わせていなかったから。
急いでATMで金をおろして彼女の後ろをついていくと、ちょっとした住宅街の中にこじんまりとした可愛らしい建物があり、個人経営のフレンチレストランを営む店のようだった。
ランチもやっており、コースで3000円。正直専業主婦の自分にはありえない金額だったが「予約をして来たの。」と喜々とする彼女に向かってノーと言えるはずもなくおずおず店内に入って行った。
料理はどれもこれも美味しかった。特にメインの子羊のステーキは柔らかくて美味。デザートもプレートに三種ありチョコペンとソースで綺麗に皿に模様が描かれておりとてもお洒落。
ここぞとばかり、パンだけはおかわり自由だったのでたらふく食べてしまった。
「この店、結構好きでよく来るんだ。ディナーもなかなかいいよ。」
きっとディナーだったら家族で来たら2万以上は掛かるに違いない。ドリンクも入れたらもっとかもしれない。
普段ママ付き合いをしていないのだから、今回の3000円は「もしもママ友がたくさんいたら今月3回ランチしただろう金額」だと思い割り切ることにした。
ランチが終わり、彼女が行きたいという雑貨店へ。
ビンテージ物を扱う店らしく、皿1枚5000円。マグカップにしても。
彼女は北欧雑貨にはまっているらしく、色々とコレクションしているという。その店で1枚3000円もするフキンのようなものや、2000円くらいの小さな豆皿ー正直0が一つ多いのではないかと値札を見て驚いたーや、限定品のクリスマスモチーフのマグ2客、とにかく色々と買い物かごに放り込む。
「ねえ、これまいこに買おうと思うんだけどOOちゃんとお揃いにしない?」
勧められたのは小さなお花模様の靴下、マリメッコというブランドのもの。1足1500円もする。普段3足で600円の靴下を購入しているのだが、一体これ1足で何足買い足せるのだろう。
彼女は下の子用とまいこちゃん用の靴下を1足ずつ色違いで更にかごに入れる。
私は彼女から手渡された1500円の靴下を、元の位置に戻す勇気もなく手に持ったまま店内を眺めていた。
お金が溢れるほどあったらー、私だって欲しい。
お洒落な服、お洒落な雑貨、インテリア、興味がないわけではないのだ。過去インテリアコーディネーターを目指した時期もある。
興味はあるけれど、足を突っ込んだらたちまち破産する。それが分かっているから欲望を押し込んで普段見ないようにしている物たち。
しかし、現物を目の前にし、また躊躇なく欲しいものをあれこれかごに入れている彼女を見ていたら物欲がふつふつと湧いてきて止まらなくなってしまった。
素敵なティープレートが目にとまり、1枚1500円のものだった。とても可愛らしくランチョンマットの代わりにもなるし、また朝ごはんのパンをちょっと乗っけたりお茶菓子を乗っけるのに可愛らしく、家族分購入しようか本当に迷ったのだがぐっとこらえた。
結局子の靴下ー、それからこれは700円くらいでこの店では一番安いと思われるバターナイフを購入することに決めた。
靴下は、家族に内緒で高価なランチをしてしまった後ろめたさもあった。子と2人でちょっと美味しいものを食べれる金額だ。
それを思うとこれくらい・・という気持ちになった。
彼女は総額2万くらい遣っていたようだ。イヤラシイ話だがちらっとレジを見てしまった。
それから街をぶらぶらした後、子をお迎えに行こうかという雰囲気になると彼女は、
「ちょっと銀行に行きたいんだ。」
「一緒に行きましょうか?」
「いや、大丈夫。ちょっと長くなりそうだから。今日はありがとう、またね。」
そう言って大きな紙袋二つを抱えて人ごみの中消えていった。
おそらく園で一緒にいるところを誰かに見られるのが嫌なのだろう。
経済格差を見せつけられ、金を思わぬところで散財したストレスもありちょっと意地悪な気持ちが湧く。
子に、お土産の靴下を「まいこちゃんとお揃い」だということを声を大にして言おう。そして今日はまいこちゃんママとランチをして来たと。
子はきっと色々なところでその事実をしゃべるに違いない。
クラスのママがそれを耳にしたのを知った時ー、まいこちゃんママの表情がどんな風になっているのか見てみたい気もする、ブラックな自分が顔を覗かせた。
隣街のスタバで待ち合わせ、私の方が予定より15分程先に着いたのでとりあえずブラックコーヒーのショートを頼み窓際の席を取った。
約束時間にまいこちゃんママは到着し、スコーンとトールの季節限定の飲み物を持ってこちらにやって来る。
「お待たせー、待たせちゃったかな?」
「いえ、今私も来たばかりだから。」
彼女は今日も素敵な装いで、襟元のビジュー付きファーが暖かそう。一見何の変哲もないように見えるボーダーワンピさえ高価なものに見える。
垢抜けている人というのは、何を着ても洗練されており一方私のようにいくら高価なものを着てもどこかイマイチというか決まらない人間というのも存在する。
きっと顔の造作やスタイル、立ち振る舞いによるものが大きいのだろう。
席に着くと、幼稚園の話や世間話ーそしてまたちょっとしたボスママの悪口というか愚痴が始まりぼーっと聞いていたら意見を求められた。
正直私はボスママと個人的な付き合いはしていないし、私もそれほど馬鹿ではないので彼女の欲しい台詞ー同意だったり一緒にボスママをこき下ろすような発言は一切せず、曖昧にぼかした発言でのらりくらりかわして行った。
私が暖簾に腕押しだと分かると、まいこちゃんママはボスママの愚痴を諦めたのか今度は姑の愚痴。
全国共通、嫁ならば誰もが頷く類のあれこれを語りだす。
「いつも旦那に色目使うの。自分の息子にだよ?胸元の大きい服着て谷間見せつけて。まいこがまだ赤ちゃんの時も私が母乳が出なくて悩んでたら、ばあばのおっぱいは大きいからママのよりミルクが出ちゃうかもよーとか旦那の前で言ったりして。すごいムカツク!」
「旦那が仕事中遊びに来た時も、ほぼすっぴんでおばあちゃんの顔で来たと思ったら旦那の帰るよコールが来た途端化粧し始めて。口紅真っ赤に塗ってさ、息子を恋人だと思ってるのか気持ち悪いったら!!」
彼女の愚痴はどんどん加速し、興奮して何かに取り憑かれたかのようなこちらが引くくらいの迫力になって行く。いつものちょっとおっとりした物腰の柔らかい彼女はどこかに消えて、これが地が出るということなのか。
私は殆ど聞き役で、それでもひとしきりしゃべると満足したのかランチへ行くことになった。彼女が予約したというフレンチの店。正直焦る。ファミレスくらいの金しか持ち合わせていなかったから。
急いでATMで金をおろして彼女の後ろをついていくと、ちょっとした住宅街の中にこじんまりとした可愛らしい建物があり、個人経営のフレンチレストランを営む店のようだった。
ランチもやっており、コースで3000円。正直専業主婦の自分にはありえない金額だったが「予約をして来たの。」と喜々とする彼女に向かってノーと言えるはずもなくおずおず店内に入って行った。
料理はどれもこれも美味しかった。特にメインの子羊のステーキは柔らかくて美味。デザートもプレートに三種ありチョコペンとソースで綺麗に皿に模様が描かれておりとてもお洒落。
ここぞとばかり、パンだけはおかわり自由だったのでたらふく食べてしまった。
「この店、結構好きでよく来るんだ。ディナーもなかなかいいよ。」
きっとディナーだったら家族で来たら2万以上は掛かるに違いない。ドリンクも入れたらもっとかもしれない。
普段ママ付き合いをしていないのだから、今回の3000円は「もしもママ友がたくさんいたら今月3回ランチしただろう金額」だと思い割り切ることにした。
ランチが終わり、彼女が行きたいという雑貨店へ。
ビンテージ物を扱う店らしく、皿1枚5000円。マグカップにしても。
彼女は北欧雑貨にはまっているらしく、色々とコレクションしているという。その店で1枚3000円もするフキンのようなものや、2000円くらいの小さな豆皿ー正直0が一つ多いのではないかと値札を見て驚いたーや、限定品のクリスマスモチーフのマグ2客、とにかく色々と買い物かごに放り込む。
「ねえ、これまいこに買おうと思うんだけどOOちゃんとお揃いにしない?」
勧められたのは小さなお花模様の靴下、マリメッコというブランドのもの。1足1500円もする。普段3足で600円の靴下を購入しているのだが、一体これ1足で何足買い足せるのだろう。
彼女は下の子用とまいこちゃん用の靴下を1足ずつ色違いで更にかごに入れる。
私は彼女から手渡された1500円の靴下を、元の位置に戻す勇気もなく手に持ったまま店内を眺めていた。
お金が溢れるほどあったらー、私だって欲しい。
お洒落な服、お洒落な雑貨、インテリア、興味がないわけではないのだ。過去インテリアコーディネーターを目指した時期もある。
興味はあるけれど、足を突っ込んだらたちまち破産する。それが分かっているから欲望を押し込んで普段見ないようにしている物たち。
しかし、現物を目の前にし、また躊躇なく欲しいものをあれこれかごに入れている彼女を見ていたら物欲がふつふつと湧いてきて止まらなくなってしまった。
素敵なティープレートが目にとまり、1枚1500円のものだった。とても可愛らしくランチョンマットの代わりにもなるし、また朝ごはんのパンをちょっと乗っけたりお茶菓子を乗っけるのに可愛らしく、家族分購入しようか本当に迷ったのだがぐっとこらえた。
結局子の靴下ー、それからこれは700円くらいでこの店では一番安いと思われるバターナイフを購入することに決めた。
靴下は、家族に内緒で高価なランチをしてしまった後ろめたさもあった。子と2人でちょっと美味しいものを食べれる金額だ。
それを思うとこれくらい・・という気持ちになった。
彼女は総額2万くらい遣っていたようだ。イヤラシイ話だがちらっとレジを見てしまった。
それから街をぶらぶらした後、子をお迎えに行こうかという雰囲気になると彼女は、
「ちょっと銀行に行きたいんだ。」
「一緒に行きましょうか?」
「いや、大丈夫。ちょっと長くなりそうだから。今日はありがとう、またね。」
そう言って大きな紙袋二つを抱えて人ごみの中消えていった。
おそらく園で一緒にいるところを誰かに見られるのが嫌なのだろう。
経済格差を見せつけられ、金を思わぬところで散財したストレスもありちょっと意地悪な気持ちが湧く。
子に、お土産の靴下を「まいこちゃんとお揃い」だということを声を大にして言おう。そして今日はまいこちゃんママとランチをして来たと。
子はきっと色々なところでその事実をしゃべるに違いない。
クラスのママがそれを耳にしたのを知った時ー、まいこちゃんママの表情がどんな風になっているのか見てみたい気もする、ブラックな自分が顔を覗かせた。
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- category: 幼稚園
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- 2013/11/28