育児ノイローゼ
今朝もどんよりの天気。
隣のベランダの物干し竿には何もなく、それを確認してはほっとしている妙な朝。
引きこもりにお天気は憂鬱で、更にベビー服など目に入れば切なさも倍増。
しかし、夕飯のおかずに必要な豆腐が切れていて、子と先程買い物に出たのだが、その帰りにばったりエントランスでお隣さんと遭遇してしまった。
挨拶しないわけにはいかず、ポスト前で会釈をすると、
「あー、可愛い赤ちゃん。」
子がお隣さんのベビーカーを覗き込んだ。
私も何か言わなくてはと焦り、
「ご出産おめでとうございます。」
とお祝いの言葉を述べた。
「ありがとうございます。」
嬉しそうに、赤ちゃんを覗き込みながら笑みを浮かべるお隣さん。生後1ヶ月というところか?ふにゃふにゃで可愛らしく、1ヶ月だというのにもうぷくぷくしており二重あごが愛らしい。
無言になるのが怖くて、玄関前まで話題を考えた。
「女の子ですか?」
本当は洗濯物の色合いで分かっていたのだが、お隣さんが自ら話そうとしないので当たり障りのない質問をしてみた。また大抵ー男の子か女の子か分からない時はそう聞くようにしている。間違えたとして、女の子が男の子と間違われるよりもまだマシだと思うからだ。
「はい、でもこの子、ちょっと勘が強いみたいで・・夜中とかうるさかったらごめんなさい。ずっと泣いているんです。」
正直、夜中に何度かお隣の赤ちゃんの泣き声らしきものが聞こえたことがある。それが原因で目覚める程ではないが、気になる人は気にする騒音でもある。
「いいえ、全然。大丈夫ですよ。」
そう答えると、彼女はほっとしたような表情になった。
ついでに、
「母乳ですか?」
と聞いてみた。何気なくー
しばらく沈黙が続き、彼女の表情が強ばったように見えた。
「ミルクです・・母乳出ないんで・・」
ものすごく気まずい沈黙が流れたーが、そこはもう玄関前で、お互い再度会釈をしてそれぞれの部屋に入った。
こちらにとっては何気ない質問だったのだが、彼女には不快なものだったに違いない。子が大きくなり、この手の質問は傷つく人もいるということをすっかり忘れていた。しまったーと思った時にはもう遅かった。
子とおやつを食べながらも、先の出来事を引きずり悶々としていた。
窓を開けていたのだが、赤ちゃんの泣き声が聞こえる。
いつもなら憂鬱になるその声に、なんとなく彼女のことが気がかりで大丈夫かなーなんて思っていた矢先だった。
「いい加減にしてよ!もうやだ!!!ウルサイ!!」
ヒステリックな女性特有の甲高い声が聞こえた。
一瞬赤ちゃんの声が静まり、少しすると更に大きな泣き声が聞こえて来た。
「ママ、赤ちゃん泣いてるね。」
子も心配そうに窓の方を見遣る。私もそわそわし、出窓に近づいてその声を聞く。
赤ちゃんの泣き声に混じり、何やら怒りと悲しみの混じった言葉にならない声が聞こえる。何を言っているかまで聞き取ることは出来なかったが、とにかくノイローゼの一歩手前という感じだった。
何かー力になれたら。
そう思うのと同時に、それまで嫉妬心の塊だった心はすっかり解け、妙な親近感さえわいた。
隣の芝生は青くないー青く見えただけ。その事実に胸が高鳴り、肌寒い日だというのに出窓全開で聞き耳を立てる私がいる。




隣のベランダの物干し竿には何もなく、それを確認してはほっとしている妙な朝。
引きこもりにお天気は憂鬱で、更にベビー服など目に入れば切なさも倍増。
しかし、夕飯のおかずに必要な豆腐が切れていて、子と先程買い物に出たのだが、その帰りにばったりエントランスでお隣さんと遭遇してしまった。
挨拶しないわけにはいかず、ポスト前で会釈をすると、
「あー、可愛い赤ちゃん。」
子がお隣さんのベビーカーを覗き込んだ。
私も何か言わなくてはと焦り、
「ご出産おめでとうございます。」
とお祝いの言葉を述べた。
「ありがとうございます。」
嬉しそうに、赤ちゃんを覗き込みながら笑みを浮かべるお隣さん。生後1ヶ月というところか?ふにゃふにゃで可愛らしく、1ヶ月だというのにもうぷくぷくしており二重あごが愛らしい。
無言になるのが怖くて、玄関前まで話題を考えた。
「女の子ですか?」
本当は洗濯物の色合いで分かっていたのだが、お隣さんが自ら話そうとしないので当たり障りのない質問をしてみた。また大抵ー男の子か女の子か分からない時はそう聞くようにしている。間違えたとして、女の子が男の子と間違われるよりもまだマシだと思うからだ。
「はい、でもこの子、ちょっと勘が強いみたいで・・夜中とかうるさかったらごめんなさい。ずっと泣いているんです。」
正直、夜中に何度かお隣の赤ちゃんの泣き声らしきものが聞こえたことがある。それが原因で目覚める程ではないが、気になる人は気にする騒音でもある。
「いいえ、全然。大丈夫ですよ。」
そう答えると、彼女はほっとしたような表情になった。
ついでに、
「母乳ですか?」
と聞いてみた。何気なくー
しばらく沈黙が続き、彼女の表情が強ばったように見えた。
「ミルクです・・母乳出ないんで・・」
ものすごく気まずい沈黙が流れたーが、そこはもう玄関前で、お互い再度会釈をしてそれぞれの部屋に入った。
こちらにとっては何気ない質問だったのだが、彼女には不快なものだったに違いない。子が大きくなり、この手の質問は傷つく人もいるということをすっかり忘れていた。しまったーと思った時にはもう遅かった。
子とおやつを食べながらも、先の出来事を引きずり悶々としていた。
窓を開けていたのだが、赤ちゃんの泣き声が聞こえる。
いつもなら憂鬱になるその声に、なんとなく彼女のことが気がかりで大丈夫かなーなんて思っていた矢先だった。
「いい加減にしてよ!もうやだ!!!ウルサイ!!」
ヒステリックな女性特有の甲高い声が聞こえた。
一瞬赤ちゃんの声が静まり、少しすると更に大きな泣き声が聞こえて来た。
「ママ、赤ちゃん泣いてるね。」
子も心配そうに窓の方を見遣る。私もそわそわし、出窓に近づいてその声を聞く。
赤ちゃんの泣き声に混じり、何やら怒りと悲しみの混じった言葉にならない声が聞こえる。何を言っているかまで聞き取ることは出来なかったが、とにかくノイローゼの一歩手前という感じだった。
何かー力になれたら。
そう思うのと同時に、それまで嫉妬心の塊だった心はすっかり解け、妙な親近感さえわいた。
隣の芝生は青くないー青く見えただけ。その事実に胸が高鳴り、肌寒い日だというのに出窓全開で聞き耳を立てる私がいる。


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- 2014/08/29