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どんぐりの背比べ

人の上に立つことー
羨ましがられることー
女って生き物は、隣の彼女より優位に立つことで自らの存在意義を見つけられるのかもしれない。


1年ぶりに友人に会った。
例の宗教をしている友人ー
夫は私がプライベートで友人と会うことに嫉妬することが多いので、今回も勿論内緒。子が学校の間にこっそりランチをした。


「元気だったー?」

相変わらず、バイタリティ溢れる彼女。
派手で綺麗な友人は、宗教さえしていなければ完璧な女性だ。
しかし、そんな彼女も最近悩めるお年頃らしい。


リネンの洗いざらいの白シャツにジーンズ、ハラコのバッグにキレイめのパンプス、今日も大ぶりのピアスを耳元で揺らしながら現れた彼女が店内に入ると、ふわっと周囲の雰囲気が変わるような気がする。
学生時代から、彼女と歩いているとナンパされることも多かった。美人でスタイルも良く、そして常にポジティブで私とは正反対の彼女ー
そんな彼女は、昔から私を妹というか後輩というか、ひとつ下に見ていると感じさせられることが多々ある。
常に私は聞き役で、会話の主導権はあちら側。
私が相談を持ちかけても、いつの間にかあちらの話にすり替わっていることも多々あり。
親身になって聞いてくれたかと思えば、それは宗教の勧誘へと続く前戯のようなものだったりしてげんなりすることもある。


「毎日毎日家にいてすごいね。私には無理だわ。家政婦のまま一生過ごすなんて。」

思ったことをポンポン言う。そして静かに傷つく私。


「OOも何かキャリア見つけないとね、子供育てるのもお金かかるでしょう?仕事とかする予定ないの?」


余計なお世話。


「この間、結婚した友達の家行ってさー、マイホームすっごいキレイだった!おもてなししてくれたんだけど、フルコースで出て来てお店かと思った。インテリアも素敵だし、仕事も子供も旦那さんともうまくいっててさ。あんな風になりたいな。」


悪かったね、こんな風で。
彼女は私が婚約した時も、友達が婚約指輪にハリー○ィストンの何百万円の指輪を貰ったから羨ましいと当て付けのように言い放った。それくらい稼ぎのある男じゃないと結婚する気がおきないとも。


「職場で働いてるメンバーとモチベーション違い過ぎて萎えるんだよね。子供が熱出しただとか、旦那の扶養内で働きたいとか、5時にさっさと帰ったりとか。給料貰ってるんだから、もっと覚悟持って働いて欲しい。しわ寄せは全部家庭持ってない方に来るんだよね。主婦の社会進出って・・はっきり言って迷惑だわ。」


その日の友人はどこかイラついているのか、私をはじめとする主婦全般に敵意を持っているように見えた。
ちなみに友人の職業は、ある種の資格保有者でなければなれないもので、だから子育て期の主婦であってもいっぱしの給料を得ることが出来る。


「うちらの仕事ってさ、残業ありきなの。それなのに5時帰りって・・旦那に養って貰えるんだからお遊びで来て貰っても困るんだよね。息抜きで働きたいっていうならレジ打ちでもしてくれればいいのに。」


さすがに私もイライラして来て、


「その言い方は主婦皆を敵に回すよ~レジ打ちだって大変な仕事だよ?」


ひきつり笑いを無理して浮かべながら、反論してみた。
すると、彼女は途端にいつもの鼻をくしゃっとさせた笑顔を浮かべ、

「あはは、ごめんごめん。OOも主婦だったよね。つい話してると学生時代に戻ったようで忘れちゃうんだよね。OOはえらいよ。家のことしっかり守って、ご主人も優しそうだし娘ちゃんも可愛いし。」


そう言いながらも、昔から私のその環境を「羨ましい」と言ったことはない彼女、夫のことも「優しそうね」と取り柄のない男を夫に持つ友人にかける言葉の常套句以外聞いたことはない。
そんな、自分の自尊心さえ損なわれそうな人間と何故まだ一緒にいられるのか?
それは、私も彼女を上から目線で見ているから。
彼女に何を言われても笑顔の私、その裏に冷ややかな目で彼女を見下ろす私がいる。


「OOの着てる服、それ気に入ってるの?この間も着てたよね。どこの?」


「ネット通販で買ったの。」


「それってポリエステル?痒くならない?私、服だけは安いの買えないんだよね。でもこの間買ったばっかのシルクのブラウスが何かに引っかかって、慌ててお直し出したら1万掛かったー。でもまた買い直したら3倍掛かるししょうがないけどね。上質な服は手入れが大変、クリーニング代も馬鹿にならないけど、それでもユニクロとかは買えないなぁ。街でかぶりまくりでしょう?恥ずかしいし。」


また上から目線ー冷ややかに彼女を見下ろすもう一人の私がついに口火を切る。


「いいなぁ。キレイな服たくさん着れて。私なんてプチプラ通販ばっかり。たまにブランド服買えても頑張ってアウトレットだよ。」


にっこり笑いながら、そしてひと呼吸おいてから彼女に一撃。


「でもねー。子供がいるとひらひらしたブラウスや上質なスカートなんて履いてられないの。すぐ汚されるし、それ以上にそんな服買うお金あったら、子供の教育資金貯めないとならないからね。マイホームだっていずれは欲しいし。その為には貯金。私も独身の頃は自分の為だけにお金使うのが生きがいだったけど。今はそれ以上に子供に使うことに喜びを感じるんだよね。子供産んで初めて持った感情だよ。自分以外の誰かの為にお金を使う楽しさったら!子供の笑顔があれば何もいらないし、欲しい気持ちもわいてこない。ありきたりの子持ち主婦の発言だけど。自由なお金を使えた昔と今なら、やっぱり今を取るかな。レジ打ちでも掃除のおばさんでも何でも、人に胸を張れないようなキャリアがない仕事をこれからすることになったとしてもー、それでも子供の為なら何でも頑張れるんだよね。母は強しって言葉が子供産んだらやっと分かって来た気がする。それで子供が育ったら、旦那と旅行三昧したいんだ。老後は2人仲良く子供に迷惑は掛けずにね。それが私の今の夢かな。」


少々大げさに脚色をしながら話す。子供がいても物欲は人並み以上にあるし、夫ともうまくいっていないにもかかわらず、それをおくびにも出さず、自らの「今」を幸福だと言い切るー、一生独身かもしれない彼女を傷付けるには十分過ぎる物言いで。

一瞬彼女の表情が曇ったように見えた。それを確認すると、勝ったのだという優越感がむくむく沸き、しかしすぐ後に、友人を少なからず傷つけた自分に嫌悪感を抱き胸が悪くなった。
なんとなく不穏な空気になり、私も言い過ぎたことを後悔し、友人の機嫌を取り戻したい一心で、さも宗教に興味がある風を装う。


「あ、前に貰ったパンフ見たよ。子育て支援の。あれ、実現して貰えたらすごく助かる。そうそう、今日は何か署名するものとかないの?協力するよ。」



その言葉で、それまで妙な言葉の駆け引きでピリついた場が、完全にまた友人主導権のーいつも通りの安定した2人の関係性のある場に戻り、彼女の表情も生き生きとし始める。
洒落たハラコのハンドバッグから取り出した、新しい冊子と署名の紙。
それらを渡され、懺悔の気持ちでペンを走らせる。
顔を上げると、そこにはいつものバイタリティ溢れる自信に満ちあふれた友人がいた。


彼女は私に優越感を抱く。
「何の取り柄もない旦那に囲われているだけの自立していない専業主婦、美人じゃないし地味でイマイチぱっとしない所帯じみた疲れた顔。毎日同じことの繰り返しでママ友関係に悩んでいるー所詮くだらない悩みーつまらない平凡で平均以下の人生ー」


私は彼女に優越感を抱く。
「生涯独身かもしれない、子供もこれから産むには厳しすぎる年齢、孤独死だって免れない、きらびやかに着飾っても若い女の子達にはかなわない、年老いた時に彼女に何が残るのだろう?仕事という生きがい?宗教という支え?いや違う、得体のしれない孤独感だ。自分の為のマンションを購入し、ローンを支払う為に定年まで仕事をする人生は、自己完結の虚しい人生。」



互いを下に見ることで続く関係性、歪んだそれは友情と言えるのだろうか。そして、それに終止符が訪れるのは、彼女が結婚したその時かもしれない。誰もが羨む男性を捕まえ、そして子供を授かった時。
その時、私達の関係は、私の方から断ち切る結果となるのだろう。
それ程、この繋がりはもろくて弱い細い糸のようなものなのだ。それまでは、腐れ縁として細々と続いていくのだろうと思う。





































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空振り

天気の良い平日は、自宅にこもっていると自分が悪いことをしているような気がして鬱々としてしまう。何かしなくてはー、気持ちばかりが焦り、スーパーのチラシを見て広告の品を見つけると、やっとすべきことが見つかったように思い安堵する。

一つ198円のボックスティッシューそれだけを買いにスーパーに自転車を走らせる。買い置きが既に5パック程あるというのに。
こんな小さなことで達成感をおぼえる。ああ、今日も充実していたー心の中独りごちる。 
ものの30分で終わってしまう買い物だったが、それでもその為に化粧をして外着に着替えて、外の空気を吸うことが出来たのは良かった。
ティッシュボックス片手にエントランスに向かうと、素敵ママと出会った。

「あら、買い物?」

「うん、ティッシュがね、切れてたの。」


また見栄を張る私、素直に広告の品だったからと言えばいいものを。
素敵ママが抱く赤ちゃんは、可愛らしい水色の小花柄のカバーオールを着てすやすや眠っていた。ちょっと目にしないだけでも日に日に成長する赤ちゃん。生きているのだなー、当たり前のことを思う。


「可愛いね、とっても。」


時間はたっぷりある私は、もっと立ち話をしていたかったのだけれど、素敵ママは時計を見ながらエレベーターのボタンを押す。残念だったが私も共に足を向けた。


「あれ?押さないの?」


素敵ママが私の住む階のボタンを押してそのままでいたので、思わず聞く。彼女の階は別なのだ。


「うん、今日はね、お友達のお家。」


歌うようにそう言いながら、荷物を持っていない方の手で赤ちゃんの髪を撫でた。ちらっと荷物を見ると、手土産なのだろう、彼女の好きなスタバの袋。
エレベーターが停まり、共に歩く。というよりも、我が家に来るのか?と思ってしまう。適当な話をしながらも、私の行く方に進む彼女に、馬鹿げた話だが、一瞬うちに寄りたいってことなのか?と思い焦ると同時に期待した。


ー部屋、掃除しておいて良かった。洗い物はー、まあいいか。トイレと洗面台がまずいから、彼女を家に入れた後にすぐさま先に手洗いする振りをしてさっと拭こう。タオルも新しい物に替えなくてはー


頭の中がせわしなく動く。あれして、これしてー段取りを世間話をしながら取るのは大変だったが、それよりもドキドキする気持ちが大きかった。いつ、どのタイミングで彼女が私に言うのだろうー「お邪魔してもいい?」って。
我が家のドアに近づいて、さあ、いよいよーという時に、


「じゃあまたね。」


とにっこり笑いながら、彼女は思ってもいなかった方向に向かって、うちの物ではないーある家のインターホンを押した。


「はぁーい。」


軽やかな、若々しい声。
その声の正体は、お隣さんだった。
背後にその声を聞きながらも、愕然とした思いで自室のドアを開けて彼女の方を見ずに小さく、

「じゃあまたね。」


と言ってドアを開けて玄関を締めた。
そして、静かに音を立てないよう、ドアの覗き穴に目を近づける。
お隣の玄関ドアが開き、かすかに赤ちゃんの泣き声が聞こえ、素敵ママのにこやかな声とお隣さんの弾んだ声が混じる。
楽しそうなその声達と、素敵ママの後ろ姿、そしてお隣さんはドアの影で見えなかったけれど、そのドアが締まると共に、辺りに静けさが戻った。


いつの間に仲良くなったのだろう。あの皆既月食の時から?いや、その前から立ち話くらいはしていたようだったし。それにしても、展開早すぎなんじゃないの?なんで?なんでなんでなんで!?

ティッシュボックスを床にドサリと置くと、体をソファーに投げ出して天井を見る。
何で周りはすんなりと人間関係を築いていけるのだろう?何で私は皆と同じように出来ないのだろう?
受身だから?タイミングを逃すから?ガツガツして見えるから?
素敵ママとお隣さんは、世代は多少違うけれど、仲の良い姉妹のような似た雰囲気を持っているのは確かだった。服装などスタイルもどこか洗練されていて、持ち物などの趣味も同じようだし、何より放つ空気感が似通っているのだ。


「類は友を呼ぶーか。」


意識しなくても、人は自分と似たような人間を好み寄せ付けるのかもしれない。そして、私という人間は引きこもりなので、それと似たような人間はやっぱり表に出て来ない。だから、悲しいことに出会おうにも出会いようがないのだ。









































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ハロウィンパーティー

昨日も我が家に遊びに来たDちゃん。
毎日ではないが、少なくとも週に1回は来るのが日課になっているようだ。子に友達が出来たのは嬉しいし、私も普段の引きこもり生活に張り合いが出てプラスの面もあるのだが、子供相手にモヤモヤすることもしょっちゅうある。


「明日はハロウィンパーティーなんだよね。」

おやつを用意しキッチンにいると、Dちゃんが自慢げに子に言うのが聞こえた。

「え、誰と?」

「Eちゃんちに行くの。AちゃんとBちゃんとC君とR君も来るんだって~」

「OOも行きたいなぁ。」

「Eちゃんママがいいって言ったらね。」

「・・・・・」


子供同士の会話だが、容赦無い。Eちゃんは我が家と同じ一人っ子、バレエも習って一軒家、ママはいつも綺麗にしていて私とは月とすっぽん。素敵ママグループの中にいて違和感もない。クールビューティーといった感じで私は見た目からして苦手。とっつきにくい美人といったところだろうか。


「Eちゃんちでね、チョコフォンデュするんだって。後は皆プリンセスになるの。R君達は妖怪になるとか言ってたけど。お菓子貰えるんだって。トリックオアトリート!って言うと。」


子はDちゃんの説明を羨ましそうな顔で聞いていた。そんな様子がとても不憫に思えてならなかった。話が長引くと面倒になると思い、おやつを持って行きその会話を一旦中断させた。
それからは、Dちゃんの持って来ていたDSを2人で仲良くしたり、ピアニカを演奏したり、ダンスをしたりトランプをしたりと穏やかな時間が過ぎて行った。昨日は妹達は他に用事があるとかで来なかったので、下の子のお守り的なことを押し付けられることもなく、子も純粋に楽しめたようだった。
Dちゃんが時間になり帰宅すると、子は私におねだりをして来た。


「ねえ、OOもハロウィンで着るステッキと帽子買って。変身したい。」

「うん、いいけど。お家で?」


「ううん、Eちゃんちに着てくの。」

「だって、Eちゃんに誘われてないでしょう?」


「ママ、メールして。Eちゃんママに。」

「出来ないよ。番号分からないし。」


「えー。知らないの?なんでなんで?皆のママ、知ってるんだよ。なんでママだけ知らないの?!


「他のママは、幼稚園が一緒だったでしょう?だから知ってるんだよ。」


「じゃあー、まいこちゃんママは?」


「うんー、まいこちゃんは忙しいんじゃないかな?無理だよ。」


「OO、ハロウィンパーティーしたい!じゃあ家は?」




子は半ば泣きながら訴える。私もしんどくなって来た。そういう時に限って、テレビCMでは某寿司酢メーカーの盛大にハロウィンパーティーを友達同士でするシーンが流れて来てうんざりする。
夕飯中でも、風呂の中でも、そして眠りにつく直前までずっと子は「ハロウィンハロウィン」言い続けていた。


いつからだろう、ハロウィンが日本に定着したのは。これが終われば今度はクリスマス。楽しくやれる渦中の人物になれるのならもってこいのイベントだが、日陰でひっそり暮らす私のような人間にとっては、窮屈で居場所のないイベントにほかならないのだった。



































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借りぐらしの団地妻

外に引越しセンターのトラックが停まっている。
またここを出て行く住民がいるようだ。
この団地は、どちらかと言えば老齢が多く、私達のようなファミリー層の殆どが転勤族、またはマイホームを購入するまでの仮住まいとして住んでいるようだ。
団地だし、見栄えは今時のマンションのように良くは無い。システムキッチンでもないし洗面台も昔ながらのスタイル。風呂場も使い勝手が悪くすぐにカビだらけになるし、排水口も引っ越し当初から水はけが悪いのですぐに詰まる。

夫は長男。いずれ義両親の住む家を相続する時が来るのだろうから賃貸住まいを続けているのかと思っていた。しかし、この週末、義実家に遊びに行った際、その将来も危ういものに思えてしまった。
夫の姉達ー3人もいるが、長女と次女は既に結婚している。しかし、三女がまだ独身だ。
その三女が冗談だか本気だか分からないが、皆で老後問題のドキュメンタリーを観ていた際、ぽつりと一言こう言ったのを聞いた。

「私、もし結婚しなかったらこの家にずっといていい?一応権利あるよね。」

子の相手をしている風を装いながらも、耳はダイニングテーブルの方に向いていた。

「勿論よ。いつまでもいていいのよ。無理に結婚しなくたって、もし結婚して家庭を持ったとしても私達と暮らしたら孫の面倒も見れるから、あなたはずっと仕事を続けられるわよ。」


「そうだよね。私、折角今のキャリア積み上げて来たのに、結婚して子供産んだからって捨てたくないの。それにもしかすると一生結婚しないかもしれない。一人でただ寝る為だけに帰ってくる家に家賃払うのもバカバカしいし。」


「そうよそうよ、その分貯金して将来の為に蓄えなさい。払うはずの家賃分で今まで通り好きな物買って。あなたは洗濯機の使い方も分からないんだから。一人暮らしなんて絶対無理よ。」


義母は、やはり息子と住むよりも娘と住む方が気楽なのだろう。孫だって、やはり娘の孫の方が可愛いようだ。嫁の顔色を伺う必要もないのだから。


夫は相変わらず義兄達と酒を飲んでいて、家の話は聞いていないようだった。
マイホーム、小さくてもいい。中古でもいい。安住の場所が欲しい。この団地の家賃は14万だ。都心ということもあるのだろう、それにしてもその分毎月ローンとして支払っているのとただ家賃として支払っているのとでは気持ちが違う。

義両親も、相続についてはっきりさせておいて欲しい。以前、夫がいないところで探りを入れて来たことがあった。ここへ引っ越す前のこと、夫は義両親に何も伝えていなかったこともあり、私達が家を購入するのではないかと焦ったように見えた。


「家なんて買わなくていいわよ。ここがあるんだから勿体無い。」


それは、同居ということだろうか?核心は突けなかったが、長男だしそういうことなのだろうと漠然と捉えていた。しかし、この間の三女とのやり取りを聞くと、それは更に曖昧となる。姑も老後が不安なのだろう、保険をいくつも掛けておきたいのだ。
それともー、小姑とも同居ということだろうか?もし彼女が一生独身だった場合。
それは無理だ。姑とも気が合う気がしないが、小姑とは更に相性が悪いように思える。性格が自分とは違い過ぎるし、ズケズケ物を言うところややたらと自信満々な感じが生理的に受け付けない。


「婿養子取ろうかなー、今の彼、次男だしね。長男がもう親と同居してるから。」


義母の表情が、ぱーっと花が咲いたように晴れやかになったーような気がした。
一方、私の表情はもくもくと突然現れた雨雲に覆い隠されたように、先の不安で一杯になった。
一体いつまでこの借り暮らし状態が続くのだろう、はっきりさせるのが怖くて夫にも聞くことが出来ないでいる。


















































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退屈という贅沢

今日は夫と子を送り出した後、洗濯を回したまま昼過ぎまで寝過ごしてしまった。
折角の天気だというのに、実際ベランダに諸々干したのは先程のこと。なんだか勿体無いことをしたような罪悪感。
ベランダに出ると、表の通りに幼稚園バスから降りたと思われる子供達と母親達の群れ。自分とはもう関係のない世界なのに、何故か胸の奥がチクリとする。
今朝起きたまま、まだ一度も洗っていない顔を洗い、部屋着兼パジャマも着替えて身繕いをする。外出の予定はなくても、先程目にした母親達のきちんとした装いに、だらしない自分が恥ずかしく思えたのだ。


子は今日も5時間授業。二度寝したこともあり、急いで家事をしたら、ものの1時間程度で全て終了してしまい、今こうしてブログを書いている。子が帰宅すれば、またDちゃんらが遊びに来るだろう。当初、我が家にばかり来る子供達に、何故うちばかり?と苛つく気持ちがあったのだが、しかしそれも日が経つにつれ段々と薄らいで行った。
一人っ子ー専業主婦、子が園に通っていた頃は何かと忙しい日々だったのだが、小学校に上がり一気に楽になり、気楽さはあるものの今度は抜け殻症候群になりかけていたのだ。しかし、放課後に子が友達を連れて家に遊びに来ることによって、おかしな話だが張り合いが出来たのも事実。
子が帰宅する3時までに、掃除洗濯、そして天気が良ければ買い物、夕飯の準備を済ませておく。時間が余ればライター内職。子供であれ、他人が家に来るということで前倒しに用事をこなすことが出来るのだ。
そうして全てが終わった時に、学校帰りの子を「おかえり」と迎えられることで、達成感を得ることが出来る。


夫とランチに行った時の店で購入した紅茶を淹れる。
ほんのひとときの退屈で贅沢な時間。
限られている時間だからこそ、その時は貴重で愛おしい。夫も子もいないこの空間の中、2人の気配が常に漂っているこの家の中で私は護られていると思う。
ベランダに干された夫と子の洗濯物を眺めながら、ほっと一息飲む紅茶の口当たりは柔らかく暖かかった。


2時間も昼寝をしたことで、バタバタと家事を済ませることとなったが、私は丁寧に家事を愉しむ性質ではないのだろう。誰も評価をしてくれない家事に、自己満足でお気に入りのこだわりのある道具を使ってゆっくり家事をすることは、かえって虚しさをおぼえてしまい鬱々とした物を抱えてしまうことになるだろうと思う。
時間が足りない中でのぽっかり出来た退屈が、私には丁度良く前向きになれるゆとりなのだ。














































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夫とランチ

約束通り、夫とランチに自由が丘まで。

夫のご機嫌を立て直すのに何日掛かっただろう、それでも本格的にこじれる前にどうにか修正出来たことに安堵感。
街中をプラプラ歩く。
雑貨屋が多いこの街、色々と見たい気持ちもあったが夫といるとゆっくり見ることが出来ない。昔からそうなのだ。
夫はまず、値札を見る。

「え、こんなものがこんなにするの?」

度々言う。それは夫の買う私物について、私からしたら同じ台詞が出るようなものなのだが、しかしやはり夫が稼いだ金だから私が文句を言う筋合いはない。
ランチ前に、なんとなく入った店で雑貨を見ていたら、とても素敵なスープカップを見つけた。欲しいと思って手に取るとすかさず横から夫も手を出す。

「1200円だって、こんなの百均に売ってそうだな。」

そう言われたら、いくら自分の小遣いからといっても買いづらくなる。
それはとても可愛らしいカップで、3人分買うのは確かに贅沢だけれど、私と子の兼用にするだけでも十分幸せになれるカップ。温かみのあるオレンジを基調として、内側に少し大胆だけれど洒落た模様が入っており、全体的にぷっくりしたフォルムがこれから寒くなる時期、ちょっとしたスープを入れるのに良さそうな物だった。
しかし横で夫がまた、


「こんなのに金出すやついるのかな。もう行こうぜ、腹減った。」

1200円は確かに今の自分には高価な買い物なのかも。そう思い直し、後ろ髪を引かれながらもカップを元の棚に置いた。

雑誌で観て、なんとなくいつか行きたいなと思っていた紅茶専門店に到着すると、カフェがある2階に通される。見晴らしの良いガラス張りの店内。生憎の天気だったのは残念だったけれど。
メニュー表には季節のランチ、それから日替わりランチなどと紅茶とサラダとスープがセットでついてくる。それなりの値段に、夫の顔色をメニュー越しに伺うと、やっぱり一言。


「結構するんだな。紅茶だけで1000円近い、俺はこれでいいや。」


そう言って夫が指したのは、一番安いサンドウィッチ単品。セットは最低でも紅茶付きだから1500円以上するので、単品にすれば600円ちょっとで済む。家計からの外食だと一番高いのを選ぶのに、自分のポケットマネーからだとこれだ。
私だって、夫が安いのを選ぶのならそれより高いものは注文しにくい。
結局、紅茶専門店に来たというのに紅茶は頼まず、お互い単品のサンドウィッチのみでタダの水を貰う。


「ドリンクはいかがなさいますか?」

と聞かれ、水を下さいと言うのがなんだか恥ずかしかった。店員は、てっきりビールかワインを夫婦で愉しむのだろうと思って、アルコール類の別メニュー表を持って来たというのに・・

周囲を見渡すと、平日昼間とあって女性達が殆ど。私くらいの年の女性達が賑やかにランチを楽しみ、紅茶を飲み、そして中にはワイングラスを片手に笑い合っている様子が目に入った。そこでもまた、勝手な妄想を広げて勝手に落ち込む。

ーこの3人はママ友なのかな?さっきから子供の話を楽しそうにしてる・・受験の話?ここら辺に住んでるセレブママ達なんだろうな。


ーあっちの4人はうちの母親くらいの年だ。皆お洒落して楽しそうに温泉か何かのパンフレットを見てる。きっと旅行の計画でも立ててるんだろうな。いいな、羨ましい。理想的な老後だな。


目の前の夫は、相変わらずスマホ。料理をオーダーした後、こちらから最近の子のことなど話し掛けるも上の空。必死にスマホ操作するのを見て、なんだか話し掛け続ける自分がアホらしくなったのだ。だから、周囲の人間ウォッチングをしている。


ふと、楽しそうなテーブル席の間に、ポツンと一人の女性が食事をしているのが目に入った。年は私より5歳程上だろうか?薬指に指輪はない。ラフなホワイトのケーブルニットの下にはカッチリ目チェックのシャツ、そしてパールネックレスをしている。なんてことはない恰好なのだが、どこか洗練されている感じ。
スマホを見るでもなく、テーブルに読み物などもない。
あるのは、パスタと脇に置かれたグラス白ワイン。パスタを上品に口に運びながら、ゆっくりとした動作でワインを喉
に流し込むその所作は、優雅で美しく、失礼ながらもじっと見入ってしまった。
ひとりでも、こうしてその時間を楽しめる人間がいるのだ。周りに惑わされることなく、自分のペースで。


「お待たせいたしました。」


店員がサンドイッチをテーブルに置く。はっと自分を取り戻しながら夫を見ると、まだスマホをいじっている。


「ごゆっくりどうぞ。」

店員が去り、2人きりになりサンドウィッチを口にする。トーストされたパンに、しゃきっとしたレタス、トマトと厚切りベーコン、そして卵が入ったよくある組み合わせの物だったのだが、窓越しに見える景色と雰囲気でそれはとても美味しく感じられた。


「美味しいね。」


「ん。」


「これ、家で作れるかも。」


「ん。」


「最近、仕事はどう?」


「別に、普通。」



「そうそう、OOのお友達のDちゃん、毎日のように家に来るんだけど来るばっかりで誘って貰えないってOOが泣いてて・・」


「ふうん。」


片手にサンドウィッチ、もう一方はスマホ操作。まるで思春期の男の子が母親に対するかのような生返事に、イライラしたりするエネルギーはなくなった。
ただ、侘しいだけ。

また、先程の彼女がいるテーブルの方を見遣る。
今度はパスタに替わってデザートがテーブルの上にあった。モンブランと暖かい紅茶。ゆっくり紅茶を蒸らし、それから丁寧にカップに注ぎ入れる。その動作を自ら味わうように、ゆっくり、ゆっくりと。

私もー、そう思い、ゆっくり、ゆっくりとサンドウィッチを味わう。
もし、自分が今も独身だったら彼女のように優雅でいられただろうか?答えはノーだ。
年齢だけが増し、資格も特にない常勤の事務員は、きっと後続の若い女性達に追いやられながら、影でヒソヒソ笑われながらもその場に留まるしかなく、身を小さくしながらも会社にしがみついていたかもしれない。
私よりも一回り若い、女性正社員にコキ使われながらー

それを思うと、今の自分のこの状況が少しはマシに思えるのだった。夫という社会的に守ってくれる存在ー、そして子。私は守られているー


すっかり綺麗になった皿を目の前に、夫に言う。


「ねえ、この間母からたまには夫婦でご飯でも食べに行きなさいって言われてお金貰ったから、一杯紅茶飲まない?ここの紅茶、高いかもしれないけれど専門店だから、きっと美味しいよ。」


一瞬、夫はスマホから目を上げる。店に入って初めて目が合ったのが皮肉だったが、


「ん、同じのでいいよ。」

やっとまともに返事をしてくれたのが嬉しかった。
紅茶を愉しみたかったので、普通にダージリンをオーダーした。
ポットとカップが運ばれ、時間を置いて茶葉が開くのを待ち、夫と自分のカップに丁寧に紅茶を淹れる。


「うまいな。」

夫が一口紅茶を飲み、満足気に言う。


「でしょう?」


熱い紅茶は私の体内でじわっと広がり、ゆっくり、ゆっくりと暖かな充足感を与えてくれるのだった。















































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お菓子交換

子の習い事は順調だ。まいこちゃんママとも表向きはうまく行っている。

以前、私が空気を読まない発言をして以来、なんとなくぎくしゃくしていたが、後日メールで謝罪したところ許してもらえたのか、挨拶と世間話くらいは出来るようになった。
あれからお茶だとかはしていないけれど。
レッスン中、親は別部屋で待機。もしくは外出。一人で来ていると思われる保護者達の殆どは送迎のみらしく、子供を引き渡すとすぐにどこかへ消えて行ってしまう。まいこちゃんママは、既にママ友がいるらしく数人の群れの中で和気あいあいとそこに留まるか、またはおそらく近場のカフェで皆でお茶なのだろう、ぞろぞろと外に出て行くようだった。彼女が私を群れの中に誘うことは皆無だ。知り合いがいない時のみ、時間つぶしに声を掛けてくるだけで。

私はここでもママ友を作ることは諦めた。入所する前の期待は、まいこちゃんママとの一件以来消え失せた。疲れてしまったのだ。
子がレッスン中は、図書館で借りてきた本を近くの公園のベンチで読むことにしている。近くといっても自転車を走らせての人目のつかない公園だ。そこで、自宅で淹れて来たホットコーヒーを片手に読書する。小さなお得用パックのポッキーをひと袋食べながら。

時間になり子を迎えに行くと、お菓子をくれと言う。どうやら子供同士で交換をするらしい。たまたまポッキーがあったのを子に渡すと、意気揚々とまいこちゃんら女の子達の輪に戻って行った。
私と同じような、一人で送迎している保護者達はすぐに子供を迎えると帰るように促し、子供も抵抗することなくすんなりと帰宅する。正直私もそうしたい気持ちでいる。子供同士が楽しくやっているのは嬉しいのだが、私自身、その時間は手持ち無沙汰。群れる子供達の横で群れている大人達、その間でポツンと佇むのは園の送迎の時と変わらない。しかし、じっと我慢。誰も見てはいないと思うが、微笑をたたえることを意識して。口角をプルプルと震わせながらー

「えーそれだけ?少なっ!」

子がまいこちゃん達にからかわれている。
お菓子交換をすると分かっていたのなら、事前にそれなりの量のお菓子を持って来たのだがー手持ちにあったのは私が子のレッスン中に食べるだけのポッキーたったの2袋だけだったのだから仕方ない。


「ごめんね、2本ずつあげるから。」

そう言いながら、子は皆に袋から2本ずつポッキーを取り出し手渡している。皆に配り終えると、自分の分が無くなってしまったようだった。
皆が美味しそうにポッキーを食べているのをじっと見つめている子。他の子が早く自分達のお菓子を子に配ってくれはしないかと見守っていたが、何か他のことで盛り上がっているようでなかなか先に進まない。
子は、何か言いたげな表情で、しかし我慢しているようだった。


ー私に、似てきてる・・


子の様子を見れば見る程、自分に似てきたことを認めざるを得なかった。それは嬉しいことなのかどうなのかさえ分からないけれど、戸惑いがそこにあったのは事実。
園時代の、周りに惑わされないマイペースさに親ながら救われていた部分があったから。
以前の子なら、あの場面ですぐに「OOにも頂戴。」と言っていたに違いない。我慢などしなかった。空気を読むことも。これは成長したということなのだろう、良い方に捉えるのならば。

目の端で、まいこちゃんママらの群れを見る。同じ小学校の保護者達なのだろうか?見たことのない顔ぶれ。私よりも後に越して来た彼女は、既にこの地域に馴染み、生き生きとママ生活をエンジョイしているように見えて羨ましかった。下の子もいるからなのだろう。同じ群れに同じ下の子くらいの子供連れの母親も数人いた。
子供達は1時間程して解散、子も他の子達から色々なお菓子を貰ったようだったのだが、その菓子を見て驚いた。よくあるファミリーパックの小分け包装だと思っていたのだが、そうではなくそれぞれ1つ100円程の菓子。チョコエッグという食べると中にキャラクターが入っている物や、妖怪ウォッチのチョコウエハース、またアイカツチョコボールだとか。

「OO、ポッキーだけで恥ずかしかった。」

子はぽつりと言う。

「ごめんね、お菓子交換するって知らなかったから。今度の時は買うようにするよ。」


ひとつ100円程のお菓子が、子の袋には7つ入っていた。8人でお菓子交換をしたのだろうが、毎回800円の出費になるのかと思うとうちの家計には痛かった。ただ、うちも同等の物を貰うのだから、次回からはそれと同等の金額の菓子を用意しなければならない。これからは自宅用の菓子を買うのは止めて、貰った菓子を7つ、1日1つずつ食べればいいだけの話なのかもしれないけれどー
他所の家は、子供のお付き合いにこれだけの金を掛けることが出来るのかと思うと、経済格差をまた感じてしまった。以前まいこちゃんママの家にお邪魔した時も思ったけれど。


「帰ったらお風呂先にしようか。それからご飯ね。」



「はーい。ねえ、2年生になったらバレエやりたい。まいこちゃん達、ダンスよりバレエの方が楽しいって言ってたよ。」


子は単に、友達と同じことがしたいだけのようだった。しかし、いくつも子に習い事をさせてマイホームを持ち、(まいこちゃん宅は転勤族なので借りていると言っていたが)、自分も子供達もブランドの服を着て、ランチやお茶に惜しみなく金を使える余裕は、やはりご主人がそれなりの稼ぎなのだろうか。
我が家は夫が管理しており、給料明細を渡されてもいないので、平均値より上なのか下なのか分からない。ただ、夫の仕事内容だと、30代から40代で世間で言うところの平均年収はあるに違いない。しかし、貯金に関しては夫を信じ任せていたところで子の通帳残高に唖然としたこともあり、疑心暗鬼。
全て把握出来ていたら、使えるところは使えるのだろうし、締めるところは納得した上で締められるのだろうけれど、曖昧な中、目的もなくただ夫から渡されている金の中でやりくりをするのは漠然としていて詰まらない。


「バレエはね、ママからはやってもいいよって言えないの。パパが全部決めるんだから。欲しいものややりたいことがあるのなら、全部パパにお願いして。」


子に向かって半ば投げやりに答える。子は特に疑問を持たずに頷いて、貰った菓子の袋を開けては取り出し、また仕舞いを繰り返していた。
ママ友は欲しいけれど、まいこちゃんママらのような上流家庭のお付き合いに入って行くことはきっと、今以上に心に暗い影を落とすことになるのかもしれない、そう思うと一人が気楽なのかもしれないと自分に言い聞かせていた。




































































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色々なひとりの形

ひとりー
子供が絡むから、だからママ友はいた方がいいんだ、子供の為にーそう思って来た。
しかし、それは違った。

ー友達が欲しいー

ママ友じゃなくてもいい、世代が違ってたっていい、親友とか腹を割って話せる深い付き合いなんて高望みはしない。ただ、気軽に声を掛けられる関係、お茶やランチに誘い会える関係が欲しいのは、きっとそれまでの人生の中に当たり前のように「ラフな友達」がいたからだ。
数は少なくても。

引越し前にはそれなりにいたママ友。ベビーカーを押しながら、今でも付き合っている引越し前のママ友は私の自慢の友達だった。
勿論、彼女に対しても「本音と建前」はいつでもあって、彼女の詰まらない冗談に面白くもないのに手を叩いて大笑いする振りをしたこともあったし、ムっとすることを言われた時もあったけれど、そんな時は彼女の良いところを思い出して受け流したりもした。それが出来たのは、彼女のことが好きだったからだ。
彼女以外にも、きっと今ならママ友と呼んでもいいのだろう、下の名前で呼び合うお茶飲みママ友は数人いたし、公園で皆で赤ちゃん連れてピクニックをしたり、お洒落なカフェでランチをしたりしたことだって普通にあった。
そういった今となっては華やかな過去が、今ある私を苦しめている現実。
気を遣って疲れてしまう関係であっても、好きな人が欲しいのだ。一緒にいたい人。それが複数いて群れとなって、その中に属することが出来たら、毎日はきっと安泰だろう。

比較してしまうのだ。過去の自分と。

決して派手ではない、というよりも、いつだっているかいないか分からないような人間で、でもきっと運が良かったんだろう。たまたまあの地で出会った彼女達は、そんな私でも一人の母親として友達として認めてくれた。
今はまた振り出しに戻っただけのこと。


一匹狼でもない、一人が気楽なわけでもない、おひとり様が好きな訳じゃない。群れの中で安心したい。ママ友が欲しいー切実に。心で叫び続けながらも一人でいるしかない私は、きっと傍から見たら無様で恰好悪くてダサい人間なのだろう。凛とした人に憧れはするけれど、私はジタバタしながらも空回り、結局一人ぼっちのままなのだ。

しかしー、受身ではいけない、そう思った。

Yさんとのランチは諦めることになったけれど、今度は自分から誘ってみよう。祭りイベントまでカウントダウン。あと少し。
それが終わったら彼女達との関係も終わる。だから、頑張って自宅に彼女達を招いてみようかと思う。引っ越してから他人を家に入れたことがないから何を準備してどうしたらいいのか分からないけれど。

決心すると、途端に気持ちが高揚して来て胸がドキドキ鳴り出した。断られるというリスクも、イベントが終われば彼女達と顔を合わすこともなくなるし気まずくはない。
その前に、まずはイベントを成功させることを第一に考え、自らの出来ることをこなして行こうと思う。





**********************


あるメッセージを下さった方の言葉が、私の背中を押してくれました。
夫とは、あれからひと悶着ありましたが、結局水曜は彼とのランチを優先する方向でおさまりました。
ママ友を優先すべき!と強くアドバイスを下さったことで、別の形にはなりましたが、自分なりに解決策を見いだせたような気がしています。
まだどうなるかは分かりませんが、暖かく見守って頂ければと思います。
感謝です。

seline


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足枷

台風一過を境に、ぐっと気温が低くなり秋の装い。去年まで子が着ていたパーカーやこれから必要だと思われる防寒着がサイズアウトした為、衣替えと共に子の服を購入しなくてはならなくなった。
先日、夫から貰った1万円を使う時が来たようだ。ここぞとばかり、夏にワンピースを購入した例のお気に入りブランドの服をネットでリサーチした。











私と子が好きな、「アプレレークル」の子供服、可愛らしい繊細なデザインに心奪われる。予算1万円でアウターを探すと、5000円で「Girlyリバーシブル中綿ジャンパー」という女の子らしいアウターがあった。そしてリバーシブル。使い回し出来て得した気分なのもありついつい飛びついてしまう。
色は断然ネイビー。表はネイビーに小さな白ドット、そして茶色のボアのポケットにフードが暖かそうで、ポケット部分には小さなブルーのリボン。
裏は全面茶色のボア。これがまた着ぐるみみたいになって可愛らしいしもこもこが暖かそう。着心地もこちらを裏にするときっと気持ち良いだろうと思う。
ピンクは花柄で、裏は白のボア。とても女の子らしいのだが、子の顔にはイマイチ似合わないのと白は学校で汚して来ると思うので却下。
子が帰宅したらどちらが好きか聞いてみようと思う。

女の子の服選びは楽しい、そして予算を考えず好きなブランドの服が買えるともっと楽しい。
アウターが5000円なので、残りでまだ色々買えるーあれがいいこれがいい、子と2人、今日の午後は仮想ショッピングだ。
週末に店で実際試着して、冷やかしではなく本当に購入することが出来るので楽しみだ。



アウターは、冬になるとそれのみ人に印象を残すことが多い。特にどこかへ上がることでもない限り、極端な話アウターの下は家着でも何でも分からない。
だからこそ、アウターに少し金を掛けても好きなブランドのものを買うと、テンションも上がるしその冬を気持ちよく過ごすことが出来る。
アウターは毎日着るものだからこそ子供も大人もお気に入りを身につけておきたい。




夫とは、あれからギクシャクしている。今朝も、夫の為に作った朝ご飯が手付かずのままだった。昨夜も、深夜残業で遅くに帰宅した夫に食事を作っておいたのだが、風呂から出るとそのまま自室。一応声を掛けたのだが、無視。
きっと、夫のプライドを傷付けてしまったのだろう。本能でYさん達とのランチを選択してしまったが、やはり夫が大事だ。私や子を養ってくれているのは夫、こうして毎日生活出来ているのは夫がいるから。
本当に本当に散々迷ったがー、やはり夫との約束が先だったのだし、Yさんに断りのメールを入れることにした。
先程夫にメールを送った。

「今度の代休、学校での打ち合わせはなんとか都合をつけて休むことにします。やっぱりあなたとランチに行きたいから。気を悪くさせてしまって御免なさい。許して下さい。」


送信してからもう何時間経つが、返信は来ない。夫が了承してくれたら、Yさんに急いで謝りとキャンセルのメールを入れようと思う。
もう、今度こそ彼女から誘われることはないだろう。私にママ友なんて出来るわけがない。それでも少しの間夢を見せてくれたYさんに有難うと言いたい。

夫の存在が足枷になっている。
一方、そう思うこと自体が間違いのようなー、ボタンを掛け違えているのではないかと思う自分もいる。






































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天秤にかける思い

先日、ランチに誘ってくれたYさんといつも行くスーパーの前で会った。彼女もこの店の常連なのだろう、気取らない性格なのか、その日目玉商品だった1本98円の卵を手に入れられたと得意そうに笑う。


「いつも売り切れちゃって。今日は気合い入れて来たからね、ゲット出来たの~」


「この間は行けなくて・・とっても行きたかったんですけど。また誘って下さい。」


社交辞令ではなく、心底そう思いながらの台詞があまりにも不憫に思えたのか、


「ううん、熱出ちゃったのなら仕方ないもんね。そうそう、来週水曜はどうかしら?またあのメンバーで大人だけのハロウィンパーティーでもしようかと思って。持ち寄りなんだけどね。そういうの面倒だったりするかな?」


二つ返事でOKを出した。
その日というか、毎日特にこれといった予定はない。毎月ある通院くらいだけれど、それも別の日だ。


「良かった~じゃあまた詳細メールするね。じゃあ!!」


そう言うと、颯爽と自転車に乗って去って行った。
ハロウィンパーティー。大人だけの。引っ越してからこれといったグループに所属していなかった自分がいよいよそういった群れの一員になれる日もそう遠くはないんだと思うと、嬉しくて嬉しくて。
スキップしたい気分で店内を歩く。ほぼ上の空での買い物だったので、いつものように頭で計算しながらではなかったこともあり大分予算オーバーの買い物になってしまった。2個で400円のトマトを買ってしまったのだ。最低1個100円以下でしかトマトは買わないのにーでもまあいい。これはへそくりで賄おう。
勿論夫へのビールは忘れない、これもへそくりから。


秋の風と太陽は心地良く、自転車での帰り道、行き交うママらの群れやファミレスに並ぶママチャリが目に入っても、気が滅入ることもなかった。
鼻歌混じりに自宅に戻り、早速壁に貼ってあるカレンダーにシールを貼ろうと近づくと、その日には既に印が付いていてはっとする。

ーそうだ、この日は夫とのランチだった。

途端に、それまでのテンションは下がり、胸がもやもやし始めた。決まっている、私の答えは。
ただ、どう口実を付けようか。
面と向かって伝えるのは難しいと思い、メールをした。


「仕事中ごめんなさい。今度の代休のランチなんだけれど、その日は学校関係の予定があること忘れててー、また他の代休の日にしてもいいかな?」


散々迷った。どちらを取るかーではなく夫のプライドを傷付けず、やんわり断る理由を。
夫とママ友、天秤にかけた時、私がすぐさま取ったのは「ママ友」だった。
こんなこと、普通有り得ない答えかもしれない。滅多にない夫との交流よりも、私はママ友が出来るかどうかに人生を掛けたのだ。
少しして、夫からメール返信が来た。

「分かった。もう誘わない。」


たった一言ーそれだけだったが頭を殴られた気分だった。取り返しのつかないことをしてしまったかもしれない。今ならまだ間に合う?
やはり学校関係はずる休みして夫とのランチを取った「夫が一番の妻」を演じるべき?

1日経った今でも答えは出ない。今朝も機嫌悪く出勤して行った夫。
Yさんにまたキャンセルメールをするのも気が引ける。ではー、私は一体どうしたいのだろう?天秤は右に左に傾きを変えながら、私の心を弄ぶ。









































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読書の秋

秋と言えば?


学校の授業で、子供達は先生からそんな質問を受けたという。

「栗!さつまいも!」

「ハロウィン!」

「スポーツ!」

「芸術!」


我が子は「読書の秋」と答え、先生に褒められたそうだ。
本を買って欲しいとねだられ、しかし手持ちに金がなかったのと節約の為、図書館へ行くことにした。
休日らしく、館内は平日とはまた空気が違う。相変わらず静かなのに変わりはないが、それでも人が多いだけで騒がしい。愛すべき喧騒。
それぞれが、それぞれの見えないベールというカプセルの中で、自分の世界を創り上げている空気感ー立ち入れない壁。心地良い孤独。騒がしさの中にもそれがある。


その日は子と一緒だったので、適当にそれぞれが借りたい本を選ぶと、子が観たい!と言ったDVDを視聴することにした。
インターネットカフェのような空間で、それこそ飲食は禁止だけれども、それでも好きな映画を借りてその場で観れるこのシステムは金に余裕がない我が家には有難い。
新作は視聴のみで借りることが出来ないので、約90分、子と共に新作DVDをお互いヘッドフォンをつけて視聴した。
2人座れば指1本の隙間が出来るかどうかの狭いソファーにもたれ、まるで小さな小さな映画館だ。
アニメだったが、私も観たかったもの。なのでいつの間にかその小さな画面に子と共にのめり込んで行った。


観終わると、既に外は夕方の気配ー
夫のいない金を使いたくない休日も、使い方が年々うまくなって来た。
エコバックにどっさり入れた本を自転車かごに入れると、なんとなくホクホクした気分になる。本屋で見掛けて手を取るも我慢した雑誌や本、少しの間待てば、多少時期のずれはあるものの楽しむことが出来る。
途中、失敗したなと思った本でも、買った本であれば勿体なくて最後まで詰まらないのを我慢しながら読んでしまうが、それこそ時間の無駄。時は金なり。その時間で子の為におやつを作ることだって出来るのだ。
借りた本ならば、読みたくなければ途中で止めて返却すればいい。その安心感が、ちょっとの好奇心であれこれのジャンルに手を伸ばすきっかけをくれる。

さてー、今日も休日出勤の夫。子は先程から読書タイムに入ったところだ。私もライター作業はお休みして、雨の音を聞きながら借りている雑誌をめくろう。
ところどころテープで補修してある古雑誌は、きっと私のような主婦達が通った軌跡も残っているに違いない。






























***


またコメント欄を締め忘れていました。メッセージ下さった方、ありがとうございます。
うっかりしていたところで、暖かい言葉に心がふわっと温もります。
こちらも台風が接近しています、今日は外出せず(私は今日もですが・・)、暖かいお茶でも飲みながらお互いゆっくり出来たらいいですね。
いつも感謝です。


seline

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無駄なシャンプー

秋の心地良い気候のせいなのか、ぼーっとしていることが多い今日この頃。
近所のドラックストアーで日用雑貨品を買い込む。
普段、ネットで色々買っているのだけれど、その日は数ヶ月に1度のスーパーセールだったこともあったので現金購入することにした。
最近の災害で、トイレットペーパーやサランラップ、その他諸々の日用品は最低限備蓄するようにしている。いつ何時、何があっても慌てないように。
カウンセリング化粧品が半額、もういい加減限界だったマスカラを購入した。短いまつ毛がコンプレックス。でも、つけまつ毛をするだけの勇気はない。地味顔にバッサリしたまつ毛はそこだけ浮いて似合わない。


レジで会計をする。先日のようなトラブルがないようにー、札を出す時もしっかり確認。釣りもレシートも確認。
ポイントカードを返すのと同時に、レジの人が言う。


「お客様のポイント、だいぶ貯まってますね。もう期限が切れてしまいます。そうするとそれまで貯めたポイントはゼロになってしまうんです。」


その店のポイントは、対象商品のみに使えるもの。滅多にドラッグストアーで買い物をすることはないし、また対象商品も特に必要なものはない。
どちらかと言えば、高価なシャンプーや化粧落とし、普段贅沢だと思うもの。
でもー、どうせポイントがなくなってしまうのならちょっとリッチに良いものを貰おう。タダで貰えるのだから。そう思い、1本2000円もするシャンプーとポイントを変えてもらうことにした。

「はい、ではこの商品で交換致します。ポイントは50%分までご利用出来ますので、別途1000円になりましてー」

そう言いながら、レジ打ちをする店員。気が付いた時には、シャンプーは袋に入れられレジも打った後ー、ポイント交換を取り消したかったが、小心者の自分はただただ言われるままに千円札を出してしまった。
返却されたポイントカードの裏には確かに説明書き。「ご購入額の半額分ポイント交換」となっていた。
今度は自分のミス。
特に欲しい訳でもない高価なシャンプー。

昨夜、そのシャンプーで髪を洗ってみたが、香りがどうも好きになれなかった。確かに髪に良いとされる栄養分だとかが入っているのだろうけれど、洗い上がりはギシギシしていたし、2000円の効果どころか、半額で手に入れただけの効果さえ得られているとは思えなかった。
これこそ、本当の無駄使いというやつだ。そして風呂上がりの夫に早速聞かれた。

「シャンプー、どうしたの?」

どんな小さなことでも見逃さない夫、確かにシャンプーのボトルは普通のシャンプーよりも高価そうなもの。だからだろう、一体いくらで買ったのか?専業主婦で贅沢だーという彼の心の声が聞こえた気がした。


「あ、ママ友からのプレゼント。」

咄嗟につく嘘。
勿論ポイント交換で足が出た分のレシートは捨てて、へそくりから1000円補填はしてある。いつチェックが入ってもいいように。
プレゼントと聞くと、途端に興味をなくしスマホをいじり出す夫に辟易しつつ、自分の注意力のなさに嫌気が刺す。


ーこの1000円であれも買えたしこれも買えた。子とあれも食べれたー

一日経っても心は晴れず、引きずる私。折角の三連休も台風直撃。なんだかなあと溜息をつく土曜の朝。














































































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風の吹き回し

ーどういう風の吹き回しだろう?

夫から、今度の代休日にランチに行かないかと誘われ、まず喜ぶよりも先に疑問がわいた。
滅多にない、子供抜きでの夫婦のランチ。
代休日、子が学校の時は大体自室にこもりきりの夫だったが、最近ではバイクの趣味に明け暮れて、気候も良いことから外出ばかり。
罪滅ぼしというやつだろうか。
素直にこういう時喜べる妻が、俗に言う可愛い妻なのだろう、しかし悲しいことに、私は夫の言動全てに対し、斜に構えることに慣れてしまった。
レスの結婚生活がそうさせたのか、それともモラハラ気味の夫にうんざりしたからなのか、どちらにせよ、夫の裏に何かあるのではないかと探りを入れそうになる自分を制止する。


「行きたい店、考えておいて。普段食えないもん何でもおごるから。」


おごるという言葉に多少の違和感をおぼえつつも、じわじわと嬉しさのような弾む気持ちがわいてきたのも事実だ。
夫は歩み寄ってくれている。
もしかすると、また2人目を作るきっかけが生まれるかもしれないーまだ、希望を捨てては駄目だ。


ネットで行きたい店を検索する。普段行かない店ーお洒落なカフェだとか。
都内に住んでいても、意外と面倒で普段は滅多に行くことのない場所はどこだろう。
候補に自由が丘が上がった。色々な店をピックアップし、夫に見せる。
夫は、最近誰かとのラインにはまっているようで、生返事。おそらくツーリング仲間とグループトークしているのだろう。今までもスマホを常に携帯していたが、より一層酷くなったような気がする。
私が横であれこれ話し掛けても、目も合わさず、

「ああ、何でもいいよ。好きな店予約しておいて。」

そう言われたので、クチコミでも人気だという、感じの良さそうなカフェをネット予約した。


夫は風呂上がりで髪も乾かさないまま、ずっとスマホをいじっている。
仕事から帰宅し、もう深夜になるというのにー、一体何をそんなに盛り上がっているのだろう?
知りたい気もしたが、執着する程ではない。ただ、また取り残されたような気分だ。目の前の家族よりも画面の向こうの誰彼に心を奪われている夫。しかし、こうして妻をランチに誘ってくれている、夫として頑張ってくれている、その事実を今は大切にしようと思った。



当日着ていく服をクローゼットから選ぶ。
久しぶりに、ワンピースを取り出した。秋らしいグリーンの深い胸元にビジューがついたもの。
こういう機会でもなければ、なかなかスカートを履く機会がないのだ。
母親から、一人の女性になる。例えそれが「妻」としてであっても、乾いた喉を潤すのには必要な時間なのかもしれない。







































































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皆既月食

昨夜、いつものように子と夕飯を食べながら一日の出来事を語り合っていたところ、授業で皆既月食の話が出たとのことで、担任が月食の時間帯を教えてくれたから観に行きたいと言い出した子。
丁度食べ終わりの時間とそれがかぶったので、風呂の前にひと目観に行くことにした。
エントランスには団地のご近所さん達。
会話に花を咲かせている女性軍を見て、一瞬怖気づきそのままUターンしたくなったのだが、子が素敵ママらを見つけてそちらの輪に駆け寄って行った。

「あらー、OOちゃんもお月さん観に来たの?」

ふわふわの赤ちゃんを抱っこしながらこちらに気が付くと、私の方に向かっても手を振ってくれた。
子はR君らと天体望遠鏡を持っている人達の群れに混じり、私はなんとなく流れで素敵ママの群れに入る結果となった。
しかし、群れといってもAちゃんママとC君ママの2人だけだったこともあり、臆することなく会話に参加出来た。
たわいのない子供達の学校生活の話ー、私もテンポ良く、会話の流れに乗れたのは素敵ママのパスが上手いから。
話し上手の聞き上手、そして誰にでも公平な素敵ママ。

「あ、こんばんはー」

会話の途中で素敵ママが私の後方に向かって挨拶する。
振り向くと、そこには赤ちゃんを抱っこしたお隣さんと旦那さんが仲良く2人並んでいた。
お隣さんは、振り向いた私に気が付くと、小さく笑顔で会釈してくれた。


「どうですか?あれからおっぱい飲んでくれてます?」

「ええ、紹介して下さった助産院に行ってみたら、おっぱいが詰まっていたのが原因だったみたいで、メンテナンスしたら溢れるように出て来て。今はがっつり飲んでくれてるんですよ。本当いいところ紹介して貰って助かりました。」


どうやら素敵ママが、お隣さんにある助産院を紹介したらしい。いつの間にか、2人は知り合いになっていたようだ。抱いている赤ちゃんの月齢も近そうだし、このまま2人はママ友になるんだろうなーそう思い、また取り残されたような複雑な気持ちになるのが私の悪い癖。
それから、お隣さんの旦那さんは愛想も良く近所の自治会の催しなどにも積極的に参加していることからか、素敵ママの旦那さんとも既に顔見知りらしく、そのまま子供達が集まる天体望遠鏡の周りの群れに入って行った。
すんなりと私達の輪に入ったお隣さん、赤ちゃん連れが2人いることから、なんとなく会話の中心は赤ちゃんの話題になり、皆和んでいた。
Aちゃんママが素敵ママの赤ちゃんを抱っこし始め、それから流れでお隣さんの赤ちゃんをC君ママが抱っこさせてといい、また私は出遅れてしまったような気がして落ち着かなくなった。
そして、また2人目の壁を思うと卑屈になり、もやもやした感情が「抱かせて」と笑顔でお願いすることへのハードルを一段と高くしたことで、途端にそこは居心地の悪い空間になった。


「可愛いねー。本当赤ちゃんって癒される。」

「おともだちだよ~あー、見てる見てる、興味あるのかな。」


小さな手は、まだ人見知りを知らない。抱かれるがままに、他人を自分の母親だと信じ、ぎゅっと胸元の服を握り締めるその手は愛らしく、そして人の子ながら抱き締めてめちゃくちゃにしてやりたい衝動に駆られた。
それを振り切るように、もうお風呂に入らないとならないからとその場を離れ、そして子の元へ行くと、ここへ来て初めてじっくり空を見上げた。

赤い月は、段々と欠けながら雲に飲み込まれ、そしてまた雲が流れると姿を現す。皆がそれを観て歓声を上げていたが、私にはなんだか不気味に思えてならなかった。
闇に食われる月のように、私の中の清らかな部分もいつか侵食されてしまうような恐れを抱いたからだった。



































































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スーパーのつり銭

スーパーの特売にウキウキしながら、先着200名10円の納豆目当てに開店前のドアに並ぶ。
私と同じような、やはり生活に困っているのかケチなのか分からないがそれを目当てに早くから来たのだろうー主婦や老人など時間はあるが金が惜しい面々が、今か今かと開店を待つ。
ドアが開き、一斉に走る人々。お一人2個までの制限通り、それをかごに放り込むと達成感。
浮いた金で結局普段は買わないフルーツを買ってしまう辺り、まだまだ私も節約家の域まで達していないのだろう。しかし一番安いバナナを選んだ。
ちらりと隣にいる主婦が、ぶどうをかごに入れているのを横目で見ながらー

この間のピオーネ、美味しかったな。

大事に大事に数粒ずつ食べたそれは、今も口に入れた途端に広がる弾力とみずみずしさが思い出される。また食べたいーけれど先月夫に家計簿のことを指摘された以上過度な贅沢をするわけにいくまい。
1000円余らせるのが今月の目標だ。


あれこれ他にも安い野菜や肉などを買い込み、朝からのドタバタでレジまで来ると脱力感。ぼーっとしながらポイントカードを出し、会計を待つ。
6425の買い物だったので、万札と25円の端数を出す。
そして釣りを受け取る。
一旦店員は札のみの釣りを私に渡してから、ポイントが溜まった分の金券が貰えるがどうするか聞いて来た。
嬉しくなって貰うと答える。
そして金券300円分とレシートを受け取りレジを後にしたが、ふとつり銭の小銭600円を貰っていないことに気がついて慌ててレジに戻る。


「あのーお釣り、お札しか貰っていないないんですけれど。」

店員は男性だったこともあり、萎縮しながらおずおずと伝える。が、しかしそんな私の態度を見てか、なんとなく威圧的な店員、そして後方で並ぶ客もイライラしている模様。
渡したレシートと私を見比べながら、

「4000円渡しましたよね?」

そう聞き返されて、逆に記憶に曖昧だった私は頷く。暗算も苦手な私はただ促されるように首を縦に振ったのだ。札が何枚かの確認はせず、ただ小銭を貰っていないという事実しか記憶していなかった。

「そうするとー、そちらに多く渡していると思うんですが。」


6425円の買い物で1万と端数の小銭25円を出せば3000円と600円のお釣り、しかし札で4000円となったので逆にこちらが400円多く貰っていることになり、その分を払い戻すことになってしまった。
なんとなく釈然としない思いを抱えつつ、それでも4000円は首を縦に振った以上受け取ったことにするしかなく、なので貰うはずだった端数を引いた分、小銭400円を店員に渡してその場を後にした。
その時、ふと札は4枚貰ったか記憶にないし、貰っていないような気がすると伝えれば良かったのだが、店員のあまりにも躊躇ない「渡した」という台詞に、すっかり自分のあやしい記憶は飲み込まれてしまった。


後からふつふつと、4000円?3000円しか貰っていないのではないかと疑心暗鬼になった。財布を覗くも、元からあった千円札が邪魔して分からない。
家路に着くまでもやもやしながら、その時のことを思い返す。
玄関を上がり、買ったものを冷蔵庫に入れるのもそこそこに急いで家計簿と電卓を取り出す。
財布の中に入っている未計算の数枚のレシートを電卓で叩き、つり銭を確かめる。

ー足りない。

やはり足りなかった。
けれどあの場で自分の記憶も曖昧な中、強く店員に言い続けることが私には出来なかった。
周囲の目もあったし、もしレジの中を再計算するとなると一旦その場は使えなくなる。その上で実は私が間違っていたとなるとバツが悪いし居たたまれないーそしてそのスーパーにはもう行けなくなる。

小心者の私は、結局その件に関しては泣き寝入りすることになった。少なく貰った上、更に小銭を払ったことで1400円の損失。
納豆10円で得をし、買い物券を貰った嬉しさはもう消え失せていた。
自分のへそくりから1400円の金を充てがう。ライター案件、これで約5回分は飛んだことになる。貰った買い物券や安くなっていた納豆代を差し引いても損をしたという事実にイライラし、気の弱い自分に嫌気がさした。
ああいう場で、強気に自分の主張を通せる人が羨ましい。
大きなことでも小さなことでも、結局は自分自身に自信が持てない性格が招いた出来事だった。










































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ダウン

心待ちにしていた金曜前日ー
学校から帰宅した子の様子がおかしかった。
やたらと疲れたを連発し、寒い寒いと言うので宿題はやめて少し寝かせた。
夜寝られなくなるからと、1時間程寝かせてから早めの夕飯と風呂に入れ、歯磨きの仕上げをしようとふと顔を触るとなんだか熱い。
慌てて体温を計ると、37.8℃の微熱。
このまま暖かくして寝かせれば朝には下がるだろうーと言い聞かせる。
なんていっても明日は待ちに待ったYさん宅のランチ会なのだ。
子の心配と同時に、どうにかして平熱に下がって欲しいと祈るような気持ち。
しかし、私の願いに反して子の熱は夜間になり更に上がった。
38℃代に突入した深夜2時頃、翌日のランチは諦めなければならないことを確信した途端、脱力感で一杯になった。
朝になると39℃近くまで上がったので、そのまま病院へ連れて行くことになった。忘れないように、Yさんにキャンセルのメールを入れる。しかし返信はない。

病院に行き、季節の変わり目による寒暖差が起こした風邪と言われ、薬を処方してもらい自宅に戻り子を寝かせた。
少し落ち着いたところで時計を見ると、既に正午を回っていた。

ー皆今頃ランチしているんだろうなー

子のアイスノン枕を替えながら、朝から殆ど飲まず食わずだった体に、子の為に作ったが要らないと言われたうどんを流し込む。
Yさんからの返信はなく、がっかりした気持ちと不安な気持ち、そしてもう2度とこのような機会はないんだろうなという諦めの気持ちがわく。
私以外の3人は、これを機会に仲良くなって頻繁に行き来をするようになるかもしれない。本当ならその中に私もいたはずなのにー
熱を出した子に責任はないが、それでもいつも元気な我が子が今日に限って熱を出す運命に、自らの運の悪さを思い落ち込んだ。

イライラして、持っていくはずだったチーズケーキを一人で1ホール食べてしまった。太っていた時にしていたドカ食い。最近スリムになったことでこういったドカ食いも無くなっていたのだが、ストレスが急に掛かった時などこうして顔を覗かせる暴飲暴食。
過食症まで行かないが、独身~妊娠中と産後はこうしたストレス性過食を定期的に繰り返していたのだ。
1ホール食べた後、今度はしょっぱいものが欲しくなり、買い置きしてあったポテトチップスを1袋食べてしまった。満腹になったところで罪悪感が一気に押し寄せた。
焦って、酵素サプリを流し込む。2粒のところを一気に4粒。
少し落ち着いたところで、子がうなされたような声を出すので急いで傍に行く。

「だーかーら!やめてーー!!」

泣き喚く子。何か怖い夢を見ているのだろうか。
大丈夫かと声掛けするも、こちらの声は聞こえていないようだ。目をつぶったまま、ぐっしょり汗をかき泣いている。熱は相変わらず39℃。

「遊びー!行きたい!Dちゃんちに!OOも行きたい!」

熱でうなされているのに、そこの部分だけはっきり聞こえた。
そうか。子も私と同じ様にその小さな世界で苦しんでいるのだ。相変わらずDちゃん宅に遊びに行けていない我が子、うなされる程行きたかったなんて。
そして、Dちゃんの部分をYさんに変えたら、まるで今の私の気持ちを代弁しているかのようで更に苦しくなった。

親子で欲しいものが手に入らないー

熱でうなされる子を撫でながら、切ない気持ちに胸がぎゅっと締め付けられた。
































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決戦は金曜日

人生アップダウン。
長い目で見たら、今この孤独な日々は些細な日常のひとこまに過ぎないのかもしれない。
これからずっと続くのかもしれないし、ひょんなことから刺激的な毎日に変化するのかもしれない。

昨夜、思いがけないメールが届いた。
Yさんから。
祭りボランティアの打ち合わせメンバーを自宅に誘う内容だった。


「こんばんは!突然ですが、今度の金曜空いてますか?子供達がいない間、お暇でしたら我が家でランチでもどうですか?知り合ったのも何かの縁、遊びに来て下さったら嬉しいです~(*^_^*)」


ドキンーと胸が高鳴った。
久しく味わっていない、ときめくような気持ち。
Yさんー、あなたはなんて素敵な人なんだろう。
初対面から社交的な人柄だとは思っていたけれど、先日スーパーで会って以来、なんとなく寂しい思いをしていたのだが、この誘いメールでそれまでのモヤモヤは一気に吹き飛ぶ。
まいこちゃんママに対してのような、妙な駆け引きめいた気持ちは全くわかず、二つ返事でOKのメールを出した。
しばらくすると、他メンバーからも出席の返信がCCで届いた。
嬉しかった。

なんとなく、このメンバーには初対面から嫌な気持ちなどわかず、むしろ憧れの感情ープラスの感情しかわかなかったものだから、そんな印象を持つ彼女達と個人的なランチが出来るー子供付きではない、憧れの母達だけのー更に店ではなく自宅に招かれるという一歩突っ込んだ関係性を築ける予感に小躍りしたい気分だった。


手土産は何にしようー
見栄を張るのが私の悪い癖。
金もないのに、そういうのはやめにしよう。そう思い、カルディでたまにご褒美に買うチーズケーキと小さなクッキーだけ用意した。
嬉しくて、嬉しくて、子にも夫にもその日は異常な程優しかったかもしれない。
夫は、普段滅多に冷蔵庫に入っていることのないプレミアムモルツに驚く。

「え?これどうしたの?」

「お母さんからのお小遣い、私達だけじゃなくあなたにもビールくらいと思って。」

「ありがとう。俺も何か甘いもんでも土産に買ってくれば良かったかな。」


夫婦は鏡だ。
私が優しくすれば、夫もこんな優しい言葉を掛けてくれる。
ママ友関係がうまくいけばー、きっと私は母としても妻としても、もっと自信が持てて家庭も円満に行くのかもしれない。
もう、すぐそこまでの金曜。
その日には、小さな可愛らしいお花のシールを貼った。

ーまるでデートを待つ女の子じゃないのー

小さく苦笑しながらも、キッチンで鼻歌混じりに皿を洗う私がいた。


































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将来の夢

「将来は何したいの?」

従姉妹が子に聞く。
それに対して、子は分からないとつぶやいた。



週末の1日、夫は仕事、半休でバイク。
取り残された子と私は、休日出勤していて暇だという従姉妹の家に電車を乗り継ぎ出向いて行った。
この間会ったばかりなのだけれど、赤ちゃんは日々成長しており、すっかり新生児を卒業してマルマルとしていて愛らしかった。
従姉妹の家はオートロック付きのマンション、新築だ。ローンは相当なものだろうと思ったのだが、双方の親がいくらか負担してくれたのでそれ程大変でもなさそうだ。
部屋はまるでインテリア雑誌から切り取ったようなのに、赤ちゃんグッズもそれらを邪魔しないような木をメインにした物だとか、ナチュラル系の色合いで統一していることから、なんら産前とそれ程生活が変わったように見えない。
何よりー、自分が産後髪の毛振り乱してボロボロの部屋着姿でいたあの頃と比較すれば雲泥の差。
ヘアメイクもしっかりして、マネキュアも爪こそ短く切り揃えられていたがしっかりしてあり、今流行のミモレ丈スカートに可愛い短めニットを合わせていた。
子育て中にスカートを履ける生活は正にセレブそのものに思える。


「相変わらず綺麗にしてるねー。赤ちゃんのいる家とは思えないよ。」

お世辞ではなくそう言うと、従姉妹は嬉しそうににっこり笑った。
手土産は持っていったのだが、従姉妹も子の為に色々用意してくれていたのか、お取り寄せした菓子類がたくさんテーブルに並べられた。
普段滅多に食べられない高級チョコレートにクッキー、有名老舗のおせんべい、1本600円以上もする瓶入り果汁100%ジュース。
子は目をキラキラしながら喜んでそれらをたいらげた。あまりにがっついていたので、普段ろくな物を食べさせてない子だと思われたかもしれない。

お茶をしながら、冒頭の会話になったのだ。
何気ない、小学生に向けての普通の質問。せめて「アイドルになりたい。」「小学校の先生になりたい。」と言うかと思ったのだけれど、以外にも子の答えは「分からない。」だった。

「ママは何になりたかった?」

ふいにそう聞かれて、何も答えられないでいると、

「おばちゃんは何になりたかった?」

子は従姉妹に向かっても聞く。
それに対して、従姉妹はすぐさま答える。


「おばちゃんはね、もう小学校の頃からお薬渡す人になりたかったの。子供の頃から喘息で辛くってね。お薬飲むといくらか良くなって。お薬くれるお姉さんがいつも、おまじないしてくれたのが嬉しくてね。早く楽になりますようにってお薬と可愛いシールくれたの。それを集めるのが楽しみだったから嫌な病院も頑張って通ったんだ。多分そのお姉さんに憧れたからかな。あとは、おばちゃんのママは看護師なんだけどね、いつも女も男と同じくらい働かないと対等でいられないって煩く刷り込まれてたからかな。」


「ふーん、おばちゃんお薬くれるお仕事してたんだ。もう辞めたの?」


「うん、今はお休み。でも赤ちゃんがもう少し大きくなったらお仕事するかもしれないな。」

「おばちゃん恰好いい!OOもお薬渡す人になりたいなぁ。」


「え~、おばちゃん嬉しいよ、OOちゃんならなれるよ。おばちゃんの血が混じってるからね。ついでにおばちゃんのママは看護師さんだから、そっちの血も混じってるかもよ~。女の子はこれからの時代結婚してもずっと家にこもってたら駄目!」



そんな会話を2人がしている間、なんとなく胸がざわざわし出した。従姉妹は悪気は全くないのだが、もう少し私がいるのだから気遣って欲しかった。
そんなモヤモヤした気持ちでいると子が、


「ママはいつもOOが学校の間家で何してるの?」

と聞いて来た。
家のお仕事してるよと答えると、子は突然、


「おばちゃんみたいにお薬売るお仕事してもいいよ。OOが学校に行ってる間なら。」

と言い出した。
何ともバツが悪いような居心地の悪い思いで、その仕事は勉強をたくさんしてテストに合格しないとなることは出来ないと教えると、子はじゃあ何がいいの?と聞き出した。
まるで、冒頭の質問を子に返された気分。2人きりなら適当な返しが出来るものの、目の前で従姉妹がニコニコ笑いながら聞いていたので難しい。


「そうだね、OOがまだ小さいからママは家にいるの。お仕事し始めたらOOがお家に帰って来た時誰もいないけどそれで本当にいいの?寂しいでしょう?今は外に怖い人や色々な事件もたくさんあるし。だから、OOがもっと大きくなったら何になるか考える。」



子はその答えに納得したのか、歌を歌いながらアナと雪の女王のDVDを見始めた。
従姉妹はその後、その続きを始める。私はいい加減その話題から逃れたかったが、従姉妹も一時とはいえ専業をしている分、色々将来のことを考えるのだろう。
以前は働かず家にいるつもりと言っていたのに、いつの間に復帰をする方向で話を進めているようだった。


「子供の為にもしばらく専業でいようと思ってたんだけどね、ここ数ヶ月でやっぱり私には向いてないわ。ずっと家にこもりきりなのはきついし、ストレスも溜まっちゃって。旦那はあちこち連れてってくれて、お金も自由に使わせてくれるんだけど、それでもやっぱり自分で稼いだお金で自分の物を買う生活の方が私には合ってるみたい。どうしても、旦那に養ってもらってるって感じが自分には合わないんだよねー。」


「そうなんだ、資格もあるしいつでも復帰出来るんだからそんな焦らなくてもいいんじゃ・・」


「いやいや、資格あっても日々勉強だよ。やっぱり現場を何年も離れると勘がにぶっちゃうしね。この子が成人したら仕事と趣味に生きたいし、その為にも今立ち止まってることは後々長い人生の中で後悔する気がするんだよね。」

「なんか・・すごいね。」

「すごくないって。っていうか、今専業の方が珍しいんじゃない?私からしたらそれもすごいなーって思うよ。この先どうなるか分からない中で一馬力でやってくって不安じゃないのかなって。旦那と離婚したり病気になったりしたらアウトでしょ?大丈夫なの?」


従姉妹だからずけずけ言いにくいことを言うし、心配もしてくれている。
分かっているのだけれどカチンとする。



「子供の頃、お母さんがいなくて寂しかったから子供にそんな思いはさせたくないって言ってなかった?」


「うん、そう思ったこともあった。でもさ、子育て期間は最長でも20年、その後の人生も同じくらいあるとしたら、何を生きがいにしてくの?子供はべったりの母親を重荷に感じるかもよ。あんたのところだってそうじゃなかった?」


従姉妹と会う時、大抵母の愚痴をこぼしている。唯一母のことを知っていてその愚痴をこぼせる相手なのだ。
娘依存気味で、結婚からひと悶着あったことまで、従姉妹は全てを知っており、だからこのままでいくと私も子に対してそうなるのではないかと警告している。
再びカチンと来る。
それは、自分も心の片隅にいつもある恐れだからだ。母のようにはなるまいーそう思いながらもそれにどんどん引きずられているような気がする。
結局は似たもの親子なのだ。


従姉妹とは色々語り、ストレス解消になったのか、逆にある種のストレスが溜まったのか、それでも帰り際は笑顔で別れ、手土産のピオーネをぶらさげ帰路につく。
普段買えない高級果物、おやつに出たのを子がすごい勢いで食べたので冷蔵庫にあった物を持たせてくれたのだ。きっと普段から季節の果物を当たり前のように常備しているのだろう。
従姉妹は生活水準を落としたくないとも言っていた。
夫から貰う生活費で、思うように果物は買えないし野菜だって買えない。育ち盛りの子にピオーネって何?と聞かれた時に申し訳ない気持ちになった。
滅多に食卓に並ばないフルーツに子は大喜び。大切に数粒食べた。1回の食後に3粒ずつ、その宝石のような粒を口に放り込むと私も子も笑顔になる。
贅沢かもしれないが、これも食育なのだ。

OOが将来の夢を即座に答えられなかったのも、私が原因なのかもしれない。
はっとさせられながらも、数日もすればそのもやついた感情は消え失せていつも通りの平らな日々を過ごす私がいるのだろう。
カレンダーの10月の頁を捲りながら、師走に近づく速度がまた早くなったことに驚かされるのだ。


























































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