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反省会

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子の通う小学校は、PTAは勿論のこと学校ボランティアであっても、その仕事内容は徹底しており、任務遂行後の反省会をすることは勿論のこと、報告書をきちっと上げなくてはならない慣例がある。
今回、私は運動会のボランティアに欠員補充という形で参加したのだが、後日役員から招集がかかり、各グループで今年の反省点と申し送り等をまとめてくれと通達があった。
直前に、ざっくばらんに決められたグループごとに報告書を提出ということで、招集日に配布された指定の用紙にメンバーの意見をまとめて書き込むという形だ。
事前に知らされていたので、口でうまく伝えられない分、せめて紙にきちっとまとめておこうと夜な夜な反省点をいくつか箇条書きにし、まとめて分かりやすくA4用紙に収めた。
少々やり過ぎた感があったのだが、それでも何も用意していないよりはマシと言い聞かせて持参した。

以前集まった時のように、各グループになり意見を交わし合う。前回同様、仕切りの人が配布された報告書フォーマットを手に、メンバーに向かって意見を求めた。


「あの・・これ、まとめて来ました・・」


自信無さげに用紙を取り出し、机に置いた。メンバーが一斉に感嘆の声を上げてくれたので心の底でほっとした。場を白けさせてしまうかもー、やり過ぎで痛いヤツと思われるかもーと危惧していたからだ。


「助かります!これ、この文章使わせてもらってもいいですか!?」


仕切りの人が嬉しそうに私の書いた用紙に目を通してくれた。私のような目立たない人間でも役に立つことはあるのだーと嬉しい気持ちになる。
仕切りの人が、私の書いた文章を更に分かりやすくまとめながら、所定の用紙に清書していく。しかしその途中で、ポンポン周りから意見が飛び交い始めた。
それらは、私が事前に考え抜いて挙げた反省点よりも的確であり、仕切りの人も記述する手を止めて、周囲の意見に耳を傾けながら大きなリアクションを取り盛り上がる。


「そうかー!確かにあれはまずかったですね!!来年は時間で分担してもいいかも!それ、申し送りしましょう!」


報告書に記述するスペースは限られているので、メンバーの意見を全て取り込むことは難しい。そして、長々と箇条書きをした私の文章は、いとも容易く次々にカットされる。
頭の切れが良いメンバー達の思いつきの発言にかなうわけもなく、いつの間に私が提出したA4用紙の箇条書きメモは、他の資料の下敷きになり見えなくなってしまった。


思うままに意見を出す彼女らに気後れする。勇気を出して一言発言しようにも、予め用意した箇条書きメモは下敷きになってしまっているので言葉にならない。かといって、思い付きでの意見すら浮かばず、またいつものようにただ薄笑いを浮かべながらその場にいることしか出来なかった。

さっきまで、感嘆の声をあげてくれたメンバーは、既に私の存在などそこにないかのように盛り上がり、次から次へと今年の反省点から来年への改善点を挙げる。皆、頭の回転が早くテンポの良い会話ー、そして無駄がない。私のようなにぶい人間が入る隙などどこにもなかった。


時間になり、報告書は皆の意見で真っ黒になりそうだった。仕切りの人がメモにまとめた意見を綺麗に清書しながら、


「じゃあ、私が全部まとめて書いておきますんで。もういいですよ~お疲れ様でした~」


「じゃあお願いします、お先失礼します。」


「お疲れ様でしたー」


ぞろぞろと皆が席を立つ。
私もそれに習い、席を立ちながら挨拶をしようとした時だった。



「えっと・・OOさんですよね、このメモ。参考にしたいんで貰ってもいいですか?」


仕切りの人が私の渾身の作を手に笑顔でそう言った。単純に嬉しかった。先程まで雨雲で支配されていた心に、ぱーっと太陽の光が射したかのような気持ち、作った笑顔ではない自然な笑顔を彼女に向けている私がいた。


「あ、はい!勿論です。参考になるか分かりませんが・・使っていただけたら嬉しいです。」



見てくれている人は見てくれるのだーということを実感した一日だった。無駄かもしれないと思われる作業であっても、私なりに出来る範囲で頑張ろうと勇気付けられた出来事だった。






















































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ホテルランチ

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「もしもし、私よ。」


最近では、電話のベルが鳴るとその音で実母からだと分かる。彼女からの電話は、セールスとは違ったどこか勿体ぶったような鳴り方をするからだ。


「あんた、今家?」


「うん、そうだけど・・」


家だから、こうして家の電話に出ているんじゃないか。分かりきった質問をするところがまた鬱陶しく思わせる。



「私はね、今ホテルラウンジにいるのよ。天気もいいしね、お紅茶でも飲みにと思って。」


ーお紅茶?セレブ気取りだろうか?
聞いてもないのに、嬉々としてそう語る実母に少しの嫌悪感がわく。
実母は金が無いと言いながらも、こうやって無駄遣いをする。私の今月の仕送りだってよく分からないものに消えていくのだろう。釈然としない思いを抱えながらも彼女の話に付き合う。これも親孝行だと自分を納得させてー


「お父さんも誘ったんだけどね、あの人詰まらない人だから家で緑茶啜ってる方がいいって。相変わらず貧乏臭い人よ。私はね、よく来るのよ、ひとりでも。だって気分転換になるじゃない?ホテルならティーバッグじゃないちゃんとしたお紅茶淹れてくれるしね。今ケーキも頼んだのよ。美味しそうよ。」


受話器越しだが、母の精一杯の強がりが伝わる。ひとりでも平気、充実しているー、楽しんでいる。無けなしの金を使ってひとりでホテルラウンジにいることを唯一娘に自慢することが彼女にとっての充実した日々だとしたら、なんて悲しい人生なのだろう。


「ひとりで楽しい?虚しくはない?私だったらホテルじゃなくてもいいから友達と手頃なカフェでお茶出来たら幸せ。」


心の中で母に向かって言う。勿論本当に声に出したりはしない、彼女を傷付けるからだ。表向きは、


「優雅でいいね~、たまには家事を休んでゆっくり自分の為に時間を使うのも気晴らしになっていいよ。年を取ってもそういう場所に足を運ぶのは素敵なことだよ。」


と思ってもいない台詞を吐く。母を喜ばせる為に。しかし、若干意地悪な私もいる。


「でもさ、昔よくお茶してたKさんとか誘ってもいいんじゃない?」


少しの無言の後で、



「Kさん?あの人となんて嫌よ。あの人、ファミレスか小汚いセルフのカフェしか行かないもの。私、ドリンクバーとか嫌いなのよ。洗ってるのかもよく分からない汚いグラスでティーバッグのお茶なんて。家でちゃんとした紅茶飲む方がマシ。あの人とは価値観が違うの。安ければどんな場所でもどんな料理でもいいんだから。」


昔のパート仲間で、働いている頃は頻繁に名前が出ていた彼女のことを非難する。もう何年も会っていないのだろうーKさんは社交的な人で、確か常に忙しそうにしている人だった。付き合いが多ければそれなりに出費も多い。Kさんからしたら母との付き合いはたくさんの友人付き合いのうちの1つー、つまり月に10回ランチがあったとしたらそのうちの1回。だからファミレスでもいいのだろう。ファミレスで1000円使ったとしても、10回にすればそれなりの出費になる。
一方、母からしたらKさんは唯一、付き合いが出来る人だった。1ヶ月に彼女との約束1回を入れるとしたら、ランチに何千円掛けても惜しくはなかったのだろう。
そこに、二人の温度差が生まれ、疎遠になって行ったのかもしれない。そして、プライドの高い母は、彼女の方から疎遠にされることだけは我慢ならず、あくまでもこちら側から距離を置いたのだということを以前、何度も何度も私に訴えた。私からしたらどうでもいい話なのだが。

くだらないプライドというのは、人を寄せ付けない。計算のない、平和主義者の周りには人が集まる。母を見てそう思う。しかし、のんべんだらりと生きて来た自分に平和主義への道のりは長そうだ。
そこに行き着くには、既に絶対的な自信や幸福を得ていたり、また逆に本当の意味での不幸を知ることでしか不可能なのではないかという気がしている。
常日頃つまらない不満を持ち、うじうじ悩んでいる私に、欲を出さずシンプルに生きるということはとてもハードルが高く、困難なのだ。


























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ペディキュア

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「ママ、可愛いー!」


ここのところの暑さで、足元も涼やかにサンダルを履く機会も増えた。また梅雨になればレインブーツになるのだろうけれど、素足にサンダルはやはり気持ち良い。普段、手元は洗い物などの家事ですぐに駄目になってしまうこともあり特に手の指先に手入れを加えてはいないが、夏季限定でペディキュアだけは塗ることにしており、それがささやかな楽しみでもある。地味な自分でも、足の爪ならば多少ハメを外しても良い気がするのだ。
夫は、私が爪に色を塗ることを好ましく思っていない。なので、塗ってもナチュラルなカラー、ベージュだとか少し遊んでも少々ラメの入った限りなく茶色に近いゴールドだとか。ビタミンカラーなどはもっての他。
しかし、最近の夫は私への干渉が少なくなったこともあり、今までしてみたかったカラーを試してみたい気持ちになる。ギョッとするような色ー少しは反応するだろうか?

ネットでネイルの塗り方を研究する。ジェルネイルが長持ちするらしく、ぷっくりした艷やかな爪を保つには普通のネイルよりも断然仕上がりも持ちも違う。独身の頃は、同僚に付き合ってネイルサロンに通っていたこともある。当時はカルジェルと言っただろうか?今で言うジェルネイルなのだろうけれど、1本当たり千円ー両手で1万もよく掛けていたと思う。しかし、爪が伸びるまでの1ヶ月弱、美しくネイルが施された指先を目にするだけで、仕事へのモチベーションは高まった。誰に対してでもない、自己満足の世界。
唯一苦手だったのは、美容室同様、ネイリストとの対峙だ。希望のデザインを伝えるのも骨が折れたし、また沈黙になればこちらの話題性のなさに情けない思いが湧いた。客なのだからもっと堂々としていれば良いもののー、そしておどおどしている私を見透かしたかのように、ネイリストは上から目線なのか、押せ押せで要らないケア商品などをセールスしてくるのだ。それが苦痛に変り、すっかり足が遠のいてしまったのだ。
最近では、ジェルネイルのキットをサロン1回分の価格で手に入れることが出来る。すぐに禿げてしまうネイルに苛立ちをおぼえるのも度々なので、キットを購入しようかと色々調べていたら良さそうな商品があった。コスメランキングでも1位を獲得しているので安心出来る。
爪への密着度が高い、独自の原料配合のクリスタルジェルベースだから、プライマーやサンディングなしでも持ちのよさを実現。薄い爪、弱い爪にも安心して使えるとのこと。面倒なプライマーやサンディングなしで使用出来るのも良い。
また、下から固まり、表面に未硬化分が残る一般的なジェルと違い、クリスタルジェルトップなら、表面から完全硬化するため拭き取り不要。クリーナーやワイプも不要だ。
そして、国産ということもあり、日本の厳しい基準を満たしていることから安心して使用出来る商品だ。










「OOも塗ってー!」


子に、子供用のネイルを買ってやったことがあるが、すぐに水で流せるだけあって色付きも悪く子供だましのようだった。2年生ともなると、やはり大人が使っている本物のメイク用品が気になるのだろう。リップグロスを私が見ていないところでこっそりつけているのを目にしたことがある。私も子供時代、母の化粧台をいじるのが好きだったから良く分かる。ただ、こっそり使う程の度胸はなかったのだけれど。

薄いオレンジのマニキュアを子の小さな爪に丁寧に塗ってやる。勿論翌日学校が休みの時限定だ。本物のマニキュアに、子の瞳がキラキラと輝く。


「わー、可愛い!綺麗!」


「日曜の夜には落とすの忘れないようにしないとね。」


「はーい!」


小さな掌を広げ、思い切り息を吹きかけて乾かそうとしているその表情が、何とも言えず愛らしかった。女の子は可愛い。難しいところもあるけれどー


「学校、最近休み時間は誰と遊んでるの?」


子が上機嫌なのを確認してから、聞きたかったことをさりげなく口にする。少しの表情の変化を見逃さないように。


「えーとね、今日、Nちゃんと怖い話したよ。」


その一言だけで、救われる思いがした。特定の友達ではないかもしれないが、たわいのない話が出来る子がクラスにいるということー。
嬉しくなって、根掘り葉掘り子に尋ねる。


「え!どんな怖い話したの?ママに聞かせて!」


子がNちゃんから聞いた話は正直全く怖くも何ともなかったが、


「すごーい!怖い~、ママ今日寝られないかも。Nちゃんすごいね!ママが怖がってたってNちゃんに言っといて。」


と必要以上に子の交友関係に干渉してしまう始末。ひとりきり、教室でポツンとしている子を想像しては胸が痛かったのだ。足の痛みの原因は別のところにあるのかもしれない。取り敢えず、友達と遊べないなどの交友関係の悩みからではなさそうなのでほっとする。

友達親子ーとまではいかなくても、こうして女同士、ある種の楽しみを共有していくことで子が心を開き、私に洗いざらい話してくれることを期待している。
まだ低学年だからこそ、修正は利くのだと信じている。









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成長痛について、色々と対策を教えて下さった方、ありがとうございました。早速試してみたところ子もだいぶ楽になったようです。
助かりました。


seline

















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運動会

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強い日差しの中、子にとっても私達にとっても待ちに待った運動会が始まった。

前日、なんとか素敵ママとコンタクトを取ることが出来、リレー代表のエントリーをぎりぎり訂正する事が出来た。夫も、前日まで来れるかどうかはっきりしなかったのだが、仕事をうまく切り上げられたので休みを取ることが出来た。
子は、なかば諦めていたので嬉しかったよう。私も子と二人きりの弁当タイムは切ないと思っていたので、こんな夫でもいてくれるだけで大いに助かるのだと再認識した。

朝から子の好きな弁当作りー
唐揚げ、ポテサラ、タコウインナー、ベーコンのアスパラ巻に甘い玉子焼、ブロッコリーにプチトマト、ちくわきゅうりにひんやりさっぱりマリネ、それから三種の具のおにぎりーデザートも奮発して、ぶどうと苺を入れたのだ。
夫は子の出る競技だけ確認すると、自宅と学校とを行ったり来たりで落ち着かない様子だった。

そして、最悪な事が起きた。
子が代表として、全校生徒の前で見本として踊る競技があったのだが、それを夫婦揃って見逃した。
義母からの電話が突然掛かって来たので出ると、駅まで来ているとのこと。私は寝耳に水で驚くも、夫が知らないところで誘ったらしく、弁当だって家族分しか用意していなかったので青ざめる。
夫は義母を迎えに行くと言い、飲み物と食べ物が少ないと思うから買って来てと私に告げて、飄々とその場を去った。私はプログラムを確認するのも忘れてパニック。
大急ぎで足りない昼ご飯の買い出しに、近くのスーパーへと自転車を走らせる。なんとか惣菜や稲荷寿司などがあったので、100均で使い捨ての弁当パックを買い、それに詰め替えた。すっかり周りが見えなくなっていた私は、それをレジ前のテーブルで行ったのだが、隣で買った物を袋に詰め込んでいる人がこれみよがしに覗こうが、構ったもんじゃないくらい必死だった。

大慌てで学校に戻り、今度はPTAの種目が迫っていることに気が付き、慌てて荷物を置くと入場門へ急ぐ。なんとか競技に間に合い、義務を果たしたらほっとして、どっかり疲れが全身に覆いかぶさった。
荷物の方を見ると、義両親と夫、そしてなんと姪っ子と甥っ子がいて驚く。


「こんにちは、今日はわざわざすみません・・」


「あら、こんにちは。OOはどこにいるのかしら?」


義母は悠長に日傘をさしながら双眼鏡を取り出し、校庭を見渡す。そこで、始めてプログラムを見て気が付いたのだ。子が家で何度も練習し、緊張しながらも頑張ると言っていたダンスが既に終わっているということにー
私が必死になって、買った稲荷寿司をパックに詰め替えている頃だろうかー、夫が駅まで義両親を迎えている頃だろうかー、とにかく、今回一番の目玉であり、ビデオカメラ必須のその瞬間を夫婦揃って見逃したのだ。
折角、壇上で見本のダンスをしていたというのにー。もう何も喋る気にもならず、ただ夫にはそれとなくその事実を伝えた。しかし、夫は子が自宅で何度も頑張って練習をしていた姿を見ていないから実感がわかないのか、いまいち残念がる様子もなく、


「まあ、午後だって玉入れだとかあるんだろう?」


と、どうでも良い言い草なのにカチンと来た。それから、甥っ子と姪っ子の分の食べ物を再度買いにスーパーへ行く。夫の言葉の足りなささ、それに加えて突然誘われたからと言ってのこのこ孫まで連れてやって来る義両親の図々しさにも腹が立った。



弁当タイムー、子は興奮と疲れからか、弁当にあまり手を付けることはなく、しかし従姉妹や祖父母が見に来てくれたことが嬉しかったようだ。私はというと、体育館の開け閉め等の仕事があるので、弁当時間といっても皆といられたのは10分程度ー、体育館の窓を開けて換気をしたり、ゴミを拾ったり、なんとも落ち着かない時間だった。


午後になり、子の徒競走、それに玉入れはじっくり観ることが出来た。どちらの競技も子は特に目立つこともなく控えめな動きをしていたのだが、義両親が、



「誰に似たのかしらね?」


と、夫は運動会では常にリレー戦代表だったことなどをさらりと告げて来たのが嫌味に聞こえて嫌な気がした。徒競走は、同じくらいの足の速さで組み分けされる。運によるところが大きいのだ。現に、子は去年1位を取った。たまたま今回はメンバーが子より早い子達だっただけのこと。
普段、義両親にそこまでイライラすることはないのだが、この日は彼らの一挙一動にいちいち苛立ち、早く帰宅して欲しい気持ちで一杯だった。


メインイベントが終わり、子の学年の競技がもうないことを確認すると、夫は暑さにへばっている義両親を連れて自宅に引き上げると言い出した。
てっきりそのまま帰宅するのだろうと思っていたのだが、我が家に寄るのが当然だと言わんばかりの義両親。自宅は朝、バタバタと弁当を作ったり洗濯をしたりで時間がなく、シンクにはてんこ盛りの未洗いの食器、コンロには汚れたままのフライパン、また洗面台や水回り、トイレ掃除などもこの日はせず、更に掃除機も帰宅してからやるつもりだったので掛けていない。
夫に、そのことを耳打ちすると、


「別にいいよ。そんな格好つけんなよ。とにかく皆疲れてるんだから休ませたい。」


と最もなことを言うので、反論の余地もなかった。運動会ボランティアに参加していなかったのなら、一人早々に引き上げてざっと掃除をすることも出来たかもしれないのだが、後片付けも待っており、汚い我が家を見られるのは諦めるしかなかった。


運動会が終了し、子の組は負けたのだが、案外子は悔しがるわけでもなくドライな様子だった。もっと集中して見ていたかったのに、とんだハプニングのお陰で邪魔された気分。悶々としつつもテントや机、椅子などの片付けを率先してやっていたら、Yさんが声を掛けてくれた。


「お疲れ様ー!元気だった?」


鬱々としていた気分が少し晴れる。


「お疲れ様です。今日は暑いし疲れましたね。」


「ねー、でも楽しかったよね。運動会って大好き。」


無邪気に笑うYさんを見ていたら、自分が些細なことにイライラし、折角の子の運動会を台無しにしていたのかもしれないと気が付く。
もし、彼女が私の立場にいたとしたら、わざわざ遠くまで足を運んで暑さの中来てくれた義両親をまず、一番に気遣うだろう。そう思うと、少しだけ苛立ちが消えた気がした。

片付けが終わり、自宅に戻る。
玄関ドアを開けるとー、若い女性物のパンプスと、ごつい見慣れないスニーカーがあり驚く。リビングに入ると、


「お邪魔してまーす。」


なんと、次女夫婦。甥っ子と姪っ子を迎えに来たのだと言う。乱雑な部屋の中、ソファーには夫の脱ぎ散らかした部屋着があるからなのか、地べたに座る義両親達。大慌てで座布団を出し、皆に勧めるも遠慮してなのか断られ、気まずくなる。人数分のコップが足りず、急いでシンクにあるマグを洗い、なんとかお茶を淹れて皆に出す。


「あ、お構いなくー。」


次女はそう言いながらも、この家を隈なくチェックしているようだった。さすがに表立って汚いとは言わなかったが、



「なんか、突然来ちゃってごめんねー。子供が疲れたって電話で言い出すから、電車で帰るのもキツいだろうって思って。連絡しちゃうと、OOさん掃除とか頑張っちゃうでしょう?運動会で疲れてるだろうし、だったら知らせない方がいいのかなって思ってね。私も、仕事してるとこんなだよー、なかなか家のこと回らないよね。」


耳まで真っ赤になる思いー仕事をしているわけでもないのに・・いつもこんな風に乱雑だと思われたのだろうか。やり切れない思いに胸が痛くなる。



「今日は、皆でピザでも取るか。」


夫が突然提案して来た。義両親も義姉も、私の浮かない表情を見て察したのか、口々にもう帰ると言い出した。しかし、空気の読めない夫はゴリ押しする。


「何遠慮してんだよ。明日は休みだろう?俺、今から酒買って来るからさ。」

「だって、私達、車なんだけど。」

「親父、今禁酒してんだろう?運転代わりにして貰えばいいよ。」


「いいよ、お父さんが運転するよ。折角だから食べて帰ろう。」


義父も夕飯を食べて行く気満々だ。Yさんだったらーと心を切り替えようとしても、彼女にはなれない。和室で子供達が布団を出してトランポリンのようなことをしている。部屋は既にカオス状態ーこの中でピザを食べようと言い出す夫の気が知れず、しかし、心で泣いて顔で笑って、こう言うしかないのだった。


「散らかってる中、申し訳ありませんがー、是非食べて行って下さい。今日はOOの為にわざわざありがとうございます。本当なら夕飯の準備でもするべきなんでしょうが・・ピザなんかで御免なさい。メニュー表、今取って来ますね。」


笑顔でそう言いながら、別部屋にあるメニュー表を取りに行く。部屋に入った途端、ドレッサーの鏡にうつる誰かと目が合った。それは、普段より一回りも老け込みやつれた顔をしている私自身だった。












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安請け合い

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明日は運動会ー
行事の手伝いをすることになり、心はざわざわしている。役割は体育館の解放と戸締りという地味な仕事だが、風邪など引いて休むわけにはいかない。小さな仕事でもそれなりのプレッシャーはあるのだ。

今日は、前日準備に入り、一応助っ人として椅子や机などを運んだりの作業をしに学校へ向かった。放課後の校庭は、いつもと違いPTA役員を始め、ボランティアなどで賑わっている。
到着したはよいものの、誰も知り合いがおらず手持ち無沙汰。遠くにYさんが見えた。先日の打ち合わせにはいなかったのだが、彼女も助っ人だろうか?
相変わらず仲間に囲まれて生き生きとテントを組み立てている笑顔の彼女を見ていたら、一人ポツンと所在なく立つ自分が惨めに思えてそっと視線を逸らす。彼女からしても、こんな不甲斐ない人間とランチをしたことがあるという事実は忘れてしまいたい過去かもしれないーとまた勝手な被害妄想に陥る。私の悪い癖だ。


携帯を取り出し、なんとか体裁を保とうと画面に集中している振りをする。メールなど来ていないのに、まるで急ぎのメールを読んで慌てて打っているかのように。
そこへ、私の肩を叩く人がいた。振り返ると見知らぬ顔だった。


「えっと、OOさんですよね?」


私が首から下げているネームカードを見て確認するように言うその人は、PTA役員だった。


「田中先生から聞いているのですが、今回は欠員の穴埋めありがとうございました。助かりました。それで・・また図々しいお願いなんですがー。父兄の競技が足りなくて、出て貰えませんかね?勿論1種目だけでいいのですが。」


突然の申し出にこちらもパニックだ。彼女はバインダーを持っており、そこには種目と出る人間の名前がずらりと一覧表になって並んでいる。
そして、もう1枚、保護者宛に以前配布された、出たい種目のアンケート表もあり、番号が振ってあった。我が家は夫も人前で走ったりするのは苦手なので、提出せずにそのままどこかへやってしまったあの紙だ。


「どれでもいいです!お願いします!」


彼女が相当困っているようだったので、無難な綱引きを引き受けることにした。


「じゃあ③番でお願いします・・」


「助かりました!!ありがとうございます!」


「いえ、大丈夫です。」


久しぶりに人の役に立てたのを実感し、こちらも嬉しく思った。それまで役立たずのように、ただ広い校庭で1人ぽつんと立っていたのだが、一応来て良かったー、少しは力になれたのだと自分を認めてあげることが出来て心は軽くなった。


そして、思ったより早く終わってしまった前日準備を終え、昼過ぎに自宅に戻りそうめんを茹でてから食べ、アイスコーヒーを飲みながら、子が持ち帰ってきたプログラムだとか、また運動会関係の保護者宛の手紙などを整理し、読んでいたのだがー


パラリとクリアファイルから落ちて来た、先程見掛けたアンケート用紙。
それを見て、心臓がバクバク飛び出そうになった。なんということだろう、私は大きな間違いをしてしまったのだ。
よくよく見ると、③番の横に書いてあるのは、「教師VS保護者リレー」だったのだ。私が希望していた綱引きは②番だったのだ。あの時、なぜ数字で答えてしまったのか。普通に「綱引き」と答えなかったのか??
暑さでぼんやりしながら目に入った用紙、見間違えをしてしまうなどあの時の私は想像だにしていなかった。
急いで訂正をしようにも、彼女の名前も知らなければ連絡先さえ分からない。それにー、もう名簿を作ってしまっているかもしれない。


どうしよう、どうしよう、どうしよう。
PTAの催しだから、担任に電話をするわけにもいかない。運動会を担当している役員は誰なんだろう?それも分からない。ママ友がいない私には何もー

ふと、素敵ママの顔が浮かんだ。そういえば彼女は役員になったんだった。急いで、運動会の担当者の連絡先を教えて欲しいとメールを送る。
あれから何時間かー、まだ返信は来ない。


やきもきしながらも、今は天に身を任せるしかない。どうか、どうか変更出来ますようにー














































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成長痛?

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最近、疲れからか、子が足の痛みを訴えることが多い。最初は成長痛か何かだろうと大して気に止めず、休んでいたら治るからと言い聞かせていたが、段々とその痛みの頻度が増して来たので病院にかかることにした。


「うーん、なんともないですね。レントゲンも特に問題ありませんし・・精神的ストレスから痛みが発生しているのかもしれません。」


取り敢えず、足自体に異常がなかったことでほっとしたのも束の間ー、心療内科を紹介されてある意味不安になる。その夜夫に相談すると、


「え?心療内科??子供ならよくある痛みだろう。精神科に見せるだなんて随分なこと言う医者だな!そんなヤブの言うことなんか聞かなくていいから!」


と、心療内科に診せることについては反対のようだった。

足の痛みは、数分で治まることもあれば1時間続くこともあるようだった。涙ながら痛みを訴えることもあればちょっと痛いとしかめ面で済むこともある。
ただ、ここのところその痛みが1ヶ月あまり続いているので心配だ。運動会の練習もあり疲れているからだろうか?担任に学校での様子を聞いてみた方がいいだろうか?
涙をぽろぽろと流しながら痛みを訴える子に、大げさだったり嘘を付いているとは考えにくい。医者の言うように、精神的なものだったとしたら、心の痛みをまず取り払わなくてはー

その夜は、子の足をさすってやりながら眠りについた。そして、ネットで検索ーすると、子供によくあることなのか、特に治療法などはなく親が手でさすってやると治ることが多いという原因不明の痛みらしい。そして、特に精神的に不安定だったりすると発症しやすいとある。
取り敢えず、子の様子をしっかり見ながら担任にもそれとなく聞いてみることにした。チックのことも気になるが、やはり痛みは子が直接辛さを味わうことなので急を要するのだ。
















































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ハウツー本

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結婚前、私の本棚はハウツー本だらけ。小説や実用書よりも、不安定な環境や先の見えない将来に怯える私を的確なアドバイスで勇気付けてくれる唯一無二の友人は、生身の人間ではなく何十冊もの自己啓発本だった。
恋愛で悩めば、「異性から好かれる10のこと」の背表紙に飛びつき、素直にそれを実際に行動に起こす。例えば、飲み会などでは率先して大皿から各小皿につまみを取り分けるーだとか、今思えばベタ過ぎるー、もっと言えばわざとらしく安っぽいアピールだ。
「30歳までにしなければならない30のこと」だとか、「人間関係うまくいく人いかない人」だとか、「頑張りすぎない頑張り方」だとかー
そして、それは今も尚続いている。しかし、昔のように自宅にハウツー本が本棚にずらりと並んでいるわけでもない。そもそも自宅に私専用の本置き場などないし、夫にそんな本を読んでいるということが知られたらさすがに気まずい。なので、全てはネット上でその手のコラムを読み漁っている。思い立ったその時、インターネットに繋げばぞろぞろ気になる題名のコラムが出てくるようになった便利な世の中。

そのような自己啓発のコラムがいつでもどこでも読みたい放題、わざわざ本屋で金を払う必要もないので経済的でもある。
しかし、正直物足りないと思うこともしばしば。ライター内職をしていることで分かってしまったのだが、素人が書いているコラムも多く混じっているので、どの情報を信じて良いのか分からなくなることもある。選択肢が膨大に多過ぎて、本来自分が欲しいと思っている情報を的確に得られているのかと言えば、自信がないとも言えるのだ。

近頃では、ブログでも綴っているように、人間関係の引き寄せ方のハウツーコラムばかりを熟読している。宗教のような胡散臭さを感じながらも、どっぷり嵌っている自分がいる。

自己暗示ではないが、声に出すこと。こうなりたい自分ーこうありたい自分をリアルにイメージし実現化していくこと。「こうなりたい」ーではなくて、「こうなる」と言い切ること。
成功者は皆、子供の頃から大人になった自分を明確にイメージし、そしてそうなる為には何が必要で何程の時間を費やし、どう行動を起こしていくのか知っているのだ。そしてそれを行動におこすことで、具現化することが出来る。
私はというと、子供の頃からそういった目標だとかやりたいことだとかが皆無で、ぼんやりと過ごしているところがあった。夢中になれる物がなく、それは今もそうなのだけれど、それが一番のコンプレックスだった。
何もない私ー

「ほんと、あんたって無趣味ね~」

自称多趣味な実母にそう言われる度に、密かに傷付いて来たのだった。
どんな自分になりたいかー
もう40になる更年期に差し掛かった自分だが、このまま大病や事故などに巻き込まれないと仮定すれば、平均寿命まではたっぷりとした時間がある。子育てが終わってからがむしろ第二の人生。その時、どうありたいのかイメージしてみる。

「気のおける仲間に囲まれて笑っていたい、そして彼らに必要とされたい」

私のなりたい自分は、金持ちになることでもなく、有名になることでもなく、何かの技能を得ることでもなく、夫に愛されることでもないー
人と関わって生きていきたいーそれだけだった。
その為に、自分改革をしなくては。そう思い、ここ連日そういったコラムを読みふけっているのだ。今のところはそれが実生活に生かされ反映されていないのだけれど。


今夜も風呂場で唱えよう。
なりたい自分、いや、こうなるんだと。


「感じの良い人になって、感じの良い人に出会って、感じの良い日々を送るんだ!」


テレビで観る、いつでもポジティブな松岡修造のように吠える。
シャワーを浴びながら、丸裸でそうしている自分は、傍から見たらさぞかし滑稽な女だろう。内容は真逆だけれどまるで夫と同じことをしている。やはり私と夫は似たもの夫婦なのかもしれないと頭の隅で思ったりもするのだった。































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椅子取りゲーム

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私は猫ではないが、まさに借りてきた猫のような時間を過ごすはめになってしまった。
突然掛かってきた担任からの電話ー、急遽、運動会準備の係に欠員が出たとのことで、穴埋めになってくれないかというものだった。
勿論二つ返事でOKしたのだが、ふと冷静に考えてみると、欠員ということは既に何度か集まりもあり、出来上がった輪の中に入らなければならないということ。
それに気が付くと、途端に億劫になり、すぐさま断りの電話を入れたくなった。しかし、受話器越しの担任の安堵の声を思い出せば、そんなことは到底出来る訳がないに決まっていた。


そして、事前打ち合わせの為学校に出向いたのが昨日のこと。打ち合わせ場所である教室内には、時間前だというのにざわざわと人が大勢集まっており、楽しそうに雑談しているのが見えた。


ホワイトボードには、役員が分担を箇条書きにしており、該当人数も書かれていた。
時間になり、適当な席に座る。真向かいも隣も、皆知り合い同士で座っているように見えてしまい怖気づく。一応座る際には挨拶をしたが、隣の人とは目が合ったことで返して貰えたものの、あとの人達に私のか細い声は届かなかったようだ。


そして、肝心の担当決めは、挙手でサクサクと決められた。ポスターを貼る係や、大道具係や白線を引く係、またテントを貼ったり椅子を出したり片付けたりの作業等。
ボランティアなので、そこまで大変な作業ではないにしても、皆が和気あいあいとしている中でその作業をするのが苦痛にほかならない。そして、当たり前だがこちらから話し掛けなければ誰も話し掛けてはくれないその状況に、再び引き受けてしまったことを後悔するのだった。
じゃんけんなどで人数調整をしながらそれぞれの係が決まると、担当ごとに別れて席を移動し、更に細分化された仕事を互いに割り振る。長などは存在しないのだが、なんとなく喋る人が私を含む6人あまりをまとめる役となっていた。
彼女達は特段、最初から仲良しではないのだろうけれど、それでも話を進めていくうちに、その場にいる私を抜かした全員が発言し、笑ったり冗談を言ったりして場が和んでいくのに比例して、私の焦りも増していく。場の空気に合わせて愛想笑いを浮かべるしかなく、子供会の時同様、口元がうまく開かない。次第に微笑はぎこちなくなり、頬の筋肉の痛みとそれに伴い偏頭痛まで起こし始めていた。
しまいには、場を取り仕切っていた人が、細分化された担当表に名前を書いて行くのだが、次から次へとまるで椅子取りゲームのように即座に立候補する人々ばかり、仕切り手が名前を聞き取りながらメモをしていく。複数立候補している人もおり、私のように一つも役が与えられないままの人間はそこにいなかった。話が進んでいくにつれ、段々と役が少なくなって行く中でいよいよ焦り出し、何か仕事は他にないかと一字一句の言葉を聞き逃すまいとしていたのだが、そんな私の焦りをよそにどんどん話し合いは進行して行く。
勇気を出し、

「やります!」

と何度か手を挙げるも、私より早く挙げた人に白羽の矢は当たり、そもそも私が立候補していることなど皆目に入らないようで、それはまるで授業参観の時の子と重なり過ぎるくらいの空回りようだった。


「じゃあ、こんな感じで当日よろしくお願いします。役員さんに伝えて来るね。」


私は何も役を与えられていないー頭がパニックになり、声を上ずらせながらその人を呼び止めた。


「あの!すみません!!わ、私、何もまだやることないので何かやらせて下さい!」


皆の注目を一挙に浴び、顔面は真っ赤になり、頭からつま先までの毛穴という毛穴からぶわっと妙な汗が吹き出したようだった。タイミングを間違えた発言ー、本来ならもっと前にその台詞を言うべきだったのに、必要以上に萎縮した結果、周りに迷惑を掛けることになってしまった。


「あ、ごめんなさい、お名前聞いてもいいですか?」



「OOと申します・・」



「あ、じゃあ、OOさんにはーうーん、どうしようかな・・あ!じゃあ、昼休みに体育館を解放するんですよね、時間が決められているんで、その前後の鍵の開け閉めー戸締り確認などお願いしてもいいですか?」


仕切り手は、3つ4つ仕事を引き受けており、その中の1つを私に譲ってくれることになった。おそらくチャキチャキしている彼女なら、全部担当したところで大した負担にならないのだろうが、その場を収める為に無理やり私に仕事を与えてくれたように思えた。


体育館の戸締りー、結局私に課せられた仕事はまたもや自己完結出来るものだった。黙々とー鍵を与えられての戸締り確認。
それから全体的に行なう、運動会後の机や椅子の片付け等も任された。

ボランティアなのだからー、子が世話になっている学校に貢献する気持ちで参加するだけで良い。ママ友作りの場と考えるからいちいち萎縮し、うまくいかないと過剰に落ち込んでしまうのだ。
それにー、やはり発言を積極的にするべきだ。前回の子供会同様、ただそこでにこにこ置物のようにうっすら笑みを浮かべて皆の話を聞いているだけなら役立たずでしかない。もっとスピーディーに、的確に、はっきりと会話に参加しなくては。頭では分かっているのになかなか実行出来ないでいる。私の場合、もっとこういった場数が必要なのかもしれない。
誰かの例え話だが、料理を作るのに包丁も持たず、買い出しにも行かず、ただぼーっとつっ立っているだけなら邪魔だしいない方がマシ。皿洗いでも何でも率先してやるという意思表示を見せなければー


口下手なら、せめてきっちり与えられた仕事はこなそう。幼稚園の時だって何とかやり遂げたのだから。
自分に誓う声にならない声を、何度も何度も胸に刻んだ。








































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隣人の音

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日中、一人でいると気になる音。
特に最近、隣の生活音が気になって仕方がない。気になるだけで気に障るわけではない。特に赤ちゃんの声ー
可愛らしい声が耳に入ると、ついバルコニーにまで出て耳をそばだててしまう。
お隣さんの声が赤ちゃんの声に混じり聞こえるが、大人の声はくぐもっているのか通りが悪く聞こえづらい。
対して、赤ちゃんの声は良く通る。

笑い声や泣き声、何かを訴える声、はしゃぐ声ーまだ赤ちゃんだけれど、人間らしい感情が出て来て可愛さも増している頃だろう。どれもこれも微笑ましく、もう2年生になった子が赤ちゃんだった頃に思いを馳せる。
もしもー、お隣さんと私が単なる顔見知りではなく、隣人を超えた親交を深められていたのなら、喜んで彼女の子供を1時間くらい預かるだろう。
子も、弟か妹が出来たかのように可愛がったかもしれない。素敵ママの赤ちゃんを興味深げに触っていた子の表情を思い出す。

もし頼まれれば、隣のよしみで無償のベビーシッターでもするのに・・

開いた窓から聞こえる甲高い奇声を耳にしながら、また無意味な妄想をする。挨拶もそこそこの人間に大事な子供を預けられるわけがない。実際自分が彼女の立場に立ったとしても、答えはノーだ。
お隣さんのあやす声、天気の良い穏やかな昼さがりー今日はママ友らは来ていないらしい。落ち着いた彼女の声が聞こえて来る。最近夜泣きも始まったからだろうか?疲れて人を呼ぶ気が起きないのかもしれない。子供と二人きりで煮詰まっているのではないかと想像すれば、壁一枚隔てた彼女と親密になれそうな気さえする。
連日続く夜泣きに、いつ夫がクレーマーになりやしないかとビクビクしていたが、何故か夫が帰宅する頃と、夫が起きている頃には聞こえない声。
いつも夫の帰宅前にライター作業をしている深夜1時前くらいと、また深夜4時くらいからが夜泣きのピークだ。私は眠りが浅いのでついその声に反応して起きてしまうのだ。


ふと、子のお下がりをあげてみようかと思い立つ。二人目への希望を捨てたわけではなく、執着を捨てると子供は授かるとどこかで聞いたのを思い出したからだ。
それに、それをきっかけにお隣さんと打ち解けられるかもしれない。素敵ママが共通の知り合いということで話に花が咲き、まずは我が家に二人を招待する。勿論彼女らの赤ちゃんも一緒に。
それをきっかけに団地仲間として3人で茶飲み友達になれるかもしれない。

妄想はどんどん膨らむ。いてもたってもいられず、子が赤ちゃんだった頃の衣類を整理した。一番気に入りのワンピースやチュニック。春用の帽子や可愛い靴下。
一人目ということでお祝いで貰った各ブランドの洋服は、丁寧に洗ってアイロンを掛けていたので新品同様にも思える。オークションに出せば結構な値で売れるのではないだろうか。バー○リーやラルフ○ーレンなどの一張羅。
さて、いつ渡そう。偶然会った時に挨拶がてら声を掛けてみようか。あまりたくさんだと負担だろうから、5枚くらい。勿論一番気に入っていた物は渡せないけれど。

赤ちゃんのお喋りが聞こえる。汚れのない純真無垢なその声に癒されながら、今日も私は自宅に引きこもっている。それでも一人ではないような、寂しさを和らげるその音がこのまま永遠に続くようにと願うのだ。








































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私は置き物

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子ども会のちょっとした集まりがあった。私は役員ではないのだけれど、夏前の振り替え休日を使ってボーリング大会をするとのことで、その打ち合わせに召集されたのだ。
先日のように、団地の集会所を借り行った。時間より10分前に到着するとEちゃんママとDちゃんママがいた。


「こんにちは。」


「あぁ、こんにちはー」


まだ素敵ママは来ていないようだ。少々心細く思いながらも、部屋の隅っこに一旦座り他のメンバーを待つ。Eちゃんママは下の子をあやすDちゃんママと談笑しており、途中から入った私にはよく分からない話をしていたのでなんとも居た堪れない思いをしながら挙動不審にならないようバッグを開け閉めしたりする。毎度のことだがこの雑談タイムがもの凄く苦手だ。何も喋らないのもおかしく思われそうなので、勇気を出して二人に話し掛けた。


「あの・・今日R君ママは?」


「今日は妹ちゃんが熱出ちゃったみたいで来られないって。」


「あ、そうなんですか。」


彼女が来ないという事実に、今日をどう乗り切ろうかと落胆する。そして、目の前の二人は私などいないかのように再度話しの続きを始めてしまった。


予定時刻過ぎて、AちゃんママやC君ママもやって来た。下の子連れということもあり騒がしい。そして、皆が席に着いたところでEちゃんママが前回の役員会からの伝達事項、それから今度予定しているボーリング大会の詳細諸々を話出した。
彼女が話している間、皆はポンポン思いついたことや疑問に思ったことを口に出す。その度、Eちゃんママは手元にある資料を見ながら受け答え、また皆でまとめたことをノートにメモする。
子供達は近くでお菓子を食べたり遊んだりしており、騒がしいのだが、それをあやしながらも話し合いに参加する母親達。
一方、私はというと、あやす子供もいないというのにただただ置物のようにその場にじっと座っているだけだった。発言する機会を一旦失うと、緊張感が必要以上に増してしまい更に押し黙ったままになってしまう。
どのタイミングで声を出せば良いのか、それまで喋らない人間が急に声を上げたら皆を驚かせはしないか、例え頑張って言葉を発したとしても、的外れな事を発言してしまい場の空気を乱してはしまわないか、勝手に一人でドキドキし、そして周囲の目を気にするあまり失語症のようになってしまうのだ。しかし、黙ったままの時間が過ぎれば過ぎる程、妙なプレッシャーが私にのしかかる。

ー早く、何でもいい、何か話さなければ、奇妙な人だと思われてしまう、一言も話さないのに何故ここに来たのかと影で笑われてしまうー


そう思って、やっと見つけた少しの沈黙のチャンスを見つけると、即座にある種の提案をありったけの勇気を出して投げかけたー
が、なんと、私の声をかき消すかのように、C君ママが良く通る声で皆の注目を集める発言をしたのだ。私は自分の発言に精一杯だった為に、彼女が何を発言したのか内容さえ頭に入っては来なかった。
私の口から出た言葉達は、貰い手もないままどこへ行ったらよいのか分からず途方にくれているようで、切手を貼り忘れて出してしまった封筒のように、静かに私のポストに舞い戻るしかないのだった。

実際、誰も私のことなど気にしていないかもしれないー、しかし、喋りはしないが話し合いには参加しているのだといわんばかりに大げさに頷いたり、また話している人の口元をじっと見つめたりしてみる。何か言葉を発しないとーという焦る気持ちはどんどん膨らんでもう破裂寸前だ。きっとその時の私の表情は相当強張り切羽詰ったものであり、また情けないものだったに違いない。


「じゃあ、それで決まりだね。また詳細が分かったら連絡するわ。」


Eちゃんママの取り仕切りは素晴らしく、1時間もしないうちに話し合いは終わってしまった。そして、今回お茶や菓子などがテーブルに出ていないことに気が付く。エコバッグに入れて来たカルディで購入したお菓子を出すタイミングも失い、今出すべきかどうするか迷っているうちに、



「それじゃあ、お先ー。」


バタバタとEちゃんママが出て行ってしまった。どうやら仕事の時間をずらして今日の席を設けたらしく、だから無駄のない会だったのだと知る。残された母親達は、


「仕事してると大変だよねー。」


「私も下の子さえ幼稚園入ってくれたらすぐ働きたい。」


「早く手が離れないかなー。週2くらいのパートがいいよね。」


会話に花が咲き出し、いよいよ黙ったままその場にいるのはおかしいと思い、


「それじゃあ、私もこれで失礼します。」


勇気を出して、その日2度目の発言をした。彼女達は少し驚いたような表情をしながら、


「あ、あぁ、お疲れ様でしたー」


と声を掛けてくれた。素敵ママがいてくれたら、もう少し自分を出せたかもしれない。きっと今日のことで、ここにいたメンバーは皆、私のことをよく分からない無口な人間だと思ったに違いない。出来上がった輪の中に入るーそれは相当のエネルギーとコミュニケーションスキルを要する。私には難易度が高過ぎて、素敵ママの存在の大きさを改めて思い知る。子が入学して間もない頃に戻り、キャラ設定を変更させたい気分だ。彼女達と初対面の挨拶を交わした時、勇気を持って少し図々しいくらいにでも素敵ママの力を借りつつ快活明朗なキャラを演じれば良かったー今更、物静かで何を考えているのか分からないキャラからそちらへの変更は、「この人どうかしちゃったの?」という気持ち悪さを相手に与えるだけにしかならないだろう。
最近の若者は、「バメン」でキャラ変更をして複雑な人間関係を構築しているらしい。その時や状況によって自由自在に変化出来るカメレオンのようにー
しかし、私は不器用だ。七変化なんて到底無理。でもー、少しずつでもいいから変わって行かなくてはーそんな思いが常に頭にこびりついて離れない。

そそくさとその場を離れ、集会所から出て外の空気を吸うと、やっと自分を取り戻せたーそんな気がした。まるで夏日のような6月下旬並みの天気に気後れする。室内にいたせいか、外の光がやけに眩しく目に染みた。


自分から勇気を出さないとー
もういい大人なのだから、向こうからこちらの顔色を伺って話し掛けて来てくれるわけがないのだ。
それまで萎縮していた気持ち、まるで圧縮袋に入れられた布団のようだった私は、思い切り空気を吸い込み本来の自分を取り戻すかのように生き返る。そして、必要以上に今回のことを振り返り落ち込むのは止めにしようと決めると、再び集会所のドアを開け、中に入る。


「すみません、これー、今日持って来たんですが渡しそびれてしまって・・どうぞ、お子さんいらっしゃるのでおやつにでも。」


クッキーとチョコレートを出す。彼女達は一瞬戸惑いを見せたのだが、


「わー!食べたい!!」

子供達が群がったことで受け入れて貰えた。


「すみません、でも・・いいんですか?」


「ええ、家にたくさん同じのがあって食べきれないので、どうぞ。」


「ありがとうございます。」


子供達も食べれるようにーそう思って、キャラクターの菓子もその中に入れていたのが功を成した。一生懸命作った笑顔は多少引きつっていたのか、集会所を今度こそ出ると、頬の辺りが若干疲れて痛かった。
出来ればー、仲良しになれなくてもいい。ただあなた達のことを拒否しているわけではないのだということを伝えたかった。黙ったままだと誤解を与えかねない。それを解く為の勇気だった。
帰り道ー、ステップを踏むようにエレベーターではなく階段を駆け上がる。
次回はー、自分を少しでもいい、出してみよう。私は私に誓うのだった。

































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おまけ的カーネーション

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日曜は母の日だった。
しかし、当日は特に何もなく終わった。子から似顔絵か折り紙で作った花くらい貰えるのではないかとうっすら期待していたのだが、全く何もなかった。
その日、夫は珍しく休みだった。
ソファーに寝転び、片手にスマホ。母の日だからなのか、彼女を含むツーリング仲間との集まりはないらしい。あの人だって人の親なのだ。
テレビを観てもいないのに、大音量。貰って嬉しい母の日プレゼント特集などが組まれていたが、子はたまごっちゲームに熱中しており、夫は相変わらずラインか何かのゲームにはまっており、皿洗いをしている私だけが番組に耳を傾けていた。

私が物心付いた頃は、母に毎年何かしらプレゼントをしていたように思う。小学生の頃も、弟に指示しながら二人でお手伝い券だとかビーズで作ったネックレスだとかを作ってプレゼントし、母を喜ばせていた。
勿論、小遣いを貰うようになってからは、母をもっと喜ばせたくて、小遣い3ヶ月分程のプレゼントを渡したこともある。あの頃から異常な程、母に気を遣う子供だったのだ。

しかし、我が子はどうやら私とは正反対らしい。
というよりも、母の日自体を忘れているのだろう。しかし、残念な気持ちはそのまま子に向けられるのではなく、夫へと矛先が変わる。しかもイラついた感情を連れてー
子供が幼い場合、父親が子と一緒に花屋へ行きカーネーションの1本でも選ばせるだとか、母の日に手作りでも何かするよう促すーくらいしてくれても良いのではないか?
せめて家の手伝いを一緒にしてくれるだけでも助かるし、その気持ちが嬉しい。来月にある父の日ー勿論、義父と実父に何かを贈ろうと考えているが、夫に対しても、毎年のように子からーということで贈り物に手紙や似顔絵や工作を付けている。
それを、当たり前のように喜んでいる夫だが、全て私が根回ししているということに気が付かないのだろうか?


その日、夫から母の日について言葉があったかと思ったら、それは義母にちゃんとプレゼントを贈ったのかどうかだった。今回は私に丸投げだった夫、いつもはいちいち口出しをして来るはずなのだが、バイクに乗るようになってからというものの、それまでのような過干渉は無くなったのだ。


翌日の買い物で、スーパーの隅のおつとめ品コーナーに、ひっそりと造花のカーネーションのついたクッキーが30%オフで売られているのを目にした。
一体いまさら誰が何の目的で買うのだろうか?単なるクッキーが安くなっていたからーという理由で買えないものがある。特に母親世代の自分が、このおまけ的カーネーションのついた割引クッキーを、母の日翌日に買うのはなんとも惨めな気持ちだ。
そして、その造花が気になってしょうがない私のような、実際何もして貰えなかった母親は何程いるのか?
まるで、自分がそのおつとめ品コーナーに並べられているような、何ともいえない気分を味わうのだった。


















































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カラオケ遊び

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思えば、いつからか私は人前で歌を歌うことが出来なくなっていた。
まだ片手で足りる年齢の頃は、家族や人様の前で得意げに声高らかに、たどたどしいながらも色々な歌を歌っていたのは、両親が昔ながらの録音テープで録っていた私の名前の書かれたカセットテープを聞いたことでの事実で承知しているのだが、実際のところ記憶に定着しているのは、「自分の歌声を聞かれるのが恥ずかしい」という思いであって、それは大人になった今もなお続いている。


自分の声が嫌いだ。
どちらかと言えば、耳障りな声。自分の声をボイスレコーダーで録り、再生したのを聞けば聞く程、その声に嫌悪感を抱く。少し低めのしゃがれ声。
もっと女性らしい声だったら良かったと常に思う。

小学校中学年辺りからだろうか、自分の声にコンプレックスを持ち始めたのは。音楽の授業で一人一人前に出て歌の発表をするのが嫌だった。また、家族の前で歌うのすら躊躇した。鼻歌ですら、人前で歌うことが出来なくなった。


「あんた、音痴ね~」


何の気なしに言ったのだろう、笑いながら、母から言われたその言葉は、ますます私から歌を遠ざけた。家族旅行で長時間車の中、FMから流れる流行歌にかぶせて母はよくハミングした。それはとても気持ち良さそうで、子供の頃合唱部に所属していたという彼女自慢の声は、渋滞で激混みの中、動けずにいる車中で延々と繰り返され、子供心に苦痛な時間にほかならなかった。
本当は歌いたかったのだーしかし、私が入る隙などそこになく、またその家族だけの小さな空間ですら、自分の歌声を披露する勇気は一ミリもなかったのだ。


当時、付き合っていた恋人とのドライブでも、カーステレオから流れる歌に合わせ口ずさむことが出来ずにいた。その彼は歌が好きな人で、友人同士でカラオケに飲みに行ったりは日常茶飯事だったから、彼女である私とカラオケに行けないことに不満を抱いていたようだった。私も自分を素直に出すことが出来ずにいたから、「歌うのが恥ずかしい」という理由ではなく、なんとなく都合を付けては彼からのカラオケデートを断り続けその場をしのいでいたのだが、ついにドライブ中に一度も口を開かない私をおかしく思ったのか、


「OOの歌声、一度も聞いたことないよな。聞かせてよ。」


そう言われて、頑なに拒否したことがきっかけとなり、ついには破局になった。
まあ、別れる原因はその他にも色々あって、それが発端になっただけのことなのだけれどー


友達とも、仕事付き合いでカラオケに行った際にも、カラオケと聞けば逃げて来た。そんな私は裏で「人付き合いの悪いやつ」だと思われていただろうか?


子が生まれ、寝ぐずりで困り果てた時にふと子守唄を歌ったら泣き止んだ。
私のダミ声も、子にとっては心地良く響くのだろうか?嬉しくなって、多くの童謡CDを借りては歌を覚え、子に歌って聞かせた。
私の中で子の前で歌うことだけは、それまで歌について持っていたわだかまりが溶け、更には気持ちも穏やかになれた。


誰もいない日中ー静かなリビングで一人口ずさむことがある。今は便利なカラオケアプリなどもあり、携帯でカラオケまで出来る時代だ。
傍から見たら、寂しい人間かもしれない。
誰とも関わらず、部屋で熱唱している私は孤独な主婦にうつるだろうか?しかし、金もかからなければ誰かに気を遣う必要もない。多少音が外れたとしても、笑われることもなければ恥ずかしがることもない。
そして、少しは心が元気になるのだ。声を腹の底から出すことは健康に良いと聞いたことがある。なるべく朗らかになれるメロディを選曲することがポイントでもある。
人前で歌うことが恥ずかしくても、歌くことが嫌いなわけじゃない。自分の声にコンプレックスがあったとしても、それと歌とは別問題だ。
一つでも、自分が気持ち良くいられる何かを持てること、それが人目につかないことであっても、心が平和になれるのなら、これも私の趣味なのだと胸を張れるのかもしれない。









































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社会と切り離されたぽっかりの中

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ポストに溜まったダイレクトメールと不動産広告ー、その中にある「ポスティング募集」のチラシに目が止まる。何年ぶりかの社会復帰に怖気づき、まずは肩慣らし程度にそれ程荷が重くない仕事はないかーと考え始めていた。

PTA役員は立候補したもののなれず、しかし、先日素敵ママが赤ちゃんがいながらも役員お願いの電話が来たとかで引き受け、それ相応のハンデを背負っていたとしても頼まれる人望というものがあるのだな、と情けない思いに苛まれて悶々とした日々を送っていたのだ。
なんだかんだで子が1年生の頃は、環境ががらりと変わりそれに順応するのを見守るのに必死であっという間の一年だったし、またそれなりに家を守る主婦という使命感もあったのだが、夫から働くように促されてからは、なんとなく家にいるのが悪いことをしているー怠けているのだと感じ、どうにも居心地が悪い。

社会と繋がることは、働くに限定されるだけではない。ボランティアや子を通じての学校関連の付き合いや仕事などもそれにあたる。しかし、今の私はどちらにも属しておらず、今期のボランティア募集もなんとなく役員になれなかったことで手を挙げ損ね、今はひたすら担任からのあるかないかも分からない手伝い依頼の電話を待つばかりだ。
子が下校すれば、一人ではなくなる。しかし、一日の終わりー布団に潜り込む時に、とてつもない不安感に襲われる。誰も知らないぽっかりと空いた穴に落ちて、もう二度と地上に出られないようなーそんな感覚だ。
穴の中に、時折夫と子が交互に顔を出すも、しかし二人共それぞれの居場所=地上へと戻って行く。取り残された私は、ただひたすらじっと陽の当たらない湿った穴の中で時を過ごす。時に夫に嫌味を言われながらも、それに気付かない鈍感な妻を装いながら。


ポスティングのバイトなら、子が学校の間にも出来るし、またウォーキングがてらのいい運動にもなる。また私が危惧している煩わしい人間関係もなさそうだ。そのチラシに給与や仕事量は応相談とあったので、月に2~3万くらいにでもなれば、ライター内職と合わせて5万は安定して稼ぐことが出来るかもしれない。
ネットでポスティングについてのあれこれをリサーチした。しかし、案外労力の要る仕事のようだ。雨でも雪でも、また猛暑の中でも配らなくてはならない時もある。それに、受け取り拒否をされたり、ポストにチラシを入れようとしたら住人に怒鳴られたりと怖い思いをすることもあるという。また団地やマンションに配布する際には、事前に管理組合に交渉するのがルールだそうだ。ただ好きな時に好きな量を配るだけではない、やはり金を貰うにはそれなりのデメリットもあるのだ。
たちまちそれまでのやる気は失せて、ポスティング募集のチラシがただの紙くずになる。確かに、ポストに投函されている不動産などのチラシは迷惑極まりない物。寿司やピザなどの宅配ならたまに頼んでみようと目に留める人もいるかもしれないが、そう簡単に買うことの出来ない不動産のチラシの殆どは目を通すこともなくゴミ箱行きとなることが多いのではあるまいか?しかも、最近のチラシは両面一杯に情報が刷られており、メモに再利用することすら出来ない。

取り敢えずー、短期バイト専用のサイトに登録をしてみようか。1日からOKであれば、面接のハードルも低いだろうし最悪仕事内容や人間関係が合わなかったとしても、深入りせずに済む。
数日限定のデータ入力バイト、日給1万。すごく良い条件だと飛びつけば、土日を挟む。その時点で子がいるので無理なことが判明する。なかなか全てを満たす条件の仕事を探すのは難しい。
























































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家族の役割

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子が宿題に持ち帰って来た、「家族の役割分担表」。
そこに、家族それぞれが分担している家仕事を書くという。授業で途中までは書いてきたらしく、「わたし」の欄には、「お風呂掃除」「自分の服をたたむ」「じゃがいもの皮むき」等、「お母さん」の欄には「掃除」「洗濯」「お皿洗い」「料理」などぎっしり書かれてあった。しかし、「お父さん」の欄は空欄のままだった。


「パパはおうちでは何もしないもんねー。だから書けなかったの。そしたら先生が、宿題にするからお家の人と考えて来てって言ってた。」


正直、夫は家のことは何もしない。強いて言えば、休日気が向いた時、子を遊びに連れて行くくらい。結婚当初、急ぎのハガキを出さなければならず、出勤のついでに出して貰おうと頼んだら怒鳴られたことがある。


「あんた、一体仕事をなんだと思ってるの?スーツを着たら、そこはもう職場と同じなんだよ。家のことなんてしてられないし、ハガキくらい一日家で暇にしてるんだから自分で出しに行ってくれ!」


確かに私にも配慮が足りなかった。夫は稼いで来てくれるのだ。何かのテレビで、一番してはいけない夫への頼みごとーそれは昼休みに郵便局へ行き支払いをして貰うーというものだった。
トイレ掃除や買い物などはOKなのだという。
私はしばらく社会と離れており、そういった仕事に対する姿勢だとかオンとオフとの切り替えだとかを忘れてしまっている。それを反省してからというもの、夫に家の頼みごとをするのは諦めたのだ。
電球の交換も、日曜大工のようなことも、網戸の張替えもー、頼むよりも自分でしてしまった方が早いし、断られてストレスを溜めるより余程良い。



「皆、パパが洗い物したりお風呂掃除したりしてるんだって。あとね、お米運んだり車洗ったりも。自転車直してくれたりも。」


「へえ、すごいね。」


「クラスの子でね、パパがママみたいに家にいる子もいたんだよ。おばさんみたいって皆笑ってた。OOも笑っちゃった!」


「きっとそのお家はママがパパみたいに働いているんだと思うよ。家のことだってちゃんとしたお仕事なんだから、笑ったりしたら駄目だよ。」


「はぁい~。」



専業主婦であっても何となく肩身が狭いと感じるこの頃、しかし、同じ立場でしかも男性という存在があることを知り、正直まだ自分の方がマシなのだと子を諭しながらも、心のどこかで安心している私がいた。



「うちのパパは何もしないね。だからまだ何も書けてないの。」



本当にその通りだ。このまま「お父さん」の欄を空欄にして提出させたい気持ちがわいたが、子にとって夫はやはり唯一無二の父親なのだ。ぐっとその気持ちをこらえ、



「パパはね、お仕事が忙しいからなかなか家のことが出来ないけどね、OOと遊んでくれるでしょう?それも立派な家族の役割なんだよ。後は、車で買い物に連れて行ってくれるし。ママは運転が出来ないからね。」


「あ!そうか。パパは運転手だね。それ書こう。車でお買い物って書く。」



子はにっこり笑いそう言うと、「お父さん」の欄を何とか埋めて満足そうな顔をした。昔の家庭とは違い、今は共働きも断然多い。希なところでは専業主夫もいると聞く。型にはまった家庭の形などはなくそれは時代と共に多様化している。
子も将来、自分の家庭を持つことになるだろう。その時、自分が育った家庭がある種の手本となるのは避けられない。それが反面教師になるとしてもー、それでもそれが基準になるのだろう。
宿題の役割分担表にある、「お母さん」の欄ーそこには小さな文字でぎゅうぎゅうに詰められたありとあらゆる役割があり、子にとって私はやはりなくてはならない存在なのだと知る。
誰にでも出来る仕事ー、しかし私ではなくてはならない仕事ー、それがそこには散りばめられていた。



























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ネゴシエーション 【追記】コメント欄

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夫と結婚し唯一感心するのは、恥ずかし気もなく、人目をはばかることなく、堂々と値切り交渉出来るところだろうか。

連休中に冷蔵庫を買い替えた。元々調子が悪く、それは私の扱い方が悪かったこともあるのだけれど、だましだまし使用するのももう限界だったので買い替えを決めたのだ。大手電気店は、家族で出向いた。
予想以上の人混みに息苦しさを感じながらも、早足で歩く夫の後ろを付いて行く。結婚してからずっと、電化製品も夫の独断で決められる。新婚の頃、洗濯機やオーブンなどを選ぶ際に私も意見したのだが、

「俺が金出すから決めていいよね?」

と一喝され、それから私の「意見」などは、あったとしても形を成さない無意味なものになったのだ。色も形も使い勝手も、全て夫が店員と話し合った末決定し、最初でこそ店員は私に向かって色々な機能を営業スマイルで説明するのだが、次第にそれは夫へと向けられるようになるのだ。
勿論、財布からカードを出し支払うのも夫。私は店員の前で透明人間と化す。


今回の冷蔵庫も同じく、夫が様々な型を物色している間、私は子と一緒に冷蔵庫を開け閉めして遊んだりしながら時間を潰した。夫は何やら店員とあれこれ言い合っているようだ。よくよく聞くと値切りだった。どこどこの店は幾らだっただの、ネットで買う方が安いだの、あれこれ難癖を付けているようだ。正直、この人の妻だと思われるのが恥ずかしく、他の同じく冷蔵庫を物色している家族連れが夫をジロジロ見ているのを察すると、穴があったら入りたい思い。
子と一緒に他の冷蔵庫を見る振りをして、そっとその場を離れる。


「おい!おい!これにするけどいい?」


私達に向かって夫が大声を出す。そこに反論する余地はないというのに、いちいち最後は自分を納得させる為なのか賛同を得たいらしい。



「うん、私は何でもいいよ・・」



煩わしく思いながらもそれを悟られないよう笑顔で返した。夫は満足そうに頷くと、店員と共にレジカウンターへと向かう。会計が済むと、得意気な顔でこちらに向かって、値切るのに何程労力を費やしたか、その浮いた金で何が買えるかを恩着せがましくまくし立てる。その金はどうせ自分のFXへの投資にでも使うだろうに、さも家計に貢献したかの如く吠える。



ーその日の夕方、新聞屋が次の更新を催促しに来た。いつも大体が洗剤とトイレットペーパーの粗品と契約との交換条件なのだが、この日は夫が玄関に出て何やら押し問答が聞こえてくる。


「次はOO新聞にしようと思っててさー、あっちはサービスいいしね。ビール1ケースとかってないの?」


「いやぁ、勘弁して下さいよ・・」


「洗剤もトイレットペーパーもさ、うちはブランドもん使ってるの。お宅の粗品、どこのだか分からないメーカーのだし、結局貰ってもフリマなんかで処分するしかないんだよね。ビールはないの!?ビール!」


お隣さんにこの会話が筒抜けかと思うと、恥ずかしくていてもたってもいられない。まるでお菓子を買って欲しいとスーパーでねだる子供と同じじゃないか。夫はどんな神経で新聞屋を困らせてるのか?
しかし、新聞屋も譲らず、最後の方は意固地になっているのか夫のねちっこさに嫌悪感を抱き始めたのか、



「分かりましたー残念ですが、またの機会に。」


と、引き下がってしまった。
夫は拍子抜けしたのか、新聞屋が帰ると無言でリビングに戻り、



「今度OO新聞契約しといて。」


そう一言残して自室へこもってしまった。電気屋での快挙に良くし、調子に乗り過ぎたのだろう。多少バツの悪い表情だったのが笑えた私は悪い妻だろうか。
おかしくて、おかしくて、含み笑いだったのだけれどーテレビの音量を上げて大笑いしてしまった。詰まらないバラエティ番組に笑っているのかとある意味プラス思考な夫は思うだろう。


「ママ、そんなに面白いの?」


子が、私があまりにもテレビ画面に視線を向けて大笑いするのに理解出来ないようで尋ねる。


「ママね、この芸人さんにはまっちゃったみたい。」


「ふーん、OOはつまんなーい。」



夫の威圧感に怯えながらも、ある時は彼の一挙一動に大笑いしたい衝動を抑えられない私がいるのも事実なのだ。


























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頭の中の電卓

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結婚してからというもの、絶えず頭の中で電卓の叩く音が聞こえて来る気がする。そして、そんな自分が嫌になる。金のことを考えず、気前よくしたい時だってあるし、またここぞと言う時に気持ち良く金を出したいと思うこともある。


一通のメールが届いたのだ。そこには、結婚の報告。もう何年も会っていない昔の職場の同僚からだった。最初、知らないアドレスからだったのでどこの誰か分からず迷惑メールに分類しそうになったが、よくよく読んでみると私のことをこう呼んだのは彼女しかいないー「OOの娘ちゃんは大きくなったかな?」の一言ですぐに差出人が誰か判明したのだ。
結婚式の招待状ではなかったが、それでもその事実を知ってしまったのなら何かしら行動を起こさないわけにはいかない。私が結婚した時も、ささやかに祝いの飲み会を開いてくれ、花束とペアグラスをプレゼントしてくれた。結婚式には不参加だった彼女だが、あの時祝ってくれた嬉しさは今も昨日のことのように覚えている。

1万くらいの品ー彼女から貰ったグラスは当時5千円くらい、半返しをした際調べたのでそれは確かだ。そして花束代に飲み代など入れると、1万ちょっとしたのだろうか?しかし飲み会には他に数人参加していた。皆からということで花束は貰ったのだ。グラスも皆からなのだとてっきり思っていたのだが、品物と一緒に入っていたカードには彼女の名前しかなく、帰りにひっそり彼女から手渡されたので、半返しは彼女だけにーそしてその場にいた数人の参加者には後ほどブランドハンカチを2~3枚プレゼントした覚えがある。

頭の中でパチパチと音が鳴る。きっちり同じ金額は無理だとしても、恥はかきたくない。そして同様に損もしたくない。色々考えた挙句ー、飲み会を開いてくれた労力だとか、花束を用意しようと皆に声かけしてくれた善意を入れて8000円相当の品物を贈ることにしたのだ。


一応、メールで彼女から何か欲しいものはないか聞いてみた。聞いたところで遠慮するか、何でもいいとの答えが返って来るかと思っていたのだが、なんと事細かに欲しい食器とブランドが詳細に記載されており驚いた。そして、それは1万はするものだった。
私が貰ったグラスは5000円ーそして、あの時の飲み代が私一人分を皆で割り勘していたのだから一人辺り1000円ちょっと、花束の割り勘分入れたとしても、一人1500円から2000円。ちょっと多く見積もって8000円だと踏んでいたのにーそしてあの頃より消費税もアップしているのだ。1万円だったらプラス800円ーそれに送料を入れたら1万2千円程になる。予算より4000円もオーバーする。
こんなことなら、希望など聞かずにカタログでも送れば良かったか。しかし、聞いてしまった以上それを贈るしか他もなく、しぶしぶネットショップで検索すると、どうやらそれは「廃盤品」らしい。
アマゾンなどではかなり安く売っていたが、お祝いなのできちんと包装もして欲しい。それにー、偽物だったらと思うと、やはり正規品を買うしかないのだろうか?
色々調べて、きちんとした食器専門のネットショップで購入することに決めた。



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感想(10件)





お祝いごとだから、こんな風に損得考え金を出したくはない。素直に喜んで祝えたらーあの頃の私なら、きっと何も考えず、いや、喜んで百貨店で彼女が欲しがるそのグラスを正規の価格で購入しただろう。それが例え自分が貰った物より高価な物だったとしてもー



頭の中の電卓の音は、その日、連休だし少し奮発しようと夕飯の食材を選んでいる最中にも聞こえて来た。この肉を3枚買ったらーその金額で外食が出来るではないか。だったら牛肉ではなく鳥肉にして、チキンステーキにしよう。
所帯じみた、ケチ臭い自分に嫌気がさしながらも、それをどうにも止めることなど出来ない。
与えられたやりくり費とわずかなへそくり。それは今、自分の為だけでなく子の為ー、見えない将来の為にも大切な金。他人に対して1円足りとも無駄にしたくはない。
実際、交際費をケチることは出来ないが、こうしてあれこれ考え悶々としている状況にある自分は、ケチと言われても仕方がないと思う。

































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あてもなく横浜

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GWの一人時間ー、友人もつかまらず家族も留守。外は行楽日和。割と静かな団地だけれど、連休中だからか更にひっそりとしているように思う。
いつものように自宅に引きこもっていようかと思ったが、ふと思い立って元彼の住んでいた街へ行くことにした。昔住んでいた場所なので、現在住んでいるわけではないー思い出の場所。
SNSでなんとなくの場所は分かるけれど、お互い妻子ある身でそれをしてはいけないという理性が働く。年老いた自分を見られるのも怖いし、また幸福な彼のマイホームなど目にしてしまったらそれをぶち壊してしまいたい衝動に駆られるかもしれないー、自分で自分がどうなるかさえ分からないのだ。
連休中の列車はやはりざわついており、一旦座ったものの、次の駅で赤ん坊を抱っこしながらベビーカーを担ぎ、幼児の手をひく母親が乗り込んで来た。子供は疲れたのかぐずっており、すぐに席を立つ。こういう時、咄嗟に「どうぞ。」と一声掛けて席を譲ることが出来たらよいのだけれど、断られた時の気まずさを思うと声掛けをためらい、ただ黙ってそこを離れ、静かに相手が座るのを見届けることしか出来ない。
すると、若い体のピンピンした今風の若い男性がドカリとそこに腰を下ろした。私の自己満足な善意はしたくもない相手に受け取られたのだった。

みなとみらいに着くと、途端に自分がいかに場違いな場所に来てしまったのかを思い知る。街は家族連れやカップルばかりで、一人でぶらぶらしているのは自分だけのようにさえ思える。喉が乾いたので、チェーンのカフェ店に入り、1杯のアイスコーヒーをオーダーする。席に座ると、誰も見ていないのに、これみよがしに自分には家族がいるという証明ー携帯待ち受けに写る我が子を見たり、結婚指輪のある薬指をなぞったりーをする。


カフェでは買い物袋をたくさん持った三人組の女性だったり、またいちゃついているカップルだったり、子供がアイスを口の周り中につけているのを拭き取るのに必死な母親だったりーがおり、その誰もが忙しそうに口を動かし目を動かしと表情をめまぐるしく変えている。
私だけが、無表情なまま携帯画面を操作する。結局は自宅にいても外にいても、私の話し相手は携帯で繋がる一方通行の交友関係なのだ。

カフェで小1時間程涼んだ後は、ウィンドウショッピングをした。母の日はネットで手配したので、特に急ぎの買い物などはなかったのだが、なんとなく雑貨や来月にある父の日のプレゼントなどを物色する。催事で北海道展のコーナーがあり、大好きなレーズンバターを買えたのがこの日一番の収穫だった。

百貨店と百貨店との間にある道路を横断する為、信号待ちをしている時ー騒がしい雑踏の中でいいようもない寂しさに襲われた。初夏を思わせる太陽に当たりながらー、交差点で多くの人々が赤から青に変わるのを待ち、それが変わった瞬間、置いてきぼりにされたように足がすくんで動けなかった。青信号のメロディが何の曲だか分かるのと同時に自分を取り戻し、早足で歩く。
特に目的はなかったのだが、店に入り繊細なレースのハンカチを2枚購入した。私の分と母の分だ。少しのデザイン違いのそれは、涼しげでこれからの季節、フォーマルな場でも使えそうなものだった。
その勢いで、おもちゃ売り場まで行き、サン○オへ足を運ぶ。子が喜ぶかもーとキャラクターのハンドタオルとスーパーでは買えない同キャラクターの一口ゼリーを買う。容器が500円程度で売られており、その中に詰め放題という形。たったの5個しか入らなかったが、きっと容器代がその価格の殆どを占めているのだろう。
綺麗にラッピングして貰うと、おまけのような可愛いマグネットがラッピングされたリボンの上に掛けられていた。


元彼の自宅まで行こうかと思っていた朝の気持ちは、そんなことをしてどうするのだという思いと面倒臭さでたちまち消え去る。
ただ、学生の時によくデートした山下公園をぶらぶら歩いた。コンビニで買ったビールを片手に、暑さと疲れで腰を掛けたいのだけれど、どのベンチもカップルで埋まっており、仕方なく周辺をウロウロする。
仕方なく、階段に腰を掛け、ただぼーっと海を眺めた。潮風を体全部に行き渡るように吸い込むと、あの頃が少しだけ蘇る。
記憶とは、景色だけでなく匂いにもあるのだと知る。


10年以上前の私と彼が、目の前を通り過ぎる。
楽しげに、これから先の未来はキラキラしたものであると信じて疑わない瞳をしながらー


シュワシュワと弾ける炭酸が、過去に思いを馳せる私の目を覚ます。結局過去に戻ることは出来ない。出来るのは、今与えられた駒をどう動かしていくか。
ビールを一気飲みし、片手で収まる荷物を持って、誰もいない我が家に戻る。そこが今在る私の居場所だからだ。










































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