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ご挨拶

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今年も残すところわずかとなりました。
このブログに足を運んで下さった方々には、感謝の気持ちで一杯です。
どこかの誰かが読んでくれているー、日記では味わうことの出来ない発信は、常に私を孤独から救ってくれました。

一人ぼっちの人、
大勢といるけれど孤独な人、
ふとした瞬間、皆から取り残されているようで不安な人、
自分を過小評価し過ぎて苦しくなる人、
マイナス思考ばかりの人、
選択を誤ったかもしれないと、日々後悔している人、
自分を変えたいと、焦って空回りばかりしている人、
とにかくツイテないと落ち込んでいる人、
周囲がいつでも幸福そうに輝いて、自分が惨めに思える人、

安心して下さい、私のような人間でも毎日生きています。
そして、このブログではいつでも暗くてジメジメしていて救いようもない私ですが、実際は子供と大きな声で笑い合う瞬間だってあるんです。

と、今年の一文字「安」を使ってこのブログを締めさせていただきます。

穏やかに、よいお年をお迎え下さい。


seline




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他人のふんどし

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淡々と日常を綴ること、自分の私生活を切り売りすること、趣味のあれこれを語ること、子供の成長記録、旅行記や料理のレシピー
数え切れないカテゴリーの中、目に留まるブログは氷山の一角で、私の’’お気に入り’’には現在8つのブログが登録されている。いや、厳密に言えば「されていた」のだが。
7つになってしまったのは、削除したそのブログが残念なブログに成り下がってしまったからだ。
言い方を変えれば、「人のふんどしで相撲を取る」ような記事更新をしているのが目に留まった。折角面白いブログだったのに、残念だと思った。




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特定のブログを非難することーこのネット社会では良くある風潮だけれども、それをしてしまったが最後だと思う。気に食わない奴を槍玉に上げて、皆で叩き合うことが目的なのか?炎上してアクセスアップで小遣い稼ぎが目的なのか?
残りの7つのブログは、そうならなければ良いなと思う。自分のふんどしで表現し、見えない敵をかわして欲しい。
振り回されることなく、自分のスタイルを確立して行くことは容易ではないけれど、それが出来るか出来ないかが「人間性」だと思う。




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今日のスイーツ

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■今日のスイーツ




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大掃除

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言い訳かもしれないが、今年の大掃除はバイトがあったこともあり、かなりの手抜きだ。そういえば、パート主婦達がハウスクリーニングを頼むと言っていた。彼女達の言い分は、「働いているのだからそれくらいは!」ーだ。

ー働いているのだから、今夜は外食!
ー働いているのだから、自分にご褒美!
ー働いているのだから、家事は手抜き!

働いていること、それを免罪符にするかどうかはその人次第であるが、少なくともあの職場の女性達は、経済的に余裕があったのだろう。24時間のうちの6~7時間の対価としての見返りを十分自身に与えているように見えた。
勿論、子供が中高生で、教育費が半端なく掛かると愚痴をこぼしたりすることはあったとしても、しかし、あくまでそのしわ寄せで自分に金が掛けられないーならな働こうの精神で、給料は全て「自分の小遣いor自分名義の口座に貯蓄」という人ばかり。




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話は逸れたが、大掃除。どうにもこうにもやる気が出ない。まるで燃え尽き症候群だ。今更ながら、バイトをしていた時の緊張感がぷつりと切れ、リバウンドのように怠け心が私を襲う。
ならば、こんな時のブログ頼みだ。
ここで、宣言することにしよう。

今日絶対やるべきこと。

■冷蔵庫の掃除
■子ども部屋

この2点はしっかりやろう。大掃除リストを作り、項目達成ごとに斜線で消して行くやり方は、今回は見送り。朝、思い立ったことをやる方が、今の気分だ。
それからキッチン。三角コーナーと洗い桶、それに調味料BOXは全て新しく買い換えすることにしよう。それだけでもスッキリ感はあると思う。最近では、三角コーナーや洗い桶をそもそも無くす(ミニマリスト)人々が増えていると聞くが、やはり私はそれらが無いと落ち着かない。
綺麗さっぱり、新しい気分で年越し。出来ることを願って頑張ろう。




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ママ友飲み会

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「そういえば、今度の忘年会出席するの?」


突然聞かされた、まいこちゃんママからの話は寝耳に水。どうやら、園時代のママらで飲み会が開催されるとのことだ。まさか、自分のところには誘いのメールなど来ていないとは言えず、適当に相槌を打つ。スネオママが幹事らしく、殆どのママらは出席するとのことだった。やむを得ず欠席なのは、やはり下の子がまだ乳飲み子だったり、またご主人が仕事で、子供たちの預け先がなかったりだとのこと。もし私のところに誘いのメールがあったとしても、夫の仕事柄断ることになるかと思う。それにしても、全くのスルーなのは、正直気分が悪かった。
今朝の新聞に挟まれた広告の中に、最近出来た焼肉屋のチラシが入っていた。オープンだからか、かなりのサービス料金。それから昼ランチのメニューも充実している。また、主婦向けに、ハッピーアワーと称して午後3時からビールがジョッキで1杯100円。習い事の合間に!の見出しに、げんなりする。ママ友ママ友って・・・それしかないのか?




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ーママ友との忘年会に!!ー


でかでかと書かれた広告文句に、ケチをつけたくなった。
忘年会ーか・・ママ友とランチさえハードルが高い自分に、飲み会だなんて一生無理な話だ。Yさんだって引っ越してしまう。引越し前のママ友となら、いつか子供達が大きくなれば飲みに行けるようになるかもしれないが、まだまだだいぶ先の話だ。
旧友とも、結婚してからは酒を酌み交わすこともなくなった。主婦になればこんなもんーそう思っていたのだが、最近の主婦はこうしてママ友らと飲み会をするのだと知ると、一抹の寂しさをおぼえるのだ。




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自前の花束

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ーバイト最終日ー


終わりを迎えるとなると勝手なもので、あんなに憂鬱だった朝がいつもとは違った景色に見える。凝縮された慌ただしい朝時間も、言葉を変えれば「充実」となるし、たった2週間程度の出勤だったにもかかわらず、皮肉にも営業や内勤メンバーから名前を覚えて貰え、仕事以外の軽い雑談を持ち掛けられるようにまでなったというのに、彼らと会うのも今日で最後だと思うと、少々名残惜しい気分になっている自分に気付く。
月宮さんは、最初こそ厳しく近寄りがたい存在だったが、それは私同様、相手も私を警戒していたから。ただの要領の悪い、だが真面目なおばさんだと分かるやいなや、自分がデスクで食べているチョコレートをお裾分けしてくれたり、また子供のことを聞いてきたりと、彼女は案外人懐っこい人であった。
飲み会を断ったにもかかわらず、特にそれについてあれこれ詮索されたり嫌味を言われたりすることもなく、いつもと同じように接してくれた彼ら。普通に挨拶をし、普通に仕事をし、普通に雑談をする。何事もなかったかのように、淡々と。また、ミスをしても、石さんを始め、他パート女性達は私をさりげなくフォローしてくれ、また私が必要以上に謝り続けることを静止してくれたりもした。
振り返ってみれば、良い職場だったと思う。短期だから、アラが見えないうちに退散することで良い面しか見えなかったところもあるだろうけれど、それでも私の社会復帰の助走には、コンディション抜群のコースがあてがわれたと言っても過言ではないだろう。
そしてまた、あの小さく窮屈な世界に戻る自分を思うと、深い溜息が出るのだ。
突破口は自分自身ー、自分で何かを変えなければ、何も変わらない。今回のバイトも、結局はその気持ちに押された行動ではなかったか?

段々慣れて来ていたPCキーボード。入力作業もマニュアルをいちいち確認せずとも打てるようになっていた。反して、そのデータ量は初日に比べると比にならないくらい減少しており、あぁ、私の役目はもう終わったのだと感じる。パート主婦はわいわい雑談しながら、何やら年末に向けて伝票の整理をしている。彼女らは短期ではない、常勤アルバイトなのだ。仕事をしているというのに、なんだか楽しそうに見えるのは、私がこの職場に名残惜しさを感じているからなのかもしれない。
来年も、そのまた次の年も、ここにいる人達はここに来て、ここで仕事をする。雨の日も雪の日も、暑い日も。四季折々を共に過ごせる仲間がいるということー、家族以外の居場所があるということー。


ー長期バイトだったら良かったのに・・


あんなにもビクビクしていた社会復帰、そして、馴染めなかったことを想定して、また子がまだ低学年という働き方を考えての、納得行く条件の元の仕事だったというのに、今や後悔さえ残る。
その日のランチは、皆で外で食べることになった。近くの定食屋さんだ。図々しいことに、最後だから皆が奢ってくれるかもしれないーその時はどう断ろう、いや、甘えることにしようか・・あほらしいが、不毛なシュミレーションをしてしまった。私は少々自信過剰気味になっていた。しかし、ランチはただの割り勘ランチで終わった。どこかでがっくりと肩を落とす自分がいた。

午後になり、一人定時までをカウントダウンしながら残された入力業務をする。本気を出せば、ものの1時間足らずで終わってしまいそうなボリュームだったが、ゆっくりと噛み締めるように作業する。周囲はそんな私の気持ちなど知らず普通に業務をこなしている。月宮さんも、いつも通り隣の席で私用電話をし、誰かと楽しそうに笑っている。やることがなくなり、手持ち無沙汰。なんとなく社内掲示板を開け、流し読む。月宮さんは一向に電話を切る気配がない。
定時5分前になった。同パート女性らが帰りの支度をし始める。小さな窓から見える外の景色はもう真っ暗だった。冬の夕暮れ。

チャイムが鳴る。月宮さんがようやく受話器を置く。私の方ではすっかり片付けを終え、挨拶の準備も出来ていた。




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「今日で最後ですね。」


月宮さんの方から話を振ってくれた。


「短い間でしたが、色々とお世話になりました。」


月宮さんを始め、真向かいのデスクにいる男性社員やパートの人々、また上司に頭を下げる。もうここには来ないので、渡されていたロッカーや机の鍵を返却した。簡易的だが短期バイト専用のIDカードも返却した。その他、諸々の手続きをしているうちに、石さんを始めとするパート女性らは次々にタイムカードを押して外に出て行ってしまった。


「お疲れ様でした。」


皆、律儀に挨拶を返してくれた。
そして、ここで花束とかーと期待する私がいた。しかし、あっけなく何も無かった。独身時代、少なくともどの職場も最低1年はいたものだから、このような経験は始めてだった。最終日と来れば、当たり前のように花束が貰えると信じていた私。虚しさが体全体に広がった。
タイムカードを切り、再びフロア全体に向かって出来るだけ大きな声で挨拶をした。


「お世話になりました。」


「お疲れ様でしたー。」


「お疲れ様ー。」


あちこちから聞こえて来る、最後の言葉。もうここには二度と来ないのだなという寂しさ。そして皆、声に出して挨拶してくれたものの、顔を上げてこちらを見てくれる人はいなかった。ドアを開け、また私は期待をする。石さん達が外で待っていてくれているかもしれない・・しかし、パート女性達は既に退社した後だった。

ビルを出ると、外はすっかり真っ暗。吹き抜けるビル風に押されるように、駅前まで歩く。クリスマス直前とあって、街は賑やかだ。何となく目についた花屋に可愛らしいブーケがあった。気が付くと、それを手にレジ前に並ぶ私がいた。2000円弱のそれは、クリスマス仕様となっており、ゴールドの松ぼっくりに赤と緑のリボンで綺麗にアレンジメントされていた。
子を学童に迎えに行くと、


「わぁ、ママ、これ最後だから貰ったの!?」


子が大きな声で花束を指した。
なんとなく、自分で買ったとは言えずに苦笑いをして頷く。学童のスタッフが、


「綺麗ですね。お仕事最後だったんですか?お疲れ様でした。」


私の嘘に気付くはずもなく、労いの言葉を掛けてくれた。自分で買った、送別会花束。かなり虚しい気がしたが、自分で自分にお疲れ様をしたかった。
こうして終えた、短期アルバイト。どっと疲れは出たが、自信は多少なりともついたと言える。次の仕事はどうするかー、まだ考えてはいないが、派遣という道も考慮に入れてみようかと思っている。




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今日の写真

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■今日の写真




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キャンディーリース

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クリスマスまであと少し。子はせっせとサンタに手紙を書き、プレゼントのリクエスト。私もサンタになりきって返事を書き、ツリーの枝部分にこっそり掛けた。
朝、返事を見つけた子は嬉しそうにしており、慌ただしい中でもほっこりさせられた。短期アルバイト最終日もすぐすこまでということもあり、気持ちに余裕が出来ていた私は、子が就寝した後、疲れた体を引きずりながらも「キャンディーリース」を作成した。
去年はアドベンダーカレンダーを作成したのだが、今年はそんな余裕がなくすっかり忘れていたことが気がかりで、子は何も言わなかったが色々寂しい思いをしているのではないかと思い、やってみることにしたのだ。

キャンディーリースの作り方は簡単。針金ハンガーをリース型に丸く曲げ、後はリボンでキャンディーやチョコレートをくくりながら巻きつけていくだけ。材料費も殆ど掛からないが、ぱっと見華やかだしクリスマスらしいので、プレゼントにも最適だ。
疲れた頭と体をリフレッシュするかのように、リースを作っている間は子の喜ぶ顔を想像するだけでワクワクした。色とりどりの包み紙に包装されたキャンディー達は、見ているこちらにも元気をくれる。こんな物で喜んでくれるうちが親孝行だなーと思いながら夜なべするのは至福の時だった。




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キャンディーとキャンディーとの間に、キャンディー型のヘアゴムをこっそり忍ばせる。それに、同じく消しゴムも。本物のキャンディーに紛れて一見分からないが、「あ!」っと子が気が付いた時の表情を想像するのも楽しい、私の遊び心。
一つ作ったら楽しくなって、もう一つ作ってしまった。

翌日ー、子に渡すと喜びを体全体で表現こそしなかったが、嬉しそうにはにかみ笑い。リアクションが年々お姉さんになっていく。


「みこちゃんにもあげたら?」


もう一つあることを告げると、子はもっと嬉しそうな表情をし、今度は体全体で喜びを表現した。


「やったー!いいの?みこちゃん喜ぶよ!今日遊びに行く時に持ってく!!」


一人で喜びを噛み締めるよりも、友達と喜びを共有することー、その方が嬉しさも倍になる。それを知り始めた我が子の成長が嬉しくも頼もしくもある。その気持ちをこれからも大切に持ち続けて欲しいと願う母心だ。




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しどろもどろ

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情けないことに、今日の仕事はボロボロだった。たまたま事務所に電話を取れる人間がいなかった(他のパートは別の電話応対をしていた)ので、私が出るしかなかったのだ。
社内電話だったから良かったものの、これが外線だったら大変なことになっていたかもしれない。メモを取る手は震えるし、ところどころで雑音が入り音声も聞き取り辛く、何度も聞き返すと明らかに不機嫌な男性の声に萎縮してしまう。本当は分からないのに分かった振りで、とにかくその場をやり過ごすことに必死になりしどろもどろ。受話器を置いた後、手元に残ったメモ用紙を見て唖然とした。社会人失格だ。




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なんとかそのメモの意味が通るように文章を立て直し、営業担当のデスクに付箋を置いた。案の定、営業が私のところに聞きに来たのだが、顔面蒼白な私を見ると、たまたまその男性は温和な人だったお陰で、もう一度詳細を聞く為に電話を掛け直してくれたのだ。私が必死の思いで謝罪すると、大丈夫と言わんばかりに笑顔まで向けてくれて涙が出そうになった。良い人もいるのだ。使えないおばさんバイトに同情してくれたのかもしれないけれどー

今日は3時までの仕事だったので、時間的に余裕がある。子が天才テレビ君を見ているこの時間、この情けないモヤモヤした気持ちを吐いた。これで切り替えられると良いのだが。
オンからオフへー仕事から家庭へ。夫が家でイライラしたりおかしな言動を取る理由が少しは理解出来たような気がする。




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夫の許可証

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ほろ酔い気分の夫の帰宅ー、今夜がチャンス。夫代休の夜、会社の飲み会に参加しても良いかどうか許可を得る絶好のー
私は夫に言いにくい相談や願い事をする時は大方、彼に酒が入っている頃を見計らう。しかし、その日の酒は種類が違った。夫にとって「付き合い」の酒ー、いわば、自分を出せない神経を使う酒だったのだ。早く月宮さんに返答しなくてはならないと焦った私は、それを見極める判断を誤った。


「職場で打ち上げがあって・・ついでに私の送別会もしてくれるって言うんだけどね、あなたが代休の夜に、OOお願い出来るかな?」


「・・・・・」


沈黙が続く。この沈黙は危険レベルでいったら5段階のうちの3だ。


「アンタ、一体何言っちゃってるの?職場の酒ってたかがパートでしょう?そんなん付き合う必要あるわけ?ったく、小さい子供がいる主婦にそんな話を持ち掛けるなんて、非常識な職場だな!」


私のことを「あなた」ではなく「アンタ」と呼んだ時点で、危険レベルは4に上がった。もうこれ以上、夫にこの話を持ち掛ける隙はなくなった。シャットダウンと言わんばかりに、夫はさっさと着替えを持ってシャワーを浴びに浴室へと消えて行った。




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ーやっぱり・・ね。


予想はしていたが、心のどこかでホッとしている自分もいた。正直、気心知れたメンバーで飲むわけでもない酒は、緊張するし気も進まないのが本音だった。しかし、変なところで真面目な私は、決定的に行けない理由がないことには、気分で断るなど到底出来ない。勿論、「夫に反対されたからー」などありのままの理由を月宮さんに伝えれば、私はモラハラ夫に飼われた意思の持たない主婦として、皆から憐れまれるに違いない。もう何日か後にはこの職場を去る私だが、しかし小さなプライドが偽の理由を作るのだ。


ー打ち上げの件ですが、平日は夫が遅くまで深夜残業の為、また小学校低学年の娘の預け先もない為、残念ですが参加出来そうもありません。送別会のお心遣い、嬉しく思いました。ありがとうございました。お気持ちだけありがたく頂戴いたします。ー


浴室から聞こえる、夫の雄叫び。取引先と飲んで、何か嫌なことを言われたのか?洗い桶を浴室の壁に叩きつける音も聞こえる。深夜1時過ぎだというのに・・苦情が来たらどうするのだ。しかし、夫のストレス発散が、私や子への暴力として解消される代わりならば、致し方ないと思えるのだ。

メールの文面を何度も読み、保存した。これは早朝送ることにしよう。
もしー、短期ではなく長期アルバイトとして雇われていたら、この飲み会は夫に頭を下げてでも参加していたかもしれない。何となくー、職場の人々の輪に時間がかかりつつも馴染んでいる未来の自分が見えたからー。それは、石さんの存在によるものも大きいけれど、それでも、もしかしたら私が長年求め続けていた「居場所」がそこにあったのかもしれないと思うと、気持ちしんみりするものがあった。

残すところあとわずか。職場の皆からしたら、ほんのわずかの日数お手伝いに来ていたパート主婦、記憶にも残らない人間かもしれないが、私にとってそこは大きな舞台だったのだ。その舞台から身を引く時、せめて清々しい笑顔で最後にタイムカードを押したいと思う私がいる。




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今日の写真

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■今日の写真




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アンケートの「職業」欄

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自治会より、任意のアンケートが回って来た。家族構成だったり世帯収入だったり、また住まいの満足度についての統計を取るらしい。 早速記入しようとするも、世帯収入は分からない。これを機に、夫に聞いてみようかと思ったりもするが、なんとなく見えない壁が立ちはだかる。きっかけは、先延ばしにすればする程逃してしまうものなのかもしれない。それを聞いた時の夫のリアクションを想像しただけで、胸がきゅーっと緊張で苦しくなるのだ。 アンケートには、年齢や職業を書く欄がある。夫の年齢と職業は「会社員」、そして自分ーいつもは年齢と「主婦」に○を付けるのだが、今回は違った。「アルバイト」の欄に勢い良く○を付けた。
誰も見ていないが、その時の私の表情は恍惚としていただろうと思う。匿名だが、あえて名前を書こうかと思った程に、得意になっていた。まるで子供だ。
ずっと、心のどこかで願っていたことなのかもしれない。夫に庇護されない自立。もっと上を行けば、「会社員」や「自営」に○を付けられたらと思うけれど、さすがにノンキャリアの自分にそれは身の程知らずというものだろう。
主婦という仕事、育児も絡めれば終わりのない仕事。しかし、なかなか周囲から認められない仕事。連日、保育士不足のニュースが取り上げられている昨今だが、これもいわゆる社会的に認知度の低い仕事だという側面があるからだと言える。「子供とただ遊んでいるだけの仕事」だとー
実際、そんな見方をする人間に限って、子育て経験が全くなかったりする。蚊帳の外から高みの見物。「命」を預かる大変な仕事だというのにー
そう、母親は24時間子供の「命」を預かっているといっても良い。子を出産したその瞬間から、尊い命を預かっているのだ。 しかし、周囲の目を気にし過ぎる程に自意識過剰な私は、こうした他愛の無いアンケートで「主婦」だとか「無職」だとかに○を付ける時、いつでも軽い罪悪感があったのだ。
社会貢献出来ていないー、いてもいなくてもいい虫けらのような存在ー
そんな時、「てのひらをたいように」の詩を思い浮かべてみたりもしたが、それでも罪悪感は拭えなかった。そして、社会から離れて10年余り経ち、ようやく罪悪感から逃れることが出来たのは、このアンケートにある「アルバイト」欄に○を付けたその瞬間だったのだ。




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大袈裟な話だが、しかし私にとっては自分の生き方を見直す「分岐点」になったとも言える。短期アルバイトだが、しかし遠い昔ー、まだ10代だった頃、初めて社会に出た時のことを思い出す。
初バイトは緊張もしたが、大人の仲間入りをしたようなくすぐったさと誇らしさがあった。あの時の気持ちが蘇る。

短期なので、契約が終わればまた「主婦」のカテゴリーに戻る。そして、それはどれくらい続くのか分からない。すぐに抜け出せるかもしれないし、そのままだらだら留まることになるのかもしれない。自分のことなのに、どこか他人ごとだった。その意識が自分を守ること、それが都合の良い言葉で言えば、大人の処世術だ。失敗を恐れず、前向きにー何度でも立ち上がれるのは、若者の特権。この年になると、失敗は大打撃、二度と立ち上がれないこともある。石橋を叩かず見物、そして少し歩いてはまた戻るの繰り返し。誰かが安全に渡り切ったのを見届けたら、その後にようやく続くことが出来るのだ。

たかが「アルバイト」、されど「アルバイト」、こうしていち主婦から離れて、社会に参加していることを証明する、言わば身分証明のような肩書きが愛おしい。




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大人の女性

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石岡さんを知ってみればなるほど、パートでありながら一目置かれる存在だということが分かる。
普段、物静かで他パート女性達の雑談を笑って聞いているような控えめな存在だが、月宮さんを始めとしたベテラン社員からは、何かイレギュラー対応が必要になれば、皆石岡さんにまずは相談をする。
遠慮がちだが、しかし答えに迷いがない彼女のアドバイスは的確であるようだ。皆、彼女に頼りきっている。当初、月宮さんがこの職場の肝だと思っていたのだが、実際そうではないことが分かる。日が経つにつれ、見えないことが見えて来た。

石岡さんは、「石さん」と皆から呼ばれている。業務中は淡々とPC仕事に集中し、無駄口は叩かない。だからといって雰囲気を壊さない。穏やかで、何があっても動じない落ち着きがそこにあり、それが皆に安心感を与えるのだと思う。

危惧していた打電業務、落ち着いて、昨晩風呂場で何度も練習したシュミレーションの通り、石さんの言葉を信じて絶対決まるものだと思いこなしていたら、なんとかノルマを達成出来た。月宮さんもほっとしたようで、皆からもお疲れ様の拍手を貰う。そして、こんな私でもこの職場の一員として認めて貰えたような気がしてなんだか嬉しかった。


「お疲れ様。」


石さんがタバコ休憩ー(トイレへ行く際、男性社員と喫煙所で休憩しているのをよく見掛ける)の帰り際に、自販機で買ったと思われるコーヒー缶を、私の机にポンと置いてくれた。


「あ、いくらでしたか?払います!」


「いいの、間違えて押しちゃったから。代わりに飲んで。」


彼女のもう一方の手には、ブラック缶コーヒー。間違えて甘いミルク入りのを買ってしまったというのは、恐らく気遣いからの嘘だろう。


「あ、す・・すみません!ありがとうございます!!」


私と同世代だというのに、石さんの内面は私の幾つも年上に見えた。そして彼女の気遣いと、やっとノルマが達成したというプレッシャーからの開放感で思わず涙が出そうになるのを堪えた。石さんは、ただにっこり笑うとそのまま自席へ戻って行った。そのスマートなやり方に、もし彼女が男性で、私がまだ二十そこそこの小娘だったのなら、きっと恋に落ちていたに違いないと思う程。




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打電業務も終わり、入力業務も日を追うごとに少なくなって行った。そして、職場内も営業内勤かかわらず、ピークを達して少しだけ落ち着いたところで、月宮さんが女性パート達に声を掛けた。


「来週のどこかで、打ち上げをしましょう!皆さん、都合の良い日程をメール下さい!」


ある種のイベントが終わったという名目の打ち上げは、勿論アフター5に行われるようだ。他のパート達は、そもそも子供がとっくに中高生だったりで、私のようにまだ小学校低学年を持つ母親はいないのだろう。それにー、石さんには子供がいない。月宮さんは独身なので、恐らく私がこの提案に困惑しているなどとは夢にも思っていないだろう。
その場の雰囲気を壊したくなかったので、隣で断るタイミングを見計らっていた。


「OOさんも、短い間でしたけど、送別会ってことで!」


「そうね!送別会という名目も兼ねて!!」


パート達が盛り上がる。私の送別会だと言われたら、断るハードルが更に上がる。さて、どうしよう。スケジュールを思い返す。夫の代休日が頭に浮かぶ。一応、ダメ元で夫にお伺いを立ててみよう。きっと駄目だと言われるに決っている。私が夜に出歩くなんて言いだしたら、途端に機嫌を損ねるに違いない。
一難去ってまた一難ー、悩みという奴は、一つ減るとまた新しいものが一つ増えるように出来ている。




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営業畑の彼女

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ノルマ5件ー


これが私に課せられた、必ず取らなければならない顧客の継続数だ。皆とはだいぶハンデを付けて貰ったというのに、実際はその半分もこなせていない。皆口に出しては言わないが、私のことを「給料泥棒」だと陰口を叩いているに違いない。朝から職場に向かう足取りは重かった。
とぼとぼ駅前を歩いていると、


「おはようございますー」


背後から、女性の声。振り返ると、私と同世代のパート女性の一人。しかし、あの中では地味な風貌だったことから名前もうろ覚えだ。
「あ、ど、どうも、おはようございます。」


手にはスターバックスのコーヒー。パートに出ている主婦といえば、皆生活の為だとばかり思っていたが、朝から500円近くのコーヒーに金を掛けられる余裕がある主婦もいるのだと驚く。そういえばこの間の昼休憩、彼女は会社近くのデリで買ったような洒落た惣菜を食べていたような気がする。


「もう、慣れました?」


地味ながらも、よくよく見ると仕立ての良さそうなコートをまとっているし、耳元には控えめながらダイヤのピアスが揺れている。足元も、素敵なブーツ。派手さはないが、品がある。


「いや。全然・・もう何が何だか。データ入力と聞いていたもので、まさか電話営業のようなことをやるだなんて想像もしていなくて・・」


気が付くと、彼女に愚痴っぽく語り始めている自分がいた。会社までの道すがら、聞き上手な彼女にあれこれ不満をぶつけている私がいた。何故だか警戒心が解けるーそんな雰囲気を持ち合わせた女性だったのだ。
しかし、あれこれ不満をぶちまけるのは軽率だったかーそう思い、それまでの調子を崩すかのように無口になり始めた私の心を読んだのか、


「安心して下さい。誰にも言いませんから。それにー、正直ノルマノルマ騒いでいるけれど、既存顧客のアレは継続せざるを得ないものなんです。継続しないと顧客に損するように出来ていて、それを顧客も分かっているから本当に意思確認なんですよ。だから大丈夫です。今までも前例に継続しなかった顧客などいませんから。」


にっこり笑って彼女はそう言う。




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「もう、この会社、長いんですか?」


「実はもう15年なんです。私、実はこの会社に新入社員の頃からお世話になっているんです。結婚してからも社員として頑張ろうかと思っていたんですがね、子供が欲しくなって・・やっぱり社員だとなかなかお休みも取り辛いし、主人と相談して、パートに切り替えたんですよ。」


「じゃあ、月宮さんの先輩なんですか?」


「いえ、私は事務職じゃないんです。営業で入ってね。でも色々あって・・疲れちゃって。やっぱりなんだかんだ言ってこの業界は女性に厳しい世界です。生保レディとかに転職しようかなーとも思ったんだけど、やっぱり新卒から入った会社だし、なんだか自分の居場所はここ以外ない気がして。いずれ、妊活に区切りを付けたら、また社員に戻して貰うかどうかってところなんだけれど。」


お小遣い稼ぎのパートに来ている、お気楽な主婦だと思っていた彼女だったが、実は意外な経歴の持ち主だったのだ。人は話してみないと分からない。見た目だけの印象で測れないものがある。そして賢い彼女は、パート内で目立った行動は取らず、昨日だってノルマ達成の一番乗りを古株パートに譲ったのだ。ずっと営業畑にいた彼女ならば、ノルマ30件なんて朝飯前だろうにー。

彼女の名前は「石岡さん」と言う。月宮さんが入社するよりもずっと前からこの会社にいるのだ。なので、月宮さんがまだ新人の頃も知っているようだ。


「ツッキーはね、悪気はないんですよ。ただすぐいっぱいいっぱいになっちゃうの。だから、ああやってすぐに態度に出るだけ。でも根は悪くないから許してやって下さいね。何か分からないこととか困ったこととかあれば、いつでも相談して下さい。」


残り数日のパートだが、私のような人間を気にかけてくれる人がいるのだなー、そう思うと、先程までしぼんでいた気持ちに元気が出て来た。ダイジョウブー自分に言い聞かせながら、彼女と共に社内ビルの回転ドアを潜った。




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ノルマとプレッシャー

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契約にはなかった、電話業務。
リスト表に挙げられた顧客に、引き続き契約を求めるものだ。月宮さん曰く、新規ではないのだから「楽」だという。現に、他のパート女性達も与えられたリスト表を見ながら、データ入力など自分の業務の合間を縫ってこなしているようだ。普段はくっちゃべっている彼女達も、慣れた様子でスラスラと台本通りのトークを展開させ、次々と契約を決めている。


「一応、本番前にトークのシュミレーションをしてみましょう。」


月宮さんが「顧客」役、そして私が「営業」役で隣同士、内線電話を使い、打電の練習が始まった。予め渡されているマニュアルを手元に置いて、おそるおそる電話を掛けた。
結果から言えば、ボロボロだった。練習だというのにー、しどろもどろ、そして必要以上にどもってしまう。月宮さんからの質問にすんなる答えられず、資料をあちこちひっくり返し、沈黙が続いたりー、そして、ただただ「申し訳ございません、お待ち下さい。」の繰り返し。
受話器を置くと、掌は汗まみれでびっしょりだった。月宮さんは困った様な微笑を浮かべた。私の醜態について、特に指摘することなく、しかし「比較的決まる見込みのある顧客」だというリストを手渡された。


「やっぱり、実際こなしてみないことには・・取り敢えず、この人数だけ頑張ってみて下さい。他のパートさんはノルマ30名なんですけどね、OOさんは10名でいいですから。」


ーハンデをあげたんだし、出来るよね!?


心の声が聞こえる。月宮さんはにこやかながら、しかしこちらに有無を言わせない圧力を掛けて来た。


「終わりましたー!」


古株パートがいち早くノルマ30名をこなしたようだ。フロアから拍手が聞こえる。そして、他のパート達もそれに感化され、次々と契約を決めていく。
既存の顧客なのだから、もう何年も続けているのだから、普通に意思確認をすれば了承を得られるのが当たり前ーだからこれは「営業」ではない、「サポート」なのだという。
釈然としない思いだが、欠勤を数日したこともあり強く出られる訳がなかった。




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そして、四苦八苦しながらこなした打電業務ー、結局半分は留守で保留。残りの半分は、


「あなた、何言ってるのか分からないのよ。ちょっと他の担当の人に代わってくれない?」


顧客からのクレームまがいな返答に、慌てて月宮さんに代わってもらい「継続」となった。


「明日は、一人で頑張ってみて下さい。今日1日で要領もつかめただろうし・・」


月宮さんが少々うんざりした表情で私に告げた。


「もう帰っていいですよ。」


定時になり、彼女は言う。そして帰り支度をしていると、内線電話で恐らく他の支店の同期だろうか?親しげに愚痴をこぼしているのが丸聞こえだ。


「ごめんー、今日、全然自分の仕事出来てなくってさ。そう、残業決定ー。先に皆で飲んでて。うん、うん、分からない。行けたらまたラインするわ。」


申し訳ないー、私のせいだ。しかし、謝罪することさえうざったがれる気がして、そそくさ周囲に挨拶をし、月宮さんがまだ電話をしている最中なのを見計らい職場を後にした。

一回りも年下の女の子、デスク周りはキキララだらけ。第一印象は、さぼってばかりいるやる気のないOLだったというのに・・そのOLに見下される自分。使えないと思われている自分。給料ドロボーの自分。
そして、明日の打電業務、もし1人も契約が取れなかったらと思うと胃が痛い。もう辞めてしまいたいー。しかし、辞めると言う勇気さえ今の私にはないのだ。




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使えないアラフォーおばさん

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休み明けー、正確に言えば欠勤明けは、出社しにくさ倍増だ。たった2週間足らずのバイトだというのに早速欠勤・・やる気がないと思われてはいないかーだから子持ち主婦はと思われているのでは?被害妄想に陥る。実際被害を受けたのは、休んだ私の仕事を穴埋めしている彼らだというのにー。

せめてもの気持ちで、菓子折りを持参。ネット掲示板で聞いてみたのだ。果たして鵜呑みにすべきか迷ったが、とにかく誠意を伝えたい。
朝、気持ち早めに出勤すると、何か得別な日なのだろうか?ほぼ全員出勤している。勿論月宮さんもだ。タイムカードを押し、すぐに課長に謝罪をした。


「お子さんは?もういいの?」


「はい、ただの風邪だったので。ご迷惑お掛けしてすみませんでした。」


そして、自席へーいや、月宮さんの隣の席へ・・なんとなく彼女の横顔に威圧感を感じる。話し掛けないでくれオーラが放出されている気がする。鬼のような形相でPC画面を見ながら、何やらすごい音を立ててキーボードを叩いているのだ。


ー怖い・・


一回りも年下の女の子に威圧感を感じる。気弱なおばさんが勝気な若者に勝てるわけなんてない。ただひたすら謝るしかない。


「おはようございます。」


ビクビクしながら挨拶をするが、こちらを見ることもなく視線はPCに向けられたまま。素っ気ない以前に無視されたようだ。席に座る前に、立ったまま謝罪した。


「すみません、お休みいただきまして。ご迷惑お掛けしました・・」


声を震わせながら謝罪すると、やっと月宮さんは画面から視線を外して私の方へ居直った。


「今日は、締切の書類が多いんです。早くPCの電源入れて下さい。一応メールで詳細は送ってますから先ず確認して下さい。分からないことがあったら聞いて下さい。」


急いでPCの電源を入れ、メールを開けようとしたが、パスワードを入れても何故かエラー。何度試してもエラー。メモ帳を開けて文字を入力してみると、全角カナになってしまっている。半角英数字にしたいのだが、半角カナになるだけで英数字にならない。変にキーロックされており、どうにもこうにも動かない。ツールバーの変換キーをクリックしても反応が無い。
隣を見ると、月宮さんはやはり鬼の形相で仕事をしている。とてもじゃないが、「半角英数字にならないんですけど・・」などと言える雰囲気ではなかった。
時間だけが過ぎて行き焦りが募る。一旦、トイレへ行き、携帯で何か方法はないかと調べるが、出て来ない。これ以上油を打っていると思われるのもきついので、再度席に戻る。




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ーどれだけ時間が経っただろう?月宮さんがこちらに顔を向け、


「メール、読み終わりました?」


と聞きながら、私のPC画面を覗いてきた。ー終わりだ・・恐ろし過ぎて彼女の顔をまともに見ることも出来ずにいた。


「?」


沈黙。それに耐え切れず、


「すみません。メールのパスワード、入れても開かなくて。半角英数字に出来ないんです。」


イラついた空気は、目に見えないがこういう時に流れるのだろう。形容し難い溜息混じりの吐息と共に、月宮さんは私のキーボードを操作し、いつの間に半角英数字が打てるように直してくれた。


「ありがとうございます!」


月宮さんは、無言でまた自分のPC画面に向き直った。急いでパスワードを開き、メール画面を開く。実際業務をする前の段階でこんなにも疲労困憊なのは、私が使えない人間だからだろう。情けないが、これをぬるま湯にいた「ブランク」だと指摘されれば否定することは出来ない。
その後の仕事も、色々反省するべきことは多々あった。しかし、そのどれもが思い出すと憂鬱になるので忘れたい。若い頃、先輩に質問をするのが苦手だった。分からないことでも相手の顔色を伺って、なかなか聞き出すことが出来ずに時間ばかり無駄にした。うやむやにしたままなんとなく作業を進めてしまい、大目玉をくらったことも。
しかし、いずれも相手は常に年上だった。だから、怒られても呆れられても、馬鹿にされてもどこか甘えがあったのだ。今はこうして年を取り、妙なプライドだけが邪魔をして、年下相手に腹の底から頭を下げることが出来ないーだから質問が出来ないのだ。心のどこかに、「こんなくだらないことで質問するなよ。」と思われたくはない、いい格好しいの自分がいるのだ。

キャリアを捨てたー、いや、始めからキャリアなどなかった私は、何十歳も年下の、子供のような子達に頭を下げ続けなければならないー。私にとって、それが社会復帰の第一関門なのかもしれない。月宮さんに渡した菓子折りは、誰も封を開けずに給湯室に置かれたままだった。




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ルーティーン

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睡眠時間を削り、こうして早朝にブログを書くこと。
これは、私にとってルーティーンになりつつある。起きたら洗顔するのと同じ、既に体に馴染んでいる日課の一つ。
口下手な私、思っていることの10分の1も相手に伝えられない。家族にも自分の本音を打ち明けられない、愚痴を言い合える友もない。そんな私にとって、日常の不満やちょっとした喜びを、どこかの誰かに聞いて貰えることは、生きる活力となっている。




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休み明けー、どんな挨拶をして職場のドアを開けようか。
そういえば、子供の頃から休み明けの学校に行くのは気が重かった。誰も自分に注目などしていないだろうし、迷惑を掛けている訳でもないというのに、ぽっかり1日分皆から取り残されたー出遅れた感が、教室のドアを開けることを躊躇わさせた。まるで、知らない異国の地に入るような、そんな緊張を伴う感覚だ。
しかし、仕事となると学生の頃と違い、少なからずの迷惑を掛けている。
まだ戦力にもなっていない自分だが、その場にいれば「賃金」は発生する。そして社会人としての「責任」も。それを思うからこんなにも腰が重い。

ブログを書いたら、洗濯を干す。そして味噌汁作り。お握り二つと昨夜の残りのポテトサラダ。今日の昼は接待が入っていると珍しく夫から早めの報告。もしかしたら、夫なりに働き出した妻を気遣ってくれているのかもしれない。
弁当作りが一つないだけでも、朝はぐっと楽になる。

本当は逃げ出したい気分ー、しかし、逃げ出す勇気なんてない。景気づけに、気に入りの紅茶を魔法瓶に入れ、今週も1週間乗り切ろう。




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セーフ

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結局、子はインフルエンザではなかった。
朝一で検査へ、熱はまだあったのだが結果は陰性。普通の風邪だった為、自宅で薬を飲み寝かせているうちに、


「プリン食べたい。」


などと、食欲も出て来て元気になった。
久しぶりに、二人でゆっくりTVを観たりして過ごす平日。子は薬のお陰もあって、微熱まで下がり一安心。

それにしても、朝の電話は憂鬱だった。
受話器越しのコール音、そして男性写真の声。一応、私の上司は内勤課長なので、彼に欠勤する旨を伝えた。しかし、一筋縄ではいかなかったのだ。


「月宮さん、まだ来てないんだけど・・何か伝えておくこととかある?」


正直、何も思い浮かばず戸惑っていると、


「また15分後に掛けて来て。取り敢えず休みってことは伝えておくから。」


彼の後ろ側では、電話がじゃんじゃん鳴り響いており朝から忙しそうだった。


ーこんな時に休みやがって・・・


心の声が聞こえた気がして、身のすくむ思いだ。
きっかり15分後、おそるおそる再度電話を掛けた。今度はパート女性の声だ。


「今、朝礼中なんですよ・・また後で掛け直して下さい。」


言われた通りの時間に掛けたというのに、間の悪い自分に嫌気がさす。そして、更に10分後に電話を掛けると、ようやく月宮さんが出てくれた。


「おはようございます。先程△△さんにもお伝えしたのですが、子供が熱を出しまして・・今日はお休みさせていただきます。」


「あー、はい、分かりました。で、明日は来られそうですか?」


その時は、まだ検査前だということもあり、はっきりしたことは言えなかったのだ。


「それが・・学校でインフルエンザが流行ってまして。今から検査しに病院に行くのですがー」


「え!?インフル?じゃあ一週間休むとか・・」


覚悟はしていたが、電話越しの声色がガラリと変わったことで、受話器を持つ手が汗ばんだ。
お互い沈黙になり、戸惑っていると、


「とにかく、またはっきりしたら電話下さい。」


ガチャりと無機質な音を鳴らし、電話は切れた。




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こうした経緯があったことから、検査結果が陰性で心底ほっとした。 そして、インフルエンザではないことで安堵したのも束の間、再度職場に電話を掛けることがこれまた憂鬱だった。1週間休むということはなさそうだが、子の熱が平熱になるまでこうしたやり取りをし続けることのストレスー。しかし、働く母親は皆このような経験を何度も積んで、逞しくなって行くのだろう。

勇気を出して、電話をする。どこか冷たい声の感じがする月宮さんに、インフルエンザではなかったことを伝えた。次の出勤日に行けるかどうかは分からないが、一応今のところ微熱にまで下がっていることを正直にそのまま伝えた。
来週から、また忙しくなるーなんとなく休みにくさを伺わせる空気を醸し出す彼女に、優しさを求める私が甘いのか・・とにかく、早く子の体調を万全にし、出勤しなければと気ばかり焦る。


「ママ、仕事辞めるの?」


突然、子がこう聞いてきた。驚いて首を振ると、


「なんだ・・辞める電話してるのかと思った・・ねえ、やっぱりママにはお家にいて欲しいな。」


子が熱を出したのも、寂しさが少しは影響したのかと思うと、何とも言えない八方塞がりな気持ちになるのだった。




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気まぐれな優しさ

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夕方、子がフラフラになりながらの帰宅。
この時点で、予感的中ー悪い予感程当たるのが、昔から私の勘の良さ。
熱を測ると、38℃越えー、すぐに病院へ行き検査をしたが、12時間経たないと正しい検査結果が出ないと言う。鼻の奥に細い綿棒を突っ込まれる辛さは、私も経験して分かっているからこそ、無駄に検査を受けさせる気になれずそのまま帰宅し、翌日の朝病院へ行くことにしたのだ。
もしただの風邪だったら翌朝には熱が下がっているかもー淡い期待を胸に、子の看病をしながら長い夜を過ごすことになった。30分起きに体温計を脇に差し込む。下がるどころか上がる熱に苛立ちが募る。勿論子に対してではなく、憎きウイルスに対してだ。
うとうとしていたところ、夫が帰宅。子が発熱したことを伝えると、思いもしない言葉を投げ付けられた。


「あなた、仕事でOOのこと見てないから。たかがバイトごときでそんないっぱいいっぱいになってどうするの?フルタイムで働いてる母親なんてそこらじゅうにいるのに。」


疲れと苛立ちー、それに焦りと不安が重なっていたところでとどめの一言。情けないやら悔しいやらで頭に来たのだ。夫がその夜飲むのを楽しみにしていた高級白ワイン。泣きながらも夫が風呂に入っている最中に、戸棚に隠してある料理用の安ワインにすり替える。一旦、軽量カップに安ワインを全て流し込み、空になった安ワイン瓶に高級ワインの三分の二程度を入れる。そして三分の一量に減った高級ワインの瓶に、軽量カップに入れ込んだ安ワインをどぼどぼ流し込んだ。


ーいい気味。どうせ気が付くわけない。奴はラベルしか見ない馬鹿舌なんだ。




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夫が鼻歌混じりで風呂から出る。気が利く妻と言わんばかりに、グラスに白を注いでダイニングテーブルに置いておく。勿論ツマミも。夫は髪の毛をタオルで乾かしながら、それを横目で見て満足そうな顔をした。


「あなたも飲んだら?」


ギクっとする。珍しいこともあるものだ。いつもは私のことなどお構いなしの癖に・・


「さっきは言い過ぎた。久しぶりの社会復帰で疲れも出ただろう?」


驚くことに、夫は私に労いの言葉を掛けたのだ・・そして、自ら食器棚に向かい、私の分のグラスを取ろうと手を伸ばした。


「あ、私はいいから。OOも熱出してるし、今夜は看病しないとならないし。」


「あぁ、それもそうだな。じゃあ今度飲むといい。付き合いで何度か飲んだことがあるワインだけど、かなり旨いんだよ。」


ーバレる!


心臓が高鳴る。グラスとツマミの乗った小皿を持ち、リビングへ移動する夫の背中をとてもじゃないが最後まで見ていられなかった。片付けもそこそこに切り上げ、子にいる寝室へ向かった。
こんなにも同じ屋根の下で共に暮らしているというのに、夫のことが分からない。どのタイミングで優しくされるのかも、そしてそれに今だ慣れずにいる自分の方こそ欠陥があるのかと思い始める。
子の額に乗っている氷のうを変えてやり、願う。


ーどうか、明日には熱が下がりますように。


インフルエンザではないことを祈る。
そして、明日はどちらにしても仕事は休まなくてはならない。明朝、職場に電話をしなければならないことを思うと、今から憂鬱で気が重い。正直、普通に出勤した方が楽だ。休み明け、どんな顔をして職場に出向いたら良いのか・・冷たい視線を感じながら朝のタイムカードを押す自分が今から想像出来てしまう。夫は「たかがバイト」と言うが、簡単に休んだり出来る程私は図太くもなければ図々しくもないのだ。

せめて、一日だけの欠勤になりますようにと手を合わせ、神様なんているわけがないと常日頃思う私は調子良く天に向かって祈るのだった。




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落ち着かない休日

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毎日が休日だった何年もの間ー、それが体に染み付いているのだろう、決められた日の決められた時間に家を出る日々は、私が思う以上に肉体的にも精神的にもしんどく、休日の今朝、いつものようの夫と子を起こして朝食の支度をした後はそのままソファーに倒れこみ、洗濯も干さないままこの時間まで二度寝してしまった。
どっかり疲れた体を引きずって、さて、これから家事をしなくてはと気合を入れたーそれに、冷蔵庫の中は空っぽなので、子が下校するまでに買い物を済ませなくてはならない。今日は習い事の日なので送迎もしなくては・・
そして今朝、子が何度も鼻をかんでいたことを思い出し、胸がざわざわする。発熱しなければいいが・・
明日はまた仕事なので休む訳にはいかない。そして、昨日の夜に子からなんとなく聞いた、


「5年生のクラス、インフルエンザにかかった人がいるらしいよ。」


その噂話に、嫌な予感が走る。2年生と5年生のクラスは隣り合わせー、同じ階にあるのだ。なので、いつ子のクラスで流行りだしてもおかしくはない。
せめて、この短期バイトが終わるまでは流行ることのないようにと祈るしかない。もしも、子がインフルになれば1週間は仕事を休まなくてはならないし、短期なので結局契約日数の半分しか出勤出来ないということになれば、職場には多大な迷惑を掛けることになる。




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夫に仕事を休んで貰う訳にもいかなければ、実家や義実家にも頼めない。特に実母は、子がまだ1歳の頃に私がインフルエンザにかかり、その後子が胃腸風邪になり、親子共々倒れ込んだ時に呑気に電話を掛けてきて、直接助けは求めなかったが、その状況を伝えたところ、


「あら、あんた達具合悪いの?大変ね。病院行きなさいよ。うちに来るのも治ってからにしてよね、うつされたら堪らないわ。」


と、面倒など見る気がないことをはっきり意思表示されたのだ。実母は気晴らしに私達と会うのはフットワークが軽いのだが、面倒ごとー、つまり都合良く自分が扱われることを非常に嫌うのだ。
それが、実の娘の頼みであっても、やって貰うのは当たり前ー、しかしやってやるのは損得勘定が働く。頭の中でパチパチそろばんを弾き、損する行動に出ないのが実母だ。

とにかく、休む訳にはいかない。普段なら子には葛根湯を飲ませる程度だが、鼻水が出ているがまだ熱もないという段階にも拘らず、風邪薬を飲ませた。
副作用に眠気があるだろう、授業中眠くなってしまうかもしれない・・親の都合で薬を飲ませた私は最低かもしれないが、しかし、私自身が子供の頃から少し喉の痛みを感じるだけで服薬していた。
大丈夫ー、元気に帰ってくるだろう。どうか、早退の電話が鳴らないようにと祈る一日になりそうだ。




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熟年サークル

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昨日は営業が殆ど出払っていたこともあり、私達女性は事務所で留守番。
年末ということもあり、今が正念場ー数字の低い営業マンは汚い言葉で怒鳴られているのは日常茶飯事、内勤のこちらにまで緊張感が走る。
同じ事務所であっても営業がいないそこは、まるで雰囲気が違う。隣の島のパート達は和気藹々とお菓子を配り歩き、雑談をしながら適当にPC仕事をしているようだし、月宮さんも私用電話を掛けまくったり、スマホを取り出してはラインをしたりと気楽そうだ。
月宮さんは、隣の島の空いている席に座り込み、何やら楽しそうに喋っている。そして、いつ彼女から営業電話についての話があるのかと不安でいるものの、あれから何の話もなく、あの話がこのまま立ち消えになることを願っている毎日だ。頭の中では丁重な断り文句も仕上がっているーそれが通るかどうかは別にして・・
そして、私はここでも「私」だ。
黙々と、与えられたルーティン仕事をこなす。もう何百件の同じ様なデータを入力しただろう?目がチカチカするし、腰や背中もかなり強張っている。

昼になり、自席で弁当を食べようとすると、月宮さんから一緒に皆で休憩室で食べないかと誘われた。断る訳にもいかず、無理矢理作った笑顔を顔面に貼り付けたまま休憩室に入ると、パート女性ら数名が既に食事をしながら盛り上がっているところだった。
内勤の男性上司が電話番をするとのことで、職場に来ている女性達がその場に集まる形となった。


「ツッキーはいつ結婚するの~?」


パート主婦が、コンビニおでんを口の中でモグモグさせながら馴れ馴れしく尋ねると、月宮さんも同じくらいの距離感で彼女に答える。


「そうだなー、彼氏次第なんだよね。今、仕事忙しくって。」


「あのね!仕事を言い訳にする男なんてね駄目!そんな好きな女と両立出来ないような男なんて止めなさい!仕事なんて出来っこないんだから!」


「そうそう、出来る男はね、全部出来るの!女も仕事も、勿論アッチもね!」


俗に言うー、昔の言葉で言えばオバタリアン風の女性が大口を開いて笑う。月宮さんは次第に彼女ら先輩主婦にあれこれ聞き出す。
そんなやり取りをしつつ、横目で私のことを探っているのが分かる。直接話し掛けはしないが、彼女らは月宮さんの結婚話よりも、自分らと同じ年頃の無口な新人アルバイトが気になっているようだった。


「OOさんは、お子さんは?」




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恐らく、この中では古株の女性が代表して私に質問。
2年生の女の子が一人ー、それから畳み掛けるような幾つかの質問に答える。住まいは○×。結婚してからこれまでずっと専業主婦、特に資格などもないー・・、しかし気の利いた返しが出来ずにすぐに会話は止まってしまった。
いつの間に、私に向けられた注目は解かれ、皆、ドラマの話や子供の話、今晩のおかずの話などをしている。そして、その中の3人は趣味でブラスバンドをしているらしく、クリスマスコンサートの打ち合わせをし始めた。
このパートがきっかけで仲良くなったのだろうか?
正直、羨ましかった。
恐らく、ママ友とはまた違う「仲間」。そして、趣味を通じての関係性。そこには未来がある。このまま年老いて、何らかの理由でここのパートを辞めることになったとしても続いていく関係性は、何者にも代え難い強い絆のように思えた。
老人になり、和気藹々と過ごす仲間がいることー
その仲間作りは、子供が小さい頃のママ友関係ー、それが終わればパート関係・・そしてそれを逃したら、勇気を出して自ら友達作りの場ー、例えば市民会館などのカルチャースクールへ出向くしか得る方法はないのだろうか・・

ママさんバレーやコーラス、バンドや裁縫。ウォーキング仲間でもいい。40代中に、そんな仲間に出会えたら・・そして、それを願うのならば、自らの殻を破るしかないのだ。短期アルバイトのような一期一会の職場ではない、もっと腰を据えた働き方を考える時期に来ているのかもしれない。




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バザー受付

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学校のバザー、この休みにあったのだが、終わってしまえば何てことなく時間は過ぎた。
仕事を始めたことによって、そちらの方に意識が比重したのも大きいのだろう、私のキャパは既に越えており、だからこそ普段ならくよくよ悩む出来事さえ、くだらないことだと大らかに構えることが出来たのだ。

この間の集まりでの疎外感、それも1日だけ我慢すれば良いと思えばどうでも良く思えた。そのどうでも良いという気持ちが功を成し、いざ受付を始めるまでの30分程の待ち時間も、隣に座る人に自ら話し掛けることが出来たのだ。
接点を必死に探そうとせず、むしろ一期一会の関係だと割り切ったのも良かったのかもしれない。


「バザーで何か買います?」


こんな差し障りのない切り出しで、向こうも話を合わせてくれ、掘り出し物は毎年どこのコーナーにあるだとか、バザーのボランティアをした人限定で実は予めチェックして取り置きが出来るなどの知らなかった情報を聞き出せた。
その流れで、受付が始まるまでの間、ぞろぞろと数人で店内を物色することも出来たのだ。私は子の為に、サンリオのまだ未開封である歯磨きセットを取り置きした。定価で買えば500円のそれは、バザーなので100円で買えるのだ。なんとなくわいわい皆で回っているうちに、なんだかそのメンバーに認められた気がして嬉しかった。いつものように「空気」になることを覚悟していたので、まるで降って湧いたような幸運だった。




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受付が始まると、それなりに忙しかった。しかし、仕事に比べたら屁でもなかった。受付対応は1時間足らずで終了し、あとは自由時間となった。この自由時間が憂鬱だったのだが、出だし好調だったお陰ですんなり輪に入ることが出来たうえ、お昼休憩も一緒に取ることになった。
勿論、私はいつものように聞き役が殆どだったが、それでも輪の隣にいる人が聞き役に徹して暇そうにしている時に、さらりと話し掛けたりするなど、まるでいつもの自信のない気弱な私が殻を破ったかのような行動に出ることが出来た。
誰かが、コーヒー買ってくるから欲しい人と聞いてくれば、図々しくも手を挙げることが出来た。いつもなら遠慮する場面だ。その小さなやり取りがまた会話を生むこと、今更ながらそれを体感する。

バザーは地域住民を巻き込み、盛況に終わった。受付台を皆で片付け、また他の係の片付けも手伝い、そして別れる。互いの名前も知らずして終わった人達ー、この間はあんなにも取っつきにくいと感じた輪は、入ってみれば感じ良く、そして案外居心地が良かった。さよならをした時、少しだけ切なくなったのは私だけだと思うけれどー


さて、また仕事が始まる。憂鬱な業務・・恐らく月宮さんに多くの駄目出しをされるだろう。




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朝活

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仕事を始めたら、ただでさえ不眠気味だというのに更に寝付きが悪く、しかし今までのように昼寝が出来ないこともあり万年睡眠不足だ。
短期アルバイトだというのに、覚えることは多く大変。20代の頃とは違う。一般からしたら簡単な作業工程であってもアラフォーの私には難易度が高い。
データ入力は簡単ー、そう思っていたし、一日目は単純入力が多かったこともあり舐めていた。しかし、それは初日だからというある種の配慮だと知る。膨大な書類の山をある種別に仕訳し、それらを入力するにもルールに沿わなくてはならない。そのルールは一応マニュアルがあるのだが、それをいちいち確認しながらではノルマ量の半分も終わらない。ルールは一度で頭に叩き込む必要があるのだ。

仕事終わりはヘロヘロになる。家事を一切放棄したい気分だ。かろうじて洗濯物の取り込みはするにしても、夕飯の準備は正直いって無理。温めるだけで精一杯だと分かったので、朝全てを済ませなくてはならなくなった。

というわけで、5時起きの「朝活」だ。
夫が深夜残業の際、それまでは1時過ぎまで起きて待っていたが、それはもう無理になったことを伝えておいた。あれだけ私に働くよう促していたのだから、文句はあるまい。
夫はしぶしぶ了承した。レンジで温めるくらい、子供じゃないのだし出来るだろう。しかし、気の利かない夫は、食べ終わった皿をキッチンに置くことさえしない。食べ終わったらそのまま、ダイニングテーブルに置かれたままの皿や茶碗は、ソースなどがこびりついている。せめて水の張った桶に浸けておいてくれたら、家事の少しは楽になるのに・・




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5時に起きて、身支度と朝食の準備ーそれから適当に床はクイックルをかけておく。それが終われば夫の食べるかも分からない弁当の準備。自分にはお握りを2つ程。洗濯は夜に回して部屋に干してあるので、ベランダに移動させるだけ。2度目分だけ朝回す。朝は時間的に2回回している余裕はないのだ。
夫と子を起こし、彼らが食事をしている間に夕飯の下ごしらえだ。夫と子の食事が終わったら、更に家事はスピードアップ。
歯ブラシを咥えながら洗濯物を干し、コンロには煮物と味噌汁。夫には内緒だが、味噌汁は、朝殆ど飲まずに残った場合は適当な具を付け足ししているだけ。今のところ気付かれていない。
掃除機は、夫が汚す洗面周りのみかける。あちこちに毛髪が落ちているからだ。他の場所はぱっと見、掃除機をせずともクイックルで大丈夫。本当ならルンバが欲しいところだけれど。
家を出る30分前にはおおかた家事は終わらせる。そして本来の「朝活」として、残りの30分を充てるのだ。その時間で仕事内容の復習をする。マニュアルを頭に叩き込む。マニュアルで覚えづらい箇所は携帯写真に撮り、いつでもどこでも見れるようにしてある。移動時間、バスに乗っている最中などはまるで受験生さながらだ。

まだ仕事は始まったばかり。たった2週間足らずのバイトだというのに、既に息切れ。
コーヒーショップで新聞をゆっくり読むー、そんな優雅な「朝活」は、余裕のない私には分不相応だ。




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打電マニュアル

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月宮さんから渡された、一冊のファイルー
中身を開き、唖然とする。そこには営業トークのシュミュレーションのようなものが記載されていた。


ー聞いてない・・簡単なデータ入力の契約だったはず・・


しかし、営業事務。月宮さんは適当にサボりながらも、何かのリストを見ながら集中してセールスのような電話を確かに掛けていた。営業事務は営業のサポート業務だということは分かる。しかし、私はそのサポートの更にサポートという形で、しかも短期アルバイトという条件でこの職場に来たはずだ。
これは、社員の仕事ではないのか?いちアルバイト、しかも期間限定の人間に営業電話などさせるのはお門違いだし、そもそも荷が重い。しかし、月宮さんからの宿題なので、それに目を通すしかほかはなかった。




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ー打電時間ーという決められた時間に集中して電話営業をする。リストに挙げられた人々にひたすら掛ける。シュミレーションには、「留守電だった場合」「OOが理由で断られた場合」「迷っている場合」など、様々なシチュエーションに合わせてのトーク内容が記載されていた。

無理だ・・こんなこと、私には出来ない。ただでさえ電話は苦手だ。普段、学校の連絡網でさえ、心臓が口から飛び出そうな程ドキドキする。
それに、学校関係の諸々で担任に電話で質問をすることさえ敷居が高く感じる。それ程口下手な私に務まるわけがない。

明日、月宮さんには無理だと伝えよう。もしかしたらクビになるかも・・それでもいい。私に否はない。そもそも初めから営業電話をするなど聞かされていなかったのだ。


今夜も眠れそうにない・・・




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初出勤ー続き

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彼女は皆から「ツッキー」と呼ばれており、朝の低血圧が嘘かのように、昼に向かうにつれて、キャピキャピし出した。
営業マンから頼りにされているのだろう、彼女より一回りも年上だろう社員に対しても、タメ口ーそして冗談を言い合っている。


ー私の苦手なタイプー


ただ、年齢が27、8ということもあり、世代が全く違うことでその苦手意識もそれ程辛くはなかった。そこに、「比較」や「妬み」が生まれないからだろう。
彼女は、今時の要領の良さがあった。
人に頼るのが上手い。


「△△さ~ん、これ良くわかんなーい。」


「え、どれ?見せてみ。」


前方の男性社員に面倒な作業は全て丸投げしている。頼まれた男性社員は、甘え上手な彼女に目尻が下がりっぱなしだ。ちらっと彼女のPC画面を覗くと、壁紙もマウスポインターまでもがキキララだ。完全に仕事場を自分仕様にカスタマイズしている。そしてそれを咎めるような人間はこの場にいないのだろう。それは、営業マンや上司などが彼女に色々な頼みごとを低姿勢でしているのを見れば明らかだった。ここで、彼女を敵に回すと仕事に支障が出るー、円滑に業務を進める為にも、彼女のご機嫌を取っておくのが得策なのだ。中には、昼休み後にコンビニで買ったプリンを彼女に差し入れしている営業マンさえいたのだ。
そんな怖いものなしの月宮さん、暇さえあれば会社の電話から何やら私用の電話をしているようだった。いい身分だなーと羨ましく思う。
取り敢えず、初日は彼女から言われた通り、簡単なデータ入力のみ。
しかし、そのデータ量は膨大且つミスは許されない。慣れないキーボードに緊張感で、背中はガチガチ、あっという間に昼休憩だった。が、しかし、驚くことに昼休憩はなかったのだ。


「OOさん、コンビニ行くけど何か買って来ましょうか?」


「私はお弁当を持って来てるので・・」


「そうなんですか。今の時期はね、本当忙しいから、皆自席で昼休憩取るんですよ。仕事しながら食べれる物ー例えばおにぎりだとかサンドウィッチ。明日からはそういうの持って来た方がいいと思いますよ。」


契約と違うーそう思ったが、「皆がそうなのだ」と聞けば、私だけと主張出来るはずもない。それにー、一人ポツンの昼休憩を危惧していたのだから、その杞憂は晴れたわけだ。
皆がそれぞれ一人で仕事をしながら自席で食べるー、私にとってはむしろ好都合ではないか。




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昼休憩、持参した弁当を食べながらデータ入力をするのは無理だったので、殆ど咀嚼しない勢いー、たったの5分で平らげて仕事を再会した。
黙々と、延々に続くデータの打ち込み。その間、誰とも話さず・・隣の島ではパート同士だろうか?子供や旦那の愚痴話に花を咲かせている女性らがいる。彼女達と私は同じくらいの年の功。しかし、向こうから私に何か話し掛けてくることはなく、そしてこちらからも何かを話し掛ける余裕がなかった。
なんとなく一日目にして職場での月宮さんの立ち位置が分かって来た。
この部署で一番若いが、しかし、目を離せばすぐにくっちゃべるパート達をまとめ、また男性営業マンの事務仕事を一人でサポートしている。


「はー、来週は電話ですね。すみませんが、お家で予習して来て下さい。」


時間になり、帰り支度を始めると月宮さんは、1冊のファイルを差し出して来た。
何となく嫌な予感がしたが、それを悟られないように笑顔で受け取り、挨拶をし職場を後にした。

この時期、5時という時間はどっぷり日が暮れるので何だか焦る。
学童に預けている子を迎えに行くと、子は案外楽しそうに皆に混ざって遊んでいたのでほっとした。
夕飯の下ごしらえは、朝済ませていたので家に帰ればまずは洗濯の取り込みー、そして風呂を沸かして食事を温める。
食事を済ませて風呂に入り、子を寝室まで送りリビングへ。
なんだかドタバタし過ぎて、親子の会話がまともに出来ていなかったことを反省する。そして、子供が乳児からフルタイムで働き続けている女性達の大変さが身にしみた。
経験しなければ分からなかったことー、ぬるま湯の中からは想像出来なかった肉体的・精神的疲労感。

しかし、翌日は休みだったのが救われた。帰り際に渡されたファイルは、明日ゆっくり読めばいいー。
夫の帰りを待つはずが、しかし酷い眠気に勝てず、子のいる寝室に向かう。
鍋一杯のカレーと冷蔵庫にはバンバンジーサラダと冷奴、そしてナスの揚げ浸し。どれも夫の好物なので、文句はないだろう。
目を閉じると、ひたすら入力していたデータ達がまぶたの裏でぐるぐる回るー睡魔はあっという間に私を夢の中に引きずり込んだ。




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初出勤

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初出勤の前日は、殆ど眠ることが出来なかった。
やっと寝付いたのが、午前4時ー、最後に記憶する携帯の時刻がそれだったので、実際はもっと遅くだったのかもしれない。
6時のアラームが鳴り、半ば頭痛のする重い頭を引きずりながら洗濯・掃除をし、家族を送り出す。
服装は、貸し出し用の制服があるので自由とのことだったが、初日ということもあり、無難に黒パンツとグレーのアンサンブルにしておいた。
早め早めの準備もあり、30分前には職場に到着してしまった。
事務所は、小さな雑居ビルの2Fにある。ビルとビルとの間にあるその建物は結構古く、日当たりも悪い。
そしてー、事務所の入口に、早速数人の男性社員らしき人影がたむろしているのが見えて、足が竦んだ。


「おはようございます。今日からお世話になります、OOと申します。」


新卒のようにはいかないが、それでも出来るだけ礼儀正しい挨拶を心掛ける。私の挨拶に、やはり社会人だからだろう。皆、普通に会釈を返してくれたのでほっと胸をなでおろす。

入口に入り、面接をしてくれた男性がすぐ目に入ったので挨拶をすると、タイムカードを渡され通す様に促された。


ーピー!!


入れ方を間違えたのか、大きな音が鳴り驚く。たじろいでいると、男性は私の代わりにカードを機械に通してくれた。そのまま与えられた席につき、取り敢えずとマニュアルを渡された。
恐らく、毎年この時期に募集を掛けているのだろうー。薄っぺらい簡素なマニュアルは、相当年季が入っているように見えた。
募集内容と同様、簡単な電話対応とデータ入力が主な業務のようだった。
それから、何人かの社員が出社し、タイムカードを次々に通していく。また、私と同じくらいの年頃だろうか?社員なのかパートなのか分からないが、数人の中年女性や若い女性が和気藹々と出社して来たので、途端に緊張感で背中が凍ばった。




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「・・・・・まーす」


就業時間ギリギリになり、一人の若い女性が部屋に入って来た。小柄で可愛らしい雰囲気の女性だ。低血圧なのか、そのふんわりした雰囲気に反して無表情。
そして、彼女はずっと空席だった私の隣の席に腰を下ろした。


「おはようございます、今日からお世話になります、OOと申します。」


立ち上がって挨拶をする私に、女性はチラっと視線を移すと、


「あぁ、あなたが。月宮です、よろしくお願いします。」


表情を変えずに抑揚のない返事をした。そして、私の仕事の殆どは、この一回りも年下に思える、気難しそうな彼女のサポートをするのだと知り、少々気が重くなるのだった。




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