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マウンティング=ガッツ

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マウンティングという言葉は、一見ネガティブに捉えられがちだが、しかし、言いようによってはポジティブにも思える言葉だ。他人と比較し、上位でありたいと思い努力すること。諦めず、常に向上心を持つということ。それが出来て、マウンティングするというのなら、それはそれで本当の勝者なのかもしれない。勿論、夫の肩書だけでそれをする人種も一定の割合で存在するのだろうけれど。

子のダンス教室のお迎えに行くと、早すぎたのか、珍しくまいこちゃんママは一人きり。入り口付近にいる私を見付けると、すぐに私の方に来て話し掛ける。
普段、群れの誰かがいる時なんて、こちらを見向きもしない癖にー
それでも、久しぶりに話し掛けられたこと、それにここ何日も家族以外の誰とも会話をしていない飢えもあってか、どこか媚びた笑顔を作ってしまう自分が弱くて嫌になる。


「最近、仕事はどう?」


突然、仕事の話を振られ、そういえば彼女は私がまだあの短期バイトを続けているのだと思い出した。あの話をしてから何となく避けられていたような気もしたし、今は彼女のマウンティングに挑む気などさらさらないので、既に辞めて無職だと言うことを告げた途端、彼女の表情があからさまに明るくなったことにもやっとする。


「えー!そうなの?勿体ない!何で~?」


「私には、両立するだけの力がなかったんです。疲れてしまって。まいこちゃんママはすごいですね。お子さん、二人もいるのに正社員で働いて家のこともして・・」


「えー!そんなことないって。適当にやってるよ。お小遣い稼ぎだもん!」


あくまでー生活の為ではないということを強調する辺り、この人は本当に人に負けたくないのだなと思う。


「だって、家にいても暇でしょう?外で働いている方が私には合ってるし楽なんだよね。家事だって手抜きしても、仕事が忙しかったって言い訳出来るし。そうそう、OOちゃん、矯正どう?うちも今度の夏休みくらいからやらせようと思ってて。下の子もさせたいから倍お金は掛かるんだけど。」


以前、我が子が矯正をしていることを知った時の彼女の表情を忘れられない。私の身に着けている物だったり住まいだったりで「質素な暮らし」をしていると思い込んでいる彼女は、まいこちゃんよりも先に矯正を始めたことすら我慢ならなかったのだろう。


「この間から、まいこも習い事増やしたの。もう月曜から金曜までみっちりだよ。遊ぶ時間もなくって。土日も発表会とかあるし、大変。下の子の習い事も入れたら、毎月子供だけで10万くらい掛かるしね。」


それを聞いて、心底驚く。皆、子供にそれ程掛けているのだろうか?




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「お疲れ~」


小太りママが話に入って来た。と、同時に他の面子も。数人の輪になり、まいこちゃんママは大きな紙袋から中身は化粧品だと思われる小袋をそれぞれに配り始めた。


「あ、またお願いー!これ、すっごく良かったから。」


千葉ママがまいこちゃんママに注文票を渡した。一瞬、この間のマスクと眼鏡姿が浮かび、彼女に挨拶するのが躊躇われた。この場で何も受け取りもせず注文もしないことにも居た堪れなくなり、何となくその輪を抜けた。


「ママー、お腹空いたし、今日は帰る!」


子が、タイミング良く私のところに来てくれたお陰で、不自然にならずに済んだ。


「お先に失礼します。」


固い笑顔を作りながら、まいこちゃんママらに向かって声を掛けるが、誰も私の挨拶に気付くこともなく、まいこちゃんママはセールスに必死だったし、他の母親達も、まるで競い合うかのように高価な化粧品をあれこれ注文しているようだった。


ーやり手だな、彼女。


まいこちゃんママは、やはり凄い。その凄さは、常に人の上に立っていたいという向上心が成せる業なのかと思う程。すぐに白旗を上げてしまう私には、到底彼女のようなガッツも強さもないのだ。




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スポーツの春

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子供会の役員も、立候補したというのに落選。決定した面子はやはり、仲良しママ同士だ。きっと、裏工作されているに違いない。釈然としない思いを抱えつつ、さて、今後どうしようかと思い悩む。今年もまた、「居場所作り」は失敗に終わるのだろうか。


茶飲み友達ー


気軽に家に呼び合える、子供無関係の、そんな付き合い。私がずっと切望しながらも、いまだ手に入らないそれを得る為には、やはり行動を起こすしかない。
ふらりと寄った区役所で、ふと目に付いたチラシ。


ー新規!バドミントン教室開催ー


区のスポーツセンター内で行われる教室で、だから格安。毎週1回、午前中の1時間。チケット制だから、欠席すればまた次の回に持ち越せる。仕事探しに後ろ向きになっている今、ポジティブになれば面接もうまく通るような気がしたのだ。
運動不足がたたり、最近では持病も悪化しつつある。またスイミングに通おうかとも思っていたが、それではいつもの個人プレイになってしまう。勇気を出して、新しいコミュニティに参加してみてはどうかと、たまに現れる「積極的なもう一人の私」がけし掛ける。いつも、彼女に押されて決定したことは、ことごとく失敗に終わるというのに、学習能力のない私は、しかし新しい出会いに期待して、そのチラシを持ち帰った。

締め切りまでまだ日にちはあるので、もう少し考えよう。
生理が終わったばかりで、いくらか気持ちがポジティブになっていることも関係しているのかもしれない。




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矯正費用③

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取り合えず、早急に金が入るよう単発バイトを探していた。ネットでの求人は、若者向けの力仕事やコンパニオンまがいなものが多く、アラフォー無資格のおばさんを求めているところはないように思える。
主婦の特権ー調理系はどうだろうかと探していたら、丁度、隣町にあるラーメン店でバイト募集の貼り紙がしてあり、単発の予定であったがそれにこだわる必要もないのではないかと思い、詳細を知る為に、自転車を止めて貼り紙を食い入るように見つめる。


「学生さん主婦さん大歓迎!時給1100円~週2回~ランチタイムのみも可」


ランチタイムのみも可という文句に惹かれる。取り合えずのバイトなので、腰を据えて働く気はない。当面の金を工面したら辞めるつもりだ。なので、シフトに自由度があるということは、要するに人員も十分足りているということ。言い換えれば、流動性のある辞めやすい職場ということだ。

ほぼ、勢いで店内に入った。自分でも驚くのだが、普段から大人しく消極的でネガティブな癖に、思い立つと突飛な行動に出てしまうことがある。何かに取り付かれたように。
ランチタイムが過ぎて、片付けの時間帯だったこともあり、店内は客もおらず落ち着いていた。夕方になればまた第二の仕込みがあるのだろう。丁度ブレイクタイムなのか、店主らしき男性はバイトらしき女の子と談笑をしているところだった。




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「いらっしゃいませー!」


威勢の良い声に、一瞬怯む。


「あの・・表の求人を見て来たのですが。」


「はい?」


「応募したいと思っているのですが。」


客でないことが分かると、途端に店主のテンションが落ちた。声もワントーン低くなる。


「あぁ。履歴書は?」


随分横柄な感じを受けた。そして、履歴書も持たずに店に入ったことを後悔した。これではまるで、世間知らずのおばさんではないかー


「あの、今貼り紙見て来たもので、履歴書はないのですが・・」


「え?ないの?まあいいや。じゃあ明日から来れる?」


「え、明日ですか?」


突然の申し出に、更に怖気づいた。


「御免なさい、ちょっと主人と相談して・・」


あからさまにうざったそうな表情をする店主を前に、この店で働くことはないな、と思いつつ、客として来ることもこの先永遠にないなと思った。


「自分で決められないの!?ちょっと奥さん、働いた経験ある?」


失礼な物言いにカチンと来るが、それよりバイトの女の子の馬鹿にしたような視線が気になった。


「もういいです。失礼します。」


私よりもだいぶ年下であろう、男性店主に見下されたことは不本意だった。居酒屋やファミレスのバイトは自分に合わないと思っていたが、それはあながち先入観でもなかったようだ。




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バックナンバー

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暑すぎた昨日、あの図書館で涼みたいところだったが、それが出来ないもどかしさを抱えながら、逆隣町にある図書館へ出向いた。入ってみると閉鎖的な空間。勉強スペースやPCルーム、それにDVD視聴ブースもなければ勿論カフェテリアもない。あるのは狭い部屋にぎゅうぎゅうに押し込まれた本棚がたったの5列に、入り口には3列程の児童書コーナー。棚も子供用なのか大人の腰の高さ程しかない。
小さなカウンターには、年配の司書が2名。
机がない代わりに、壁に何脚かのパイプ椅子が置かれているほかは、席という席は見当たらなかった。
私の他に、利用者が数名。一日中、暇を持て余しているような80過ぎの老人男性がひとり、椅子に腰掛け半ばうたたねしている。それから3歳程の子供に読み聞かせをしている女性。後は、学生と思われる青年が、専門書コーナーで何かの本を探しているようだった。あまりにも狭い空間、申し訳程度に窓はいくつかあるものの、開放的ではないのは、景色がすぐ隣のビルの壁だからだろう。
決してそこは、長居するような場所ではなかった。
気分転換に来たつもりが、思った以上にがっかりした気持ちとその図書館の薄暗いような雰囲気に飲まれ、すっかり気分が滅入ってしまった。貸出カードを新規で作る気も起きず、しかしこのまま帰宅するのも間抜けな気がして、うろうろと雑誌コーナーでバックナンバーをいくつか手に取り、パイプ椅子に腰掛けた。




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去年の今の時期に出版されたその雑誌は、丁寧に暮らしを楽しむ系の雑誌。どこの図書館でも大人気のようで、ボロボロになったそのバックナンバーは、この図書館に置かれてから何度も何度も人の手を渡り歩いて来たのだろう。表紙はいくつものセロハンテープで補強してあり、中身もボロボロだった。
この「丁寧な暮らし」ブームも一体いつまで続くのだろう?
ぱらりとページを繰ると、「梅シロップ作り」の工程が目に入る。取材を受けた人は、お洒落で小奇麗な小柄で痩せた女性。子供が3人おり、それにしてもインテリアも素敵で整理整頓された部屋。
キッチンには、綺麗なガラス瓶に詰められたスパイスやお菓子、それに自家製のピクルスや梅干しなどあり、梅シロップもそれらが陳列されている棚にまるでコレクションのように「ストック」されるのだろう。


ー余裕があるんだな。


丁寧な暮らしを送るには、精神的な余裕と金銭的な余裕が共に必要だ。精神的な余裕には、家族円満、人間関係良好。金銭的な余裕には、国産無添加の食材だったりこだわり抜いた職人手作りの家事小道具を容易に手に入れられる環境下に置かれていることが必須。それらに該当しない私に、暮らしを楽しむ余裕はないのだろうか?
梅シロップを作ってみようかー、思い掛けたがすぐにその気持ちは萎えた。見よう見真似の素敵スタイルだけ取り入れたところで、それが本来自分の欲しいものではないからだ。それをしたところで心の底から楽しいと思える自分に出会える気がしなかった。
ボロボロになったバックナンバーを棚に戻す。


ー私の好きって何だろう?


手当たり次第何かを行うには、気力も時間も金もない。結局、今日もまた昨日と同じような一日を過ごし、明日もまた今日と同じような一日を過ごしてしまう。何も進歩していない癖に、言い訳だけは上手くなっていく。




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筆まめ

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週末、子とショッピングモールをプラプラし、可愛い雑貨屋に寄った。ふと目に留まったポストカード。手に取り、すぐに浮かんだのは彼女だった。


ーYさんに、送ってみようか。


Yさんとさよならして早いものでもう2か月弱。桜もとうに散り、新緑の季節から梅雨の季節にバトンを渡そうとしている。
美しい花の絵のポストカードを見ていると、昔の知人を思い出した。かつて、こんな私にも頻繁に葉書をくれる人物がいたのだ。

彼女は、独身時代に働いていた頃の同僚だったのだが、文房具が大好きで、昼休みになればいつでも会社近くの文具店に寄り、少ない時給分でメモ帳やらレターセットやら変わったデザインの筆記具などを購入していた。三度の飯より1本のシャーペンといったところで、ランチは外食せずに自前の弁当を公園のベンチで食べることが多かったのだ。
そんな彼女は、いつでも何枚かのポストカードと切手を鞄に忍ばせ、思い付いた時にさらさらっと一言書いて、ポストに投函していた。私が退職した後も、彼女からは頻繁に葉書が届いていた。
本当に一言なので、あちらの近況など分かるはずもない。ただ、それを書いている時間は私のことを思ってくれているのだなと思うと、心は温かくなったものだ。
しかし、私も性分なのか、貰ったら返事を出さなければならないーという妙な義務感に苛まれ、次第にポストに彼女からの葉書を見付けると、嬉しさよりも億劫な気持ちが芽生え始めた。頻繁な時はそれこそ一か月に3度も来る葉書。内容はどれもこれも似たような感じ。こうなるとただの「生存確認」のように思えてしまう。それに、どんどんたまっていくそれを、どのタイミングで処分すべきなのかにも頭を悩ませていた。
そして一番は、そこまで彼女と親しいわけではなかったという事実。職場の同僚ではあったが、それこそプライベートで遊んだことなど殆どなく、職場では最後まで互いに敬語を使っていたのだ。また、互いのーその世代にありがちな恋バナだったり結婚観などを語り合うこともなければ、職場の上司の悪口を言い、笑い合うことさえなかった。
そして彼女は、私にだけではない。他の誰に対しても「筆まめ」だったのだ。




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最初は、律儀に返していた返事も、書く内容が殆ど彼女から来た葉書の言葉をオウム返し。それに罪悪感も感じ始めていた。そして、彼女は私の近況を果たして本当に知りたいのか?それとも「葉書を出す行為」自体に満足しているだけなのかとさえ思ってしまう自分にも嫌気がさし始めていた。


ーお元気ですか?葉書、ありがとうございます。散歩するには良い気候になりましたねー


当たり障りのない、しかし失礼のない言葉を選ぶ。互いの共通項がない、葉書だけで繋がる関係。そして子を出産してからバタバタしているうちに何度か返事を書けずにいたところ、いつしかあちらから送って来ることもなくなっていた。しかし、もし彼女が「私にだけ筆まめ」だったのなら、何が何でも時間を作って返事を書いただろうと思う。必要とされる自分がいかに価値のあるものなのかを確認する、その為にも。

購入したポストカードに、Yさんの宛名を書こうとしてから思い留まる。引っ越して間もない彼女は色々とその土地に馴染むのに忙しい時かもしれない。貴重な時間を縫って、返事を書かねばと思わせてはならないような気がした。

そして、ポストカードはそのまま領収書などをまとめている引き出しに仕舞われた。やはり、私は筆まめにはなれそうもない。




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貸出履歴

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家族を見送り、暗い玄関に取り残される。
また、「今日」も始まった。長い長い一日。

スネ夫ママが図書館で働いている事実を知り、どうにも気持ちのもやもやが晴れない。そういえば、アイツは図書ボランティアの委員長だったっけ。イライラが募り、また過食気味。
昨夜、夫が帰宅する前に、もう深夜だというのにスナック菓子半袋以上とチョコチップクッキーを5枚以上、それに冷凍庫に買い置きしている子のおやつ用のチョコもなかアイスも食べてしまって、今朝体重計に乗ったらしっかり2キロ増だった。
自己嫌悪ー、どんどん自分が醜くなって行く。

小学校に入れば、ママ友関係など気にならなくなるー、ネットや雑誌などの情報を信じていたのに、蓋を開けてみたらさほど変わりない。強いて言えば、嫌な送迎が無くなっただけまだ気楽なのかもしれないけれど、しかしそれでも孤独感は年々募るばかり。
要するに、私は中途半端なのだ。




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学校関係においてドライな人達は、大抵外の世界に居場所があるのだ。それは、職場であったり地元の友達であったり。私にはそれがない。ママ関係に固執している人達は、無料奉仕ー、一見その時間は無為に思えるけれど、しかしずっと先の老後において、茶飲み友達だったりゲートボール仲間の確保という、人間関係の貯金をしているのだと思う。

子が巣立ってからの居場所ー、それを作れるリミットは何歳までだろう?大人になってからの友達なんて早々出来ない。皆、腹の中の探り合い、愛想笑い、イケテル誰かにくっついて、自分の立ち位置に自信を持つ。ファストファッションのようなー、そんな目まぐるしい関係性の中、必死で自分の居場所を保つ為に、誰かを落として誰かを上げる。

こんな暗い文章を書いている自分、正直嫌だなと思う。そして、こんなヤツと友達になんてなりたくないな、と思う。ふと、スネ夫ママに嫌われる自分は、こういうところなのかもしれないと思った。
アイツには、案外全てお見通しなのかもしれない。

図書館には、個人が借りた書籍の履歴が分かるのだろうか?
もし知られたらーそれを思うとぞっとする。アイツは私がこの図書館に通い詰めていた事実を知っただろうか?わざわざ隣町まで来ていたことをー
そして、それまでに借りた書籍で恥ずかしいものがいくつもあったことを思い出し、胸が余計にざわつく。殆どが自己啓発本だったから。見ず知らずの司書に返却する時ですら、なんとなく子の本や料理の本と抱き合わせていたのだ。本当に読みたい本は、いつでも下から2番目にひっそり重ねて受け渡していた。 もし、履歴がばれたならー、私が人間関係に悩んでいたことがそれこそ露呈される。どうか、履歴が残っていませんように、どうか、私の名前が見つかりませんようにー
今は祈るだけ。





もうすぐ運動会。 この暑い中、練習を頑張っている子には到底言えないが、アイツが視界に入るかと思うと憂鬱さで一杯だ。




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***コメントを下さった方々へ***

励まし、共感、ありがとうございます。
結局は、大嫌いなスネ夫ママの立ち位置が羨ましいのです。そしてそれと比較すると自分が惨めになるのです。
本当は、ああなりたいとさえ思っているのかもしれません。何せ、彼女は客観的に見てもキラキラママなのです。
仲の良い夫、賢い子供、たくさんのママ友、そして仕事にボランティア。私の欲しいもの全てがそこにあるのかもしれません。

***selinee***




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仕事だってママ友と一緒

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この世で一番嫌いな人間は、何故こうも私の安息の場所を奪うのだろう?いや、私の方が引き寄せているのか?とさえ思う。
私にとって、唯一の癒しの場所である図書館ー、そこで、あの横顔が目に入った瞬間、思わず見つからないよう本棚の後ろに隠れた。そして、隙間から覗くと、彼女がエプロンらしきものを身に着けていることに気付く。その見慣れたエプロンー青色のそれを認めた瞬間、大袈裟だが絶望感で一杯になった。
そして、カウンターの中にはもう一人知っている顔。まさかのボスママ。見間違う訳がない。嫌いな人間は好きな人間と同じくらい、一目で認識する力は大きい。
ボスママーと来れば、スネ夫ママ。二人はツーカー。子供抜きの間柄。 互いを呼び捨てで呼び合う。それだけ気楽で、ママ友を超えた関係というところだろうか。
私のことをスル―し、下げ、馬鹿にした態度にマウンティング。何故、こうもドラマのようなことが起こるのだろう?そして、主人公にとってこのドラマはいつでも難題を与える。私はその難題を乗り越えるのではなく、いつでも回避して来た。しかし、避けても避けてもまた交じり合うメビウスの輪のように、アイツと私は何かの縁で繋がっている。
お気に入りだった図書館。小さなカフェテリアも好きだったし、皆個々が、ひとり時間を充実させているその空間に身を置いていると、孤独感から逃れることが出来たのだ。しかし、あっという間にそれを奪われた。
返却するはずの本ー、それを再び持ち帰る。どんな顔をしてカウンターに戻したら良いのか分からなかったし、またどんな本を読んでいるのか筒抜けなのが怖かった。二人が、私の選んだ本を (例えば、自己啓発系ー毒母関係など)を知ったら、いい笑いものになるに違いない。無難に、料理本などを借りていれば良かったのに、その時に限ってこのざまだ。
返却は、休館日に返却ポストに行き返すことにした。そして、もうこの図書館に来ることはないだろう。こうして、そもそもの行動範囲が限られているというのに、どんどんそれは狭められて行くのだ。

ママ友同士で一緒に働くということー、それは、周囲からしたらどうなのだろう?迷惑ではないのか?勿論、プライベートと仕事の線をはっきりさせられる自信があるのならいいけれど、あの二人を見る限り、それは無理に違いないと思う。そして、スネ夫ママのボスママに対してのコバンザメっぷりに、心底嫌悪感を抱く。気持ちが悪いとさえ思う。まだまいこちゃんママのように、一人で新たな環境に飛び込み、自分の立ち位置を築き上げて行く度胸の方が凄いと思う 。


ーひとりじゃ何にも出来ないんじゃん。バイトひとつ、出来ないんじゃん。連れション同じく連れパートって恰好悪いし。




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心の中で悪態を付く。思い切り。それくらい、私の癒し場所を奪われた恨みは大きかった。帰りも行きとそっくりそのままの本を抱えて自転車を走らせた。そして、例のパン屋へ。ここに来ることも、もうないかもしれない。
気の良い女店主の顔を見て、心底ほっとする。なんとなくだが、顔なじみになっていたのに。


「あらー、久しぶりですね。今日も暑いですね~」


女店主は、私のナーバスをよそに、今日のお勧めパンを教えてくれた。焼きたてをいくつかと、子のお気に入りのチョコチップドーナツ、他にもあれこれ買って、2000円弱使ってしまった。まるで餞別だ。
また、おまけとして小さなクッキー2枚をくれた。


ー2つも居場所を奪われたのだ。いや、正確に言えば、スイミングも入れて3つ。アイツは何故、私の邪魔ばかりするのだろう?逃げても逃げても、ついて来る癖に、スル―して嫌な気持ちにさせられる。アイツがもしYさんだったら。引っ越したYさんと入れ替わってくれたらー今の状況は一転して、日々が楽しくなっていた。
スイミングだって、あのまま続けていられたし、Yさん含めて素敵ママらとママランチするまでになっていたかも。それに、この図書館でだって、もしYさんが働いていたらもっともっと通い詰めて、少しの会話と本の話と、たまに差し入れでここの美味しいパンを渡しただろう。
そして、何の特技も資格もなく、ただママスキルだけが高いいじわるな二人だと思っていたのに、司書という資格を持っていたという事実も私に追い打ちを掛けた。
どんどん自分が惨めになって行った。誰かと話したいー、誰か。
しかし、その誰かがいたのなら、ここまでネガティブになっていなかっただろう。どんどん悪循環に陥って行く。早くこの状況から抜け出したい。




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妄想スケジュール

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週始めは憂鬱。
土日は子がいつもより長く在宅していることで、なんだかんだ話し相手もいて気が紛れる。しかし、月曜から金曜は、三年生になり二日間は6時間授業、放課後はみこちゃんらと遊ぶことも多い。習い事がある時は「送迎」という大仕事があるが、しかし最近では子にけむったがられている。


「一人で行けるよ。自転車ですぐだし。ママはお迎えだけでいいよ。」


実際、ダンス教室でも送迎に来てる親は、まだ子供が低学年の子を持つものばかり。まいこちゃんママや千葉ママらも、最近では子供だけで約束させて現地まで行かせているらしい。子から聞いた話だが。
習い事も一つだけの我が子。ますます親の出番は無くなっていく。気楽さがないといえば噓になるが、しかし寂しさと取り残された感の方がそれを十分に上回っている。
ならば、仕事をすれば良いという答えは出ているのだが、臆病な私はなかなか動けないでいる。また言い訳を作っている。持病が悪化したという最もらしい言い訳をー
しかし、矯正資金を集めなければならない。悠長なことなど言ってはいられないのだ。

毎日が単調なのが悪いのだ。そうだ、曜日ごとに「やるべきこと」を決めれば良い。私が最も愛すべきルーティンワーク。まっさら同然の手帳を開いて、メモ帳欄に曜日を書き込んだ。そして、思い付くスケジュールを書き込んだ。


(月) 買い物―隣町

(火) 内職

(水) 図書館

(木) 買い物-駅前orショッピングモール

(金) ハローワークor区役所での情報収集


ざっと見返し、そしてため息をついた。なんてつまらない日常だろう。もう出るものなど一滴一もない程、絞り出したスケジュールがこれだ。そして、リア充だったならーと妄想してから、再度スケジュールを書き込む。


(月) 地域のボランティアやPTA活動

(火) ヨガ教室orマッサージ兼整体orネイル

(水) ママ友とショッピングorランチ

(木) 居心地の良い職場でのバイト

(金) フラワーアレンジメント


上記のような、自分の為のスケジュールに付随する形で、勿論子の学校行事や送迎などがある。なので、日々忙しく充実するのだ。遊んでばかりいるのもアレなので、メリハリを付けるために仕事や課外活動も入れておいた。バイトは生活の為ではなく、自分の趣味に使う為。雑誌の読者ママモデルのような生活。妄想している間は、しばし楽しい気分を味わえた。しかし、我に返ってから途端に虚しくなった。




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「ばっかみたい。お金もない、人脈もない、勇気もない、ないないないない。」


メモをビリっと破いて、ぐちゃぐちゃに丸める。座ったままごみ箱に向かって投げたが、やはり外れた。躍起になって、それを拾いもう一度トライする。また外れる。もう一度トライ、外れるー
そうして5度目でやっと入った。

成功者は必ず口にする。


ー続ければ、必ず光は差す。だから諦めては駄目。


しかし、その続けることすら見つからない人間は、一体どうしたら良いのだろう?続けるものを探すことからーなんて10代の若造に向けられる言葉なのだと思う。

ぐるぐるぐる。

同じところばかり回っている。回って回って、そうしてたまにフラフラよろけて、尻餅ついては痛い思いをしても、また同じところを回るのだ。
取り合えずー、今日は予定通り内職だ。ウォーミングアップにブログを書いたので、この勢いでライティングを頑張ろうと思う。




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キラキラの時間

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突然の嬉しい誘い。
引っ越し前のママ友だ。
週末に行われる、東京蚤の市ーそれに一緒に行かないかと誘いの電話があった。まだ互いの子供達が幼い頃、何気なく骨董や雑貨の話になり、一緒にいつか行ってみたいねと話していたことを覚えていてくれたのだ。
正直、私はママ友に比べたらそこまで骨董に興味はないのだけれど、というよりも、それが好きなママ友に話を合わせていただけなのだけれど、しかし彼女と一緒なら楽しいなと思い、そう言ったのは本音だった。
そして、それを思い出してわざわざ電話を掛けて来てくれた、その好意が嬉しかった。

夫は仕事、なので子も連れて行くことになった。ママ友の子は、息子君はパパとスポーツ観戦だというので妹ちゃんだけ。女の子同士だしこちらも安心。
電車を乗り継ぎ、現地集合ー駅からものすごい行列に辟易しつつも、懐かしい笑顔を見つけたら心が綻んだ。


「久しぶりー!急に誘っちゃってごめんね!」


「ううん、嬉しかった!」


子供同士も、少し恥ずかしがっていたものの、子がお姉さんらしく妹ちゃんをリードする。
入場券500円を購入し、場内に入ると、もの凄い人だらけだ。海外から買い付けたという、食器や雑貨、古道具や雑誌。アクセサリーや人形、それに服。しっかりと子の手を引く。子供連れはどこも大変そう。


「ちょっと、ごめんね。あの店いいかな?」


妹ちゃんを私達に託すと、ママ友はヴィンテージガラスの店であれこれ物色し始めた。子供達がいるので、入り口付近で私もそれを見たが、光を当てると色が変わる綺麗なガラスや、可愛い花の絵柄が入ったガラスのペンダントトップが細々とたくさん置かれている。


「きれーい!!」


子や妹ちゃんが手を出した。こういう時、私はすぐに店主の目を気にする。やはり、私達を見ていたその視線がなんとなく迷惑な感じに思えたので、二人の手をそっと引き、通りに出た。


「ありがとー!たくさん買っちゃったよ。これでピアスとかネックレスとかたくさん作りたくって。」


息を付く暇もない程、次はヴィンテージレースの店に入ってしまった。またもや、私は子と妹ちゃんを預けられてしまったので、近くにある子供が好きそうな昔のおもちゃなどが売られているレトロな店を覗いた。二人とも、あれこれ触って喜んでくれた。ここの店主は子供に優しい視線を送ってくれた。


「ごめんごめん!ありがとうね!レースもかなりいいのがあって。掘り出し物たくさんだよ~ほら、これ可愛くない?」


彼女が見せてくれた、20センチ四方のレースはなんと2500円もするものだった。こんな切れ端に2500円?と内心思いながらも、


「素敵だね。繊細で可愛い。」


確かに、値段を抜きにしたら可愛かったのでそう答えた。


「あ!なんか私のばっかり。ごめん、何か見たいものとかある?」


「いいよいいよ、この雰囲気だけでも楽しいし。気にしないで。ゆっくり回ろう。」


2時間程歩いただろうか、子供達がお腹が空いたと騒ぎ出したので、焼き豚丼のお店で弁当をテイクアウトした。ライブも行っていたので、それを観ようと席を探し、腰を下ろした途端、


「あ、私はお昼いいや。ごめん、ちょっとだけお店見て来てもいい?この子、食べてる時は静かだから!ね、OOちゃんママの言うことちゃんと聞くのよ。」


ーえ?


少しだけ違和感を覚えつつ、しかし私も歩き疲れたし、ライブも楽しそうだったので子供達と昼休憩をすることにした。


「ごめんごめーん!」


結局、1時間と少し経った頃に彼女は戻って来たが、両手一杯に紙袋。


「ハンドメイドの資材が欲しくって、あれこれ見てたらこんな時間になっちゃった。本当にごめん!!」


「いいよいいよ。すごいね、こんなに買ったの?荷物持つよ。」


「いや、大丈夫!中身は布とかかごとかだし。食器類は買ってないから重くないよ。それにしても、すごい可愛いボタンとかもあってあれこれ目移りしちゃって。なんか色々作りたくってむずむずして来たー」


「ハンドメイド、順調?」


「うん、まあね。今はネット販売が中心だけど、ゆくゆくはお店持てたらいいなーって。はぁー、喉渇いた!!ちょっと待ってて!」


ーまた?と少しだけ思ったが、興奮して上気した頬を見せる彼女が、なんだか子供のように思えて可笑しくなった。


「お待たせ!」


振り向くと、ビールを二つ持つ彼女。


「なんか子供達のお守りさせちゃって、本当ごめん!甘えちゃったよ。これ、一緒に飲もう!」


ビールを奢ってくれたのだ。
子供達はライブが面白かったようで集中して見ていてくれたし、別に私は大変ではなかったのだが、彼女の好意に甘えることにした。昼間から飲むビールは格別だった。いや、訂正する。昼間から友達と飲むビールは格別だった。




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それからは、彼女とあれこれ近況ー子供達のあれこれや旦那のこと、彼女の仕事やママ友関係の愚痴、それに最近のニュースやドラマについてあれこれ語り、もうどれくらいぶりだろう?いつもは緊張感というベールに、頭のてっぺんからつま先までくるまっているというのに、それを脱いで解放されたーそんな心地よさを覚えた。

ふらっと手頃なレトロガラスの店に入った。それまで覗いた店は、一枚の皿が何千~何万円もするので手が出なかったが、その店は数百~千円ちょっとという良心的な価格。キラキラのどこか懐かしい模様の入ったガラス食器に心奪われる。


「それ、可愛い!買っちゃいなよ!」


小さな小鉢?デザートグラス?に手を伸ばしていたら、彼女から背中を押された。一つ1000円。私にとっては決して安くはない金額なのだが、


「うちも買おうかな~、夏っぽいし、アイスクリームとか入れたら可愛くない?子供達のお揃いにしようよ。」


そう提案され、なんだか嬉しくなって購入してしまった。子に何色が良いか聞いたら、意外に「紫」と言うのでそれを選ぶ。ママ友は、「赤」と「緑」をそれぞれ妹ちゃんと息子君用に選んだようだった。

結局、私が購入した物は、そのグラスと小さなドライフラワー、それに子が欲しがった動物のブローチだった。予算は飲食入れても4000円までと決めていたので、なんとか守られた。一方ママ友は、恐らく全部で軽く10万円以上は使ったのではないかと思う。しかし全てそれは経費になるという。小さな可愛いガラクタ達は、彼女の手先で素敵な雑貨やアクセサリーに生まれ変わるのだ。

まだ日は明るかったが、お互い夕飯は自宅で食べるので、途中まで共に電車に乗り、先に下車した彼女達を電車の窓から手を振って見送った。子が私を見上げ、胸元に付けたばかりのブローチを撫でながら、


「ママ、すっごい楽しそうだったね。私も楽しかったけど、ママの方がすごい楽しそうだった。それに、OOちゃんママ、買い物し過ぎだよね~」


互いに顔を見合わせて笑った。
心地よい疲れ、そして少しだけ残るアルコールに酔いしれながら、電車に揺られて見た夕焼けは、まるで幸福の象徴を表すかのような暖かな色をしていた。




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癒し井戸端

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二人以上の群れを見掛けると、その中に知り合いがいたとしても、つい踵を返してしまう。勿論、その群れ全員が自分に好意を持つ人であれば、そんなことはないのだが、見知らぬ人や苦手な人が一人でも混じっていたら、そこでアウトだ。
若葉の頃になり、午前中から主婦や小さな子供達が外でたむろすようになって来た。私が外出するゴールデンタイムー園の送迎時間をずらしたその時も、ちらほら見える人の群れ。それは、全く面識のない顔ぶれであっても、マイナスの感情が湧くのは何故だろう?

その日は、私の持病の薬を貰いに行く日だったので、朝からきちんとした格好でのゴミ出しだった。すると何故か、この団地の住民ではない孤高の人がエントランスで下の子と遊んでいたのだ。エントランス横には、ちょっとした小さな滑り台とブランコがあるだけの、未満児専用ともいえる公園のような場所がある。それが目当てなのか?しかし子供はそちらではなく、エントランス内の花壇の石段を、まるで平均台のようにして楽しそうに歩いていた。
目が合い、どちらともなく挨拶。下の子はちょっと見ない間に大きくなっており、もうスタスタと一人で歩いているのだ。


「もうこんなに大きいんですね!この間まで赤ちゃんだと思っていたのに!えっと、今何歳でしたっけ?」


正直興味もない、しかし無難で当たり障りのない会話ー、それが子供の年齢や名前を聞くことというのは、子がまだ0歳児ー支援センターデビューをした頃から学んで来たこと。


「今年でもう2歳よ~下の子は本当にあっという間だね!さなの時はやっと2歳、やっと幼稚園!やっと小学校!って感じだったのに。」


「そうそう、飲み会来なかったね!盛り上がったよ~3次会まであってね、最後はカラオケだったんだけど午前様だったよ!勿論、私はこの子がいるから最後までは無理だったけど。」


欲しくもない情報が耳に入る。スネ夫ママやボスママ、まいこちゃんママやふわふわママなどは最後までいたらしい。1次会は、私と既に引っ越してしまった2名と、仕事再開している3名以外は来たとのこと。未就園児持ちのママであっても、1次会だけは参加という人も多かったと聞く。
また、罪悪感。そして疎外感と劣等感。
ただ、ゴミ出しだというのに珍しく余所行きの格好をして、化粧もきちんとしていた私。いくらかそれに救われて惨めな気持ちにまではならずに済んだ。久々に会うかつての知り合いに、ぼさぼさ頭のスウェット姿を見せてしまったのなら、また次に会うであろう何か月先までずっと、そのだらしのない印象は上書きされることがない。孤高の人も、子連れでラフな格好であっても、そもそものスタイルの良さと派手な顔立ちで相変わらず垢抜けている。中折れ帽に後ろはお団子、耳には小ぶりのピアスーそれにサングラス。黒のサロペットにホワイトTシャツ、大きな鼈甲のバングルとごつい腕時計、足元はニューバランスのあまり見たことのないカラーの物。本当に、隙のない「隙」を作るのが上手い。素敵ママもそうだが、何故私の顔見知りは皆こうもお洒落な人ばかりなのか・・


「小学校はどう?」




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孤高の人も暇なのか?私にあれこれ子のことを質問して来る。他人との会話に飢えていた私は、子のことを必要以上に喋りすぎてしまった。下の子が、孤高の人の手を引いてあちら側の公園に行こうとする。普通なら、そのタイミングでさよならするのが正解なのだろうが、そのまま引きずられるように私もそちらに足が向く。
孤高の人は、来るものは拒まずーの相変わらずのスタイルで、そのまま自然な形で私との会話を続ける。下の子は、滑り台をし始めたものだから、そちらに注意を向けながらも、私の教師に対する不満、子の心配ごと、それに習い事のことやこの先の社会復帰のことなどとめどなく話すことは尽きなかった。 いつしか、孤高の人に対して「ため口」が語尾に混ざった話し方をしている自分に気付いた。こんなことは初めてだった。向こうは園にいる頃から私に対しても、他のママに対しても「ため口」のスタンスだが、私はそうではなかった。
1対1の空間ー、そして今彼女の子とうちの子の接点はまるでないこの状況が作り出す、フィフティフィフティーの関係性が、私を必要以上の緊張感から解き放ち、自然体にさせていたのかもしれなかった。


「あ、もうこんな時間。用事とか、あるんじゃない?」


孤高の人が見せてくれた時計は、話し始めてから2時間も経っていた。


「そろそろ帰ろうか~」


孤高の人が、下の子に声を掛ける。正直、私はまだ名残惜しい気がしたが、このタイミングで別れるのが一番最適なのだということは、少ない経験値からでも明らかなことだった。


「じゃあ、また。」


「うん、ありがとうねー、お互い頑張ろうね。」


孤高の人が、それとなく掛けてくれた「頑張ろうね」の言葉、それが胸に響く。色々と話し過ぎたからだろう、それを労うつもりでの言葉だったのだろうが、それは私の現状全てに当て嵌めると、どうにも有難く心に染み渡るものだった。
同じ地域に住んでいても、この次彼女に出会うのは何か月ーいや、こんなじっくり話すのは何年先かもしれない。いや、これが最後かもしれない。大袈裟かもしれないが、ママ友ではない、挨拶と立ち話だけの関係である彼女とは、それくらいの縁だということは自覚している。
それでも、この先何かの形でこの関係が発展したらーとありもしない妄想をしては、どこか前向きになっている自分がいるのだ。




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検査結果

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持病の検査結果を聞きに病院へ行って来た。
何度目にしても、あの威圧的な医師の元へ行くのは憂鬱だが、ここのところ体調に思うところがあったので、安心材料が欲しかったのもあり検査依頼を申し出たのだ。

結果から言うと、良くなっていた数値は悪化し、現状ではグレーゾーン。今すぐ命に別状はないが、しかし油断すれば即入院という事態も考えられる。目の前が真っ暗になった。
ここ数年、調子が良かったーいや、良過ぎたことを過信し、甘く見ていたのだ。病気は、すっかり私の中から消え去り、そもそも実在していたのかさえ分からない程に存在感は薄くなっていた。
夫にまず、その事実を伝えた。メールでだ。
しかし、一向に返信はなかった。仕事中だから仕方ない。それでも少しは心配し、早く帰宅してくれるかもしれないと期待していた。子に病気のことは言っていない。入院や手術ともなれば説明しなければならないが、まだその段階ではないし、変に伝えて余計な心配を掛けたくなかった。
夕飯の支度をする気にもなれず、しかしなんとかカレーライスとサラダの用意はした。いつもはこれに数品酒のつまみになりそうなメニューも考えるが、今日のところはいくら夫であっても大目に見てくれるはずだと信じて疑わなかった。




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ー今日も、残業か?


子と共に夕飯を済ませ、風呂に入り、それから寝かせて夫を待つ。何かしていないと胸のザワザワは治まりそうもなかったので、小さいボリュームでニュースをつけながらライター内職をする。
時計の針は0時を過ぎた。
そこへ、玄関の鍵を通す音が聞こえた。
リビングに入って来た夫は、一目で分かるくらいに酔っていた。また例の独り言。しかし、今夜は機嫌がいい。


「毎日毎日、俺くらいだよ。部下にせがまれて飲みにいってんのは。面倒だけど、誰からも誘われないアイツみたいになったら終わりだよな。」


誰からも誘われないアイツーそれは、この間の辞令で夫の上司になった後輩だ。異動して夫の課に来た。その知らせが来た時、夫はぐでんぐでんに酔っ払い、悪態つきながら散々愚痴を聞かされた。とはいっても、私に向かって愚痴っているのではない、独り言だからトイレにこもりながらだとか、風呂に入りながらだ。近所迷惑ではないかというくらい、筒抜けの独り言。


「今日ね、検査の結果が出てー、メール見なかった?」


一応、耳に入れておきたくて聞いてみたが、


「いつものあれだろう?またいつの間にか治ってるんじゃない?」


その言葉に、少しの思いやりも感じなければ心配も伝わっては来ない。まるで、他人事だった。家族なのに、私の体の中の異変に向き合おうともしない。それは恐怖からではない、冷酷な無関心さからのものだった。

翌朝の弁当は、到底作る気が起きなかった。なので、タッパー一杯に白米、それからジャーに昨夜の残りであるカレーを入れて持たせた。きっと文句を言うに違いない。恥ずかしいと、弁当を食べずにそのまま持ち帰るかもしれない。
それでもこれが、私が夫の無関心に対抗する精一杯のやり方だった。




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スーパー銭湯での出来事

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24時間は誰にとっても平等で、同じ1時間でも、人によってその価値は変わる。
多くの人に必要とされる1時間と、誰からも必要とされないーむしろ自己ショーヒしているだけの1時間。

最近オープンしたスーパー銭湯。我が家含む近隣住民へ招待券が配布された。大概10%オフってとこだろうと捨てる予定のダイレクトメールと一緒にしていたのだが、夫が大騒ぎ。


「ちょっと、ちょっと!こんなところに置いてたら捨てちゃうよ!これ、今週末まで無料じゃん!今日は丁度代休だし、OO、風呂行くぞ!」


「え?何~?行きたい~」


「夕飯も、久々外食だな!」


「やったー!」


「じゃあ、早く宿題終わらせろよ。××うどんに連れてってやるからな!」


「はぁーい!!」


折角の代休だというのに、悪天候の為ツーリング仲間と遊べなかった夫は、タダで憂さを晴らそうという気分なのか?せこい男。ポケットマネーで可愛い娘と、可愛くはないかもしれないが、家政婦妻でも焼き肉に連れて行こうという気はさらっさらないのか?夫が連れてくといううどん屋は、近所でも有名なワンコイン以下でお腹いっぱい食べられる店。子も私も普通盛で、それぞれがトッピングを付けたとしてー、夫がプラス丼を付けたとしても1500円も行かない。正直マンネリ化しているのが本音のところ。いやー、違う。夫が家族以外のプライベートでは見栄を張って高級店ばかり行くことが気に入らないのだ。 内心悪態を付きながらも、笑顔を無理やり作って答える。


「あなたに言われなかったら捨てるところだった。ありがとう。外食も楽しみ。」


こんな意味のないおべっか、あと何十年し続けて行けば良いのだろう?それで実際私の老後が安定だという保証があるのならいくらでもするが、夫に対しては女性関係ーそれ以前に信頼関係がまるで築けていない。子が成人すれば捨てられるのではないか?という見えない不安感は年々高まっている。
心の声は言葉が汚い。しかし、夫のように独り言を声に出す失態など冒すまい。
だが、楽しみと言った直後、そこに行く気はある”気付き”で失せた。近隣住民への招待券ということはー、嫌な人間とかち合うかもしれない。浮かぶ人間、スネ夫ママやボスママ、その取り巻き達・・・

そして、その嫌な人間に自らの裸体を披露するのも、また逆に彼女らの裸体を目にするのも心底具合が悪かった。
しかし、夫は一度言い出したら聞かない。こんな些細な提案であっても、拒否すれば彼のくだらないプライドを傷付ける。
ー生理だということで、夫と子だけで行って貰おうか・・
思い掛けて、それも無理だと悟る。子はもう3年生だ。男湯だなんてありえない。だからといって、まだ一人で銭湯に行かせられるわけもない。
腹をくくり、出掛けることにした。

出来たばかりの銭湯は、大々的に広告を打っていることもあり、大繁盛。そもそもスムーズに車の駐車が出来ない。駐車場に入るまでの長いテールランプの列を見て、夫も諦めるだろうとほっとしたのも束の間ー、


「いいよ、先行ってて。」


まさかの気遣い。夫は普段から気遣いのひとつもしない癖に、ここでか?というところで遣う。以前、ボスママ達がショッピングモールのイベントに集団で来ていた時だって、わざわざ子を連れて挨拶に行けと勧めたくらいだ。むろん本人は、「休日なのに、ママ友らとの楽しい時間を提供してやっている物分かりの良い夫」だと自分を位置づけている。意味が分からない。むしろ、全部分かったうえで、面白がってやっているのではないか?とさえ思ってしまう私は病的なのか?
もう、そそくさと入ってちゃっちゃと洗って、周りを見渡すこともなく、すぐに出よう。


「ねえ、あれってDちゃんかな?」




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子が指す方を見る。受付で丁度リストバンドを貰っている客ー確かにそれはDちゃんママだった。そして、もしかしてーと思いそのすぐ後ろにいる家族連れを見ると、それはAちゃん家族。そして更にEちゃんとそのママも・・
彼女らは、家族ぐるみのお付き合い。裸の付き合いだって自然の成り行きなのだろう。それぞれパパはいないようだった。恐らく、夫が残業やら出張やらで夕飯作るの面倒~からの、温泉行ってそのままご飯食べて、帰ったらすぐ寝かせられるし丁度いいじゃん!のノリで来ているに違いなかった。
子供達は、全員女だから、もうそれだけできゃあきゃあ盛り上がっている声がこちらまで聞こえて来る。それを子が羨ましそうに眺めている。
彼女らは、確か習い事もお揃い。バレエで一緒。幼稚園から小学校、ずっとこれまでクラスも一緒。大きいフンが3本、そしてちょろちょろ小さなフンが6本、長い金魚のフンが連なって大浴場への暖簾に吸い込まれて行った。


ーサイアク・・今なら引き返せる!


子にちょっとトイレーと言い、個室に入りそのまま15秒程してからドアを開ける。


「ごめん、ママ、お腹痛くなっちゃって。オムツの日になっちゃったみたい。」


生理についてー、まだ子には具体的に説明はしていないが、しかしふざけて用を足している時に子がパンツに付いたナプキンを目にして驚かせてしまったことがあり、なんとなくだが伝えていたのだ。ーママがオムツの日は、頭とお腹が痛くて休まなくてはならないと。
子は、それを聞くと、あからさまに嫌な顔をした。楽しみにしていたのだ。しかし、あの連中と裸でかち合うことと子の機嫌を損ねることを天秤に掛けたのなら、答えは一つに決まっている。
急いでまだ車にいるだろう夫に電話をした。


「もしもし、ごめんなさい。今トイレに行ったらあの日になってしまって。今日は銭湯無理。ごめん。私とOOだけバスで帰るから、あなたはゆっくりして行って。」


「はぁ!?なんだよ。仕方ないな。もっと早く分からなかった訳?準備不足なんだよ、要領悪いな。」


そう言い捨てると、ガチャ切り。本当にまるで生理になったかのように気分は最悪だった。


「ごめんね!パパは入っていくらしいから、ママとバスで帰ろう。あ、ステーキ屋さんにでも行こうか?」


「え?ステーキ!?行きたい!!」


ころっと変わる表情。そりゃあそうだ。普段ファミレスか安いうどん屋かフードコート。子は駅前のステーキハウスに何度も行きたがっていた。そこは、ランチでもステーキとサラダにライスで1800円はする。夜ならその倍かもしれない。
子の機嫌を取る為にーそう言い訳しつつ、子の機嫌を元に戻す面倒臭さから逃げただけ。今は虎の子を増やさないとならない時なのに、相変わらず目先のことに捉われ先を見ないようにしてしまう。しかし、自宅に戻ってお茶漬けを食べる気分にはどうしてもなれなかった。




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取り越し苦労

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朝、夫と子を見送り、家事も一息ついたらまず求人チェックをネットでするのが最近の日課。GWも明けて、また採用枠が増えることを期待して・・しかし、どれもこれも良い条件のものは「経験あり」だったり「資格あり」だったり、「年齢制限あり」だったりする。
そして、募集と共に張り付けてある社内の雰囲気の写真ー前にも書いたかもしれないが、その生き生き溌剌とした雰囲気に飲まれ、あぁここは無理だと頭から決めつけてしまう。地味で暗くて、ドンくさそうな人達が集まる、そんな職場があれば気楽で良いのに、と無意味な妄想をしてしまう。
私が馴染める職場なんて、早々ないことは百も承知だ。それに、去年の冬場に短期だが働いたあの経験は、少なからずとも私にある種の自身を与えたはずなのにー、しかしあれから半年も経つと、たちまちそれも小さく萎み元の木阿弥。


ーはじめの一歩ー


昔から苦手。
右足を出せば、おのずから左足が出て、そして右足・・ゆっくりでも歩みを進めることは出来るのだけれど、足が竦んで動けない。
求人探しは、ネットサーフィンになり、次第にあちこち巡回したら無料試し読み漫画を読んで、もう昼。そのまま二度寝してしまうこともあって、そうなると子が帰宅する時間になる。
要するに、時間を無駄にしているということだ。


ー今日も、誰とも会話をしなかった・・


子でさえ、「学校」という名の社会に身を置いて、朝の8時過ぎから多くの人間に触れ、言葉を発し、人の声を聞き、会話し、何かを感じているというのにー私は実態のないフィクションの波に身を任せ、心に残らないストーリーを右から左に流し、時間と水道光熱費を消耗し続けている。

バルコニーから見える、園バス待ちママ集団。あの輪に入りたいとは思わないのに、目にすれば無性に寂しくなるのは何故だろう?携帯ひとつで、気軽に自宅にお茶を誘える人がいたならー
悶々としていると、ふと浮かんだ顔。同じ団地のお婆さんだ。そういえば最近見掛けないがどうしたのだろう?どこか体の具合が悪いのかも・・彼女には彼女の世界があり、生き生きと老齢サークル活動をしている様子を目にしてから疎遠になったんだっけ。
結局は、孤独な老人に必要とされている自分に酔っていたところ、孤独なのは自分の方だったことに気付き、落ち込んだのだ。
それでも、気になりだしたら止まらず、彼女の住む家の棟を、買い物がてら遠回りして回って見た。ドキドキしながら、バルコニー側を見ると、洗濯物が少量だが干してあり、心底ほっとした。
危惧していたことが、現実にならなかった、それだけで安堵した。




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矯正費用②

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取り合えず、夫からダンス教室の半年分の月謝を徴収することが出来た。もう少し手間取るかと思い、何通りかの言い訳を考えていたのだが、それらを使わずに済んだ。先日、私が感情を爆発させたのが効いたのか?普段から順応な妻が、思いがけず切れることー、それは案外、恐怖心を煽るものなのかもしれない。何をしでかすか分からないーそんな風に私のことを思ってくれて構わない。

前借ーという形で集めた金。自分の虎の子。合わせて12万の入金をしに、歯科医院へ行った。受付の女性は、てきぱきとした人で、しかしいつでも万札の束を数えている印象が拭えない。
その日も、私が院内に入ると既に患者が受付で入金をしているのが目に入った。


「それでは、30万と2400円ですね~」


歯科矯正ではここらの地域で有名な医院だ。なので、患者の多くは矯正やインプラント目的の人々が多い。1度の治療で何万も入る。やれレントゲンやら歯形やら、また器具代やらで札束が受付を往来する。

私の番になり、12万を差し出すと、受付女性は慣れた手付きで札束を数える。それは銀行員かと思うくらいの美しい手さばきで、それまで私の財布の中に乱雑に入れられていた札だというのに、行儀良く同じ向きで揃えられてから扇形に広げられると、もう既に他人行儀な顔で、もはや私の所有物ではないと主張しているかのようにさえ思えた。


「はい、確かに丁度お預かりしました~」




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支払いが終わり、財布の中は千円札と小銭のみになってしまった。今夜は夫も不在だし、節約料理を考える。こんな時は麻婆豆腐だ。これ以上コスパの高い料理はないと思う。
丼にすれば、子も喜ぶ。少しのひき肉と1丁15円の豆腐で出来上がる。コンビニなどでたまに見掛ける麻婆丼だが、400円程度もする。これ以上贅沢な買い物はないとすら思える。家で作れば、倍量作っても価格は10分の1程度に抑えられるのだ。それに、わかめとねぎの中華スープ。栄養のバランスを考えて、グリーンサラダを付けても、1食当たり、50円程。ドレッシングは勿論手作りだ。あれも、買うとなると容器代も含めてなのか?とても高いと思う。家にある調味料ですぐに作れるドレッシングも贅沢な買い物のうちの一つだ。

翌朝、まだ作ったばかりの矯正装置を装着せずに就寝してしまった子を怒鳴りつけてしまった。


「ちょっと!!ちゃんと付けないと意味ないでしょう?一体いくら掛かったと思ってるの!?何十万も掛かってるの!安くないんだから、ちゃんと付けて!!」


「ごめんなさい・・」


ヒステリックに怒鳴る私に怯む子。夫がいれば抑えられる感情も、この日は早朝出勤でいなかったこともあり、歯止めが効かなかった。

子に、金のことだけは言うまいと心に決めているのに、自分の余裕のなさからその決め事すらいとも簡単に破ってしまう。最近の私-、常にピリピリしている気がする。夫に対しても子に対してもーそして、不甲斐ない自分自身に対しても。
早急に、金を工面して気持ちを落ち着かせたい。そうでないと、この焦りから来るイライラを助長させるばかりだ。




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ACな私

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母の日も終わった。
往生際の悪い私は、何もしないと息巻いておきながらも、出先で目に付いた母の日用のカードを購入していたのだ。
もしも突然気が変わったらー、母の好きそうな物を見つけ衝動的に贈りたくなったら・・そう思い、いつ気が変わっても困らないよう、ご丁寧にカードにはメッセージを書いて用意していた。
先日の誕生日にカードを入れなかったこと、心のどこかで後悔していたのは、立ち読みした雑誌の「母の日特集」に、「母の日に貰って嬉しいプレゼント」に堂々1位に挙げられていた「メッセージカード」が心に留まったから。
私と同世代の著名人女性が母親と笑顔で並び、写真におさまっていた。随分年配だが綺麗に整えられた白髪の、お洒落にも気遣っていそうな老女。彼女の言葉に、


「毎年、娘が私のことを考えて素敵な雑貨や洋服を贈ってくれます。しかし、一番嬉しいのはメッセージカードなんです。」


綺麗なジュエリーボックスのような箱に、その著名人女性が幼い頃から贈り続けて来たカードが、大事に仕舞われていた。似顔絵付きの小学校の頃貰ったと思われるあどけない可愛いカードや、思春期だからかどこかぶっきらぼうにシンプルなカード、それでいて彼女をやはり母親として労わるような丁寧に書かれたメッセージが書かれている物。大人になれば綺麗な切り絵や立体絵本のようなカード。それは、親子の歴史だった。互いの関係性が環境と共に微妙に変わっていっても、血を分けた繋がりは決して消えないーそれを物語っているように思えた。

本屋で立ち読みしたその言葉、そして写真の数々に、私は翻弄させられた。誕生日にカードを入れなかったこと、もしかしたら母は寂しかったのかもしれない。それと同時に、もし私がこの彼女のように誰しもが知る著名人であったとしたら、プライドの高い母は、この老女のようにカメラマンに向かって満足気な笑みを湛えていたのだろうと思う。自慢の娘ー、私が育てた娘ー、子育てを成功させた母である自分自身に酔いしれていたことだろうと思う。それを思えばまたイライラしたし、虚しくなってため息が出た。ありのままの自分を突き放した母、受け入れてくれない母。しかし今、彼女がどうにかなったとしての覚悟はあるのか?




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色々考えて、賭けに出た。
母の日前日。もう今日しかない。
カードを握り締め、ここらで有名な花屋へ出向く。値段は張るが、ラッピングは素敵だし取り扱っている花々も珍しいものが多い。配送手続きは前日だと間に合わないかもしれない。聞いてみて、無理ならば諦めよう。今はやはり距離を取る時期なのだ。
息を切らして、店の通りの角を曲がる。
どんな花にしようか、カーネーションではなく紫陽花にするのも良いかも。紫陽花の花言葉は「家族の絆」、どんなに毒母であったとしても、私は母を大切に思っていることが伝わるかもしれない。今だけは「憎しみ」を「失望感」を捨てよう。ここは大人になろう。


ー・・?店がない・・


いつも見掛ける店がない、閉店したの?しかし、よくよく目を凝らしてみると、店は普通に存在しており、シャッターが閉まっているだけだった。意気込んで行ってはみたものの、休みだったのだ。
力がへなへなと抜け、結局そのままスーパーに寄り牛乳1本だけ買って自宅に戻る。渡せなかったメッセージカードを鞄から取り出した。端っこがしわくちゃになってしまった。
ゆっくりとカードを開く。何度も何度も反芻し、下書きを書いてから綴った言葉。伝わらなかった想い、伝えられなかった気持ち。しかし、心のどこかで納得出来た自分がいた。
彼女に伝わらなかったー、しかしそれはこちらが伝えなかったから。アクションを起こさなければ、何も起こらない。本当の失望は、ドアをノックしても何の反応もないことだ。
勇気を出してカードを贈ったとして。何のリアクションもなく虚しい思いをすること、その辛さから逃れられたのだから、心の安定はまだ守られるのだ。




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矯正費用①

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「去年、作ったマウスピースですがね、もうこれ以上ねじが回らないんですよ。これ以上開こうとすると壊れてしまって危ないので、作り替えしないと駄目ですね。」


まだまだ先だと思っていたのに、歯科医は私の動揺など気にするでもなく、新しい矯正器具のカタログを見せて来た。また歯形を取り作り替えするのに、一体費用はいくら掛かるのか?子の歯並びについての説明を、歯科医は一生懸命してくれていたのだが、請求金額のことで頭が一杯、私の耳の中はキャパシティーオーバー。これ以上の情報は、受付出来ない状態だった。


「あの・・それで費用の方はどれほど?」


遠慮がちに尋ねたところで、割引など適用されるでもないのに、ついつい媚びたような聞き方になってしまう。


「そうですね、12万程度になるかと思います。」


歯科医にとっては大金でもない、恐らく一日当たり100万単位で入金があるのだから、その中の一部なのだろう。何でもないように言う。しかし、我が家にとっては大金だ。


「週末までに払ってくれたらいいですよ~」


「分かりました。」


そう言うしかなかった。




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取り合えずー、私の虎の子全額出しても、数万足りない。夫から預かっている生活費を少し入れて、それでも足りない。単発でバイトをするしかない。すぐに入金される見込みのあるバイトー

キャッシングが頭をよぎった。
しかし、独身時代にそれで大失敗をしたのだ。同じ過ちをまた犯すことは出来ない。そして、とりあえずの凌ぎのウソを思い付く。ダンス教室の月謝を、半年契約で入金しないとならないと夫に告げれば良い。それで、当面はなんとかなる。半年契約ならいくらか安くなると言えば、夫も了承するだろう。安くなったとする分については「利子」とすれば良いだろう。借りるだけー、それに、子の為の費用なのだ。本来なら堂々と使っても良い金だ。夫が分からずやだから、こんな風にこそこそしないとならない、むしろ理不尽にさえ思う。子を溺愛している癖に、妙なところでケチる夫を理解出来ない。整形手術をするわけでもないのに、歯科矯正について否定的な夫は、本当に子の将来を思っているのか?

とりあえず、金のことはどうにかなるだろう。根拠のない自信は、むしろ言い聞かせの自己暗示。ポジティブに、良い方良い方に自らを引き寄せるしかない。







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波打ち際

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今回、GWの中日は夫家族と海へ行って来た。
気疲れした一日だったが、子は大いにはしゃいでいたし、また夫も先日の不機嫌さなど微塵も見せずに楽しそうに振舞っていた。
長女家族と末姉は今回不参加だったことは、少なからず私の気持ちを軽くした。長女家族は、姪も甥もGW中は部活仲間と遊びに行くらしく、また末っ子の甥だけ連れて友達家族とバーベキューに行く日がこちらの日程と重なってしまったと言う。
末姉は、彼氏と温泉旅行へーこれもこちらの日程と重なった。
夫と仲良しの次女夫婦のみの参加ーしかし、人数が少なくても私の疎外感が薄れることなどまるでなかった。
久々の海は、風が強く目を開けていられない程だったが、しかしそれでも多少の気分転換になった。
子供達も、海に石を投げたり、寄せては返す波に近づいたり逃げてみたり、大きな声ではしゃぎながら海辺を駆け回っていた。夫と義姉は何やら親密に二人きりで海辺を散歩し始め、 残されたのは、子供達と義両親、そして義姉の夫と私。


「風、強いですね。でも子供達も楽しそうで来て良かったです。」


沈黙に耐え切れず、なんとか言葉を絞り出した。子供達ー、子のひとつ上の甥と今年小学生になった姪と子は、まるで子犬のようにじゃれ合いながら楽しそうに波打ち際ではしゃいでいる。


「ああして見たら、従妹じゃなくて実の兄弟みたいね。OOも、ほら楽しそう。でも喧嘩慣れしてないからこの間も大変だったわよ~」


私抜きで、夫と子だけ義実家に遊びに行った時の話だ。その日は一番上の義姉家族もいたので、孫だけで総勢6名。最初は和気あいあい皆一緒に楽しんでいたという。カードゲームをすることになったのだが、子が一番ビリだった時に一人いじけてしまい、なかなか立ち直ることが出来ずに最後はめそめそと泣き出したらしい。
他の子供達は、負けたらその時は悔しがるものの、所詮ゲーム。すぐに次に切り替え楽しむことが出来るというのに、子だけがぐずぐずとした調子で、結局帰宅時間になっても笑顔が戻らずだったと言う。


「ちょっとOOは弱く育ってるね。やっぱり一人っ子だから打たれ弱いのかもね。」


義母が何の気なしに言った言葉は、私の胸をチクリと刺す。


「そうそう!OOはTHE・一人っ子だよね~!あんなことで泣いちゃうんだったら世の中渡っていけないよ!」


突然、義姉の声が背後からして驚く。


「一人っ子で女の子でしょう?もう見ただけで箱入り娘だって分かるよね!うちの子のクラスメイトでもいるけど、やっぱりちょっと問題起こしてるなーって子って兄弟いなかったりってパターン、多いよ。勿論、その子その子の性質もあると思うけどさ、OOは兄弟がいた方がうまくやれると思うんだよね~ちょっと何かあると内にこもりやすいっていうかね。家の中で子供同士のどうにもならない理不尽なトラブルを経験しておけば、実際外で同じようなトラブルが起きた時にうまく対応出来ると思うんだよね、子もそうだけど親もさ。」


次女のことは苦手だが、それでも彼女にとって子は同じ血の繋がった姪なのだ。ズケズケとしたアドバイスだが、その中には叔母として子を心配する愛情を感じられたし、心に痛かったがしかし認めざるを得ないところもあった。


夫は義姉の意見をどんな顔をして聞いているのだろう?そう思い探すが、いつの間にか離れたところで義兄とバイクの話で盛り上がっているようだった。この人に期待するだけ無駄だー


「だから一人っ子は駄目なんだ、もっと強くならんと!」


突然、いつもは寡黙な義父が声を荒げた。責められているようで、体全体がビクリ!とした。遠くから波の音と共に聞こえて来る、呑気な夫の笑い声にイライラさせられる。まるで他人事じゃないか。


ー何で私が?実の祖父からそんな風も思われている子が不憫になり、怒りが湧いて来た。我慢出来なかった。


「兄弟がいるとかいないとか・・そんなことはその子の性格に関係ないかと思います。それを言ったらー、親が共働きだとかそうじゃないとか、大家族で逆にあんまり見てあげれてない子だって愛情不足だとか言われるんですよ。兄弟だってずっと仲が良いとも限りません。逆に足かせになることだってあると思います。お互い敬遠の仲になることだって・・頭から子が一人っ子だからこうだとか決めつけられると、正直気分悪いです!そういう考え、視野狭すぎなんですけど!!!」




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しかし、情けない私が声を出して彼らに逆らうことなど出来るはずもない。実際のところは、涙目になりながらこう言うのが精一杯だった。


「そうですね。一人っ子で甘やかし過ぎたのかもしれません。もう少し強くなって貰いたいですね。私の育て方が間違っていたのかもしれません・・・」


弱い微笑みを浮かべながら、心にもない台詞を吐いていた。最後の方は悲しみというよりも悔しさで声が震えていた。
義姉も義父も、これ以上言うと私が泣き出すとでも思ったのか、


「まあ、あれだな!母親にとっては一人娘は心強いよな!」


「そうそう、娘さえいればね。OOも、ママと仲良ければ兄弟いなくっても!」


よく分からない曖昧なフォローが、人を不快且つ、もやもやさせるだけだという想像力すらこの人達は持ち合わせていないのだ。
夫の家族なのだ。夫を育てた親であり、夫と同じ釜の飯を食べて来た兄弟なのだ。それを思えば、それも納得出来た。納得するしかなかった。




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甘え方を知らない子供が親になるということ

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駅前の花屋前を通った。至る所にカーネーション。そして、「お母さんありがとう」のポップに胸の奥がチクリと痛む。
母の日はしないーそう決めたというのに、心のどこかではまだ、ぎりぎりまで悩んでいる自分がいた。
アラフォーになり、子がいる時点で、母の日はむしろ祝って貰う立場にあるというのに、いまだ「娘」から抜け出せずにいるのは、結局のところ子供の頃から親に甘えられずに来た不足感があるからなのかもしれない。


「ねえ、ばあばの家に行かないの?」


大抵、夫が仕事で連休とくれば、実家に子を連れて帰っていたのだ。それがもうここ半年以上もない。子も、正月はお年玉を貰えない不満を訴えていたものの、今ではそれよりも「なんとなくの不自然さ」を感じて、私に実家のことを聞いて来るようになっていた。


「ねえ、ばあばに電話してもいい?」


「え?駄目!ばあばは今色々忙しいみたいだから、今度ね。」


こんなやりとりを、子が不思議に思い実家の話題を出す度に、何度も続けて来たのだけれど、それももう無理を感じる。今日は実家に行きたいと何度もごねられ、つい口走ってしまいそうになった。


ーばあばはね、あなたのパパのことが大嫌いなの。あなたのパパと結婚したママのことが許せないみたいなの。そして、ママがあなたを育てる為に色々考えて今の生活を選んでいることを全否定するの。要するにーあなたのことだって全否定していることになるの。


実際、それを口に出した時点で終わりだ。
しかし、実母はうまくいかない同じく祖母のことをあれこれ幼い私に言って聞かせた。夫の母だけでなく、自らの母についてもー、自分の親子関係のいざこざを娘にぶちまけてしまう程、母に余裕がなかったのだと今なら分かる気がする。それでも、子供の頃は、祖母のことを悪く言い、また何人もの孫と私や弟を比較するようなことを言い聞かせていた母は、実際可哀想な人だったと思う。


「おばあちゃんはね、一番最初に生まれた孫が本当は可愛いの。おじちゃんのところのOO君ね、あの子が一番のお気に入り。次はおばちゃんのところの××ちゃん。あの子はおばあちゃんが生まれたばかりの時にお風呂に入れたり色々したからね、やっぱり可愛いの。あんたや弟はおまけのようなもんなの。可愛かったらうちに遊びに来るでしょう?義理で一応お年玉とか送ってくるけどね、形だけ。そうしていれば自分が後ろ指刺されないから。やりたくてやってるわけじゃないのよ。第一ー、お母さんのことだっておばあちゃんはどうだっていい子供だったんだからね。そんな子供が産んだ子供なんてもっとどうだっていいのよ。一番溺愛してるのはね、まだ結婚してないおじちゃん。もう40だっていうのにずっ とおばあちゃんと暮らしてるでしょう?できそこないが一番可愛いって言っていたしね。私みたいに親に世話掛けない子供は、結局楽だけど可愛気がないのよ。それに、あんた達のお父さんのことだって大嫌いだって言ってるしね。私はあんな家大嫌いだから若いうちに出てお父さんと結婚したけど、それも気に入らなかったんだろうね。」




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実母は父型の親の悪口は勿論、自分の親の悪口を常に私に言い聞かせ、実際会う機会もあまり与えずにいたこともあり、私はまだ低学年の頃から祖母に敬語を使っていた。法事などで親戚が集まる中、他の孫たちは祖母に対してため口で楽しそうに話しているというのに、私は離れたところからその様子を伺い、祖母の方から気を遣い話し掛けられても、ぎくしゃくとした敬語で返すーそんな孫だった。祖母からしたら、他人行儀な孫に対して愛着を持てと言う方が酷かもしれない。

実母のようにー、子に全てをぶちまけられたらどんなにか楽だろう。しかし、それをしてしまうということは、子に大きな錘を与えるということ。自分がされたからこそその苦しみが理解出来るし、愛しい我が子にそんなこと出来るわけもない。
一人、悶々とする。夫にも言えない悩みを抱え、こうしてここに吐き出すことでどす黒い感情を体内から放出させる。

あと数日と言わずー、早く過ぎ去って欲しい母の日。花屋であれこれ楽しそうにプレゼントを選ぶ客達は皆、かつて母に愛されていたのは勿論のこと、今現在も母からの愛情をたっぷり得ている人種なのか?
そして、正しく健全に人を愛せるー愛し方を教わった人種なのだろうと思うと、言葉にならない気持ちが胸をぐるぐる回り苦しくなった。




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お手軽ハンドメイド

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連休中だというのに、みこちゃんの家は両親共仕事なのだろう、家に遊びに来た。
丁度、夫はツーリング仲間と約束があり家を空けていたので、自宅にそのまま上がって貰った。私も、子供相手になんだが、家族以外と話せる機会は気分転換にもなった。


「工作がしたい。」


みこちゃんは、以前ハロウィンで自分の衣装を手作りして来たこともあり、工作好きだ。家で一人の時も、暇さえあれば、段ボールやペットボトルなどを使い、自由にあれこれ創作していると言う。
子も、普段は家に一人だと、ぼーっとテレビを観たり漫画を読んだりすることが多いけれど、友達がいるとなるといつもなら興味のない遊びすら新鮮に思えるらしい。


「プラ版、やりたい。」


みこちゃんが言う。子もそれに賛同するが、あいにく材料が家にはない。
最近、小学校で流行っているというプラ版。百円均一などで手軽に買えるその材料は、ペラペラの薄い透明な板のみ。そこに、自由にサインペンなどで絵を描いて色を付ける。それをトースターに入れて数十秒すると、たちまち縮んで厚みが増す。穴を開けてキーホルダーにしてみたり、ブローチにしてみたりと楽しい工作だ。大人の間でもハンドメイドで流行っているらしく、プロ並みの腕前だと、それでピアスなどのアクセサリーを作成して販売することもあるらしい。




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なんとなく手持無沙汰になってしまった二人を前に、ネットで何か出来ないかと色々と検索していたら、女の子が喜びそうなものが出て来た。ペットボトルとマニキュアで出来るバングルだ。
先ず、ペットボトルを輪切りにする。子供の腕に通すので、500ミリリットル容量の物がベスト。輪切りにすると、カットした部分は危ないので、熱したアイロンを充てる。すると、熱によって鋭利だった部分は丸くなり安全。後は、内側から好きなようにマニキュアで色付けするだけ。

要らなくなった安いマニキュアがたくさんあるので、二人に出すと大喜び。みこちゃんは、可愛らしいお花、子はストライプ。きゃあきゃあ言いながら作っている二人を見ていて久しぶりに心が和んだ。
私も、暇だったので一緒に作った。女3人でぺちゃくちゃ喋りながらバングル作成。相手は子供だというのに、友達同士でハンドメイド教室にでも来ている気分を味わえる。 いつもまとわりついている孤独感が、この時は薄れた。
語弊があるかもしれないが、娘がいることの有難さを感じた1日だった。




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デリケートな話題

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家の資産はどうなっているのだろう?最近、震災などもあって手元にある金を気にするようになった。何が不安かって、妻である私がそれにノータッチであること。
夫にもしものことがあれば、一体どうしたら良いのか?気になりだしたら眠れなくなり、意を決してー、結婚してからもう何度目だろう?それとなく夫に尋ねた。
GWに入り、今年はいくらか休みがある夫は上機嫌だった。昨日も休みで、子とゲーセンや本屋へ行った他は、自宅で殆どゴロゴロしていたのだが、日頃の疲れも取れて顔つきも柔らかかった。それを更に促すかのように、ロールキャベツを作ったのは正解だった。夕飯後、子が就寝してから更にもう1本ワインボトルを開ける。しかも、私にまでグラスを用意してくれた。


ーチャンスは今だ。


そう決めた途端、心臓がバクバクし出す。夫婦だというのに、何故こうも緊張するのだろう?意を決し、勇気を出した。目の前のテレビでは、震災報道。あくまでも自然に。


「私達のところも、いつ地震が起きるか分からないでしょう?最近色々考えると不安で。急にお金が入用になっても、通帳の管理を日ごろからしてないと、下すことも出来ずに困っている人が多いらしいわ。」


「ある娘さんがね、親の通帳やカードのありかもどの銀行口座を持っているのかも分からなくて、で、親は入院してしまって口もろくに利けない状況だから、その入院費用すら下せずに困っているという話をどこかで聞いたわ。」


おぼろげだがー、そんな話をどこかで耳にしたのは本当のこと。少しだけアレンジして伝える。


「私とOOも、もしあなたがどうにかなったらと思うと、居ても立っても居られないの。まとまったお金が必要になること、あるじゃない?だからー」


「俺がどうにかなるって?縁起でもない。」


それまで上機嫌だった夫は、突然顔を曇らせた。しまったーそう思った時にはもう遅かった。そして、新婚時代、保険になかなか入ってくれず、子供が生まれてからは流石に考えてくれるだろうと、再度申し出た際も、なかなか動いてくれなかったことを思い出す。生命保険イコール、彼の中では、金と自分の命を天秤に掛けられるー気分の悪いものであるらしい。しかし、なんとか義父母を巻き込んで、孫可愛さもあり、夫の説得を手伝って貰ったのだ。それでも最低限度の保証だが・・




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「一応、どの口座を持っているかくらいは教えて欲しいの。別にそれをどうこうする訳じゃないの。もしもの安心材料としてー」


「俺が稼いだ金を、何であなたに管理されないとならないの?」


「いや、管理ではなくて。もしものー」


「だーかーら、もしもって時に生命保険入ったじゃん。今時、どこの夫婦も別財布でしょう。生活費渡してるんだから、これ以上何の不満がある訳?」


「・・・OOの為よ!OOが可愛くないの!?これから大学に行くとしても貯蓄をしないとならない。今、OOのお金いくら溜まってる?それは、母親として聞く権利があると思う。」


まただー、何かが乗り移ったように、私らしくもない、強気に出ることが出来た。夫が一瞬怯んだ隙に、畳みかける。


「俺の金、俺の金って言うけどー、じゃあ何で結婚したの?子供を産んだの?あなたのことが分からない・・」


最後は涙声になっていた。抑えていた感情が、次から次へと溢れて止まらない。


「私はーあなたの何なの?あなたにとって、私はどうでも良い存在!?家族じゃないの!?」


「・・・うっぜーな。」


ぼそっと夫がつぶやくのが耳に入った。その言葉を頭の中で変換した瞬間、それまであった感情の糸がぷつりと切れた気がした。


「寝るわ。」


夫は飲み掛けのワイングラスをそのままに、さっさと寝室に引き上げてしまった。私の心は急激に冷めて行った。ソファーに座り、夫が私の為に注いでくれたワインを一気に体に流し込む。
それから、テーブルに置かれたままの、まだ三分の二以上残っているワインを、次から次へとグラスに注いでは体に流し込む。いつしかテレビ画面はニュースから深夜番組に代わっていた。
10代そこそこのギャルが、男性芸人と卑猥な話をして盛り上がっている。何がそんなに愉快なのかー、腹を抱えてゲラゲラ下品に笑う、女達。
彼女らの甲高い笑い声に、急に酔いが回り始めた。リビングがぐるぐる揺れて、突如、我慢出来ない程の吐き気に襲われる。何とかトイレまで間に合ったが、便器は真っ赤に染まっていた。一瞬ぎょっとしたが、それは飲んだばかりの赤ワインだということに気付く。


ーやはり、働かなくては。


頭の片隅で、少しだけ素面になった私は思い直す。
夫をあてにすること自体、無意味なのだ。彼は、「現状の生活を約束してくれる存在」なのだと割り切らなければ。未来を見るから辛くなる。
対等になる為には、やはり働く必要がある。




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