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無愛想な子供達

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夏休み、一旦静かになった我が家だが、学校が始まり放課後になると、また子供達のたまり場となった。
メンバーは同じ。みこちゃんを含む親が働いている子供達。その日は芋づる式に友達が増えていったのか、なんと7人も家に来たのだ。
リーダー格?の子が、ドカッとソファーに座ると、すぐさまDSを取り出した。続けてその両脇に座っていた子らもDS機を取り出す。
子もまだ新品のそれを取り出そうと部屋へ行くのを慌てて制止した。みこちゃんだけが持っていない状況になってしまう・・
そこまで気を遣う必要はないと思うのだが、しかし彼女にはなんとなく「情」のようなものがあった。
勇気を出して子供達に声を掛けた。


「ゲームなんだけどね、みこちゃんだけないでしょう?他の遊びしない?」


一瞬、子供達の表情に緊張感が走ったのが分かった。


「えー、なんで?」


リーダー格の子が不満気な顔で答えた。


「私はいいよ!」


すぐにみこちゃんが口を挟む。どこか焦っているような、そんな表情で。

リーダ格の子は、再び無表情にDS画面に目を落とした。何となく不穏な空気を感じた。
彼女達の中で、既に優劣関係が出来上がっており、その秩序を乱すことはあってはならないーそんな声が聞こえた気がした。

おやつに買い置きのスナックー、それにポッキーを出した。テーブルの上に置くとものの5分で無くなった。食い散らかされた空き袋。それを見るとイライラがまた募る。 子が嬉々としてDSの電源スイッチを入れる。みこちゃんはそれを後ろから覗き見る。


「みこちゃんにも貸してあげなさい。」


「はーい。」


そう言うのが精一杯だった。
正直、みこちゃんだけ来てくれれば良いのに・・と思う。母親からは相変わらず何の挨拶もないけれど、それでも子供同士とはフィフティ―フィフティーの関係性だ。
何より、子が彼女と遊んでいて楽しそうにしている。
その他の子供達は、こちらがにこやかに話し掛けても愛想もない。常に視線は自分のDSか友達のDS画面。
そして、こんなに尽くしたところで、私自身に何も返ってこないのだ。


「いつもお世話になっています。」


「お邪魔ばかりしてしまって。すみません。」


学校行事などの際、私にそんな言葉を掛けてくれるのならば、全然違うのに。彼女達の母親が良識のある人間で、顔見知りになることで、この愛想の無い子供達の印象も変わるのに・・
帰りに、子は思い出したように夏旅行の土産を皆に配った。頭の中でざっと¥500×7本=¥3500の計算式。子のことをあまり見ていないと言うと語弊があるが、目が行き届いていない親達は、自分の子がそんな土産を貰ったことすら知らずにスル―だろう。せめて、お礼の一言があればー。しかし、そんな見返りをするのなら、最初から渡さなければ良いだけの話だということも分かっている。 悶々とする気持ちを相変わらず引きずる、そんな2学期の幕開けだった。




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土産ばらまき

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夫と子のみ参加の義実家との旅行で、子は自分の友達の土産だけは買ってきたようだ。
ダンス教室で、何度か他の子供達から土産を貰っていたことを思い出し、子に何か人数分買ってくるようにと伝えていなかったことを思い出したのは、子が自分のリュックからそれらを取り出したのを見た時だった。
ご当地キティちゃんのボールペンを、なんと20本も買ってきたのには驚いた。金額にしたらそれなりになりそうだったが、これも子に甘い夫が子に言われるがまま買い与えたものなのだろう。
しかし、習い事付き合いの子供達にはいつかお返しをしなくてはと思っていたので、それは丁度良かった。
それにしても20本ー、習い事だけにしたらまいこちゃんらのいつものメンバーでは5~6本もあれば十分だ。残り15本は一体誰にあげるのだろう?


「こんなに買って、一体誰にあげるの?」


「えっとね~、まずみこちゃんでしょ。」


みこちゃんなら、分かる。かといって、こちらは向こうから何かを貰った覚えもないが・・・それでも子と仲良くしてくれる大切な友達だ。
しかし、その後続けられた友達の名前は、夏休み前半、我が家をまるで休憩所のように扱った図々しい子供や、また私が聞いたこともないような子供の名前だった。
そこまで子の交友関係が広かったとは知らなかったが、しかし冷静に考えてみると、単に子が一方的に思いを寄せているクラスメイトだったりするのかもしれないー、とも思えて来た。
土産というアイテムを使って、クラスメイトに媚びを売り友達認定して貰いたいーそんな思いが心のどこかにあるからなのではないか?と気が付いたのは、私もかつて、そういう思いを抱いていた子供時代があったからなのだろうと思う。
それでも、購入した土産のボールペンを、嬉しそうに小分け袋に入れ替えている子の後ろ姿に向かってあれこれ言うことは出来なかった。
1本500円程のボールペンは、高いのか安いのか分からない。ふと、それを貰った子供らの親の顔が浮かぶ。
迷惑かもしれない。彼女らにとっても知らない子からの土産は有難迷惑かもしれない。私が逆の立場なら嬉しいがーなんとなく私達親子を認めて貰えたような、そんな気がするから。

結局、あげっぱなしになることは目に見えていた。
しかし、逆の立場になることに比べたら息苦しいものでもない。強いて言えば、子が友達に対してこのような形での気遣いをエスカレートさせなければいい、それだけだった。




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親と子24時間

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あんなに鼻息荒く、自分を出そうと意気込んでいたのも束の間。
結局、実母にコンタクトを取ることは出来なかった。
意地の張り合いもあるけれど、それ以前に怖かったのだ。もう傷付きたくない、そして、久しぶり過ぎる彼女に何と声を掛けたら良いのか分からなかった。
親子なのにー、いや、親子だからなのかもしれない。
割れてしまった茶碗の、どこからどう片付ければ良いのか分からない状態。欠片を拾おうとすれば、指を怪我してしまいそうな・・・

夢を見た。
実父と実母が出て来た。
私は独身の頃に戻っており、お互い和解をしているようだった。
彼らはとなりのトトロのような家に住んでおり、私は久しぶりに帰省をし、荷ほどきをしていた。そこで生理になってしまい困ってしまう。
なんとか荷物の中に少しだけ持って来ていたナプキンを取り出し、トイレを探しているところで目が覚めた。
夢の中で、私も母も笑っていた。そして笑顔になれた自分にも笑顔を見れた母に対しても安心したのだ。
そして、彼女はただ寂しかっただけなのだと気付いた。複雑にしていたのは私だったのだと。

布団の中、夢占いのサイトを開いた。生理の夢は、気持ちの不安定さや不健康状態、人間関係のストレスから見ることが多いらしい。

24時間テレビでは、親子愛の美しさをクローズアップするようなドキュメンタリーも多くあり、それと自分を重ねて泣いてしまう。
DSをする子の横で、気付かれないように涙をぬぐう。なんだか一人、センチメンタル気取りだ。

幾つになっても、親は親だし子は子。シンプル過ぎるその関係性から生まれる愛に、心を打たれてしまうのだ。




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今日の料理

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今日の料理




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実母からの着信

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朝から雨。
台風が近づいているからだろうか?いつも不安定な気持ちが更に不安定。
携帯に、実母からの着信があったのだ。
しかし、ワンコールでそれは切れた。
たまたま近くにあった携帯。普段鳴らない携帯は、家の中で持ち歩くことはないけれど、たまたま家事を一通り終えて休憩がてら漫画を読もうと思い、それに手を掛けた瞬間だった。


ープルルッー


ワンコールあったかどうかも分からない、鳴り始めで切れてしまった電話。
そして、それから1時間経つが、それっきり何も無い。
それまでの私なら、即、掛け直していた。しかし、体全体がこわばり携帯を持つ手は震え、顔付きは傍から見たら能面のようになっていたと思う。
事を複雑にしているのは私?
年寄りの我儘だと軽く受け流せなかった私が子供なのか?ここで、普通に電話を掛け直し、何事も無かったかのように振舞うのが娘としての正しい選択なのか? 私の中に、2人、私がいるようだった。
もう一人の私は、こうした実母の遠回しな探りにイライラしているところがあった。何故、普通に電話を掛けて来ないのだろう?ワンコールで思わせぶり、こちらの反応を伺うかのような守りに入ったアクション。
そして、思い立った。私も同じことをすればよいのだと。大人気無いが、蛙の子は蛙。私もリダイヤルで掛け直したが、ワンコールしたかしないかのところで電話を切ったのだ。
もう、意地の張り合いだった。そして、こんな陰鬱なやり方ではなく、お互い思っていることをストレートにぶつけられたら、大喧嘩でも出来たら違う関係性が築けるのではないかと思った。
今まで逃げて来たのは「私」だ。母の言いなりになり、心を固く閉ざしていたのだ。
母の言いたい放題を受け止める物分かりの良い娘ー自分は大人なのだと良い方に解釈をしていたが、それは違う。ただ、ぶつかるのが怖かっただけなのだ。
台風の芽に入った頃、勇気を出そう。自分をさらけ出そうと心に決めた。





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専業主婦の日常

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子も今週から2学期。
宿題もなんとか仕上げ、大荷物でこの暑さの中、登校して行った。
静まり返った部屋にほっとしつつも、また一人きりの日々が始まるのだと思うとなんだか虚しい。
それに、2学期は保護者の絡む行事があれこれあり、それも気を重くしている一つの要因だ。
幼稚園時代程ではないが、それでもあの独特な母親達の群れを目にしなくてはならない学校行事は大の苦手だ。

誰もいない部屋、こっそりあのジュエリーを取り出して眺めるのが最近の至福の時。
キラキラ太陽に反射し輝く本物の光は、私を一瞬別世界に連れ出してくれる。思い切った買い物だった。しかし、これを付けて出掛ける日は来るのか?
気の乗らない学校行事で付けよう。そうすれば、少しは気が晴れるかもしれない。




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今日も暑い。
取り合えず洗濯物は干し終えた。
24時間テレビの番宣をぼーっと眺めながら、淹れたてのアイス珈琲を飲む。生憎ミルクが切れていたので、これから買いに行かなければ。
詰まらない、単調な、言い換えれば平和な日常。
一日、私が発する言葉を時間に換算するとすれば、一体どれだけになるのだろう?一時間にも満たないかもしれない。
人間の幸福度ー、1週間のうちにどれだけの人間と関わるかなのだと言う。
数日前から聞こえる、お隣さんの友達親子達と騒ぐ声。お盆も過ぎて、また日常が始まった知らせだろう。
社会から切り離された専業主婦。しかし、それをどう活用するかで幸福度は人それぞれ。生かすも殺すも自分次第。
そして私は、生かせずのままに、もうすぐ9年目の母となるのだ。




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妊娠報告

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引っ越し前のママ友から連絡が来たのは、お盆もとうに過ぎた夏休みも終盤を迎えた頃だった。
本当の気の置けない友人なら、相手が出るまで何度も電話を掛け続けられるものなのかもしれないが、私はつい遠慮が先に立ってしまう。
返信がないのは、そういうことなのだろう・・と、マイナスの感情を抱いてしまう。もしくは、何かあったのかもしれないーと心配になる気持ちもないことはないが。
しかし、久しぶりに来たメールには、私が全くもって想像をしていなかった内容が書かれていたのだ。


ー元気?なかなか連絡出来なくてごめんね。実は妊娠が分かって、来春出産予定なんだ。毎日暑いしつわりもきついし、しんどいよ~私なんかが子供3人の母親になれるのかって思うけど、頑張るね!落ち着いたらまた会おう!-


衝撃的な内容過ぎて、祝福の気持ちより先に寂しい気持ちが立った。また取り残される・・・
胸の中がどす黒い煙で一杯になるのを感じた。
そして、嫉妬の感情が湧く。旦那と離婚するだなんだ相談しておいて、結局は口だけなんだと。やることをやっているではないかと。二人目を授かったと聞いた時も寂しい感情は湧いたものだけれど、今回はそれを上回る複雑な思いも入り混じり、ただ寂しいーそれだけではなかったのだ。




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ー驚いたよ!おめでとう!!3人のママなんて尊敬でしかないよ。落ち着いたら、赤ちゃんに会わせてね。しばらくはバタバタするかと思うけれど、無理しないよう元気な赤ちゃんを産んでね!ー


メールを書き、3度程読み返してから送信した。しかし、その後彼女から返信が来ることはなかった。
なんとなく裏切られた気分だった。あの、離婚してシングルマザーになるかのような振舞いは何だったのだろう?そもそも離婚する気など最初から無かったのではないか。そうだ、そうに決まっている。私はただ彼女の鬱憤を晴らす為の道具に過ぎなかった。
羨望と嫉妬、そして虚しさの入り混じった気持ちに支配される。それまでの彼女に会いたいと思う気持ちが薄れてしまった。3人のママー×3倍のママ友が彼女には出来るはず。そうなると、私の存在なんてちっぽけなもので、確実に今より疎遠になるのが目に見えて分かった。
もう、私と彼女とでは何もかもが違い過ぎて共通点など何もないように思えた。並んでベビーカーを押していたあの頃と今とでは、何もかもが違い過ぎる。
人生のレール、未来が、私のそれとはあまりにも掛け離れ過ぎていて、彼女が雲の上の存在かのように思えた。可能性ゼロパーセントの腹を撫でる。もう、子が腹にいた頃の感覚など忘れてしまった。懐かしむ感情さえどこかに置いて来てしまったようだった。




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愛玩

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義実家のプチ旅行から帰ってきた子は、旅行の思い出話を語るより先に、バッグからある物を取り出しとびきりの笑顔で私に見せびらかした。


「じゃじゃーん!!パパが買ってくれたの!」


それは、ピカピカのピンク色のDSだった。一瞬訳が分からず、夫の方を見ると、


「皆持ってるんだよ。OOだけ持ってないとさ、旅行中も従妹達と遊べなくて可哀想だろう。」


あんなに夫婦で話し合って、DSは買わないーその代わりにタブレットを与えると言っていたのに、何の相談も無しにことを進めた夫に腹が立った。
普通の夫婦なら、子の前であろうが夫の行動に一言モノ申すのだろうが、私は一人悶々とするだけだ。
またいいとこ取りをされた。子が喜ぶことー、一番欲しがっている高価なおもちゃを買い与えること。それが今後及ぼす影響など考えはしない。
ただでさえ子との会話時間が減りつつあるというのに、DSはそれを加速させるアイテムだ。なんだか夫に私達親子の関係を邪魔された気がして苦々しい思いだった。
子は、早速ソファーに寝そべってゲームを始める。夫はスマホをいじりはじめる。誰も旅行の土産話をしようとのせず、また実際の土産すら私に無かった。


「ゲームは30分!勉強の後。外に持ち出したりもしちゃ駄目だよ。」


夫にぶつけたい怒りが子に向き、お決まりのルールを子に伝える。しかし、子は寝そべったままゲームに夢中になり私の声など聞こえてはないらしい。


「ちょっと、聞いてる?ゲームは・・」


「ちょっとあなた五月蠅過ぎ。」




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夫がうんざりした表情で言う。


「旅行から帰ってきたばかりで疲れてるんだよ。少し休ませてやれよ。」


夫は子にとことん甘い。
自分の分身だからなのだろう。彼がそうやって育ったように子にも我慢させようという気がないらしい。誕生日でもクリスマスでもない何でもない日ーいや、むしろ楽しい旅行中に更にそんな贅沢品を買ってやる気持ちが分からない。
周りが持っているからーだなんて親らしくない言い分だ。それを子が聞いて育つのは悪影響しかないように思えた。
夫に守られた子は、ますますだらしのない恰好でごろりと横になりゲームをしている。それを見ていたらなんだか小さな夫のような気がして来てますますイライラした。

ペットがなつくのは、たまに可愛がってくれる飼い主。獣医に連れて行ったりシャンプーをしたりと何かと身の回りの世話をしている飼い主を煙ったがると聞いたことがある。
そりゃあ、甘やかしてくれるご主人に懐くのは当たり前。
しかし、子は犬猫のようなペットではない。あくまでも人間なのだ。ただ猫っ可愛がりすることが愛することではない。子が一人でも生きていけるようにー、「生きる力」を育むことが親として子に与えられる最良のプレゼントなのだと思う。

先日、子に買い与えたぬいぐるみはすっかり部屋の隅に追いやられていた。それはまるで私という存在の象徴にさえ思えた。
二人の距離がこの旅行を機にぐっと縮まった気がした。私が長年、四苦八苦しながら培った子との絆がたった数日で覆されるのではないかーという不安感が私を襲い始めている。




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恋するジュエリー続き

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「こちらも肌馴染みが良くて素敵ですよ。フォーマルだけではなく、カジュアルの場でも使えるかと思います。」


差し出されたのは、ピンクゴールドの同じデザインのネックレス。ぱっと見ブロンズのように見えたが、しかし装着してみると驚く程日本人の肌質にしっくりと来る。
素材でこうも違うのかー。普段、ジュエリーなどとは縁が無い私にとって、それは新しい発見だった。
店員は、更にプラチナのタイプを手に私に勧めて来る。ちらっと値札を見ると、それが一番高価な物だと分かった。
プラチナは希少素材。最近金の価値が上がっているが、日本人にとってプラチナは価値あるものだと信じられている。エンゲージにはプラチナというのも、プラチナ信仰のある日本人特有の文化なのかもしれない。
プラチナを肌に合わせた時、ホワイトゴールドの時よりやや渋みがあるような気がした。華やかさで言えば断然ホワイトゴールド、しかし品があるのはプラチナのような気もする。


「やはり、プラチナは素材だけでも素敵ですよね。控えめな輝きですが、それもまた味がありますし。」


店員に、これにしろという押しの強さはなかった。それぞれの特性ー、美しさを伝えるだけで、選択は客に任せているようだった。

最後にイエローゴールドのそれを試し終わると、さてどうしたものか、笑顔の店員を目の前に気まずくなってしまった。
ここまで時間を割いて貰っておいて、そのままその場を立ち去る勇気もなかった。また、間の悪いことに、それまでいた数人の客は全てはけており、手が空いた他の店員までもがこちらの様子を伺っている。
心臓の音が大きく鳴るのと同時に、しかし妙な高揚感が湧いてくる自分がいるのも確かだった。
私は今、彼女達にとって「逃してはならない客」だ。丁寧に扱われれば扱われる程、自分が価値のある人間のように思えて来た。粗末に扱われていたのではない、自らを粗末に扱っていたのだ。自分の為に金を使うことー、気に入った物を手に入れること、それは自分自身を認めることなのだ。
欲しいか欲しくないかではなく、高いか安いかでの基準での買い物はやはり虚しい。
分相応という言葉はあるが、夫だってバイクや高価な腕時計を買っているのだ。夫の金から買う訳ではないー、ここ数年貯めていたライター内職で得た金を使うのだ。




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ふと、子の顔が浮かんだ。
歯科矯正の費用だ。しかし、それはどうにでもなると思えた。母親失格だが、その時は目の前に差し出されたジュエリーに心奪われていたこともあり、いつかの実母と同じく、


ーいずれ、子に譲るのだー


という、もっともらしい言い訳を考えていた。誰に対してではない、自らに対しての言い訳だった。
個人口座にはへそくりの十数万円が入っていた。ぼーっとした頭でカードを差し出していた。しかし、最後の最後はやはり「私」だった。本当に欲しいプラチナ素材ではない、中では一番安かったピンクゴールドのそれを選んでいた。結局最終的には思い切れなかったのだ。

保証書と、それに丁寧に包装されたジュエリーボックス。そして更にそれを入れたショップバッグを手に店員が出入り口まで送ってくれた。
久しぶりの優越感だった。美しい彼女の私に対する丁寧な対応。それにだけでも金を払いたい気分だった。


「ありがとうございました。」


意気揚々と、ブランドのロゴが入ったショップバッグを手に街を歩く。皆が私を見ている気がした。ふらっと入ったブディックでは、そのショップバッグを目にしたアパレル店員が私に一目を置いているようで、いつもより堂々と店内で商品を物色することが出来た。
こんな大金を使ったのはー、自分の為に使ったのは結婚してから初めてだった。今まで記念日に何もなかったんだ。この何年も・・出産祝いだってーそれを思えば安いもんだとまた自分に言い訳をする。
喉がカラカラに乾いていたので、目に付いたチェーンではない喫茶店に入る。アイスコーヒーを待つ間、ショップバッグからネックレスを取り出した。
手のひらにそれを乗せ、束の間の優雅な気分に浸っていた。




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恋するジュエリー

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一人時間ー


何をして過ごそうか、あれこれ考えていたが、実際はいつものようにぶらぶら街をさまようところに落ち着いた。
目覚めたのは昼前。朝、いつも起きる時間に目は覚めたのだが、夫も子もいないことを思い出し、再び二度寝したのだ。前夜の深酒も効いたようだった。
新宿に出た。
太陽の日差しがアスファルトを照り付ける。新宿南口はバスターミナルが出来たこともあり賑やかだった。
むしゃくしゃした気分だった。

家族から疎外されていることー
見えない女の影ー
夫のワンマンさ加減ー
ぱっとしない自分の立ち位置、そして孤独感ー

そしてまた、元彼の奥さんのブログを見てしまったのだ。1枚の写真には、きらきら輝くリングを嵌めた薬指のアップ。丁寧にマニキュアが塗られたその華奢な手は、手の掛かる幼い子供がいる母親のそれとは思えなかった。


「パパからのプレゼント♪記念日なので買って貰っちゃった^^」


有名ジュエリーブランドの名前が入っている小さなボックス箱に赤いリボンが掛けられた写真もアップされていた。ついネットで調べた値段は10万と少し。記念日といっても、スウィートテンとかでもないらしい。 彼と付き合っていた時、バイト代でくれたネックレスは、もうどこかに行ってしまった。

プチプラアクセ。それでも夫に内緒で買ったブレスレットは1000円~高くても3000円。若ければいくら安物であろうとも瑞々しくきめ細かな明るい肌がそれをカバーする。 しかし、くすんでハリの失われた年老いた肌に合わせると、なんだかみすぼらしく感じて電車の中それをそっと外してバッグに入れた。

ふらりと百貨店に入る。化粧品売り場を通り過ぎ、なんとなくジュエリー売り場に向かうが、私には敷居が高かった。
いかにも結婚が決まったカップルがエンゲージを選んでいたり、また金持ちそうなセレブが店の中であれこれ店員と談笑していた。セレブではなくても、垢抜けたメイクの派手なファッショナブルですらりとした足の長い女性達がショーケースの中のジュエリーを眺めていた。

店の前を通り過ぎ、また少し歩いてからUターンして中の様子を伺う。全ての店員が客についているのを確認し、私に目がいかないだろうという確認を得てから、思い切って店内に入った。




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真っ白な明るい店内。
キラキラしたショーケース。入り口付近には、割とリーズナブルなシルバー製品が並んでおり、価格も2~3万円代からと良心的だった。
私と同世代のセレブ風の女性が、店員にあれこれ相談していた。ちらっと目を遣ると、リングが数点。どうやらどのタイプの素材にするか悩んでいるらしい。
私は、目立たないよう、恐る恐るそのショーケースの中のネックレスなどに目を遣る。どれも素敵で、一際目を惹いたのは、小さなダイヤモンドとパールが施されているネックレスだった。


「何か、お探しですか?」


突然背後から話し掛けられ、びくっとした。
モデル並みの身長の高さの美しい女性店員だった。先程まで若いカップルの接客をしていたはずなのだが、いつの間にカップルはいなくなっていた。
ドキドキ心臓が高鳴る。


「ネックレスをお探しですか?」


何か答えなければ・・焦って心にもないことを口走る。


「子供が受験するので、その面接でも大丈夫なフォーマルなネックレスを探してまして。」


一期一会の出会いだとしても、また店員と客というこちらが上の立場という関係性であったとしても、このような時に口から出まかせを言ってしまう自分が心底情けない。 何を緊張しているのだ?ただ見ているだけー、それでいいじゃないか。


「そちらのデザイン、今期の新作なんです。良かったらお試し下さい。」


とびきりの営業スマイルで、ショーケースからそれを出されてしまった。


「こちら、ホワイトゴールドですが、他にプラチナとイエローゴールド、それにピンクゴールドもございます。」


合わせてそれらもショーケースから出される。
心臓は相変わらずドキドキしていた。
言われるがままに、繊細なそれを首に回していた。鎖が切れはしないかと更にドキドキしてしまう。数千円の服とはわけが違うのだ。値札は5万と少しだった。
有名ジュエリーブランドなだけあって、店員は言葉遣いもその所作も、とても優雅で美しかった。自ブランドのジュエリーが、耳や首元、それに腕や指にあったが、そのどれもが彼女のゴージャスな雰囲気に良く似合っていた。
差し出された小さな鏡で自分の首元を見た。首元だけしか写っていないこともあり、シャツから覗く鎖骨さえ美しく見せるーそんな力がそのジュエリーに宿っているようだった。


「あちらに鏡がありますので、全体で見て頂いてもよろしいかと思います。」


大きな鏡の前に立つ。先程首元だけ見た時とはまた違った印象だった。
その日の私の服装は、いたって普通のシンプルなものだった。麻素材の紺のワイドパンツに、丈の短目のストライプのカットソー。しかし、首元にその5万円ジュエリーがあるだけで、なんというか華がある―プチプラアクセサリーでは出せない高級感がそこにあった。


ー欲しい。買ってしまおうか。


後先のことなど考えられなかった。
そこにあるのは、ただそれを手に入れたいという欲求だけだったのだ。




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物欲投影

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連日遊んでいた仲間も、両親の夏季休暇だろうか?ぱったり我が家のチャイムを鳴らすことが無くなった。
暇だ暇だを連発する子に辟易しつつも、べったり子と二人きり家で過ごすのも辛くなって来るのが本音のところ。
普段、引きこもりの母が家を出る機会を与えられるきっかけは、やはり子供の存在が大きい。そして、夏が終わればまた母は家族に取り残され、無味無臭の淡々とした日常が待っているのだ。


「ドリルの目途が付いたら、昼前から出掛けようか。」


「うん!行きたい!!」


「キャラクターショップが東京駅にあるから、遊びに行ってみる?ドリー、売ってるよ。」


「え?買ってくれるの?」


「皆持ってたし、欲しいんでしょう?いいよ。映画の時に買ってあげれば良かったよね。その代わり、今回は外でランチもお茶も無しでいい?」


「うん!いい!」


そうして、貧乏臭いかもしれないが、外ランチは無しということもあり、急いで残りご飯でお握りを3つ程作った。中身はこの時期で怖いので梅干し。水筒には氷をたっぷり入れた中に自家製麦茶。
ランチの後、ぷらぷら歩いて小腹が空くことを見越して、家にあったスナック菓子など。これは、先日の子供会で参加した子供達に配布された無料の駄菓子詰め合わせだ。
東京駅までの交通費とドリーのぬいぐるみ。予算は3000円内で。

ライター内職でせっせと貯めたポイントを先日換金したものがクローゼットにある。そこから念の為にと5千円札を抜き取り、子が完成したドリルにさっと目を通すと出発したのだ。

久しぶりの東京駅は混雑していた。夏の帰省ラッシュということもあり、想定内。そして、だからこその普段は行われていないイベント目当てでもあった。
活気づく土産ショップや雑貨店に、ついつい私もよそ見をしてしまう。
観光客だろう、中国人の群れがフリースペースで弁当などを食べていた。丁度席が二人分くらいは空いたので、子と共にそこに腰掛ける。バッグの中から少々潰れたおにぎりを取り出し、子に一つ渡した。


「いただきます。」


子は腹が減っていたのか、物凄い勢いでそれを口に放り込んだ。私も隣で同じものを頬張った。同じ様に昼食を取っている中国人の群れは、爆買いでもしたのだろう、大小異なる紙袋を幾つも広げ、スペースの殆どを占領していた。
一気に食べ終わり、子がすくっと立ち上がると、


「行こう!」


と私を急き立てる。私も口の中をもごもごさせつつも、騒がしいその場所にいることに嫌気がさしていたので立ち上がった。私達親子も、恐らく傍から見たら彼ら中国人の一部だと思われていたに違いない。




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早速ドリーの店へ行くと、映画に出ていた色々なキャラクターのグッズが所狭しと置かれていた。
子は、お目当てのドリーを見付けてそれをぎゅっと抱き締めると、しかしそれを元の位置に戻した。


「やっぱり、ドリーはやめておこうかな。」


「なんで?」


「まいこちゃん達の真似になっちゃうし・・」


3年生女子の人間関係は、親が思うよりも複雑なものなのかもしれない。しかし、子が本当に欲しいのはドリーだ。それは一番私が良く分かっている。


「別に、見せなければいいんじゃない?」


「でも・・外に連れて行きたいし。」


「うん・・そっか。」


「他の店も見ていい?」


そうして、リラックマやドラえもん、サンリオやポケモンの店も回った。サンリオの限定キティやリラックマの着ぐるみバージョン、それらを手に取っては悩みまた棚に戻すを繰り返す。
もう、家用にドリー、外用に他のぬいぐるみを買ってやりたい衝動に駆られたが、それは良くないと思い直す。
小1時間待ってもなかなか決められず、店を行ったり来たり。中国人観光客が、店内の大きなピカチュウのぬいるぐみの前で自撮り棒を使って記念撮影をしたりするので、尚更狭く息苦しい。
結局最終的に子が選んだのは、ポケモンGOにはまっていることもあってか私の知らないポケモンモンスターのぬいるぐみだった。ねずみ?のような目がくりくりした可愛らしいキャラクターで、しかし私なら限定の着ぐるみしたピカチュウを選ぶのにーと言いたいのをぐっと堪えた。


ドリーの店前で、名残惜しそうにドリーのぬいぐるみを見ている子の背中に、胸がぎゅっと苦しくなる。映画館に友達親子と行けなかった寂しい気持ちや、自分だけ欲しいぬいぐるみを手に出来ない複雑な思いを察すると、居ても立ってもいられなくなった。
子が、トイレへ行くというので外で待つその間、気が付くと私はドリーを手にレジに並んでいた。完全に予算オーバー、母親失格。しかし、私自身の心の虚しさが一気に満たされる。
子を通して、自己投影しているのだ。
ドリーが入った袋をバッグに隠し、明日の朝枕元にそれを置こうと思い付くと、心がほっこり温かくなった。
トイレから戻った子が、


「ドリーにもう一度触ってもいい?」


そう言って、再度ぎゅっとそれを抱き締めたのを見ると、更に子が笑顔になる明日を想像して嬉しくなってしまうのだった。




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無い物ねだり

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習い事のお迎えに行くと、青い物体?を鞄から出す子供達が見えた。まいこちゃんや千葉ママの子が、それで人形ごっこのようなことをしている。
いつも、レッスン終わりにお菓子交換をする仲間達ー子以外が皆、それを取り出し遊んでいた。近くに寄って見ると、それは先日我が子と観た「ドリー」だったのだ。
中には、「ニモ」を持っている子もいた。とにかく、子だけが何も持っておらず、だいぶ前の「たまごっち」を思い出される。苦々しい気持ちになり、


「買い物もあるし、もう帰ろう。」


と、子に声を掛けた。すんなり子もそれに応えたのは、やはり自分だけが何も持っていない居心地の悪さがあったからだろう。


「OO、ドリー、観たよ!」


子が帰り際、負けじと言う。それに対してまいこちゃんが返した言葉に、親子共々ダメージを受けたのだ。




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「私達も行ったよ!ね~。で、皆でドリー買って貰ったの。」


「えー!私はニモが良かったからニモだよ!」


千葉ママの子がまいこちゃんに向かって言う。そんなことはどうでも良いが、しかし、習い事メンバー私達除いて、彼女らが夏休みに入りすぐに映画館に連れだって行っていたことは、出来れば知りたくない事実だった。


皆と別れ、とぼとぼと親子で歩く。先日は、ぬいぐるみは買えなかったものの楽しかったはずなのに・・・
私も子も、思うところは一緒。しかし、お互いそれを口に出すことはせずに、黙々と歩くしかなかったのだ。
まだ、この年になっても悩まされるー、ママ友関係から派生する子供の交友関係。誘われない母がいるが為に、子が寂しい思いをするのだ。申し訳ない気持ちから、子が欲しがっていたドリーのぬいぐるみをネットで探した。
ネットでも、3000円弱。それを何度もクリックし掛けて、しかし思い留まる。欲しかったぬいぐるみも手に入れられず、友達とも共に出来なかった子が不憫に思えた。
普通に思えば、親子で映画館に行ったー、それだけで幸福なはずなのに。ここで要らない比較を親子共にして、自らの幸せを価値のない物にしてしまうのだ。これは本当に悪い癖だ。
そして、私も本当は知っていた。物ではないー、子が求めているものは違うもの。それを本能的に察知しているからこそ、カーソルは同じ位置を行ったり来たりするだけで、決断出来ないままなのだった。




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今日の料理

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女子受け土産

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普段は適当な昼ご飯で済ます私であっても、子がおり夫がいるとなるとそれなりに体裁を整えなければならず、そうなると丸一日の殆どの時間、食事をどうするかということばかり考えてしまう。
今日のように、昼前から夫と子がポケモンGOをしに、車に乗って出掛けてくれるのはかなり助かる。夫は子に対して甘い。
外ランチは必須だし、勿論それは夫のポケットマネーから。なので一食分浮く。なので、私は納豆ご飯と焼きのりだけの昼ご飯だ。こういう粗食が案外贅沢だったりするのだ。 恐らく3時頃まで帰ってこないだろう。隣町のショッピングモールへ行き、それから本屋やゲーセン、そしておやつにパフェでも食べての帰宅だろう。

夫は先日、京都に出張へ行って来た。この暑い中大変だったと大騒ぎしていた。家への土産はお決まりの生八つ橋と、それに子にご当地キティちゃんのタオルやキーホルダー。 何気にがま口屋で有名な店の包み紙が見えて、もしかしたら私に?とドキドキしたが、それはそのまま会社への土産袋に放り込まれているのを見逃さなかった。





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夫が留守の間、そっと部屋に忍び込んでその包み紙をばれないよう開いてみた。見ると、可愛らしい蝶々模様の印鑑入れで、今風のがま口だ。若い女の子達が喜びそうなデザイン。 ふと、例のライン相手が脳裏に浮かぶ。
そそくさとそれを包み直してから、ネットでその店を検索してその商品を調べてみた。
オンラインショップでも取り扱いしており、価格は数千円とそれ程高くないにしても、こうしたプライベートの可愛らしい雑貨を私の知らないところで知らない女に渡す夫を思うとむしゃくしゃとした感情が湧いた。 女性客でたむろしている店内で、どんな顔をしてそれを選んだのか?そしてそれをどんな顔をして渡すのか?
私には、何の愛想もない生八つ橋800円足らずの土産。せめてあぶら取り紙だとかでもくれたのなら、少しは女としてまだ見られているという自信もつくというのに。
数千円という可愛い価格なだけに、詰め寄ることも出来ずにいる。これが何万もするアクセサリーだったのなら・・しかし、以前ホワイトデーに何万ものポーチをお返しとして返していた夫に、何も言えなかった私がいる。 問い詰めることー、なんとなく、開けてはならないパンドラの箱のような気がしてならないのだ。




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よそ者

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義実家らとの旅行ー、てっきり新幹線で行くのかと思っていたが、車を使うとのこと。さほど遠いわけでもない、中途半端な距離なのでそういうことになったのだろう。 しかし、そう納得したのも束の間ー、


「車の席が足りないから、家でのんびり留守番していてよ。」


夫からこう言われた時、本来なら喜ぶところなのかもしれないが、前回の冬旅行同様、疎外感で一杯になった。そして、夫のバックに義母や義姉達がいるのかと思うと、そう言わせているのは彼女らなのでは?と疑心暗鬼にもなる。 よそ者はよそ者。戸籍上家族であっても、血の繋がりのない他人。
気を遣う義実家と旅行をしても、正直疲れるだけで楽しめないのは本音だ。しかし、こちらが断る前に、向こう側から門前払いされるとまた気持ちは変わって来る。 私という人間は、つくづく厄介な人間なのだ。

夢を見た。

夫と正式に離婚をする夢。
そこで、私は本格的に一人になる。子は、向こうの家族に引き取られてしまった。
経済的にも裕福な義実家ー、実際、本当に離婚した場合、それは、現実味を帯びるだろう。いや、むしろそれ以外の選択など考えられない。




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空白の2日間、どう過ごしたら良いのだろう?
気軽に誘える友人もいない。そう言えば、いまだ、引っ越し前のママ友から連絡がないし、Yさんから暑中見舞いも届かない。 独身時代の友人とは、その殆どが疎遠だ。

こんな時、所謂リア充ママだったらと妄想する。

速攻、独身時代の友人らに連絡を取り、エステ付きシティホテルの予約、またはプール付きバイキングでゆったりランチを取りながら昼間からビール。 今からだと予約は厳しいかもしれないが、近場の温泉に1泊旅行。
そこまで優雅でなくてもー、日常の喧騒から逃れ、夜更けまでワインバーで飲んだりする。帰りの時間を気にせずー縛られない、そして充実した時間。

しかし、私にはそんな人脈もなければ自由に使える金もない。
ふらふらと、街中をさまよいウィンドーショッピングするくらい。しかし、それにも最近では飽きてしまった。
どうせ、本当に買いたいものは買えないし、もし自由に使える金がふんだんにあったとしても、それは独身時代の失敗を呼ぶことになるかもしれないのだ。




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大人の都合

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夏休みとくれば、帰省する家が殆ど。田舎に祖父母の家がないにしても、近距離であっても一度くらいは遊びに行くのが普通だということに、友達同士の話で知った子が、私に尋ねて来た。


「ねえ、ばあばの家にいつ行くの?」


胸の奥がズキンとした。
あれから音信不通、春休みもGWも、ばあばの家に行きたいと言っていた子になんとなくの理由を付けて断って来た。




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孫にとっては「祖父と祖母」なのだ。それを私の一存でどうこうして良いのか?しかし、それは向こうにとっても同じこと。
音信不通にしているのは向こうだって同じ。唯一、たった一人の孫を傷付けているのだ。くだらない意地を張って。
あの、素っ気なく同窓会通知を転送して来た実母の気持ちを思うと、やはり、こちらから折れることなど出来なかった。
今までずっと従って来た。順応な子供だった。心の中で、消化仕切れない思いを抱えながら生きて来た。今、私はある意味で、彼女の子供になろうとしているのかもしれない。 この我儘を聞き入れて欲しいー、分かって欲しいという我儘を。


「ばあばはね、体調が悪いらしいの。だから元気になったら会いに行こうね。パパの方のばあばとじいじ達と旅行に行くじゃない。従妹もいるし、楽しみだね。」


これ以上執着されないように、楽しい予定を思い出させた。子は現金なもので、すんなりそれを聞き入れた。子供の遊ぶものなどない、退屈を持て余す実家よりも、同世代の従妹がわんさかいる義実家との旅行の方が余程楽しいのだ。 それでも、子は何かを感じ取っているのか、


「もうずっと会ってないよね。元気かな・・」


と、不安げな顔で聞いて来たので、また胸の奥がズキンとした。子から、暑中見舞いくらい出すべきだっただろうか?




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欲の伝染

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長期休み恒例、子と映画館に行ってきた。観たのは、ピクサーの「ファインディング・ドリー」、ニモではない、ドリーが主役の映画だった。
レディースデーに行ったので、二千円で済んだ。
本当なら、海やレジャー施設に連れて行きたいところだが、車もないし、電車が限界。となると、私にとっては精一杯の子孝行が「映画に連れて行く」ことだったのだ。

交通費=1800円(バス代込みで二人分往復)
映画代=2000円
ポップコーン&ジュース代=600円
クレープ代=700円
お土産代=1000円

ざっくばらんだが、一日に掛かった費用は6100円だ。
ちなみに、お土産代は、映画館内のモールにあったパン屋で、翌朝の子と私の朝食兼昼食分だ。
普段、激安スーパーをはしごして四苦八苦している私にとって、安い出費ではない。
しかし、思い出はプライスレスー「子供の頃、ママとよく映画館に行っていたな。」という思い出を残しておきたいのは、私のエゴだということは重々承知だ。




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ーーーーーーここより一部ネタバレ、観る予定がある方は読まないで下さいーーーーーーーーーーーーー


幼い頃、両親と離れ離れになったしまったドリー。原因は、彼女の本来持った「忘れっぽさ」で、人間で置き換えると「発達障害」とも思われる学習障害のような感じ。
ふとしたきっかけで、両親との昔をかすかに思い出したドリーが、自分がかつていた場所へニモ達と向かう旅をするーというストーリー。
紆余曲折ありながらも、障害を持った子に逐一親が伝えていたことをおぼろげに思い出すドリーは、「貝をたどれば家に帰れる」ということを思い出すのだ。
そして、感動の両親との対面に、私は大人気なく涙してしまった。
無数の貝の道が、家路に続いており、そして年老いた両親が抱えきれない程の貝を抱えてドリーと対面したシーン。

親は、いくつになっても親。
子も、いくつになっても子。
それを、見せ付けられたようだった。こんなことで泣くなんて、だいぶ涙腺のネジが緩んでいるようだ。そして、隣にいる子をふと見ると、子も腕で目をこすっているのを見た。
そして、その姿に安堵感を覚えた。


感受性の欠落こそ、子が成長する上で失ってはならないことだと思っている。偏差値だとか、礼儀だとか、また才能だとかーそんなことよりも何よりも大事なこと。 それを我が子が失わず、守り続けていることに心底安堵した。

映画を観終わり、お互い高揚した気持ちで場外に出ると、ドリーの色々なグッズが販売されていた。
子は、なんとなくその中にあるドリーのぬいぐるみを欲しそうなのは察したが、流石に3000円弱するし、夫だったら購入するところだろうが、私の財布では厳しい上に、しつけ上、何でも欲しいものを買い与えるのは良くないと思い、見て見ない振りをした。

普通の親はどうなのか分からないが、こういう時、私自身も欲しくもないぬいぐるみを欲しいと思ってしまう。子が欲しがっているからなのは前提で、それを叶えてあげられない親心もあるのだろうか?
母として、しつけとして、自ら決めたことなのに、なんとなく不完全燃焼のような満たされない気持ちを抱き、映画館を後にしたのだ。





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ラインの♡マーク

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夫のラインを見てしまった。
酔っぱらって帰宅した際、いつもは風呂場まで持参のスマホをダイニングテーブルに出したままだったからだ。
ポップアップメッセージで、内容まで見れてしまった。
ライン特有の、「ピンポン」音。それが立て続けに鳴り、そのどれもを見てしまったのだ。


{今日は、御馳走さまでした♡}


{OOさんと飲むお酒、本当に美味しくて幸せです♡}


{色々、話せてすっきりしました。元彼とのことも吹っ切れそうです^^}


{やっぱりOOさんは大人だな~(*ノωノ)}


{カッコいいし、奥さまが羨ましい~また、来月飲みましょう。次は私にお礼させて下さいね♡}


ピンポン音は、計5回。いやー、夫が風呂から上がってスマホを触ったら、また数回あった。
浮気ーではないと思う。そして、ツーリング仲間の例の女性でもない。そういえば、最近彼女の気配を感じない。




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外面の良い夫。
スマートで、お洒落で、金払いも良くて、女性に優しい。
家での様子をビデオで撮って、彼女らに見せてやりたい。
夫は、この女と1対1で飲んだのだろうか?たぶん、そうだろう。あのラインの内容で、他者を含む感じは見受けられなかった。
相談とは、仕事の相談だろうか?いや、元彼がどうのこうのってことは恋愛相談?妻子ある男に、そういった相談をマンツーマンで酒を入れてする若い女の無神経さに心底腹が立った。
やたらと♡の多いラインにも苛立ったし、ちゃっかり次の約束をしている辺りも確信犯だと思った。無邪気風を装って、虎視眈々と獲物を狙うーそんな雌豹のような匂いがしたのだ。

風呂上がりの夫の首元は、悔しいが男の色気を漂わせている。私はあの首元に腕を巻き付けることなど到底出来ない。妻なのに、出来ない。
それをした時の、夫の反応が恐ろしい。「拒絶」させるに決まっている。しかし、それを確かめないことで、まだ数パーセントの期待を残したいのだ。


「もう1本飲みたくなったな。」


そう言って、私の方を見る。冷蔵庫から冷えたビールを出す。それを渡すと、私に顔を向けずに受け取り、鼻歌混じりにスマホでラインをしている夫に嫌悪感が湧く。


ー私は、家政婦か。


何とも言えない、虚しく悲しい感情の頂点に浮かぶ言葉は、ありきたりだが、それより他に無かった。
夫が自室に引き上げた後、しばらく開いていなかった秘密のノートを開く。そして、頭の中に叩き込んだラインメッセージを書き写した。最後に一行、付け加えた。


「私は、家政婦じゃない。」







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祭りの後ー続き

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写真撮影をしていると、子供達の神輿をかつぐ音が聞こえた。
もうジュースのテントに戻る気もせず、人混みを掻き分けてそちらへ行く。立派な神輿を肩に、ねじり鉢巻きを額に巻いた子供達が声を上げながら近づいて来た。
子が見えた。後方だが、なんとか神輿に触ることが出来たようだ。後ろに回り込み、シャッターを夢中で押した。
素敵ママの子、R君の姿も見えたので、更にシャッターを押す。そして、手にしているデジカメが私物でないことに気付いた。
これは、Eちゃんママの物?それとも子供会の物?持ち主が分からない分、満遍なくシャッターを押す。
まだ体の小さな1年生から、すらっと背の高い6年生まで、顔見知りの子もそうでない子も関係なく、視界に入った子供達の写真を何枚も撮った。
しかし、Eちゃんママのカメラだったら「余計なお世話」だ。
あくまでも頼まれたのは店舗の写真。記録用の写真だ。しかし、普段は働かない直感が働く。これは撮るべき写真だとー確認して、もし「余計なお世話」だったのなら、データを削除すれば良いだけの話だ。
おべっかを使う訳じゃないが、Eちゃんの写真も意識的に撮った。我が子の活躍している写真を見て、喜ばない親がいる訳がない。むしろ、感謝されるはず。
一通りの店舗を回り、片付けまで撮影することもなくなったので、写真の確認もしようとジュースのテントに戻った。丁度、EちゃんママとDちゃんママ、それに6年生ママ一人が店番をしていた。


「すみません、一通り撮影したのですが。先程子供達のお神輿が回って来たのでそれも撮ってみたんですが・・必要ないですか?」


Eちゃんママが一瞬何か言おうとしたところ、


「え!?撮ってくれたんですか?嬉しい!うちの子、今年6年で最後だから、お神輿担ぐの見たかったんだけど、こっち担当になっちゃったから見れなくて。お父さんは仕事だし、写真頼める人もいなくって諦めてたの!嬉しい!!」


6年生ママが、顔を綻ばせて喜んでいる。


「神輿、来たの?ちょっと見に行きたい!」


DちゃんママがAちゃんママを誘うように声を掛ける。Eちゃんママは、困ったような表情をする。


「あの・・私、今暇なので、店番しますよ。」


「え?本当!?」


「はい。」


「いいかな?」


Dちゃんママが、Eちゃんママを上目遣いで見ながら許可を求めた。Eちゃんママは、しょうがないな~という風に、二人が店を外すことをOKした。
それから、私と6年ママとEちゃんママ3人で店番をすることになった。4時過ぎという中途半端な時間ということもあり、客はそれ程来ず暇だった。
6年ママも、最後だからとEちゃんママに頼み込み、少しの時間神輿を見に席を外してしまった。そして、一番苦手な彼女と二人きり一つテントの下というシチュエーションになってしまったのだ。




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沈黙は続いた。その静けさにびくびくしている私に反し、Eちゃんママは実に堂々としていた。しかし、一切こちらに話し掛ける様子はなかった。
次第に、何故私はここまで彼女に嫌われなくてはならないのだろうと腹が立った。そして、私がびくびくする必要もないのだと思い直す。今、このテントは一対一。ある意味、フィフティ―フィフティーだ。


「先程の写真は、大丈夫だったでしょうか?」


思い切って、もう一度質問をした。6年ママが遮ったことで、話が宙に浮いていたからだ。


「別にいいんですけど、私が頼んだのは店舗の写真であって、神輿ではないので。」


「じゃあ、削除しますか?」


「・・・・・」


「このカメラ、どなたのですか?」


「それは、子供会の物です。」


ーなんだ、Eちゃんママのじゃないのか。その答えに安堵する。そして、Eちゃんママの物だったらという答えを用意せずに尋ねた私は、一か八かの賭けに出た自分に、少しだけ強くなったと心の中で自画自賛した。


「今回、子供達の保護者の殆どが作業していて、自分の子達の神輿姿を見れてないと思うんです。写真を撮れなかった方もいるかもしれません。なので、子供会から販売とか出来たらと思って。」


「そうですか。分かりました。でも、その手続きは誰がするんですか?アイデアを出すのは簡単ですけど、処理をするのは面倒なんですよ。仕事している方もいるし、余計な作業増やさないでって皆口に出して言わないけれど、思ってるんですよ。」


やはり、私の思い付きは余計なことだったのだ。
Eちゃんママは、それだけ言うとまたむっつりと黙りこくった。こういう時に限って客は来ない。他のメンバーも戻って来ない。


「余計なことをしましたね。あなたがそう言うなら削除します。」


そう言えたら、どんなにスッキリしたことだろう。しかし、実際の私はただ押し黙り、項垂れているだけだった。
そして、Eちゃんの写真なんて撮らなければ良かったと思った。彼女からすれば、「小さな親切、大きなお世話」なのだから。




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祭りの後

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夏祭り本番。
朝7時集合で、夜8時まで拘束される一日。
夫は幸い休みだった為、子のことはお任せ出来た。子は、子供会の催しに出たので、結局夫は自由の身だ。
以前、自治会の時もそうだったが、夫はこういった地域行事に進んで参加するタイプではない。遠巻きに見てあれこれいちゃもんを付けるだけ。
勿論、直接ではない、陰でーつまり私にあれこれ言うだけのことなのだが、それでもストレスはたまる。

テントの設営、荷物の運び込みーこれらは、ジュースを冷やす為のアイスボックスやビニールプール、それに氷や商品など。事前に集会所に置かせてもらってあったものを現場に移動させる。 私は事前の集まりに参加出来なかった為、何をどうすれば良いのか分からずだった。そして、再度Eちゃんママにお伺いを立てたところ、頼まれたのが「写真撮影」だったのだ。


「もう店番シフトとかも組んでしまったんですよ。来年の参考に写真が必要なので、OOさんは記録の撮影お願いします。」


Eさんに突然そう言われ、デジカメを渡された。他のメンバーは、和気あいあいと店の設営準備をしている。これから12時間もの間、カメラ片手に一人で祭り会場をウロウロしなくてはならないのかと思うと、ずどんと気持ちが重くなった。


「でもー、撮影もすぐに終わると思うので、そしたらお店のお手伝いをさせてもらってもいいですか?」


一瞬、Eちゃんママの顔が曇った気がした。面倒臭い・・というような眉間に皺を寄せたような表情。


「分かりました。では、準備から実際の販売風景、それに後片付けの写真は全てお願いしたうえで、それで時間が空くようでしたらこちらのお手伝いも宜しくお願いします。」


もうそれ以上の質問を受け付けない、そんな頑なな横顔を見ていたら、適当に撮影してどこかに雲隠れしてしまいたくなった。こちらから頭を下げてまで人手の足りている店舗の手伝いをしたところで、彼女達にとっては迷惑でしかないのだったとしたらー




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Eちゃんママは、私に背を向けると仲良しのDちゃんママらと雑談を交わし、そしていつの間に親しくなったのか6年生のママ達ともすっかり打ち解けた様子のため口で共に設営を始めた。 私は、そんな楽しそうな彼女達の様を、ただ黙々と写真撮影。


ーこれって・・大人のいじめってヤツ?


そう思い出したら、惨めな気持ちで一杯になった。
そして、心底Eちゃんママの事が憎たらしくなったし、その姿勢の良い背中にデジカメを思い切り叩きつけたい、そんな怒りの感情が湧いた。
そして、精一杯の抵抗として、彼女の写真写りの悪いものだけデータに残し、笑顔や綺麗に撮れているものは削除してやろうと決心する。陰湿な、これが精一杯の私が彼女に出来る抵抗だったのだ。




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今日の写真

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たまり場

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我が家は、子供にDSを持たせていない。以前から欲しがっていたが、しかしスル―して来た。しかし、それももう限界になって来た。

夏休みになり、みこちゃんが一人ではなく、友達を引き連れて我が家に遊びに来出してからというもの、その仲間の数人がDSを持参していたことから、それで遊ぶことが恒例になっていた。 持っていないのは、我が子とみこちゃんだけ。
どうせ家で遊ぶのなら、工作だとかトランプ、ごっこ遊びなど、地味だがコミュニケーションが必要な類の遊び方をして欲しいと思うのは、親のエゴだろうか。
いや、それは綺麗ごと。実際のところ、我が子が持っていないことで、惨めな姿を見るのが辛いだけなのかもしれない。
クッションに寝転がり、数人がゲームをする。その後ろで、我が子とみこちゃんが首を伸ばして小さな画面を覗く。
たまに、それを煙たがられ、


「ちょっと、邪魔!」


と追い払われる。
その態度に腹が立つ。ここは、人の家だということを忘れてはいないか?だったら自分の家でやれ!と苛々してしまうのだ。
一向に、菓子一袋持参しない子供に限って、そういった態度を取って、我が子に冷たく当たる。しかし、子は画面を見たいが為に、下手下手に出ており、それがまた親として情けなく思う。




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以前、Dちゃんらに我が家をそう使われたことがあった。妹達まで連れて来られて、お漏らしの処理までさせられた。その間、母親達は優雅にティータイム。
我が家はまるで、金の掛からない託児所のように扱われた。

足元を見られているのだ。
子供にも、その親にも。
DSを喉から手が出る程欲しい子に、見せてやるから家を貸せ。
子に特定の友達を与えたいと思っている私に、うちの子と仲良くさせてやるから家を貸せ。
最初は、我が子が楽しそうにしているのを見ているだけで満たされていたはずの気持ちも、しかし、こちらが出した菓子の屑をボロボロ寝転がりながら食べてゲーム。 カスだらけの床を気にも留めず、ぎゃあぎゃあ小さな画面に向かって喚いている子供達が、心底憎らしかった。


ー一度くらい、子に貸してくれても良いのに・・・


そして、貸してと頼めない子に対しても、歯がゆい思いだった。私の子供なのだ。言える訳がないと思いながらも、しかしどこかで期待する気持ちもあるのだ。それは、半分は夫の血を分けた子だからこそ。

DSを持っていないみこちゃんと子は、自分達を他所に盛り上がるDSチームに見切りを付けたのか、隣部屋で人形ごっこを始めた。DSチームは、テーブルのお菓子を全て食い尽くし、喉が渇いたなどと言い出した。 最初はりんごジュースを出していたのだが、余りにもイライラしたので水道水を出した。ペットボトルの水などを出す気にもなれなかった。


「えー、水?カルピスとかないの?」


一人の図々しい子供が聞いて来たが、冷蔵庫にあることは隠し、それしかないと言い切った。
こんな小さな抵抗だったが、少しだけスッキリした。

別れ際、子と友達がまた我が家で遊ぶ約束をしているのを玄関で聞いた。子は、それでも嬉しそうに約束をしていたので、遮りたい気持ちをぐっと堪える。
都合の良い親子ーそんなレッテルをその子達に貼られている気がしてならなかったが、もう少しだけ我慢してみよう。損得勘定を胸の奥に仕舞い込み、子供達に噓の笑顔を向けて手を振った。







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適応障害?的な

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夏祭り本番を数日後に控え、当日の自分の立ち位置を思うと、動機と息切れが激しい。それに不眠だ。
何故なら、私が欠席した打ち合わせの日に、全ての流れから発注&受け取り&会計などなど、私以外のメンバーで取りまとめていたのだ。
Eちゃんママに、お伺いを立てた。


ー私は、当日何をすれば良いのでしょうか?


帰ってきた言葉はこれだけ。


ーご自分で考えて動いて下さい。


身も蓋もない言い方だ。
私は、やはり彼女に嫌われているらしい。それともー、彼女はこういう人なのだろうか。悪く言えばつっけんどん、良く言えばドライな。
当日、私だけがやることがなく、たた呆然と突っ立っている様が浮かぶ。何かを手伝おうと動こうとしても、まるで椅子取りゲームをしているかのように、ドンくさい私が座る椅子はない。
どうしたら良いのだろう?
雨天中止になるこの祭り。私は、どうか天気予報が雨マークにならないか、そればかり祈っていた。子は楽しみにしているというのに、残念な親だ。




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マークは「曇り」という半ば期待させるような天気。
今朝も、ドキドキしながら新聞の週間予報を眺めた。降水確率は40%、まずまずだ。
子供の為、子供の為と言い聞かせては慣れない場に出向いて右往左往して、空回る。いっそのこと本当の引きこもりになってしまえば良いのに、それが出来ないのは子のことを愛しているからだ。 子が後ろ指を指されないようにー、じっと耐える。適応障害?と思うことが何度もある。その度に、自宅のベッドにもぐりこみたい衝動に駆られる。実際にもぐりこむ。しかし、しばらくすればその布団から出る私がいる。 家族があるからだ。
夏の日差しは眩しい。それでもサングラスを掛けないのは、一旦、そうしてしまったらもうこの光を感じることが出来なくなるような気がするから。

後は、運命に任せよう。
雨になれば、日頃頑張っている自分に神様がご褒美をくれたのだとーそして晴れだったなら、今は頑張り時なのだと。
いつか、こんなこともあったなーそう笑える自分に出会える日が来ると信じて。




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テーブルの下で繋ぐ手と手

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子供会の重要任務。ジュース班がビールを担当するか否かの確認。
焼きそば班は、そもそもジュース班担当だった素敵ママらに変更になったこともあり、それに関しては彼女に聞けば良いのでハードルが低いとタカを括っていた。
しかし、Eちゃんママは素敵ママと仲良しなのだから、あの場ですぐにラインなどで確認出来ただろうにー
引っかかりを感じながらも、子供会用の連絡網にある彼女の連絡先にダイヤルした。


「もしもし?」


ツーコールで明るい声。後ろは何だか騒がしい。複数の子供達の騒ぐ声が聞こえた。


「お休みのところごめんね。OOです。今、大丈夫かな?」


「うん。どうしたの?」


「お祭りの件で確認したいことがあって。今年はビール、ジュース班が出すのかな?それともそっちで出してくれるのかな?」


「あぁ、えーっとね・・ちょっと待っててね~」


ガサゴソと何かを探す音が聞こえた。その後ろで更に子供達の大騒ぎの声。そして、何となくだが・・Eちゃんの名前を呼ぶ声が受話器越しに聞こえた気がした。


ーえ・・Eちゃん、そこにいるの?Eちゃんママももしかしているの?




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「はいはーい。えっとね、うん。こっちが担当!だからそっちはソフトドリンクだけで大丈夫だよ~」


朗らかな彼女の声。しかし、どうにもこうにもその後ろの雑音に気を取られてしまった。


「分かりました。お忙しいところありがとう。」


「うん、じゃーねー!」


心がモヤモヤする。もし、あの場にEちゃんママがいたのなら、私はとんだピエロだ。こんな確認、ものの数秒で済むことなのだから。そして、Eちゃんママに再度電話を掛けた。 今度はスリーコールで通話になった。


「もしもし・・」


「お休みのところ、すみません。OOですが、先日のお祭りの件で確認が取れましたので、今よろしいでしょうか?」


ー同じだ・・


素敵ママに掛けた時と同様、子供らの騒ぐ声、雑音。そして、予想はぴたりと的中したと思った。彼女と素敵ママは一緒なのだ。
しかし、子供達の声がするというだけでそうだとは限らない。それでも、こういう勘は昔から良く当たる。私は、そういう人間なのだ。

一通り、Eちゃんママに告げると、それでも何も知らなかったかのように私の言葉を受け取ってくれたのがまだ救われた。一応、気を遣われたのだ。そして、私が通院の為欠席していた間の打ち合わせで最後、もう集まりは必要ないのだと聞かされた。 受話器の向こうで、先程聞いたばかりの素敵ママの朗らかな笑い声が聞こえた気がした。




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無愛想な処方箋

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子供会の夏祭り、打ち合わせの当日がたまたま毎月の通院日だったので欠席した。なんだかほっとした気持ち。
やはり、あの威圧的なEちゃんママ含む会合は、心底気が重い。
しかし、恐らく会が始まっているであろう時間帯になると、そわそわと落ち着きのない心持ちになる。自ら欠席しておいて、疎外感ーのような。


ー今回の打ち合わせで、私以外の皆が意気投合していたら?


本当に、私の精神はどうかしている。子供じゃあるまいし、いい加減にしてくれともう一人の自分がため息を付くのだ。


相変わらず、慣れない担当医師の診察。いつも通り、ほぼルーティン化している血液検査など。数値は問題ない。問題なのはこの性格だ。
名前を呼ばれ、ノックをして診察室に入る。いつもこの瞬間は緊張する。じっと下から上まで見られて品定めされているような、まるで裸になったかのような気分。
せめて、愛想良く。そう思い、意識的に口角を上げる口の端は、プルプルと小刻みに揺れているのが分かる。


「変わりは・・ないですね。」


「はい。」


「じゃあ、薬を出しておきます。」




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ものの数分で終了した診察。その間、会話はこれだけ。後は、カタカタPC画面上のカルテに何やら難しいことを打ち込んでいる彼は、処方箋の用紙をプリンターから取り出すと、看護師に渡した。
看護師から、私にその用紙が手渡される。一度もこちらを見ようとはしない、社交辞令的な会話もない。そして、それは「私」が相手だからだということは百も承知だ。
診察室を出て、そのまま総合受付に向かう。
時計の針は、そこまで進んでいなかった。今から寄り道をせずに帰宅すれば、打ち合わせ終わりの彼女らとどこかで遭遇するかもしれない。
別に悪いことをしてずる休みをしている訳でもないのに、途端に罪悪感が芽生えたのは、この不完全燃焼的な診察を終えたばかりだからだ。

子は、学童に弁当持参で夕方まで。それまでは自由時間。その空白が、何故だか私の心を不自由にしているようだった。まだ、あれこれ忙しく動き回っている方が落ち着くのにー余計なことばかり考え、疲れる自分から逃れたくなった。




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