電話恐怖症
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敬語ママに渡された、ボランティアを主催している団体の副会長の電話番号。
彼女からも話をつけておくが、私からも直接そこに電話をしてくれとのことだった。てっきり、彼女を通して紹介されるものだと思い込んでいた私は、正直面食らった。
それでも、彼女の善意100%の微笑を見ていると、その場で断ることなど出来なかった。
電話は苦手だ。
子の学校連絡網ですら、手に汗を握るのだ。連絡事項を紙に書き、それを何度か練習してから次へ掛ける。それでも、心臓はドキドキするし、気は重く逃げ出したくなる。
仕事では出来ていたー短期バイトだけれど・・電話応対。しかし、プライベート、それも自発的に「会社」という後ろ盾が無い身分で相手先に掛けることは、何ともハードルが高い。
そもそも、ボランティアの詳細も良く分かっていないのに、引き受けるだなんて軽率過ぎる。それに人間関係の構築に四苦八苦しつついまだ収穫ゼロの自分が、行き当たりばったりで見ず知らずの出来上がった輪に入るだなんて、あり得ない。
子の学校行事や子供会のあぶれ者、役員や学校ボランティアだってロクに出来ていないのに。
一方、「母」というしがらみから逃れて、「私」という人間だけで、全く接点の無い環境に飛び込むことはチャンスなのかもしれないとも思う。以前、見掛けた敬語ママの生き生きとした表情。
これも縁かもしれない。
行ったり来たりの感情に振り回され、すっかり疲れ果てた私は決着を付けたくなった。電話をすることに決めたのだ。話を聞くだけ。どんなボランティアなのか、条件だとか・・
勇気を出して、携帯のダイヤルボタンを押す。
発信音が数回鳴った。5回を越した時点でやっぱり止めようと通話終了ボタンを押すのより早く、落ち着いた女性の声が耳に入って来た。
「もしもし・・」
明らかに、警戒しているような、そんな声にこちらも緊張感が高まる。
「あの・・、Kさんの番号で間違い無いでしょうか?」
「えぇ・・」
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「あの、私、〇〇と言いまして、先日敬語さんからそちらの活動の紹介を受けまして・・」
「あぁ、はい。ごめんなさい、今ちょっと・・」
「あ!すみません、お忙しいところ。また改めてお掛け直しいたします!!」
慌てるあまり、おかしな敬語で会話を締めくくり、受話器を置いた。
もしかしたら、仕事中だったのか?それとも電車の中?相手の声はとても小さいうえに聞き取り辛く、そして、予想に反して不愛想な感じだった。
ボランティアをしていること、それに敬語ママとの知り合い。そして、人数が欲しいはずのところその足りない人員を埋めてくれるかもしれない人物からの電話に対しての応対だとしたら、雑過ぎるのではないか。
しばらくして、掛け直すタイミングに悩む。忙しそうだった相手を思うのなら、今日のところはやめるべきか。しかし、善は急げで数時間後に掛け直すべきか。
数日後ーだと今度はこちらの存在すら忘れられているかもしれない。向こうは私のように暇人ではない。精力的に色々な活動をしているに違いない。
こんなことなら、都合の良い時間帯を聞いておくべきだった。それか、向こうから掛け直してもらうべきーいや、それは図々しいお願いだ。通話料を負担させることになる。でも、こちらはボランティアでバイトの応相談の電話でもない。
くよくよしているうちに、あっという間に数時間過ぎていた。
相変わらず、向こうからの折り返しは無い。このまま無かったことにしようか。こちらも忘れてしまったことに。
しかし、自分で言うのも何だが、気が小さく根が真面目な性格の私にそんなことは出来るはずも無いのだ。また、悩み事が増えてしまった。
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- category: わたし
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- 2017/03/31