果物は贅沢品
子を病院に連れて行くと、典型的な風邪。一応、インフルエンザや溶連菌の検査もし、どちらでもなかったことにホッとした。
いつもは反抗的な子だが、病気になると、途端にあの幼かった頃の可愛さが戻る。恐らく、心細いのだろう。
「ママ、ここにいて。」
枕元にいて欲しいと懇願された。子が眠りにつくまで、傍にいた。家事は進まなかったが、久しぶりに子から必要とされていることが嬉しかった。
「何か、欲しいものは無い?」
「さっぱりしたものが欲しい、ぶどうが食べたい。」
作ったお粥にはほぼ口を付けない子、何かしら食べて欲しかった。少しの間留守番させ、近くの小さなスーパーへ走った。
この時期、りんごやみかんが旬で、安価で買える。子が欲しいと言った種無しぶどうはなかなかの値段だった。980円の国産種無し巨峰か、480円のアメリカ産の皮ごと食べられるマスカットかー
健康体なら、後者を選ぶだろう。しかし、今は体が弱っている子、果たしてぶどうが消化に良いものなのか分からなかったが、何でもいいから何か口に入れて欲しかった。
散々迷った挙句、やはりケチってしまった。結局、ぶどうは辞めて、フルーツの国産缶詰にしたのだ。350円程のそれは、しかし、我が家にとっては割と贅沢なデザートの部類に入る。
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急いで帰宅し、子が眠る寝室へ行くと、
「ぶどう、買って来た?」
「ごめん、売って無かった。だから、缶詰買って来た。」
子が、明らかに失望したような表情を見せた。やっぱり無理してでも、980円の巨峰を買うべきだったかと後悔した。それでも、皿に少しだけ取り分けて子の口に運ぶと、パクパク食べだした。
あっという間に平らげ、お代わりを食べたいと訴える。冷たくて、喉越しが良いのだろう。
食べるかどうかも分からなかったので、1缶しか買わなかったのだが、すぐに無くなり、2缶買っておけば良かったとまた後悔した。
水分と糖分が取れたことで、心なしか血色も良くなった子。その後、すやすや眠りについたのを確認し、家のことに取り掛かる。自分が倒れていた時もそうだが、家族が倒れても、家の中は途端に荒れる。
「部屋を保つ」ことは、家の主がそれなりの努力をした結果なのだ。
ふと、委員長からのラインが来てないかと、PCを開く。ドキドキしながら、ログインすると、1件。
「こんにちは!娘さん、大変でしたね。この時期は仕方が無いですね。我が家の子供も昨日から中耳炎です・・こちらのことは気にせず、お大事にして下さい。」
委員長自身の近況も交えつつ、こちらの気持ちを察して軽くしてくれる、そんな文章に心が打たれた。
ほっとしたら、ようやくお腹が減って来た。レンジで温めたご飯に卵と醤油を掛けただけの少し遅い昼食が、疲れ切った体に染みて、やけに美味しく感じた。
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- category: 財布事情
- 2018/11/30