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健全な交友関係

夏休みに入り、子が宿題を友達と図書館でやりたいと言い出した。
ラインは禁止しているけれど、メールはしている子。どうやら、いつの間にメールでクラスメイトとやり取りしていたらしい。
駄目だと言う理由など無かった。宿題をするだなんて、健全ではないか。
プールやお泊り、夏祭りや映画にショッピング。金を遣う遊びもある中で、宿題を選ぶ子達ー今、子と親しいのは、親として安心出来そうな子達なのだ。
去年を思えば、子の交友関係はガラリと変わった。それが、親として嬉しい。




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子ども会の集まりで家を空けなければならない時も、子は友達と児童館へ行くので弁当を作ってくれと言い出した。
夫の分は作らなければならないので、結局子と自分の分3つ作って、家事の貯金をしたようなもの。
朝はバタバタするけれど、ぐったり疲れて会合から帰宅し、また子の昼ご飯を作る手間は、これが毎日のことだと辛い。
なので弁当3つは大変だけれど、キッチンに立つ回数が減ることは、この暑さの中で主婦にとって有難いことなのだ。

丸一日予定が無い日に、子はいない。ちょっと寂しい気もするけれど、もうそういう年なのだ。




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ストレスと痙攣

朝起きると、顔面に違和感。 左半分だけ顔全体がぴくぴく動いて止まらない。
鏡の前、気にすれば気にする程痙攣は酷くなり、しかし週末に控えての夏祭り準備もあるので、集会所には行かなくてはならず、考えた挙句、マスクをして会合に出席した。


「どうしたの?風邪?」


Hさんが驚いた表情で聞く。こんな真夏にマスクはやはり不自然なのだ。
この日は役員だけではなく、任意だけれど会員保護者に協力を仰いだ。素敵ママやDちゃんEちゃんママら、酒井さんら、その他大人数が出席した。
役員だけだと、少人数ということと慣れて来たこともあり、気楽。しかし、人の数が多くなると途端に緊張感が増す。もしかしたら、そういうストレスが神経に障ったのかもしれない。

作業をしながら、隣テーブルで仲良しママらが雑談をしている。私は、役員らと同テーブル。役員だからポツンにならずに済むこの環境が有難かった。
とはいっても、私を除いたメンバーは私の知らない誰かの話で盛り上がり、そんな時、途端に居たたまれなくなる。


「毎日塾だから可哀想でさ。お盆は帰省するの辞めたんだ。可哀想だから、お泊りだけはOK出した。」


Eちゃんは、受験するのか知らないけれど、夏季講習で大変らしい。なので、本格的な講習に入る前に、友達と日替わりでお泊りするとのこと。
7人くらいの家を泊まり歩くそうだ。


「うちも、去年お泊りしたから、今年は呼んだよ~」


Dちゃんは、自宅に招待したらしい。そういえば、お泊りだなんて子の口から出たことは無かった。そういった友達付き合いに無縁なのが引っ掛かる。




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「うちは、2年の時に引っ越した友達の家に一人で行かせるよ~」


「え。大阪だよね!?一人で?」


「いやいや、M君達と。一週間行くから、こっちはこっちで羽伸ばすわ~」


「いいなぁ~」


C君ママが笑う。


「ほんと、子どもだけでキャンプとか行って欲しいよね!」


Hさんが、すんなり隣テーブルの会話に加わる。それに伴い、他のメンバーも。皆、作業の手は止めないけれど、好き勝手にお喋りを楽しむ。
私は更に取り残された気分で、自ら発言も出来なければ、ただただ手元を動かすのみだった。


ー本当、自分って暗いな。


今更ながら、思う。誰かが私に話を振ってはくれないかと期待するが、誰もが自分の話に夢中だ。ただ、マスクの下で引き攣りながらも笑顔を作るのに精一杯だった。
うまく笑顔が作れず、痙攣が酷くなる。しかし、マスクで良かったと一方で思う。

どっと疲れたけれど、本番まであと少し。
自宅に戻り、ご褒美の78円で買ったチューハイをぐびっと飲む。子に見つかりそうになり、慌てて缶を捨てる。水分をよく取らずに飲んだせいか、頭がぼんやりしたけれど、いつの間に痙攣はおさまっていた。




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今日の写真






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今日の写真








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正攻法

子が、自由研究の参考図書を探したいというので、図書館に付き合った。
スネ夫ママがいるかもーと思い、隣町の綺麗なところではない、近所の小さな図書館へ。カフェテラスもなければ狭苦しい図書館だけれど、クーラー代の節約にはなる。

いつもは寂れた雰囲気のこの場所も、夏休みとなれば親子連れで一杯。腰を降ろせる場所も無かった。
子が本を選んでいる間、私は雑誌コーナーで立ち読み。閲覧スペースのすぐ近くだ。

自由研究は、子ども自身は勿論のこと、親がどれだけ子どもに関わりアドバイスをしたかが結果に出る。
やり過ぎず、だからといって放置せず、良い塩梅で口出しする必要があるのだ。
子はあれこれ悩んでおり、こういう時だけ私に寄りかかる。どうしよう・・決まらない・・そんな表情で私の傍をウロウロするのだ。


「ググればいいかな。」




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最初、子が口にした台詞。ネットで全て完結させようとしていた。自由研究・6年と検索すれば、いくらでもネタは出て来るし、またご丁寧に作成過程から完成まで写真付きで掲載されている。
タブレットで日頃動画を観たり、また学習をしてネットの世界に馴染んでいる子は、いつの間にか要領良く事を進める術を身に付けつつあった。
それさえ、今の時代を生きる子ども達にとっては「強み」になるのかもしれない。情報を制するものは社会を制すのだ。
けれども、昭和に生きて来た私にとって、我が子にはまだ正攻法を進んで欲しい思いがある。


「ママも一緒に手伝うから、ネットはやめて図書館へ行こう。」


この言葉でついて来た我が子は、反抗期とはいってもまだ手を伸ばせば届く距離に心はあるのだとほっとした。




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ラジオ体操

早朝のラジオ体操。いつもより早く目覚ましのスイッチを入れる。
夫が出勤する時間、どうしても留守にしなくてはならなくなり、そのことでもめた。


「飯、どうすんの?」


「用意はしておくから、温めて食べて。」


「朝の忙しい時に・・」


ご飯と味噌汁を温めてよそう。ただそれだけのことなのに、グダグダ文句を言う夫にげんなりする。
常に、彼のベストタイミングで食卓に全てが並べられていることが当たり前になっている。なので、例外が許せないのだ。

不穏な空気を感じながらも、子と共に家を出て公園に出向いた。
まだ誰もいない早朝の公園は、清々しい。遥か昔、キャンプをした朝を思い出す。
たっぷりと太陽の光を吸い込んだ緑達が放つ、エネルギーを蓄えたフレッシュな香りを体一杯に吸い込むと、まだ寝ぼけ眼の細胞達を目覚めさせてくれる。




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ラジオ体操をする際、皆の前で手本を示さなくてはならない。
何度も家で練習をした。一人でタブレットの画面を観ながらそれをしている姿は何とも滑稽だが、子ども達の前とはいえ、人前で手本をするのはプレッシャーだ。
不格好でも、せめて間違えないように。何度も練習をしたのだが、本番になると必要以上にあがってしまい、いくつか動きを間違えてしまった。
ジャンプを何度もする箇所では、たるんだ顔の皮膚が、彼らにどう見えているのかが気になって、思い切り跳べなかったり。また、視線をどこにやるかも戸惑いをおぼえた。
結局、我が子の方を見て体操したけれど、視線を反らされ何とも言えない気持ちになった。
体操が終わり、ほっとしながら皆のカードにスタンプを押す。
子ども達が体中を掻きむしっており、私も気付けば手足のあちこちが蚊に刺されて膨れ上がっていた。
明日は、蚊取り線香を持参することに決めた。
夏休みは始まったばかりだが、朝が早いと身も心も清々しく気持ち良い。




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おまけ

毎度のことながら、持病の薬が処方されるまでの時間は暇を持て余す。
棚に置いてある雑誌や漫画も古く、既に読んでしまったものばかり。自分で借りている本など持参しようといつも思うのだが、いつもその時になって忘れてしまう。
外ではギガ数を食ってしまうので、携帯も使えない。なので、薬局に設置されているテレビをひたすらぼーっと眺めているしかないのだ。


「遅っせーんだよ!!!!このボケが!」


突然、背後から怒鳴り声が聞こえて、体ごとビクっとする。途端に、部屋中が静まり返る。
テレビ画面の向こうから、コメンテーターの声高な主張が聞こえるだけ。


「モタモタしてんじゃねーぞ!!!」


恫喝に近いその声に、薬剤師達も動揺を隠せない。少しして、受付の若い女性がつかつかと男性に歩み寄る。


「お客様、大変お待たせしてすみません。早急に用意いたしますので。」


ひたすら低姿勢で謝罪する女性に、小さな舌打ちだけすると、男性は大人しくなった。
だがしかし、私の隣には、2歳くらいの男の子が母親と座っており、間の悪いことに泣き出した。
お菓子が欲しいと喚く。母親は、後ろの男性が気になってオロオロしながら宥めている。


「食べたい!!お腹空いた!!!」


我慢の利かない男の子。ぐずりはどんどん大きくなって来る。私も自分のことのように気が気ではなかった。


「うっせーな。」




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ボソっと背後から男性の声。背筋が冷たくなった。いつ隣の親子に食ってかかるのかと思うと、気が気ではなかった。
わざとらしい大きなため息。私の心臓もドクドクと脈打つ。
薬剤師も、早急にという言葉通りにはいかないのか、なかなか男性を呼ばず、呼び出し音の度に期待するが、窓口に向かうのは他の人。


「うわーーん!!」


とうとう男の子が泣き出した。困ったーこれ以上泣いたらダメだよ・・と心の中で願うけれど、泣き声のボリュームはどんどん増すばかり。
ふと、保険証を開くと、子が随分小さな頃に病院で貰ったシールのシートが数枚出て来た。注射だとかインフルの検査だとかで泣かずに頑張った時に貰えたシール。
子は、こういったものにその頃あまり興味を示さなかったので、受け取っても保険証ホルダーの中に入れっぱなしだったのだ。


「これ、良かったら。」


隣の親子に差し出した。男の子は視線をシールにうつした途端、泣くのをやめた。シールに手を伸ばして来たので、5シート全部男の子に手渡した。


「ありがとうございます!!!」


男の子は、シールを剥がして裏にあるイラストシートに貼って遊びだした。着せ替えや動物園、その他、お料理など、自由自在に貼ったり剥がせたりする遊べるシールシートなのだ。
夢中になってシールで遊ぶ男の子が静かになり、ようやく男性を呼び出すアナウンスが聞こえた。
その場にいた人々が、ほっと胸を撫で下ろす様子が伝わる。そんな空気だった。

荒々しく薬を受け取り、乱暴に薬局を出て行く男性。何をあんなに苛ついているのか?
薬局のレジ横にあるカルシウムサプリをおまけに付けてやりたい気分だった。




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価値ある財産

体調が優れないこともあり、持病の病院へ。
軽く診察を受け、いつも通り、強気な医師から生活習慣のアドバイスを受ける。


「あのね、何でも病気のせいにしないこと!この病気でも、一流選手だっているし色々な分野で成功している人間はいるんだから。だいたい病気のせいにしていつまでもニートだったりする奴が多いんだよ。本当にけしからん!」


以前、私が弱音を吐いた時に掛けられた台詞だ。この言葉で私は追い詰められて、夫からのプレッシャーもあって、短期パートをしたことがある。
だが、やはりあの時期頑張り過ぎたことで、体が参ったのは事実。




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今年に入ってから、私にとって、あの頃身を粉にして働いていた短期パートと同じくらい、労力を使っている。
傍から見れば、それくらい何のそのかもしれないけれど、同じ仕事であってもその負担は個人差がある。
取り敢えず、一か月分の処方薬を出して貰った。
心身ともに健康であることー、年齢を重ねるにつれて、これより価値のある財産は無い。




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悩めるという余裕

夏休みになり、夫だけを見送る日々はなんだか新鮮。
いつもより夜更かしして寝坊した子と二人でとる朝食は、朝のワイドショーを観ながらいただく。
最近のお家騒動的なネタは、子にとっても気になるようで、珍しく私にあれこれ話し掛けてくれるのが嬉しい。
いつもなら、ぼーっと画面を観ながら、またタブレットで動画を観ながら、私から話し掛ければぽつぽつ返す程度で成り立つ母娘の会話だけれど、子も夏休みを迎えての解放感があるのだろう。
なんだか、ウキウキしたような感じだ。




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この夏は、クラスメイトと祭りやプールの約束をしているらしい。その子達と付き合うようになり、アニメの録画や漫画も今までのような少女漫画ではないものが増えた。
参観の時にチラッと様子を見たけれど、確かに地味な感じのグループ。去年のお洒落グループとは大違い。
しかし、彼女等と話している子の表情は、自然で楽しそう。S奈ちゃんらといた時のような、オドオドしたような必死でくっついていくような感じはなく、やっと彼女の居場所を見つけたのだと安心した。

私は私で、子ども会の仕事のことで頭は一杯ではあるけれど、我が子がうまくいっているからこそ自分の悩みに集中出来る。
つまり、くよくよ悩めるだけの余裕があるということだ。




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私、やりますよ。

子の夏休みに入り、子ども会役員としての大きな仕事は夏祭り。
その他、ラジオ体操の出欠管理もある。
これが厄介で、誰もやりたがらない。そもそも早朝たった15分の為に拘束されるのだ。
先日、会長を除くメンバーで集まった時に誰がやるのか話し合いになり長引いた。
皆、あれこれ理由を付ける。スポ少関連の仕事で忙しいとか早朝パートがあるだとか。
私もできればやりたくない。ただ、会長の代わりにーと夏祭りの仕切りを頑張るはずが、実際のところHさんに任せきり。
皆の視線が痛かった。ラジオ体操くらいならー、ただ皆の出欠とラジオのセッティングをすればいい。マニュアル通りに動くだけ。私でも出来る。


「私、やりますよ。」




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皆の表情がぱーっと明るくなった。もう引き下がれない。
でも、私がこれを引き受けたことが幸いしてか、Hさん以外のメンバーも夏祭りに向けての準備に積極的に関わってくれるようになった。
自分が変われば、相手も変わる。
受け身でいることは楽だけれど、その分、相手との距離感は詰められない。
人付き合いにおいて、努力は必要だ。互いに心地良い関係性を築く為に。




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体調不良

夏祭りの打ち合わせがあったのだが、体調を崩してしまい行けなくなってしまった。
持病絡みの具合の悪さだったので、無理をする訳にいかず、薬を飲んで横になることしか出来なかった。
子ども会として穴を空ける訳にいかないので、グループラインに投下すると、会長はやはり無理。困り果てていたところにHさんが代わりを申し出てくれたのだ。
私の中で、Hさんが頼り甲斐のある姉さん的存在になっている。KYなんて心の中で思っていたことを今更ながら謝罪したい思いだ。

最近、体調が良くない。
これから大事な時期なので、気を付けなければならないが、自分の意思とは関係ないところで悪化するので怖い。
半日布団にくるまっていたら良くなったけれど、予測出来ないことなので、運命に身を任せることしか出来ない。




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生き甲斐なんて

謝恩会で、スライドを流すことが決まった。
そこで、写真選びをすることに。卒対委員だけで行うものだと思っていたのだが、スネ夫ママがある提案をしたのだ。


「うちらで選んで、裏であれこれ言われたら嫌じゃない?」


その一言で、個々で我が子のお気に入りショットを数枚提出してもらう流れに。それを私達でピックアップして、編集するというのだ。
この流れが基本なのかどうかは、初めての私には良く分からない。




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まだ1学期だというのに、集まりは多い。委員の中には仕事の人もいるので、私も折をみては休んだり。
どうせ、私が加わったところで発言する訳でもないし、仲良くお喋りする人もいないし、居心地が悪いだけ。
当日の仕切りという役割なので、いよいよ本番に迫る頃に頑張ればいい。
孤高の人や素敵ママも、自分の仕事が忙しいのか、時々の参加。だがしかし、ボスママやスネ夫ママは、図書館司書のバイトや上の子の用事や、その他ボランティア活動をしているというのに、参加率はほぼほぼ100%。 恐らくこういう集まりに、自分の生き甲斐を感じているのかもしれない。
冷めた目で見ながらも、どこかで忙しく日々を充実させている彼女達を羨む私がいる。




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同じ制服だっただけ

旧友とのランチは、不完全燃焼。
私は何時間でも大丈夫だったのだけれど、彼女の方は仕事の合間だったことで、限られた時間内での会食だった。
店は、彼女指定。キャリア女子と専業主婦とでは、金銭感覚も違う。一応、多めに用意していたのが正解だった。
都内の一角にある、お洒落なバルの店。ランチメニューも豊富。てっきり昼からワインでもと思って楽しみにしていたけれど、


ーあぁ、仕事か。


と、思い直した。
水で乾杯。飲んでもいいよと言われたけれど、


「子どもの習い事送迎もあるし。」


あたかも運転するかのように、見栄を張った。送迎というのは本当。共に、ピアノ講師宅まで自転車でついて行っている。自転車だって、立派な二輪だ。
最初、旧友に気付かなかった。見たことのない髪型だったからだ。ベリーショートといっていいのだろうか、元々目鼻立ちがはっきりしている彼女に良く似合っていた。
大振りの揺れるゴールドのピアスがキラキラ耳元で揺れていた。
食事が来るまでの間、近況報告をーと思っていたが、先手を打たれた。
即、目の前に出されたパンフ。布教活動の始まりだ。


「ごめんね!取り敢えずこれ。お子さん、まだ小学生だったっけ?でも高校になるまであっという間だよね。これ見て。高校の授業料無償化と大学では返済無しの奨学金の構築を公約に挙げているの。」


パンフに目をやると、だが条件付きだ。世帯収入さえ知らされていない私には、我が家がこれに該当するのかどうかさえ分からない。恐らく、夫の金遣いからいったら、該当しないだろうと思う。
上の空で、彼女の声だけが右から左に流されていく。
そして、他党の政策を非難し始める。彼女の声はどんどん大きくなってきて、隣のテーブルの女性が眉を潜める。なんだか恥ずかしくなる。


「分かった、読んでおくね。」


そう言って、パンフを受け取り、バッグに仕舞う。私は、こんな話をしにここに来た訳じゃない。




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「娘も、最近反抗期で。会話も弾まないしねー」


「あ、ごめん!」


彼女のスマホが鳴り響き、私の会話は宙に途切れた。電話の最中に食事が運ばれ、先に食べててというジェスチャーを残して彼女は外に出てしまった。
運ばれて来たサラダやパエリア、ステーキなどを皿に取り分ける。ぞんざいな扱いに腹が立ち、彼女を待たずしてサラダや肉を口に放り込む。美味しいはずの料理の味は、なんだか半減された気分。
旧友が席を立ったのは20分程度だったが、物凄く長く感じた。まるで一人で店に食事をしに来たようだ。いや、最初から一人で来た方が純粋に食事を楽しめたに違いない。
彼女が席に戻ってからは、なんだか話す気力も失せてしまった。彼女の方から聞かれて答える当たりさわりのない近況と、彼女自身の仕事の動向。正直、まるで興味の持てない内容だった。 それは、お互い様だろう。

私達は、長らく違う時間を生きている。遠い昔、同じ制服を着て同じ学校に通っていたという共通点。ただそれだけなのだ。
たまに会ったところで、気持ちが交差することはないのかもしれない。
都合のいい自分を作って、都合のいい理想を言い合うだけのー、それが、私達の関係性なのかもしれない。




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ドタキャンキャンセル

票集めの道具にすぎないーそう思いつつ、旧友とランチの約束を取り付けた。
当日の朝は、子と夫を送り出すと、バタバタと家事を済ませる。服やアクセサリーを選び、髪をセット。
いつもの10倍以上の速度でこなし、さあ出ようと思った時に、携帯メール。


ーごめん!ちょっと仕事が入ってしまって。また今度でも大丈夫?


目にした瞬間、へなへなと床に座り込んでしまった。いつも以上に念入りにメイクをした。服も、旧友からしたら野暮ったいだろうけれど、私の中ではいっとうのお気に入りだ。
ドタキャンにこうもショックを受けるとは、私の中で、余程楽しみな予定だったのだと改めて知る。

朝食も、昼にがっつり食べるのだからと抜きにしたのだ。こんな時に限って、余分に余ってもいない。急にぽっかり空いた時間、腹はすく。
冷凍庫に、いつのものだか分からない、冷凍の焼きおにぎりが一つだけ残っていた。それを温めがっついたら、口の中を火傷しかけた。


「あっつ!」




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ゴロゴロしていたら、30分程そのまま眠ってしまったらしい。電話の音で目が覚めた。


「ごめんごめん!仕事が思ったより早く終わって。ランチ出来そうなんだけどどう?」


快活な声。しょんぼりとしていた気持ちが再び盛り上がる。


「うんうん!大丈夫!じゃあ私も今から向かうね!」


二つ返事で外に出た。ウキウキしている私。若干、振り回されている感じもあるけれど、それでも楽しみの方が上回っていたのだ。




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孤独が生む凶悪

「子宮に沈める」を観た。

救いの無い映画。

隣から、子どもの泣き声が聞こえる。母親のヒステリックな怒鳴り声。普段、外で会う時には見せない顔。
誰にだって、表があれば裏はある。それでも、虐待の線引きは専門家であっても難しいのだ。

映画は、淡々とBGMもなく、子ども目線で撮られている。
じわじわと、絶望が子ども達に忍び寄る。母親目線で描かれていないので、アパートの一室以外の世界は、観る者の想像力で成り立っている。
おぞましい事件だが、今もどこかで起きているのかもしれない出来事。

孤独は、人を鬼にする。
自分が腹を痛めて産んだ子どもですら、物に見えてしまう瞬間がある。

人が、孤独に陥らない為にどうすればいいのか。自発的に動けない人をどう救えばいいのか。
助けを求める方法すら分からない、非力な孤独を見付け出すにはどうしたらいいのか。答えは見付からない。




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優等生妻のカラクリ

図書館で借りた節約雑誌をパラパラと眺めている時間は幸せだ。
赤の他人の家計簿を目にすることは、何となく人の家の中をこっそり覗いているような、何だかいけないことをしている気分が高揚感を生む。
だが、本気で彼らの家計簿のやり繰りを参考になどしていない。

家族4人で月に食費2万!!のカラクリは、大体が親のバックアップがあってのものなのだ。
米や野菜などを送ってくれるーだとか、旦那が夕飯は外で食べてくるだとか、近くに住む実家に、週3は夕飯を食べに行くーだとか。

自力で2万でやっていくとしたら、それこそおかず1品だ。3品あったとしても、実際それを並べてみたら、ワンプレートで納まるくらいの少量に違いない。
食べ盛りの子どもがいたり、また疲れて帰宅する主人がいれば、そんな草食動物が食べるような代物を食卓に出せるわけがない。
更に、子どもがいるのならば、食育だ。季節の野菜や果物なども食べさせたい。だが、予算が2万ならば、頑張って安いバナナくらい。
だから、親に頼るのだ。見えないカラクリは、十分な年金を受給している最後の世代ー、親達の存在なのだ。




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雑誌の中にあるコラムで、ドン引きだったのが、ランドセルや学習机は帰省のタイミングで祖父母にねだろう!というもの。
夏は、来春に入学を控える子どもがいる家庭では、ランドセルなどを購入する時期。なので、帰省時に双方の親にリサーチをするのがおすすめだという。
どちらの親がランドセルで学習机なのかー。
ハナから親を頼っていることが透けて見えるそのコラムに、何故だか苛ついた。

カラクリ無しで、頑張っている。そんな節約主婦の家計簿が見たい。




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服が無い

旧友とのランチに着て行く服を、クローゼットからあれこれ選び迷っていた。
学校関連や買い物の時は、無難な無地のカットソーにパンツルックが最近の定番。
ボーダーシャツは、以前は頻繁に着ていたが、誰かと被る率が高いこともあり手に取らなくなっていた。
一度、子ども会での打ち合わせでHさんとボーダーのカーキ色もジーパンも被った時、会長が私達のことを「双子みたい~ボーダー族だ!」と笑ったのだ。
その際、あからさまにHさんが嫌そうな顔をしたのを目にした時から、あんな気まずい思いをするのは二度と御免だと思った。
軽く冗談を言い合える仲間と服が被れば、かえって笑いに変換出来たり盛り上がったりするのだろう。
だが、微妙な相手と服のデザインが被れば、見て見ない振りをするだとか、私のように誰かがその気まずさを察知して、敢えて気を遣って茶々を入れたりするのだ。
どちらにしても、ただただ気まずい。

ボーダーアイテムは、こうして私のクローゼットでしばらく眠る羽目になった。
その代わりに、無地のカットソーの出番だ。カラーも、ネイビーやベージュ、それにカーキ。冒険をしたとしても、薄いブルー。
決して、赤だとかピンク、黄色なんて無理。
鏡の中の私は、年齢よりも+5歳は年上に見えた。何の変哲も無い服は、体型や髪型、それに雰囲気で一気にもさくなる。
素敵ママや孤高の人のように、姿勢もピシっとしており、スタイルも良く、そして垢抜けたメイクやヘアスタイルをしていれば、同じ服でも一気に映えるのだ。




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ほぼ毎日制服のように着用している普段着は、見るからに所帯染みており、しかも何度も洗濯を繰り返していることもあって、くたびれていた。襟ぐりがダランと伸びており、色あせている。
流行りのアースカラーには、程遠い。

以前、気に入って度々着ていたリネンの生成りのブラウスは、しばらくクローゼットから出していなかったこともあり、虫が食って穴が空いていた。
結局、一昨年に同窓会の為に購入した服を選ぶことにした。コーデもあのまま。
1,2年経てば、あの時は垢抜けていたデザインがどこか野暮ったく思える。しかし、贅沢を言っている場合ではない。
最近、将来のことを思うと、むやみやたらに自分の満足の為だけに金を遣う気分になれないのだ。

しかし、本当に自分に似合う服や色が分からなくなった。




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適材適所

子ども会の夏祭りの件だが、どうしてもラインメインのやり取りになる。
会長が動けない今、私が仕切らなければならないが、初めてのことに戸惑うばかり。
自治会との連携も、うまくとれているのかさえ分からない。
決定事項と持ち帰り内容を、ライン投下する。一番反応がいいHさん。
いつの間にやら、副会長の私ではなく彼女の方が、夏祭りに向けて仕切り始めていた。
私は、ただの伝書鳩になりつつある。だが、それが私に出来る精一杯の役割なのだ。




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今日も、土曜だというのに、子ども会代表として打合せに出席する。それが、私の役割。
しっかりとメモを取り、Hさんに言われた質問事項の回答を得ること。そして、打ち合わせ内容をライン投下すること。
レジュメをラインノートに上げること。
なんだかまるで書記の仕事だけれど、適材適所。スムーズに効率的に物事を進める為には、それが大事。

今日の打ち合わせも、気が重い。楽しめる人間に、私はなれない。それでも、なんとか一つ一つこなしていく。
年を重ねても、どんなにちっぽけなことでも、重荷だったり苦痛だったりすることをやり遂げることは、自身の成長に繋がるのだ。




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修学旅行説明会

子の、修学旅行説明会があった。
場所は、定番の日光。

学年全体での説明会だったので、場所は体育館。だだっ広い館内にパイプ椅子がずらりと並べられていた。
卒対の集まりの日とかぶり、説明会は午後から。
ラインで、ボスママよりランチの提案。午前中の打ち合わせ後、ランチしてから皆で説明会に行きましょうと言い出した。
皆、「賛成」「OK」のラインが続々。
私は、予定があるからと嘘を付き、卒対は欠席することにした。
どうやったって、馴染めない集まりの中で、仕事以外の時間を使うことに抵抗があったからだ。それに、私なんていても居なくても変わらない。
孤高の人には申し訳ないけれど、当日の仕切りなのだし、まだ卒業まで日にちがある。それに、私以外にも、仕事を理由に欠席する人もいた。




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ただ、説明会には参加するので、極まりは悪かった。案の定、卒対関連のグループは、既にパイプ椅子の前方に席を陣取っており、ワイワイ賑やかに会話に花を咲かせていた。
彼女らの他にも、保護者はたくさん来ていたが、数人程度のグループがポツリポツリという感じ。
私は、地味目な二人組の隣に、ひっそりと腰を降ろした。彼女らとは面識が無いけれど、何となくどこかで顔を見たような気がする。
最高学年ともなると、関わりはないけれど、そういう人達が多々いるのだ。
軽く会釈をするが、特に彼女らと会話をすることは無い。そして、説明会は始まった。
配布されたプリントに沿って、準備するものー保険証だとかその他緊急連絡先等の説明。
宿泊先や当日の流れ。また、タイムスケジュールなどなど。まだ部屋割りなどは決まっていないらしいが、これから実行委員を決めて、子ども達中心に、旅行に向けての準備をするのだそうだ。

1時間弱の説明が終わり、場は解散となった。母親達の華やいだ声を背に、一目散に下駄箱に向かう。
正直、説明会なんて要らないのでは?と思う。プリントだけでいいのでは?と。
だが、最後の質問コーナーで、ボスママや孤高の人など数人があれこれ聞いていたのを見ると、個別の電話対応の方が学校側からしたら面倒なことなのかもしれない。




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母親の背中の行方

父の病院へ。
一週間以上ぶりだったので、何となくだが母と顔を合わすのも気まずかった。


「いいわよ、あんたも忙しいだろうから無理しなくて。」


心とは裏腹の台詞。電話口で、父の隣ベッドの患者の元には、代わる代わる子供達や孫が尋ねていると、プレッシャーを与えるような情報を寄越すのだ。
実際、私が出向いて時に、カーテン越しだが賑やかな声。幼い子供?と、男女の声。子どもとその連れ合いなのだろう。和気藹々としている様子が伝わる。
一方、私の父は、暇そうに本を読んでいた。

母も、余程暇だったのだろう。私が来た途端、すぐ待合室に行こうと席を立った。
私は父の見舞いに来たのであって、母の話し相手をしに来た訳ではないのだがー、父が、いいから行けというような表情で私を見たので、渋々母の後に付いて行った。


「はぁー、本当、毎日毎日病院行くのも疲れ果てるわ。」




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早速始まる愚痴。子が学校だったこともあり、私一人だから母も言いたい放題だ。
待合室の横は、ナースステーション。最近のナースは、皆パンツスタイルだ。それだけで、更にテキパキとした印象を与える。
動きに無駄が無く、行き交う専門用語。私と同世代の女性は、他のナースから「師長!」と呼ばれていた。
どれだけのキャリアを築いて来たのだろう。水を得た魚のように院内で働く彼女の人生は、常に仕事と共にあるに違いない。

彼女に子どもがいるのかどうかは分からないけれど、いたとしたら、多くのことを犠牲にして来たのだろう。
だが、人の命を預かる仕事ー使命感を持って遂行する背中を見て育った子は、幼い頃に寂しい思いをしても尚、大人になれば「母のような人間になりたい」と敬意を示す。
働く母親の背中を、子に見せることが出来なかった私。しばしばコンプレックスに苛まれるのだ。
いつか、馬鹿にされる時が来るのだと。いや、既にその時が来ているのかもしれない。

今更だ。どんな人生にも後悔はある。だが、人間は無いものねだり。選択しなかった方の人生が眩しく見える。そして、その光を我が子に求めてしまいがちだ。




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1票という武器

この時期、恒例ともなっている名前からの着信。
選挙前になると、必ずといってもよいほど、掛かってくる電話。
メールでもなければ、ラインでもない。直電話だ。

私も、気分の上がり下がりがあるので、人恋しかったり、何となく暇だったり、また誰かに悩みを聞いて欲しい時にはつい受話器を取るのだ。
今回は、最後の理由で。


「もしもし!久しぶり!」


相変わらず、快活な声。
こちらが隙を与えれば、すぐに選挙の話へ向かう。彼女にとって、旧友とは票集めの道具に過ぎない。


「久しぶりだね、元気?」


彼女と電話をするのは、本当に久々だった。
用事があって手が離せない時に限って掛かって来るその電話は、私の近況を知りたいわけでもない、ただ1票でも獲得したいという彼女の熱意から来るもの。
それでもつい手に取ったのは、かおりとのラインが後味の悪いものだったことと、最近の子ども絡みで生じる母親達との見えない壁のモヤモヤを晴らす場所が欲しかったからだ。
彼女は、私の近況を聞いて来てくれた。貿易会社でバリバリ働く彼女にとって、詰まらない主婦の日常など興味も湧かないだろうけれど、それも全て政党の為なのだ。
私は、思う存分愚痴を吐いた。


「もう、子ども会の副会長やらPTAやらで大変で!毎日のように学校行ったり、今だと夏祭りの準備で、地域住民とのすり合わせで大変なの。息抜きしたくって!」


「へえ!OO、すごいね!PTAも、大変なところは大変ってよく聞くし。」


「そうなの!まるで、普通に仕事している感覚だよ。給料は出ないけどね。」


「それって、キツイね~私には、無理だわ。」




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彼女は、今も独身だ。なので、結婚と出産育児は未知の世界。私が大変なのだと主張すれば、すんなりそれを受け入れる。
だが実際、彼女がもし母親ならー学校の会長でもなんでも屁の河童だろう。 むしろ、進んで地域行事に参加するだろうし、そのコミュニティを広げる術を心得ている。


「ねえ、ランチとかしない?久しぶりに。」


彼女の方から、誘いが入った。


「平日でも全然大丈夫。部署が移動になったから、割と自由が利くの。なんだかんだ用事付けて、NR出来るから~」


「うん!会いたい!」


咄嗟にOKしてしまったが、受話器を置いた後、微妙な気持ちになった。
どうせまたー最終的には、彼女が支持する政党のパンフを渡され、子育て支援がなんたらかんたら説明されて、「清き1票よろしくね!」の流れだろう。
そうなることが分かっているのに、見えない1票を武器に、彼女を息抜きの道具にする私も、同じ穴の狢だ。




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当選・・とコメントのお返事

学校のボランティアに当選してしまった。
今年は、参加人数が少なかったらしく、抽選で若干名選ぶということだったのだ。
子ども会に卒対、そして、まさかのバザーのボランティアに当選するとは。重なる時は重なる。

説明会がある。学年を越えての参加なので、面識の無い人々も多いだろう。
場所は、何故だか理科室だ。そこに納まる人数ということは、一クラス分の人員なのだろう。

嫌な予感がする。スネ夫ママとかボスママ、それにまいこちゃんママがいないことを祈るのみだ。




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すぬさんへ

いつもはコメントを読まないようにしているのですが、今日は何となく気になって目を通しました。(コメントは、メンタルが弱い私にとって辛くなるものが多いので)
最近、自分のキャパシティを越えての活動と、相変わらずの人との距離の取り方の悪さに疲れていたこともあり、とても救われました。
私よりも、人生の先輩であるすぬさんからのお言葉は、教えられる部分も多く、そしてその暖かさに心打たれました。
執着・・ですね。確かに、私はまだ期待をしているのだと思います。理想の自分とこんなにも掛け離れているというのに、もしかしたらーと、「転機」を願っています。
転機は、棚からぼた餅に訪れるものではなく、自らが働き掛けることによって起こるのだと知りながらも、まだまだ足掻いています。

話は逸れましたが、一言お礼を言いたくて。
ありがとうございました。




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短冊に願いを込めて

七夕の日が、晴れていたことは数える程。子どもの頃からずっとそう。
そういえば、ここ数年は笹の葉飾りもしていない。子が幼かった頃は、そういった行事ごとを大事にしていた。
一緒に折り紙で飾りを作り、短冊に願い事を書いたりして。

スーパーでは、入り口に笹の葉が飾られているところが多い。短冊とペンが置いてあり、思い思いの願いを書くのだ。
幼稚園くらいの子と母親が、一緒に短冊に何か願い事を書いていた。若くて綺麗な母親に、ちょっとやんちゃそうな男の子。
悩みなんてなさそうな。

彼らは、笹の葉に短冊を括りつけると、じゃれ合いながらその場を去って行った。
チラリと、彼らが書いたらしい短冊に目をやると、何とも言えない気持ちになった。




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ー今度は赤ちゃんに会えますように。


数年前の自分を見ているようだった。さすがにもう諦めも付いたけれど、今でも兄弟連れを目にすると、心の奥がズキンと痛む。
匿名の短冊。私もペンを取る。

サラサラっと書いた願い事。それは、表向きではなく、魂の声だ。
願いよ、届け。




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助っ人H女史

今日も、休みだというのに夏祭りの打ち合わせだ。
子ども会メンバーは、私に丸投げなのか、ラインも動いていない。
会長の実母の容態が悪化したのだ。


ーごめんね、母がまた倒れてバタバタしてて。既読スルーしちゃうことも多いかもしれないけど、すみません!


このメッセージを最後に、会長からはパタリとラインが来なくなったのだ。
グループラインに、前回の自治会との打ち合わせ内容を伝えたのだが、それに対して「了解」スタンプが戻って来ただけで、会話は結局成り立たなかった。
気ばかり焦る。




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神輿のルートも決まり、子ども会では何人の子ども達が参加するのか(神輿を担ぎ終えた後のお礼の品物の数を決める為)、大団扇を持つ人、太鼓奏者なども決めなければならない。
事前に、練習があるからだ。
また、夕方からの盆踊りにも子ども会として参加するのだが、その練習も数日あるらしい。
回覧は回したが、まだ数人予定が立たず保留となっている。ギリギリ、人員確保出来そうだけれど・・・
それについて皆に相談してみると、すぐにHさんから返事が来た。

ー取り敢えず、絶対来ない人以外は、参加でいいんじゃないの?どっちにしてもドタキャンとか普通にあるだろうし。きっちり人数出すのは無理だよ。お礼も、足りないより余る方がまだいいでしょ。 団扇は、体が大きい子にさせた方がいいかもね。適当に決めて、当日子どもには頼めば?嫌がったら、その時考えれば。
太鼓は、うちの子の友達が和太鼓クラブに入ってるから、聞いてみるよ。

Hさんは私なんかよりよっぽどテキパキしており、その一文で安心感を与えてくれた。KYなところもあるけれど、うまく合致する時は恐ろしいくらい機転の利く人なのだ。




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外の人間

中高時代の友人、かおりからラインが来た。
私にとっては、プライベートの貴重な友達。
去年のランチ以来、こちらから手紙を数回送っても返事が無く寂しい思いをしていたのだが、私のことを忘れていなかったのだ。
内容は、来月に開催されるらしい同窓会の知らせだった。
同窓会は、勇気を出して一昨年出席した。苦手なM達は毎度のメンバー。あれからも、年末年始や盆など、折を見て集まっていることは聞いていた。
私は、かおりと二人だけでのランチが気楽だ。それに、楽しい。自分も出せる。
しかし、久々の連絡が嬉しいこともあり、無下に断ることも出来なかった。当たり障りなく、行けたら行くとの返事に留めて置いた。


ー絶対来てね!!


ー仕事は順調?


ーうん、だいぶ慣れたかな。今は昼休みなんだ。ちょっと外回りついでにカフェでサボり中。


洒落たスーツに身を包み、コーヒーを啜るかおりの姿が目に浮かんだ。




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つい、以前のランチの続きをしたくなり、夫の愚痴を吐く。


ーこの時期なんだから、仕方なくない?自分では何もやらない癖に、重箱の隅突くような真似して。こっちは家政婦じゃないって!


既読になり、少ししてからメッセージが入った。


ーでも、外で働くって大変だよ。今日みたいに雨の日だと特に思うよ。家では安らぎたいんじゃないの?綺麗に整頓された部屋と美味しいご飯があれば、また明日から頑張ろうって思えるもん。


すっかり、「外の人間」に戻ったかおりからは、期待外れの言葉が返って来た。ただ共感して欲しいだけだったのに。
そして、かおりが私に対して抱く感情を想像すると、なんだか居たたまれなくなった。
外は雨。ぬくぬくと家の中にいて、だらしのない恰好で夫の愚痴を友達にこぼしている。良い身分・・


ーじゃあ、そろそろ社に戻らないと。また詳しい日程決まったらラインするね!


かおりはそう締めくくると、ウサギの「またね~」のスタンプでトークを終了させた。
同窓会・・行ってみようかと思い直した。




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カビ屋敷

「汚ったねえな!なんだこれ!」


代休の夫から呼ばれて行くと、壁一面のカビ。
築年数もかなりのこの団地。入居時からカビ問題に悩まされて来たが、こんなところにまでカビが浸食していたとは・・・
夫が子供部屋の押し入れにある私物を取ろうと、普段は震災グッズが置かれているキャビネットをどけた時、それを目にしたのだった。
びっしりとついたカビに、一瞬意識が朦朧とし掛けた。これでは、具合が悪くなるはず。


「だいたい、風呂場も洗面台のとこも、なんでこんなに汚ねぇの!?」


水回りのフロアマットについては、私達が入居した時から薄汚れていたので、そういうものだと思い放置していた。
時々拭き掃除はするものの、この梅雨時は、少しでも手入れを怠れば、すぐにカビは繁殖するのだ。
最近、子ども関係の仕事で手一杯なこともあり、以前のように家事に身が入らなくなってしまった。短期パートをしていた時もそうだったが、外に出る用事が増えれば、家の中はどうしても荒れてしまう。 夫はそれ以外にも、目に付く汚い箇所をどんどん指摘していった。キッチンや玄関、バルコニーや窓など。
指摘される前に掃除をしなかった私も悪いけれど、このじめっとした時期だからどうしても家の中全体が薄汚れてしまう気がするのだ。


「床も、なんかべたついてるんだよな!雑巾掛けとか、ちゃんとしてる!?」




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小言の止まらない夫に、うまい言い訳も見付からず、ただただ受け入れるしかない。そして、次の週末までには綺麗にするからと約束した。
一番目に付くところのカビ取りは、案外あっけなく取れた。重曹を水で溶かしたものをスプレーし、メラミンスポンジでこすれば大概の汚れはスッキリ。
だが、フロアマットは手遅れだった。いくら擦っても、汚れは落ちない。
汗だくになりながら、カビ取り専用洗剤を使ったり、たわしで擦ったり、試行錯誤するもののこびりついたまま。
マットの表面ではなく、裏側までカビが浸透してしまったのだろうか?

すっかり疲れ果て、何もかも面倒になる。狭くて汚いこの団地に、一体いつまで住み続けるのだろうか?見栄張りの夫が、何故、住宅にはこだわらないのか?
そもそも、家にいることがあまりないからだろう。昨日のように、たまに代休で予定も無い時に限って、荒探しをして私を働かせたいだけ。

同じ間取りでも、お隣さんは綺麗にしていそうだ。玄関からチラっと見えた部屋の雰囲気は、団地とは思えないインテリアで素敵だった。
ご主人が、休みになると玄関掃除をしているところを良く見掛ける。夫婦で協力して「綺麗」を保っているに違いない。

一旦休むと、もう動けなくなった。中途半端に掃除したフロアマットに恐らく夫は気付くこともなく、責められても褒められることはない家事の終わりが見えないことに脱力する。




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宝石箱の中にある笑顔

家の中を整理していたら、幼稚園時代の子の写真がわんさか出て来た。
いずれもアルバムに納めきれなかった分だ。綺麗な宝石箱のようなクッキーの空き缶に入れていたのだ。
無邪気に笑い、楽しそうな様子の子。今、思春期真っ盛りで不愛想な子と同一人物とは思えない程。
時の流れは、こうも人を変えるのだなーと思う。
実際、私と夫に変化はなく、子だけが姿も中身も変わったのだが。




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写真を見ながら、郷愁に浸る。
もっと抱き締めていれば、手を繋いでいればと後悔する。
そういえば、いつから我が子の手を握り締めていないのだろう?思い出そうとするが、思い出せない。

人肌が恋しくなると、夫ではなく子を求めた。ふわふわの髪から漂う、何とも言えない甘い香りはいつでも私の安定剤代わりだった。

次に、誰かの肌に人の目を気にせず触れることが出来るのは、子が子を産んだ時くらいだ。だがしかし、お祖母ちゃんになれる保証など無い。
人差し指で、そっと写真の中の無邪気な笑顔に触れた。ついこの間ー、そう思っていたが、10年なんてあっという間なのだ。
そして、今から10年後もあっという間。その頃に今の写真を目にすれば、また同じような気持ちになるのかもしれない。

親にとって、子どもは永遠に子どもなのだから。




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カーストの無い世界

子ども会と自治会の打ち合わせへ出席した。
朝食が終わり、洗濯物だけ済ませ、夫と子を置いて家を出た。
集会所の玄関には、既に靴やサンダルが敷き詰められるように置かれており、げんなりする。
会議室から、どっと笑い声が聞こえ、それにも。
意を決し、戸を開けながら挨拶をする。 一斉に、こちらに視線が注がれているのを感じながら、誰とも目を合わせず空いている席を探した。
コの字型になった長テーブル。前回、欠席して会長が出たので、二度目の集まり。
夏祭りは例年通りの流れで行うらしく、神輿が回るルートだとか人員確保、それにアイスやジュースなどの飲み物の手配、屋台についての割り振りなどの詳細を決める打ち合わせ。
新しいことはないけれど、取り仕切るメンバーが代われば、やはりやり方も変わるのだ。


「Sちゃんの代わりだよな?ちょっと挨拶して貰える?」


自治会長に促された。ここでも名前呼びされている会長に、人望の厚さを感じた。地元民だし、子どもの頃からの知人なのかもしれないけれど。




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「はじめまして。OOと申します。子ども会副会長をさせていただいています。会長の代わりで至らないところが多々あるかと思いますが、宜しくお願いいたします。」


予め、用意していた挨拶。だが、緊張のあまり、声が上ずり早口になり過ぎて噛んでしまった。
打合せは、メモを取るのに必死。この内容をまとめて、メンバーに伝えなければ。
私は、新参者ということもあり、最初の自己紹介以外で声を発することは無かった。年齢も性別も立場もバラバラ。なので、正直、学校などの母親同士の集まりよりも気楽だった。
居心地が良いという訳ではないけれど、誰も私に注目していないーそれがかえって楽だったのだ。
同じ立ち位置の人間は、つい比較で互いをマウンティングし合う。少しでも、相手より秀でている部分。美しさや経済力、コミュ力など。自分自身にそれが無ければ、夫は子供の能力や容姿など。
同カテゴリー内にいる人間だと認めれば、その中でランク付けをしたがるのだ。

それが取っ払われた世界は、なんて楽なのか。夏祭り、不安もあるが、頑張ろう。




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