「今年はオンライン帰省だな!」
すっかり体調が戻った夫。今年のGWは義実家との交流もスルーで、それだけはコロナの恩恵という感じだったのだがそううまくはいかなかった。
職場の同僚やツーリング仲間とは既に行っていたオンライン飲み会。
それを、義実家とやろうと言い出したのだ。
言い出しっぺは義姉だろうなと思いつつ、夫もウキウキしている様子。子は、従姉妹と画面越しに話せるのを楽しみにしているようで、憂鬱なのは私だけだった。
連休最終日ー、それは行われた。
しかも、正午から。早過ぎる。
すっかり慣れた手つきでオンラインの環境を整えると、夫はどうやらホスト?役なのか、てきぱきとスマホで義家族とコンタクトを取りながらもズームとやらのアプリで義家族と繋がった。
画面は、4画面。我が家と長女宅に次女宅、それに義両親と三女宅で4世帯が画面内におさまる。
子ども達ーとはいっても、もう皆大きいので恥ずかしそうにしつつも、子は姪っ子が出て来るやいなや、すぐに画面に向かって手を振り笑顔。
夫が乾杯の音頭を取る。
我が家は3人家族なので、四分割された画面の中で一人ひとりの表情が分かりやすく誤魔化しが効かない。
次女は、繋がる前から出来上がっていたのか?既にべろべろに酔っぱらっておりだらしがなかった。
巷では浸透しているオンライン飲み会。どんなものかと思っていたが、やはりオンライン。距離とはこういうものなのだと思い知らされる。
まず、誰かが発言してからのレスポンスの悪さ。そして、妙な「間」。その沈黙を率先して破ろうとすれば、誰かしらとかぶる気まずさ。
家族なのに、ぎくしゃくとした雰囲気。目線も、一体どこに合わせたらいいのやら。
つい画面上にうつる、いつもより歪んで見えるー左右逆の自分の顔ばかりに目が行く。皆が皆、相手の出方を伺いながらの様子見で無駄な沈黙が流れる。ひとしきり、その「間」を埋めようと子どもや義両親を使う。
その場は一瞬なごむものの、その空気は持続せずに妙な緊張感を生む。
だが、酒がどんどん回り、ようやくその不慣れな状況に適応して来たのだろう、長女がワイングラス片手に会話の主導権を握り始めた。
まず、三女に爆弾を落とす。この先どうするのか?いつまで実家でパラサイトしているのか?結婚する気はあるのか?
これには、正直驚いた。普段、こんな突っ込んだー、三女にとっては痛い話題を吹っ掛けることなどなかった長女。オンラインだからか、これまで姉妹の間でも遠慮して介入出来なかったそれを追及したのだ。
勿論、三女はあからさまに嫌悪感丸出しの表情をした。
「まじ、ウザいんですけど。」
40代とは思えない言い回し。我が子や姪っ子が吐きそうな台詞。
「あんた、パパとママの介護する覚悟でも出来てるの?」
「はぁ!?」
「OOさんだって、長男の嫁なのにいつまでも三女がいたら同居だって出来ないわよね。」
「・・・・・」
顔が引き攣るーというのは何度も経験して来た。保護者会だったりPTA関連だったりのママ友付き合いでも。
だが、この時ばかりは、辞書で顔が引き攣ると調べたら、その説明文より私の今の表情を見せたら一見にしかずとはこのことだろうと思った。
それは、私が常日頃気にしていた事項だった。この団地ーこの賃貸暮らしはいつまで続くのか?いずれ同居なのか?三女が独身ならばまさかの6人暮らしになるのか?とか・・・
また、三女が義実家を継ぐとなれば、私達の終の棲家はどうなるのか?
先が見えない不安はいつでも、私を苦しめつつ日常の忙しさで無理矢理それを麻痺させる術を覚えさせていたのだ。
「ちょっと、あなた達、もうやめて。」
口火を切ったのは、、義母だった。義母は、やんわりと長女を窘める。だがそれが長女の気に障ったようだった。
「もうやめろって~何とかなるから。俺がどうにかするから。喧嘩は辞めろって。長男は俺だから。」
突然、夫がジョッキ片手に間に入る。
我が家の画面が大きくなる。どうやら、発言者にその分割の特許が与えられるらしかった。
夫の突然の発言に、私は酷い顔をしていた。
「ちょっと、OOさんの顔!」
次女が茶々を入れる。しかし、笑いは起きず微妙な空気が流れた。
酷い顔だったからだ。笑えない程。
私は、「長男の嫁」としての覚悟がまだ足りない。それは自分でも自覚する程に。PC画面上の顔は、嘘がつけなかった。メッキが剥がれるーとはこういうものなのだろう。きっと、義家族もそう思ったに違いない。よそ者の私に、更に不信感をおぼえたのだろう。矛先は、三女から一気に私へ。いつもの流れだ。
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