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翻訳アプリ

夫に相談したいことは、山程あった。
子のライン相手とのこと、それにピアノは続けさせた方がいいかもということ。また、夫の現状や義実家との関係など。
だが、実際に口を突いて出るのは、自分達のこととは程遠い、他人のペット問題だ。

「なんで俺が交渉しないとなんないわけ?」

「あなた、英語話せるでしょう?」

夫は、それなりに語学堪能だ。仕事でもよく使うし、時々英語でオンライン会議をしていることだってある。一時は、海外赴任の話も出たことがあったので、その時はほぼ通勤時間は英語の勉強に充てていた程だ。

「嫌だよ。そんな面倒ごと。あなた暇なんだからやりなよ。主婦でも英語のひとつ出来た方がいいんだから、勉強だと思ってやってみな。」

まったく相手にされなかった。夫は資格試験に向けての勉強でそれどころではないらしい。一応、仕事外の休憩時間に声を掛けたつもりだったが、話が終わるとすぐに自室へこもって勉強を始めてしまった。

翻訳アプリを起動し、

「ペットを飼ってはいけません。」

とタブレットに向かい話し掛けると、

「Don't keep pets」

無機質な女性AIの声が流れる。
なんだか命令調ともとれる文で、このままそれを口にしたら良くないだろうと思い、もう少し言い方を変える。

「ペットを飼うのは禁止されているのですが、ご存じですか?」

「Do you know that pets are prohibited?」

こちらの方が、何となくだが控えめな感じだ。命令文ではないし・・それでも、そこから先の文が思い浮かばない。
知っていると言われても、知らなかったと言われても・・だからどうする?ということだ。
やはり、もう一度H田さんに相談してからにしよう。それも気が進まないけれど、いきなり外国人にクレームまがいなことを伝えなけれなならない付加より軽いはずだ。



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管轄外

昨日とはうって変わって、良い天気。
夫は仕事だし、いい気分で珈琲を飲んでいたら、玄関チャイムが鳴った。ドアスコープを覗くと、太った女性。自治会のH田さんだ。
恐る恐るドアを開けると、待ってましたと言わんばかりの笑顔。なんだか嫌な予感がすると思った通り、それは的中した。

「朝からごめんなさいね。ちょっと頼みがあるのよ。いいかしら?」

「はい。なんでしょうか?」

「最近引っ越して来たみたいなんだけど、ここの隣の棟で犬飼ってる人いるでしょう?」

「はぁ。」

「よく散歩してるのよ。あなた、見掛けない?」

買い物以外はほぼ引きこもり。その買い物だって、このコロナで週一ペースだ。なので、H田さんが言う「最近犬を散歩している住人」とやらを見る機会は無かった。

「見ませんね・・」

その代わり、以前、集金に行った際、玄関から飛び出して来たウサギを思い出した。

「ここはペット禁止なのよ!なのにあんなに堂々と犬を散歩させちゃって呆れるわ。しかもこの間なんて、リード外してエントランス駆け回らせてたっていうのよ。本当に、信じられない!」


「はぁ・・」

「私達は、生活環境課だから。そういう住人に注意喚起しないとならないの。で、あなた英語話せる?若いから、ちょっとは話せるでしょう?」

突然英語?何が何だか分からない。そして、あぁそういうことかと納得した。H田さんは、誰に対しても物怖じせず、突っかかることが出来る天才だ。しかし、例外があったのだ。どうやら外国人は苦手らしい。

「何人だか分からないけど、とにかく日本語が話せないのよ。この間会った時、ちょっとは注意したのよ。でもね、へらへら笑ってるだけで全然こっちの言うことが通じないの。」


「はぁ・・でも、私も英語なんて話せませんよ。他に話せる方に頼んだ方がいいかと・・」

「え?だって話せるって聞いたわよ。ご主人、英語ペラペラでしょう?」

一体どこからの情報なのか・・何が何だかさっぱり分からない。

「とにかく私は他の仕事もあるし、翻訳アプリ?私にはよく分からないけど、そういうものを使ってでもいいから何とか交渉してくれない?そもそもあなたが担当する棟の人だし。」


「交渉って・・出ていけとかいうんですか?」


「ペットは禁止って伝えてくれればいいから。あ、電話だわ。」

携帯を取り出し、目で「じゃああまたね。」の合図をすると、そのまま去って行ってしまった。取り敢えず玄関を閉め、くらくらする頭を押さえながらソファーに座り、すっかり冷めきった珈琲を啜る。まず、夫が英語ペラペラという情報はどこからなのか?我が家を知っている人・・・知らないところで想定外の噂話。誰が見ているか分からない現状に身震いする。
そして、ペット禁止を伝えるということ。伝えてどうするのか。退去命令?それともそのペットを売り飛ばせと?そんな重役、私に務まるはずもない。
管理組合が行うべき事項ではないのだろうか?

夫が帰宅次第、相談しようと思う。






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白い世界

今年、初めて雪を見た。
雪は、音を吸収するから、この世界で一人取り残されたような気分になる。

安全で温かい部屋から、バルコニーへ出る。サンダルなので、つま先が冷たい。
下を見下ろすと、幼稚園バスから続々と子どもたちが降りてきて、雪にはしゃぐ様子が見えた。
子がまだあれくらいの年の頃、二人で小さな雪だるまを作ったことを思い出す。もうあれから何十年も経ってしまった気がした。

手を伸ばして、舞い降りて来る雪を触るとすぐに掌で溶けた。なんだか郷愁に駆られる。こんな年になっても、雪に心動かされる。



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お気に入り動画

最近、動画にはまっている。なんてことはない、普通の主婦の動画。
主婦といっても、色々なカテゴリに分かれている。料理に力を入れている主婦、子育てに力を入れている主婦。節約に力を入れている主婦や、意識高い丁寧な暮らしに力を入れている主婦など・・・
その中で、私がついつい見入ってしまうのは、ただ飲んで食べている主婦の動画だ。しかも、昼間っから酒。
ぐうだらと思いきや、きちんと料理を作る。
家族の分は当たり前だけれど、家族がいない昼ごはんもきちんと作る。食事というよりも酒のアテという感じだけれど、肉野菜、魚など、バランスよく調理するのだ。
行儀が悪いといいながら、キッチンドランカーのように料理を作りながら酒をぷはーっと飲む。その飲みっぷりがいい。豪快だ。
映えを意識していない、素の感じに好感が持てる。百均や景品で貰ったようななんの変哲のない皿に、時には料理がはみ出たりもするのだが、美味しそうなフライや煮物をどかんと乗せる。
キッチンも、お世辞にも美しくはない。だが、不潔ではない。なんていうか、使い込まれたラーメン屋の調理場のような感じ。
彼女の動画を観て、酒を飲むのを我慢している。一緒に飲んだ気になる。その勢いで、一緒に夕飯でも作ってしまえばいいのだが、そこまでの気力は湧かない。
数日に一回の更新なのだが、とても楽しみにしている。


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失敗

あれから、子がスマホを持つ度、つい視線をそちらに向けてしまう。

「いつも誰とラインしてるの?」

「え?何?急に。」

すぐさま警戒心をあらわにする子。しかし、どこの誰とも分からない相手に、あんな文面を送っている状態をどうにかして止めなければならない。夫に告げれば、すぐスマホ解約にもなり兼ねない。
こういう問題は、夫婦で対処する方が良いことは分かっている。
だが、ついこの間、私のあの醜態に激を飛ばした夫。今度は子のスマホを見たことについて「プライバシーの侵害」だとか言い出しそうだ。そして、自分のスマホも覗き見しているだろうと疑われるに決まっている。
なので、ひとまず夫に相談するのはやめにしておいた。

「ねえ、ちょっとママに見せなさい。」

意を決して、取り上げようとした。子は思い切り抵抗し、スマホは私達の手をすり抜けてソファーの向こうに飛んだ。

「ちょっと!やめて!!」

「それは親が契約してるんだからね!!やましいことがなければ見せられるでしょう!?それとも、なんか変なことしてるわけ?」

つい、頭に血が上る。こんなアプローチは逆効果だと頭では分かっているのに、あまりにも子が感情的に拒絶するのでついこちらもムキなってしまう。

「マジ、ありえない!!」

子は、すぐさま落ちたスマホを拾い上げ、トイレへと駆け込んだ。子供部屋は鍵が掛からないようになっているが、トイレは鍵が掛かる。


「お腹痛い!ちょっと待って!!」

「見せなさい!!見せなさい」


ドンドンドン!!!とドアを必死で叩く。親子関係の破綻への入り口に差し掛かっているーそんな感覚。少しして、水の流れる音とともに子が出て来た。

「うっさいなあ!はい。」

そう言って、素直にスマホを出して来たので虚を突かれる。恐る恐るライン画面を開くと、いくつかのグループや友達の名前。

「みんな、親がチェックとかしてないから。マジでこんなのあり得ないから。うちは異常だから。」

ーない・・・

あの時にチェックした男性と思われる相手の名前が見当たらなかった。そしてすぐに、理解した。
子は、トイレの中でその相手とのトーク履歴、いやその相手自体を削除したのだった。そして、早まってしまったことに気付き、数分前の自分を責めた。
子は、もう小学生ではないのだ。悪知恵は大人並みに働く。自らの手で手掛かりを失い、そして更に子の警戒心を煽ることになり、自己嫌悪に陥る。
今後、どう我が子と関わっていけばよいのか。
スマホを返した時の子の瞳は、どこまでも底が見えない闇のようだった。







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一番の節約

自粛中だが、持病の病院へは定期健診も兼ねて行かなければならない。憂鬱だが、仕方がない。
夫に留守を任せ、久々に公共交通機関を使う。だが、それも気晴らしだ。
四六時中、夫婦、顔を突き合わせていると互いにストレスもたまる。仲の良い夫婦ならそんな風に思うこともないのだろうか・・・

医師からは、お決まりの質問をされ、私もいつも通り、お決まりの答えを返す。ものの数分。だが、会計はしっかり取られる。続いて処方薬を取りに調剤薬局へ。ひと月分の薬を貰う。
確定申告の時期になると、医療費控除の計算をしなければならない。子の歯科矯正やら私の持病の通院費などで、軽く10万円は越えるのだ。

「今年も掛かったな。」

毎年、お決まりのように言われる台詞。歯科矯正についてなのか私の持病についてなのか分からないけれど、肩身が狭い。病気ですみませんという気持ちになる。自分の医療費くらい働いて出せと言われるわけではないけれど、そう思われているんだろうなと思う。

「2800円です。」

薬代の請求。確かに、2800円で何が買えるかを考えると、なんだか悔しい。健康こそ節約なのだと思い知らされるのだ。





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孤独と引き換えの干渉

夫は仕事。在宅が多いので、たまの出勤が心から気の休まる時だ。
コロナ禍で、主婦が孤独を感じているーなどワイドショーの特集ではしきりに言われているけれども、私からしたら、お仲間が出来たようで嬉しい。
かつては、晴れた日に家に引きこもりだと言いようもない罪悪感を感じた。働いてもいない、幼い子どももいない、ママ友もいない、ただ家にいるだけの自分が、何者でもない自分が、どうしたって惨めで情けない存在に感じていたのだ。
それが今では、ステイホームの蓑に隠れ、堂々と引きこもっていられる。
外は晴天でも、それまで外でバリバリ働いていた人々でさえ、ノーメイクでPC前、在宅ワーク。
一人だけど、一人じゃない。そんな感覚なのだ。
なのに、私の場合・・夫の在宅が多くなり、別のストレスが出現したのだ。
夫在宅の引きこもりは、いつでも監視下にある状態で家の中を過ごすこととなる。家事も、主が帰宅するまでに帳尻合わせしていたものを、いつでも同じテンションで頑張っている風を装わなければならない。常に、緊張状態。
これまでの生活と天秤に掛けると、孤独さは薄らいだが、なんだかなぁという感じなのだ。




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むしゃくしゃ

一日経って、腹が立ってきた。
なんで、私ばかり責められなければならないのかと。夫だってコロナ疑いだった癖に、いったん治ったとリモート飲みし、翌日のあの醜態。私は呆れはしたものの、責めたりはしなかった。
要するに、夫は、自分が働いている間に酒を飲んでいた妻が許せなかったのだろう。

オンラインランチしていたかおりは、生き生きしていた。しかも、彼女の夫はその日在宅だったという。

「大丈夫!!自分の部屋に行ってもらったから!」

在宅仕事の夫を前に、堂々と酒を飲んでくっちゃべれる。彼女も自分の夫に対して思うところは色々とあるようだが、それでも私からしたら、かなり自由に振舞っているように見えたし、何より、夫婦対等という感じが眩しかった。
共働きというところもあるのかもしれないが、そもそもの彼女の性格なら、私と同じ専業の立場だったとしても、引け目を感じることなく彼女らしさを失わずにいただろうと思う。

結婚相手によって、人生は変わる。
それを目の当たりにしたのだ。



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  • 2021/01/24

猛省

昨日のリモートランチは楽しかった。
しかし、その楽しさはあっという間に消え去った。
酒を飲み過ぎたのか、顔中に蕁麻疹。夫と子が帰宅するまでに酔いを醒ます気でいたが、鏡で自分の顔を見れば嫌でも素面になってしまった。
顔だけではない、体中が痒い。衣服を脱ぐと、ミミズ腫れのようにあちこちが膨れ上がっている。居てもたってもいられず、保冷剤で冷やす。体は寒いが肌の痒みを抑える為には仕方がない。歯をガチガチいわせながら患部を冷やした。
子は、帰宅するなり、

「何、その顔・・」

目を丸くして驚く。右の瞼が膨れ上がり唇も一周腫れあがっている。そして、その部分はまるで麻酔に掛かったかのように痺れていた。
子に留守番させ、急いで病院へ。医師も、私の顔を見るなり不憫そうな顔をした。

「何か、アレルギーになるようなものとか食べました?」

ここで、酒を飲んでいたことを素直に言えず、嘘をついてしまった。真昼間から酒を飲んだくれて蕁麻疹を起こしたなんて、呆れられると思ったからだ。まるで、つい先日の夫のように「だからいわんこっちゃない」状態だ。

「ちょっと、寝不足で・・・」

「そうですか。じゃあ・・取り敢えずアレルギー反応を抑えるお薬と塗り薬を出しておきますね。」

私の言うことに何の疑いもなく、医師は薬を処方してくれた。
早速、自宅に戻り、処方された薬を飲む。飲んだ後、だがアルコール摂取の後にこれを飲んでいいのかと気付く。薬の説明書には、眠気などの副作用が記載されており、運転などもNGとなっていた。
そして、やはりアルコールが作用したのか、瞬く間に眠りに落ちて、夫が鳴らすチャイムで飛び起きた。勿論、夕飯の準備などしていなかった。そして、慌てて家を飛び出たので、シンクにそのまま置いたワインの空き瓶もそのままだった。

その後のことは、よく覚えていない。
玄関を恐る恐る開けると、夫は私の顔を見てギョッとしたようだが、心配より先に気持ち悪がっているようだった。だが、次にシンクに目が行くと、一体昼間っから何してんだ!と怒られた。
夕飯は作らなくていいとサジを投げられ、電話で出前を取っている夫の背中を見ながら、酷く情けない気持ちになった。







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戸棚の安ワイン

夫の体調だが、今日はよくなった。やはり、二日酔いだったのか?今朝は、早朝から本社で会議があるとのことで、リモートはNGらしく慌ただしく出勤して行った。
私としては、ほっとしている。なぜなら、今日は待ちに待ったリモートランチだからだ。夫の体調不良がこのまま続けば、かおりとのランチはまた延期。もうこれ以上引き延ばすのは嫌だった。戸棚に隠し持っていた安ワインを出す。自宅だし、これ一本開けてしまう自信がある。夫と子が帰宅するまでに酔いが覚めていればいいのだ。

実は、Mさんからも何度も誘いがあった。こちらは、リモートではなく、自宅に招かれてのランチ。だが、気が進まない。この緊急事態宣言発令の中で人の家に上がるのは非常識な気がしたし、彼女も外の店で会うまでではないにしても、自宅に人を招き入れることに抵抗がないことにコロナに対する危機感の温度差を感じた。

すなわち、価値観の相違。
価値観の相違なんて、誰に対してもあるものだけれど、Mさんのあの時の対応がどうしても頭から離れないのだ。
私のことをどう思っているのか、人に見せて恥ずかしいと思っているのなら会わなければいいのに、それでもぐいぐい距離を縮めて来ようとする神経が分からない。スネ夫ママのことは大嫌いだが、口を利かなくても腹の中が透けて見えた。
Mさんは、何を考えているのか分からない。一見、人当たりの良さはあるものの、本能的にネガティブなものを感じるのだ。
なのでかおりのように、互いに何の損得もない、ただ話すだけで楽しい存在。ギブ&テイクの関係は心地良い。
まったく同じでないにしても、互いに曇りのない好感を持ち合っている友人とひとときを過ごせるのは、家庭不和を一時忘れられる貴重な時間だ。







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日々誤魔化す

時に、子以上に手が掛かる夫。可愛くない息子が一人いるような感覚。

「なんか、悪寒がする。頭も痛い。」

熱はない。だが、歯をがちがち言わせながら起きて来たので、在宅仕事は休み。電気毛布を入れて暖かいスープを朝食替わりに飲ませて寝かせた。
正直、前夜に飲んでいたので体調不良の原因が分からない。二日酔いなのかぶり返したのか・・・
だから、言わんこっちゃない。本当の息子ならば、怒鳴っていたかもしれない。夫なのでそう出来ない分、ついイライラを物に当ててしまう。
乱暴に食器洗いをしていたら、気に入りのマグが割れた。自分のせいなのに、夫のせいだと錯覚する。しかもついてない時はとことんついてなく、親指をけがしてしまった。傷口に食器洗い洗剤が染みて痛かった。その痛さは、指先だけではないことを知りながらも、誤魔化しながら洗い物の続きをした。
私の人生は、誤魔化しながら続いている。

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  • 2021/01/21

お調子もん

夫の体調だが、良くなったと思った途端、オンライン飲み。

「いやいや、仕事だから。」

事業仲間とミーティングだという。勿論、まだ今の職場を辞めた訳ではないので、そっちの仕事を定時上がりにしてから。18時スタートなので、軽く飲みながら今後について話し合うらしい。

「適当に、つまみ作って。」


数日間、うどんと軽いご飯だけで良かったのに、また「映えるツマミ」を作らなくてはならず、ネットで検索しながら冷蔵庫にあるものでそれらしいツマミを作った。

夫は、イヤフォンをしながらズームをしているので、相手側の声は聞こえてこない。しかし、夫の声は普段の倍以上の音量だ。
余った餃子の皮でピザに、野菜スティックのわさびマヨディップ添え、夕飯に作っていた筑前煮、それにちくわの青のり天ぷら。

「なんか、残り物っぽいな。」


ケチを付けられイラっとする。しかし、トレイに乗せたそれを持っていくと、画面越しに皆に披露したらしく、それに応える夫の声。


「ははは!まあ専業主婦してるから、余りもんで色々作るのが趣味なんだよ。」

褒められているのか何なのかーだが、恐らく相手はお世辞かもしれないが褒めたのだろう。にしても、夫の答え方が気に食わない。他人の前で自分の妻を卑下する夫。それがいかに低レベルなのか、本人は分かっていない。
病み上がりだというのに、ビールロング缶3本に焼酎梅割りを何杯も飲んだ夫。上機嫌で午前様過ぎても笑い声が自室から聞こえ、私や子はうるさくてなかなか寝付けなかった。

正直、友達と会話をしている風なので、そんな調子で彼らと仕事が務まるのか不安もよぎる。義姉も言っていたけれど、人生舐めているのではないかと。
在宅仕事が増え、人とのコミュニケーション量に不足を感じているのかもしれないが、精神的な自粛もして欲しいのが妻の立場から言える本音だ。




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  • 2021/01/20

ピアノ熱

テニス部も、緊急事態宣言が出たことで活動が少なくなり、放課後、子もそのまま自宅に帰ることが多くなっていた。
スマホを触るのは相変わらずなのだが、それに加えてピアノを弾くようになった。
辞めると決めて、その意向を講師に伝えたところ、なあなあになり、再び講師にメールをしようと思っていた矢先だ。
いったんお休みということで、月謝は要りませんーという講師の譲歩に負けて、ずるずると契約は続いていたのだ。
毎週オンラインであっても、決められた時間を拘束されていたレッスンがなくなったことで、開放感とともにピアノに対する義務感がなくなったのだろうか?下手なりに、楽しそうに弾いている。動画を観ながら、最近の曲を弾いているのだ。

「どうしたの?急にピアノにはまってるようだけど。」

子に尋ねると、

「わかんない。なんか、急に弾きたくなった。」


「じゃあ、ピアノはまだ続けるの?」


「うん。それも分からないけど、保留にしといて。」


夫の仕事も子のピアノも保留状態。だが、人生なんてそんなものなのかもしれない。大きな決断を下すのには、相当なエネルギーが要る。




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意識の低さ

区役所便りに、見覚えのある顔。敬語ママだ。
敬語ママとは、中学入学して少しの頃、ばったり学校で出会って立ち話した程度。またランチに行きましょう~の流れで何もないまま今に至る。
便りには、敬語ママが活動しているボランティア団体の紹介がされており、そのインタビューを受けたのが彼女なのだろう。
中学では本部役員。私とは住む世界も生きる世界も違う彼女だと思い知らされた。ランチなど、接点のない私達がすることはもうないだろう。
正しく生きている彼女。誰に対しても公平で、自らの責務を果たし、しかし押しつけがましくない。淡々と、軽やかに仕事をこなす。こんな人材は貴重だ。
私も以前、そのボランティア団体に加入したことがあったけれど、すぐに音を上げてしまった。彼女と仲良くなりたい一心で入った、つまりは下心があって入った団体。そりゃあすぐにボロは出る。ああいう場所には、意識が高い人達が集まっているのだから。
数年前の後味の悪さを思い出し、胸がぎゅっと苦しくなった。誰かに傷つけられた訳でもないが、自分のダメさに傷つけられたのだ。その古傷は今も残ったまま。

家族以外の誰かの為になること。我が子に手が掛からなくなったら、そういうことも考えないとならない。ぼんやりと考えているだけで、なかなか具体的なことは浮かんで来ない。


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エンディングノート

実家より、お礼の電話。私からのお年玉が無事に届いたのだ。
勿論、夫には内緒。運よく、夫が原チャでコンビニへ行っている間に電話があった。だいたいが在宅になってしまった夫なので、実家から電話が来る度にドキドキする。

「OOにも送ろうと思ってたのよ!ただちょっと体調崩したりしててなかなか郵便局に行けなくて・・」

言い訳がましく捲し立てる。義実家からは律儀に我が子宛てに来た書留。実家からはスルーされており、まあこんなもんだろうと諦めていたのだ。
それでも、子は、私の実家からまだ来ないのかと毎日のように聞いてくるので、まさか催促など出来ない分、こちらから両親宛てにお年玉を送った。腹の中は、この金で我が子にお年玉を送ってくれということ。
もう虎の子もわずかだというのに、父と母それぞれに一万円ずつ送った。恐らく、子にはよくて五千円分のお年玉が送られてくるだろうけれど。

実母は、相当うっぷんがたまっていたようで、こちらからのリアクションなどお構いなしに次から次へと話題を変える。もう、人間スピーカー。よほど話し相手に事欠いていたのだろう。
その殆どは、父の病状や自分自身の持病のあれこれ。飽きもせず、親戚の愚痴や妬み。

「このぶんだと、あんたと会わないまま最後を迎えることになるかもね。いつ収束するかも分からないし。近くに住んでたらそんなこともなかったんだろうけど。エンディングノート買ったわ。私に何かあったらそれ見て色々手続きしてちょうだいね。」

ふと思う。親の傍に住んでいたらどうなっていたのかと。夫とは離婚していただろう。離れているからこそ、夫のことはそれほどよく知られないまま今に至る。勿論、会った時の不愛想さなど思うところは多々あるのだろうけれど、こんなにも私が夫の言いなりになっているとはつゆ知らずなのだ。

いくら苦手な親であっても、最後を迎えるという言葉がリアルに耳に届けば胸はざわつく。だからといって、このコロナ禍の状況でどうすることも出来ないのだろうけれど。
これが、大好きな親だったらー、日々不安と罪悪感に襲われ、辛くて涙しただろう。




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生きるモチベーション

来週、かおりとのオンラインランチが実現する。
去年の秋口から、やろうやろうと言い合って、だが、互いのスケジュールがなかなか合わず叶わなかったのだ。
嬉しい。
夫は久々の出社。取り敢えず、退職を延期したのだ。まだ油断出来ないけれど。

かおりとのランチで、色々と話したいことはある。子の相談もしたいし、夫のことも。実家のことやあれこれ。
そして、私は幸福感に浸るのだ。ひとりじゃないと。

コロナで学校行事は最小限になった。その他、地域活動も。要するに、ポツンになり自己嫌悪、一人落ち込むという図式の頻度が減ったということ。部活の試合も、ほぼほぼ無くなった。本来なら、試合の度に応援に行ったり何かしらの係になり学校に出向くことが多かったはず。そういう私にしては憂鬱な予定が、激減したのだ。
スネ夫ママやボスママのように、ママ友らと群れては雑談に興じ、生きているという実感をする人々にとっては我慢ならないだろうけれど。

しかし、いくら引きこもっていても悩みは尽きない。先のことを考えれば、夜はなかなか寝付けない。
話し相手が欲しいー心の根っこで人を求めている私にとって、かおりのような存在は生きる為のモチベーションに繋がるのだ。

午後は、打ち合わせなし!と言っていたかおり。なので、軽くなら飲めると言う。
夫に映えるランチメニューを作ったことがあるが、自分の為に、外に行けない分ちょっとした洒落たつまみを考える時間は至福の時だ。






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疲れる買い出し

緊急事態宣言が出たことで、買い物は再び買いだめ。
夫からも、なるべく一度に済ませるようにと言われている。
そうなると、買い物の日は、日中の殆どの時間がそれに費やされて疲れてしまう。
主に、食材ー、日用品雑貨などなど。ついでに子や夫に頼まれている諸々だったりで、一つの店におさまらない。しかも、自転車なので、自宅を何往復もすることがある。
今日は、特に疲れた。
買い出しへ行き、買ったものを洗うのも疲れる。洗えないトレイに入った肉などは、とりあえず除菌シートでふき取り。また、パッキングなど。そうこうしているうちに数時間が経つのは、私の要領が悪いからだろうか・・・
好きなものを予算関係なく買えるなら、買い物だって楽しい。しかし実際は、今年からやりくり費を下げられたことで、激安スーパーと大々的な広告が出た日はそのスーパー、ポイント10倍の時にはあのドラッグストアーと、店回りも頭を使わなくてはならない。
そんなこんなで、体力的にも精神的にもどっと疲れてしまうのだ。

消毒もし、冷蔵庫に食品を仕舞い、すべて終わったところでトイレにも行っていないことに気付き用を足した。
さて、少し休憩ー、自分の為に買ったとろけるプリン。3Pではない、一個売りのもの。それを冷蔵庫から出した瞬間、在宅仕事をしていた夫が自室から出て来た。

「お、うまそう。それ頂戴。」

「・・・・・」

夫婦、何でも言い合える仲ならば、喧嘩にだってなるだろうプリンの取り合い。すっと夫に手渡す。スプーンを渡さなかったのは、せめてもの抵抗。しかしそんな小さな行動など気付きもしない夫は、キッチンからいそいそと自分のスプーンを取り出した。
1つしか買わなかった私にも、問題はあるのだろう。




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規格外


ー家族、大嫌い。あの人達、普通じゃない。私、早くこの家を出たい。

衝撃の告白ー、むろん、直接向けられた訳ではないが、それでも我が子の心の内を知ってしまってからどんな顔をしたらよいのか分からない。
何となく、目を合わすことすら憚られるのだ。
親らしくもっと堂々と振舞っていればいいのに、後ろめたいような気持ちになるのは子のスマホを勝手に盗み見したからか、それとも親として失格の烙印を押されたからか。

夫の体調は、少し良くなった。うどんばかりも飽きたようで、ようやく普通の食事も摂れるようになった。だが、まだ少量だ。
子はあんなことをラインで言っていた割に、ガツガツしている。夕飯は夫の為に水炊きの鍋にしたのだが、なんだか物足りなかったようで、ウインナーを焼いてくれと言い出した。追加でウインナーを5本、ぺろりと平らげた。
病んでいる人間は、あそこまで食欲旺盛でいられるだろうか?
こんなに私を悩ませておいて、飄々としている子に腹立だしさをおぼえる。次第に心配だった気持ちが怒りに変容するのだ。

「ちょっと!これちゃんと洗濯機に入れなさいよ!」

子が脱ぎ散らかした厚手の靴下や風呂上りに使ったタオルを指して叫ぶ。子は、心底うざったそうな顔で舌打ちしながら片付ける。
ついこの間、私が倒れた時は「善良な娘」だったのにー。

思い通りにならない子、腹を分けた子であっても違う人格を思い知らされ、私規格から外れたことに動揺している。無理に元に戻そうとしても、どうにもならないことも頭の隅では分かっている。
ただただ、ヤキモキするのだ。




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いまだ治らず

夫の倦怠感は抜けないらしく、いまだ寝室にこもりきり。在宅勤務も欠勤に変更したというのだから、相当具合が悪いのだろう。
しかし、何度熱をはかっても平熱。なのに、悪寒がするという。
喉の痛みや咳はないし、鼻水だって出ていない。今のところ、嗅覚の異常もない。
毎食、素うどんを出す。それでも半玉食べればよい方。食事の支度は楽だが、気が気ではない。
この原因不明の体調不良は怖い。
コロナだという確信も持てない。検査を受ける為の材料は、いまの段階では不十分だからだ。
それでも、急変が怖い。
突然、呼吸困難になったりはしないかー?軽傷から突然の悪化というパターンを耳にする。
ニュースでは、医療崩壊はすでに起きているという。今、自分に出来ることは「感染しない」ことだけ。
だが、もしも夫がコロナだとしたら、家族である私や子は濃厚接触者。感染していてもおかしくはないのだ。

子のラインの件も、心配だ。昨夜は考え過ぎて、頭痛が酷くよく眠れなかった。
とにかく今は、緊急事態宣言発令中。学校から帰宅したら、それを理由に何としてでも外出させないようにしなくては。
ラインでおかしな人と繋がっていたとしても、外にさえ出なければ危険は防げる。

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  • 2021/01/13

我が子の中身

子の告白ーともいえる、ライン内容。
それは、友達でも同級生でもない、ネット上で知り合ったのだろうと思える人物とのやり取りだった。
だが、明らかに男性だ。ざっと見たところ、彼も同じ中学生なのだろう。部活がどうのこうの、俺の学校ではどうのこうのとやり取りしていたからだ。
それでも、ネットの世界。それが真実かは分からない。どこでどう知り合ったのかまでは時間の関係上知ることは出来なかったけれど、二人はもうそういう関係だということだ。
勿論、体の関係ではないけれど、精神的には「恋人同士」のようなやり取りをしている。まだまだ私の中で幼かった我が子。ついこの間、ようやく初潮を迎えたばかりの未成熟な体と心を抱えた我が子。
そんな我が子が、私の知らないところで女の顔を見せているのだ。

そして、もう一つ、ショックなことがあった。


ー家族、大嫌い。あの人達、普通じゃない。私、早くこの家を出たい。

相手からは、

ーそうなったら一緒に住もう。


ー嬉しい!


ー父親も母親も、一緒に暮らしてるけど家族じゃないんだよね。この家が息苦しい。家族恐怖症かな。ここにいると消えたくなる。消えようと思ったこと、何度もある。


そんな一文に、ショックをおぼえた。
子が、男女関係に足を突っ込んだこと以上に、この家を全否定されたこと。それは、私自身をも否定されたことだからだ。夫と私ー、夫婦関係は確かに良いとは言えない。それでも、子に対しての愛情はー、父と母としての役割は、私達夫婦はそれなりにこなしてきたつもりだ。愛情だって注いでいた。
なのに・・・


子が風呂から上がる音が聞こえ、慌ててスマホを元に戻す。
これを見たことは、言えない。だが、何とかしなくてはならない。夫に相談することも出来ない。スマホを盗み見したことがばれる。
どうしたらいいのだろう。
ちなみに、消えたいというのは伏字として書いている。実際は、もっとダイレクトな言葉だ。ここに記すのも忌々しいほどの。
軽はずみにその言葉を書いたのか、本音なのか、それともその男性の気を引きたいが為に使ったのか、それは子に聞いてみないと分からない。
どうしたらいいのだろう。新しい年になっても尚、悩みは様々な形を変えて、私を襲う。




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衝撃

夫は相変わらずの体調不良。昨夜も少しだけうどんを食べると、早々と自室で眠りに入ってしまった。
そんな時、子が風呂に入っている間、こたつテーブルの上に置いてあったスマホが鳴った。
のぞき見する気はまったく無かったのだが、メッセージが一部見えた。

ー会いたい。好きだよ。

吉田さんの顔がすぐに浮かぶ。頭の中がカッと熱くなったと同時に、更にストラップが目に入り、心臓が早鐘のように打つ。
そのストラップは、義実家旅行で義姉がくれた例のもの。しばらく、そのスマホが我が子のものだという認識に時間が掛かった。
もう気になって仕方がなかった。子に関しては、いじめやその逆、つまりは同性同士のいざこざや学校関係についての悩みは多々あったのだけれど、男女関係に関しては頭になかった。
すぐに風呂場へ行き、子がまだシャワーを浴びているのを確認する。

「ちゃんと湯舟に浸かるのよ。」

「んー。分かった。」


あと数分は大丈夫。急いでリビングに戻り、スマホのチェック。
その内容を見て、頭がくらくらした。それは、私の想像の斜め上を行く内容だったからだ。








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コロナかもしれないライン

夫が昨夜から体調不良。
寒気がすると言い出し、電気毛布を入れたのだがおさまらない。
食欲もないし、腹も壊しているようで、何度もトイレを往復してはぐったりしている。
年末年始の暴飲暴食がたたったのだと、ざまみろの気持ちだったのが、今日も一日そんな状態だし、テレビでは日に日に増える感染者数に、一抹の不安がよぎる。
年末、ふらっと原チャで友人に会いに行ったりもしていた夫。
義実家訪問がなくなった代わりに、近場の友人とお詣りにも行っていたのだ。

ただ、熱はない。倦怠感のみ。その倦怠感の正体が分からないうちは怖い。
だからといって、病院に行くのもこんな時期だから怖い。熱がないのだから、まだ大丈夫だと本人も思っているのだろうけれど・・・
コロナのラインは色々だから、その判断も人それぞれ。だが、後悔のない選択をしないとならない。
自分の身は、自分でしか守れないところまで来ているのだ。



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  • 2021/01/10

消えたスマホ

子が、スマホを隠すようになった。私のチェックがばれたのだろうか?
掃除をしながら、子の部屋中をあちこち探し回ったけれど、どこにもない。最後にチェックしたのは冬休み前。
冬休み中のやり取りは、当然だが見ていない。ただ、四六時中スマホを触っていたのを思い出す。
部内に一人ターゲットを見つけ、その子に対しての悪口めいたもので盛り上がっていたのが休み前。
あの時は、正直、我が子がターゲットではないことに胸を撫でおろしたけれど、冷静になれば、更に悪口が悪化していないだろうかと思い悩む。

しかし、私の時代だってそうだった。スマホなどのツールを使っていないにしても、それは形に残るものではなくても、誰彼の悪口は日常茶飯事だったし、突如、ちょっとした軽口が悪口になり、虐めに繋がりそうな危うさを持つ日常の中、神経をすり減らしながらも表では何でもない風を装って過ごしていたのだ。
自らの足をすくわれないよう、慎重にーかつ狡猾に。悲しいかな、それが中学生女子の世界。
それでも、足の痛みがいつの間に無くなったのと同時に、子の心に悪い虫がついて浸食しやしないかと、母親としては不安が過る。

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お年玉

ピンポンー

チャイムが鳴り、玄関を開けると郵便局員。書留だという。中身を開くと、ポチ袋が4枚。義実家からだった。
夫に伝えると、何となく気まずそうな表情をした後で、

「で、うちも送ってるんだろう?」

ーはぁ?

送ってないことを伝えると、そういう役目は嫁が責任もってやるべきだといわんばかりの態度。
すぐ姪っ子らに送るように指示された。金額を確認すると、相場よりもだいぶ多い。これまでもそうして来たのだから、いくら今、家計がピンチだからといって減額することなど夫のプライドが許されないのだ。

今年は訪問もないのだから、お年玉もスルーだとばかり思っていたので、ポチ袋など用意していなかった。
買いに行くのも面倒なので、折り紙で手作りすることにしたら、それはそれで貧乏くさいと夫からダメ出しされ、結局スーパーまで買いに行くことにした。

思い掛けないお年玉に喜んだ子だけれど、お礼の電話をするように言うと、面倒臭そうにする。

「ママが電話してよ。」

結局、夫が引き起こしたごたごたに巻き込まれ、面倒な思いをするのは嫁の務めだ。
電話口では、義姉がこちらの様子を伺うかの空気が見て取れたので、私は義妹としてリップサービスを施す。


「お義兄さんが色々とアドバイスを下さったようで、少し落ち着いたようです。今すぐ仕事を辞めるってことにはならないかと思います。取り敢えず、まだ準備期間ということで。」


顔は見えないが、安堵しているだろう義姉の表情が浮かぶ。


「世の中、そんな甘くないのよ。早く頭を冷やして欲しいわ。」

きっと、義姉以上に冷えた頭で彼女の言葉を受け流す。弟のことが本当に心配なのか、そのとばっちりを受けることが不安なのか、恐らく、後者に違いないと思うのは、私の偏った義姉への気持ちなのかもしれない。










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開業資金

年末、夫より年間の貯蓄率が例年よりもだいぶ減ったと報告された。
そりゃあそうだろう。コロナで給与もカット、ボーナスも。だが、夫としたら、これまでよりは好き勝手にあれこれ買い物をしなくなったことで、もう少しは貯金出来ると踏んでいたのだろうと思う。
いずれ開業することで、その資金分だって減るだろう。いくら義両親から援助があったとしても、資金まるまる貰ったわけではないのだ。
なので、今年はその開業資金を貯蓄する為に、これまで以上に締めていくというのだ。
やりくり費がこれ以上減るのかと思うと、げんなりする。

「で、仕事は探してるの?」


「・・・・・」


「コンビニでもなんでもいいから、やる気になれば何でも出来るだろう。それに今は家にいたって出来る仕事なんてわんさかあるんだぞ。やる気あんの?」


分かっている。節約よりも稼ぐことに力を注ぐ方が得策だと。ただ、やはり健康状態が不安なのだ。この年末年始も何度か発作の前触れのようなものを感じ、具合が悪くなった。しかしそれを訴えれば、仮病扱いされるだけ。

「ほら、家で出来ることもあるぞ。」


夫からスマホを片手に見せられたサイトは、以前、私がライター内職をしていたサイトだ。
これまで虎の子にしていた領域まで、夫の開業資金の為に踏み込まれるかと思うと、気分は落ちるばかりなのだ。

















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スクール申し込み

木曜に、再び緊急事態宣言が出動されると報道されている。
とはいっても、夫は在宅仕事が殆どで、子は通常通り登校するので、我が家にとって特に変わるところはない。
だが、夫の転職は難航しそうだ。この、世の中全体の経済が滞っている状態での開業は、やはりリスクだらけなのだと今更実感したらしい。本当に、今更。
義姉らに反対され、頭に血が上り意固地になっていたのだろうけれど、昨夜、義兄から電話があり、諸々相談したことで、少し落ち着いたようだ。
もうしばらく様子を見て、給料が出るうちは大人しく現状維持の方が得策だと。利用出来るものはしたらいいのだと。
会社の思惑通り、早期退職を志願することで貰える退職金なんて、はした金だと。
夫は、義姉の言うことは聞かないが、義兄に対しては一目置いていることもあり、案外素直に話を聞くのだ。男同士という、背負っているもの達の共感性もあるのかもしれない。
だが、転職を辞めた訳ではない、延期するだけ。それを証拠に、通信が主だがとある資格スクールに申し込みをした。
オンラインで早速勉強も始めている。それを、仕事と並行して行っているのだから、夫のバイタリティには感心させられる部分がある。
私のような怠惰な女を見ていて、苛々するのも致し方がないのだ。
家の中がより一層、ピリピリするのかと思うと気が重い。









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  • 2021/01/06

大卒への憧れ

今年は、家族3人で過ごす初めてのお正月であった。
だが、夫は主にオンラインで誰かと飲んだり話したりしていることが殆どで、子も、リビングのこたつにはいるものの、友達とラインをやりあっており、なんだか取り残された気分になってしまっていた。
それでも駅伝の時は、一家そろってリビングにおり、一家団欒を味わうことが出来た。
ドラマティックな展開にはらはらしつつ、もし自分がどこかの大学のOBだったらまた観戦の熱の入りようも違ったかのかと思う。
夫の出身校も出場しており、結果こそいまいちだったが、やはりその時だけは学生時代の友人らとラインで盛り上がっていたようだった。

大卒への憧れは、常日頃感じているけれど、こういう些細な時に感じてしまうのは、気持ちナーバスになっているからだろうか。
卒業後、何十年経ったとしても、毎年こういうイベントで繋がることが出来る仲間がいること。日頃会っていなくても、その瞬間は青春時代に戻ることが出来るのだ。他人のイベントを通しても、そのOBという事実だけで。
ー連帯感ーその言葉に憧れる一方で、私には気詰まりな環境下に身を置くことに他ならない。


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懐疑的

年末年始、オンライン飲みをしまくっているかと思えば、ふらりとパチスロへ出掛けていく夫。
だが、うまくいかないときはうまくいかないのだろうか、負けが続いている。
子は、

「コロナだからじいじ達のところに行けないのに、パチンコには行ってもいいの!?」

と、夫に対して懐疑的だ。義実家に正月帰らなかったことなど、結婚以来初めてのことなのだ。
コロナであろうと何であろうと、夫独立の件がなければ、今年だって普通に訪問していたはず。

次女がカフェ経営をしようとした際、義母は全力で応援するといっていた。それは、恐らく金銭的援助も含めてということなのだろう。そのことを夫は知っているのだろうか?
長女だって三女だって、結局は義両親に結婚後も甘えっぱなしなのだ。夫だけが責められるのもどうなのかと、妻の立場としては思うところがあるのが本音だ。
だが、やはり夫の独立を止めて欲しいのも本音。義姉達の見えない攻撃は、私や子にとってはありがたいもの。
どうか、夫も考えなおして欲しい。


そして、義両親は老後資金の確保は万全なのだろうか?どちらかが介護になったら?その分の蓄えはあるのだろうか?
よそ者の私の立場としては、踏み入れられない問題だが、やはり気になる。



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  • 2021/01/04

訪問なし

「今年はお年玉、どうなるのかな?」

毎年、義実家でたんまり貰うお年玉だが、今年は訪問が無くなったことで貰えていない子。
夫は、苦虫を噛み潰したような顔で、新聞を読んでいるふりをしてスルー。私が答えるしかない。

「コロナだからね。仕方がないよ。」

「えー。」

心底がっかりしたような表情の子。せめてもと、私達親からそれなりの金額のお年玉を渡したのだけれど、それでも毎年貰う額の何分の一かの金額になってしまうのだ。
夫にも、甥や姪宛てにお年玉を郵送してはどうかと聞いたのだが、首をガンとして振らない。そういうところが末っ子の意固地で我儘なところなのだ。折れるということをしない。いや、しないというよりも出来ないのだ。

実家からは、年末に電話が掛かって来た。

「あんた達、来なくていいわよ。菌をばらまかれたらたまらないからね。」

一言多いのだ。
こちらから訪問しない旨を伝えることを許さない、先に拒絶したもん勝ちというところだろうか。
モヤモヤしたが、私は夫とは違う。折れるということを知り尽くしている長女なのだ。




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年賀状じまい

例年、片手で数えるほどの私宛の年賀状だが、その中で2枚も年賀状じまいをする意向のはがきがあった。
私の方でも、今年はコロナのこともあり、年賀状を出すことに躊躇していたけれど、やはり長年続いていた慣習をこちら側から断ち切るのには勇気が要った。
それに、もう会うこともないだろう彼女らでも、年に一度のはがきだけの挨拶は、生存確認含めて、若かりし頃の遠い昔に思いを馳せるよい材料にもなっていたのだ。

子は、今時らしくラインでの年賀状。夫は仕事を辞めると決めたことで、今年の年賀状の数はぐっと減った。家族で年賀状代がだいぶ浮いたように思う。軽くなった年賀状の束は、人との繋がりさえも希薄にするのだろうか。

年賀状じまいをするという二人には、こちらとしては「最後の挨拶」をしておきたかったなという気持ち。おしまいを告げられた側のなんとなくの切なさ。一方的にメールで振られてしまい、掛け直したら機械的なアナウンスで、「お掛けになった電話番号は現在使われておりませんー」と告げられたような・・
「いっせーのーせ!」で、同時に年賀状じまいが出来たら良かったのにと思うのは、私だけだろうか?



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