にほんブログ村 主婦日記ブログ ひきこもり主婦へ
にほんブログ村 主婦日記ブログ 専業主婦へ
にほんブログ村 子育てブログ 一人っ子へ

新しい隣人

この週末、隣に新しい住人が越して来た。
大きな引っ越しトラックから、次々に荷物が運び込まれてくる。
住人は、一体どんな人達なのだろうか?胸がそわそわする。以前のお隣さんのような感じではない、こちらの劣等感を刺激しない人がいい。
老人夫婦だったり、外国人だったり・・比較対象出来ない世帯だったらいい。
以前のお隣さんは、キラキラしたリア充主婦だった。私とは住む世界が違う人だったけれど、それでも子持ち主婦という共通点で心のささくれ立った場所を刺激され、ちょっとしたことに落ち込んだり嘆いたり。
また、ご主人がとても感じの良い人だったことで、我が夫と比べては残念な気持ちになった。


今のところ、挨拶はまだない。良い人だといい。



派遣登録

子どもあり、ブランクあり、持病あり、資格なし、コミュ能力なし、高齢女。
この時点で、マイナスからのスタート。
派遣登録をしたのだが、スキルの欄にキーボードを打つ指が止まる。
あんなに鼻息荒くPCの勉強に打ち込もうとしていたのも一時のこと。結局日々の雑務に流され、テキストはどこかへ行ってしまった。
記憶にないが、メルカリにでも売ったのだろうか。

対して、夫の方は順調に資格取得に向けての勉強ははかどっている様子。
私が派遣登録のプロフィール段階で既にくじけているだなんて知ったら、また上から目線であれこれ言われるに決まっている。

資格がなくても、要領の良さだったり愛想が良かったり、またフットワークが軽ければ接客業なども行けるのだろうけれど。
毎年のことだけれど、2月から3月ー卒業から入学シーズンになり、周囲が慌ただしく新生活に向けて準備をし始めると、胸がざわつく。
置いて行かれるような焦躁感。

とにかく、動かなければ何も始まらない。いくつか応募した企業からは返信はない。だが、まだスタートは切ったばかりなのだ。諦めたらそこで試合終了。とにかく引っ掛かること。ちょっと背伸びしたプロフィールを更新した。採用が決まったら勉強すればいいのだくらいの気持ちで。












悪天候

義実家から訪問するのに指定された曜日は、金曜日。
しかし、天気予報は、雨。そして、夫は出勤。もうその時点で、数日前から気乗りしなかった。

申し訳ないが、貴重な夫出勤日。しかも雨だったら家でまったり過ごしていたい。
春先からは、社会復帰する予定なのだから、今でこそ時間は貴重なのだ。時は金なり。
なので、仮病を使うことにする。
ドタキャンで申し訳ないが、来週に引き伸ばして貰おう。勿論、夫在宅日で。


ーもしもし、今日ですけど、ちょっと熱があるみたいで。こういう時期ですし念の為。あ、熱っていっても大したことはないんですよ。7度5分です。


頭の中で嘘の台詞を諳んじる。諳んじていたら、なんだか本当に眩暈がして来た。
そして、頭痛。もしかしてーとトイレへ行くと、遅れていた生理がやっと来た。
ドタキャンの電話をしたら、もう一度布団に潜り込むことに決めた。








下書きのまま保留

気になる求人がある。応募しようかどうしようか迷っている。
週2~で慣れてくれば、4日でも5日でも。完全土日休日。
仕事内容は、体に負担がなさそう。私の持病的に、長時間立ったり座ったりはNG。
この仕事は、いい具合に立ったり座ったり出来る点が魅力だ。
そして今回の募集は、10人。
だが、この10人というところが引っ掛かるのだ。

学生時代、この手のオープニングスタッフに応募し、見事浮きまくったことを思い出す。
自分だけが新人ではない安心感は、逆に、分かりやすい程に仕事の出来が明確になる。
使える人間と、使えない人間ー使えない人間は雇い主からも同僚からも白い目で見られ、いずれ居場所を無くしていくのだ。
また、新人同士でグループは出来るのだが、輪に入れない私は、昼休みになれば休憩室に入ることなく、コンビニなどのイートインでおにぎりとお茶のランチをしていた。
自分からそうしている癖に、ランチタイムが終わり、コンビニ帰りの私は休憩室からぞろぞろ出て来たバイト仲間に引け目を感じ、また、聞こえるか聞こえないかの声で、

「お疲れ様です・・」

挨拶をしたところで、完全スルー。恐らく、本当に聞こえていないだけなのかもしれないのに、スルーされたと決め付けて勝手にへこみ、仕事のモチベーションまで下がる。
そうなると、ドツボ。仕事は出来ない、周囲とのコミュニケーションは取れない、段々辛くなり寝られない、寝られないので起きれない、そしてうっかり遅刻ーからの無断欠勤。そして、辞めるよう促される・・

昔の記憶が一気に蘇り、やっぱり辞めておこうという気持ちに心が傾く。
しかし、あの頃から何十年も経ち、自分自身も取り巻く環境も何もかも変わったのだからと、応募くらいしてみようかという気持ちにもなる。

ぐるぐるぐるぐる考えて、いまだ応募メールは下書き保存のまま。期限まで、あと少しだ。





嫁の仕事

「あなた、暇なんだからちょっと母さんのこと見に行って来てよ。」

今週のどこか都合の良い日ー(あくまでも私ではない、義実家の都合だ)私一人で義母の様子を見に行くことになりそうだ。
夫は在宅だが、仕事。代休の日に行けばいいものを、義姉らと顔を合わすのが嫌なのだろう。
末っ子坊やの我儘は、今も尚こじれながら続いている。
しかし、義父からあんな電話が掛かってきたら、いくら無責任な夫でも思うところはあるのだろう。
少し経ってから、そんなことを言い出したのだ。


「でも、あなたの顔見た方が喜ぶんじゃない?」


素直な気持ちだ。嫁の顔なんて見たところで、元気が出るわけがない。息子の顔を見て安心したいのだ。
それが、夫には伝わらない。

「あなた、面倒だからってそういうこと言う?俺は仕事で無理なんだよ。」

「代休の日に、一緒に行った方が・・」

「代休なんてないよ。仕事が休みの日は課題を提出しないとなんないんだよ。それに、いつズーム会議が入るか分からないんだから。」

夫はとある資格取得に向け、学校に通い始めた。とはいっても、その資格が直接仕事に結びつくとは素人の私から見ても疑問だ。まだコロナのこともあるし本業もあるので、通信メインの授業を受けているのだが、その提出課題に追われて大変なのは見て分かるけれど、それよりも親が不安定な状況に陥っているというのにまずそれをどうにか解決することが先ではないのか?
やはり、夫は我が家と同じく義実家の中であっても、自分本位の人間なのだ。


それにしても、一人で電車を乗り継いで義実家へ行くことになるなんて憂鬱でしかない。一体、義両親と顔を突き合わせ何を話せばよいのか。
せめて、子を連れていけたらと思うけれど、それも無理。学校に部活に忙しいし、誘ったところで釣れない返事が返ってくるだけだろう。小遣いが貰えるという絶対的な理由が無ければ、子も動きやしない。

何より、義母がおかしなことになっていたらと思うと気が重い。いつかは来ると頭の隅っこでおぼろげだったことが、輪郭を帯び始め、戸惑っている。




  • category:

  • 2021/02/24

一歩からの二歩

再び、とある会社に応募した。まだ返事は来ていない。
資格欄は、空白。自動車免許すらない。学歴も経歴もぱっとしない。ブランクもある。
採用する側からしたら、私を取ったところでのメリットはない。どこでカバーするかといえば、人間力だろう。
特技の欄に、「真面目だけが取り柄です」と記載しておいた。
真面目さでいえば、馬鹿がつくくらい。裏を返せば、要領が悪いということになるけれど。
無駄口をたたいたりはしない。
以前の短期パートでも、私を除いての女性軍は、無駄にペラペラ雑談をしていたけれど、私はその輪に入ろうともしなかった。
正しく言えば、入れなかったということだけれど。そして、入れてもらえなかったということだけれど。
しかし、職場は社交場ではないのだから、それでいいのだと納得している。
与えられた仕事をコツコツこなしさえすれば。

ようやく、求人に応募することに対するハードルは、私の中で下がりつつある。




ググリ族

子が、テニス部の先輩の引退に向けての色紙書きをしていたのだが、スマホを見ながらぶつぶつ言っているので声を掛けた。

「どうしたの?分からない言葉とか?」


すると、


「色紙とか、面倒。コロナで特に関わってない先輩に一体何書いたらいいの?名前もよく分からん先輩数名いるし。」

かったるそうにしながら、それでもスマホから目線を反らさず、何かを書き写していた。


「何してるの?」

「色紙に書く言葉、適当なの探してる。」


子は、機嫌がいいらしい。そういう時は、素直に私の言葉に返してくれるのだ。
だが、スマホ画面を見せられた後は、なんだか自分の体温が何度か下がったかのような、冷え冷えとした気持ちになった。
子は、

ー色紙に書く例文ーなるサイトを閲覧し、その中で良さげなものを適当に選び書き写していたのだ。
私は、子の前では全うな親でいたい。

「ちょっと、そういうのは自分の言葉で書かないと。そんなネットからうつした言葉とか、あり得ないよ!」

だが、子は鬱陶しそうに、

「はぁ?別にいいじゃん。だって、何も浮かばないんだもん。会話したこともないし。」

今年はコロナのこともあり、密にならないようにと学年別の練習だったり、また試合もなかったりで、先輩との交流も無かったという。なので、このようにいざ色紙にメッセージを!と言われても、一体何を書けばよいのか戸惑うようだ。
それにしても・・・顔も知らない、この色紙を貰う先輩のことを思うと、なんだか胸が痛かった。
なので、子に代わって私がメッセージを考えた。


ーコロナのこともあり、なかなかお話する機会はありませんでしたが、先輩のフォームは素敵でした!3年間お疲れさまでした。卒業しても、先輩らしさを失わず頑張って下さい!!-

子に、そう書いた紙きれを渡すと、

「いや、こんなの笑われるし・・・いいよ、自分で書くから。」

却下された。
関わりの薄い人へ向けるメッセージ。これは、大人であっても難しい。貴重な部活動の3年間のうちの1年間は、人生の中であり得ない未知の時だったのだ。
メッセージこそ浮かばないが、きっと誰の記憶にも残るだろう期間。皮肉なことに、今年度はそういう年なのだ。










リモート属

節分が終わり、今週は晴天続き。
しかし、外の風はまだ冷たくダウンが手放せない。
自宅から持って来た暖かいコーヒーを、近所の公園のベンチに座り啜る。
仕事を探せという在宅夫と、長時間同じ屋根の下にいることは、相当なストレスだ。
自室からでも聞こえてくる、夫の流暢な英会話。リスペクトする部分もあるのだが、イヤフォンをしているからなのか無駄に声が大きく、耳障り。日本語じゃない分、何を言っているのか分からないので、下手なBGMだと思い込めないこともないけれど、それでも聞いているうちになぜだか滅入るのだ。
そもそも、夫の声は生理的に受け付けない。私の好みの男性の声と掛け離れ過ぎているのだ。

自宅から持ってきた、求人の折込チラシ。一つだけ条件の良い会社があり、応募してみようかと思いながらも時は経つ。
こういうことは、勢いが必要なのだ。勢いに任せ、いち早く行動すること。それだけ俊敏な行動力があるからーということも、採用に繋がるひとつの能力なのかもしれない。

のろのろと重い腰をあげ、公園内の池の周りを散歩する。この時間帯は、お年寄りと親子連れが多かったのに、コロナ禍ということもあってか、私と同世代の男女が公園でノートパソコンを開いていたりもする。家の中にばかりいたら気も滅入るのは、主婦だけではないのだ。
以前、図書館で感じたような開放感を公園内でも感じた。これまでは、寂れた空気の中を歩くようだったのに、無職ニートの暇人ばかりではない、こうして働く人や勉強している人ですら日中の公園でくつろぎながら作業をしているのを見ると、なんだか自分も自由の中にいるような気がした。求職活動をしている自分も、彼らと同じくリモート属として公園内にいるのだ、という安心感を抱く。所属したくないけれど、所属しておきたいー、自分勝手で甘過ぎる考えは、凝り固まった心も体も緩めてくれる。

そして、太陽を浴びてセロトニンの摂取をした成果もあるのか、再び前向きな気持ちを取り戻す。
善は急げーと、先程気になっていた求人に応募した。







フリーズ状態

書類選考で落とされた。
合格ならば、面接へ。その返信通知の期限が過ぎた時に、やっぱりなという気持ちとほっとする気持ち、そしてどこか落胆する気持ちがない交ぜになり、何とも言えない気分に陥った。

一応、夫には不採用だったことを伝えた。だがすぐに、


「何社応募したの?」

そう聞かれ1社だと言うと、馬鹿にしたように鼻をフンと鳴らしながら、


「甘い。100社くらい受けてダメなら分かるけど。」

心底呆れた風に言い、すぐに手の中にあるスマホに目を落とす。夫には、義父からの電話の件を伝えたのだが、家族間のことなのであれこれ聞くことが出来ずもやもやしている。

「お義父さんに電話してくれた?」


「あぁ。したよ。」

「お義母さんは、どうだって?」


「あなたが心配することじゃないから。」


すぐにシャットアウト。だが、こちらにだって心の準備がある。これでも長男の嫁なのだ。こんな状況だからこそ、果たして動いてよいのかどうか・・・


「私が仕事決まったとして、お義母さんの具合が悪かったら誰がお世話するの?」

「はぁ?今そういうこと言う?働きたくない理由を見付けているようにしか思えないんだけど。」

心を見抜かれた気がして、動揺する。そうなのだー、潜在意識で働かない選択の理由を探す自分もいるという訳だ。
そんな小賢しい自分にも嫌気がさす。実際、介護なんてそう甘い仕事ではないのに。

「そういうこと、姉さんたちには絶対言わない方がいいぞ。覚悟があるなら別だけど。」

捨て台詞のようにそれだけ言うと、夫は再び仕事部屋に戻って行った。
ブックマークしている求人サイトを開く。今はこうしてネットから応募出来るから便利だ。思い立ったらすぐに、テンプレ履歴書もどきをコピー&ペースト、そしてクリックで送信出来る。
それなのに私は、クリックすら押せずにPC画面の前で固まったままなのだ。











義父からの電話

家の電話が鳴り、恐らく実家からバレンタインのチョコレートが届いたという連絡だろうと思っていると、義父からだった。

「いやあ、いつも気を遣ってもらって悪いね。ありがとう。」

「いえ、気持ちですので。ご無沙汰してしまって・・・」

夫が義姉ともめてからというもの、義実家訪問も避けており、なんだかばつが悪い。こういう時に限って、夫は出勤なのだ。
これまでは、義母が義父の代わりにお礼の電話を寄越すことが多かったので、おや?と思い義母の様子を聞くと、

「あぁ、ちょっと体調崩してね。仕事も、今はお休み貰ってるんだよ。」

「どこか具合が悪いのですか?病院など、行かれました?」

「あぁ・・うん、まあね。でもコロナで今は大変な時だから、検査も思うように出来なくてね。」

一応、義兄のツテもあり良い先生に診てもらっているようなことを言う義父だが、病名をはぐらかす。


「私もだけれど、もう年なんだよ。」

力なく笑う声に、これ以上突っ込んであれこれ聞くと何かしらの行動を起こさなければならない問題が後ろに隠れているような気がし、喉元まで出掛かかった言葉をぐっと飲み込んだ。
これは、夫の仕事なのだ。そもそも、義姉達とあんなことになり、義母の心労はかなり大きかったのだろうと思う。
それに加えて、突然の脱サラ宣言。一人息子の行き先を案じ、金まで用立て、心底疲れ果ててしまったのだ。

義父は、それ以上義母について語ることは無かったけれど、子の様子を聞いて少し和み、それから夫に何度電話をしても出ないから掛け直してくれと伝えるようお願いされた。
これが、今回の要件なのだということに気付いたのは、受話器の向こうから義母の声が聞こえたからだ。
いや、声というよりも歌声だった。妙なテンションの高さが気になる声にこちらもどうリアクションを取ったらよいか戸惑っているところに、義父は慌てて電話を切った。

「じゃあ、よろしく頼みますよ。」

具合が悪いのは義父だったはずなのに・・・ドミノ倒しのように、緊張感を持って立っていたコマが、これをきっかけに一気にパタパタと倒れてしまうような、嫌なイメージが頭に浮かび離れない。

選考待ち

何度も何度もメールチェックをする。しかし、受信箱の中のすべてがダイレクトメール。
先日、応募した会社。書類選考が通れば、次は簡単な面接だ。
数日前までは、働くことに前向きな気持ちだったのに、不意に自信喪失に陥る。
受かったらどうしようかーと。生理前のPMSもあるのか、マイナス思考の私がその心も体も支配する。
やはり、怖いのはブランク。そして、新しい環境に飛び来むことに対する恐怖心。
一応、数年前の短期パートの履歴も記載しておいた。

ー短期ですが、営業サポートの事務をしておりました。基本的なPC操作、電話対応やファイリングなどの作業は任されていました。


こんな一文、書かなければ良かった。実際はあたふたしながら周囲にあれこれ聞きながらの精一杯だった仕事。この一文だけだと、スマートに事務仕事をこなしていたと思われるだろう。
落ちてしまいたい反面で、受かりたい気持ちも隠せない。自分だって社会から必要とされているのだという証拠のようなものが欲しいのだ。
それに、夫の手前もある。
自分の老後は自分でー、頭の中にその言葉を反芻すればする程、甘いことを言っている場合ではないのだと思い直す。


家族の有難み

東北の地震から10年経ち、今回の余震。
夜更けということもあり、不気味な振動は恐怖心を煽る。夫も子も、自室から飛び出し大騒ぎ。
家の中で一番安全な和室へ逃げた。
久しぶりに目にする、ニュースキャスターのヘルメット姿。子も、寝ぼけ眼だが尋常ではない揺れになかなか寝室に戻ろうとせず、落ち着くまで一家そろって和室でニュースを観ていた。
だが、夫も子も、目の前の家族ではなくスマホ越しの誰かと安否確認をしていた。一体誰と連絡を取り合っているの?だなんて野暮なことは聞けず、そういう相手がいない私はこれまで、残念な人間関係を構築して来たことを認識せざるを得ない。
実家に電話ーとも思ったが、もう寝ているかもしれないし、一本メールだけ入れておいた。すぐに母から返信があり、ほっとする。

落ち着いたところで家族皆、それぞれの場所へ戻って行ったのだが、こういう時、私は一人ではないのだと胸を撫でおろす。
夫も子もいない独身の身分ならば、どんなにか心細い思いをするだろう。
皮肉なものだが、こういう災害時に家庭の有難みを実感するのだ。



腹立つ小包

昨日、夫宛に荷物が届いた。クール宅急便。
嫌な予感しかせず、差出人を見ると、吉田さん。
すっかり最近では彼女の存在も消えつつあったのに、こうして忘れた頃に存在感を出してくる。
夫は、悪びれることもなく、堂々とリビングでその包みを開けた。ゴディバのチョコだ。ぱっと見、その中でも高価な物だということが分かる。
先日、ショッピングモールでチラリと見掛けたあのチョコと同じものだ。

しかし、チョコレートといえばゴディバを選ぶ彼女にどこか安心感を覚えたりもする。それこそ手作りチョコや有名パティスリーの限定チョコだとか、選ぶことすら手間が掛かりそうな品物だと嫁として気が引けるし、ホワイトデーはどうしたらよいか??頭を悩ますのことになる。
なので、ネットですぐに検索すれば値段が出て来るメーカーのチョコは有難い。
だが、吉田さんは夫にとって特別な女友達。自分でホワイトデーを選ぶのだろう。今年は節約の年だというのだから、見栄を張らず身の丈に合ったものを選んで渡して欲しい。

それにしても、こうしていけしゃあしゃあと自宅にバレンタインを郵送する彼女の無神経さには腹が立つ。





  • category:

  • 2021/02/15

馬鹿々々しい

夫は今週も在宅三昧。息が詰まるが、良いこともある。
それは、会社で貰ってくる義理チョコがないということ。ホワイトデー選びに妻として奔走することもないので気楽だ。
だが、当のご主人へのバレンタイン準備を在宅時するのはなんだか微妙。
一応、ガトーショコラを焼くつもりなのだが、焼いている最中に家の中がチョコレートの匂いで充満する。
在宅ワークの夫に、焼けたタイミングでおやつの時間に持っていくのがベストのような気もするが、どうしたものか。
バレンタインディナーも、恐らく期待しているからロールキャベツにする予定。
予定は立てたが、なんだか倦怠感があり体が重い。仕事探しや書類作りでほとほと疲れ果てており、そのストレスが体に出たのだろう。

バレンタインなんてイベント、面倒でしかない。誕生日ならまだしも、世界中でチョコレートを買ったり作ったりしていることを思うと、なんだか馬鹿々々しい。




  • category:

  • 2021/02/14

大きな一歩

夫にせかされたこと、自分の将来への危機感と焦りから、先程求人サイトで良さそうな条件の企業へエントリーを送った。
職種は、パート雑用事務で基本デスクワーク。恐らく倍率は高いだろうけれど、それでも私にとってこの行動は大きな一歩だ。
震える指で、自分の履歴を送信した。
勢いもあったのだけれど、その条件が私の求めるものに一致しており、こんなことは滅多になかった。勤務が最低週一であとは在宅OKというところが気に入った。いきなりの週5なんて無理。だが、在宅を絡めてならなんとかなる気がしたのだ。
そして、勤務地が隣町。自転車でも行ける距離だが交通費も出る。
まずは書類選考だけれど、なんだかうまくいきそうな予感がする。

消えたチョコレート

「パパのバレンタイン、用意しないとね。」

子に、それとなく話を持ち掛けた。だが、予想通りの反応。

「え?やだよ。」


あからさまに拒絶された。


「でも、パパは待ってるよ。形だけでもあげてよ。」


「えー。じゃあママが買っておいてよ。」


私もそれ以上強く言えず、子の言いなりになってしまう。再びショッピングモールへ出向き、それなりのチョコレートを家計から購入した。しかし、このレシートは夫に見せるのも憚れるので、義父のチョコレート予算を上乗せしたということにした。子からなので、せいぜい500円が妥当金額だろう。


「これ、買っておいたからパパにメッセージくらいつけなさいよ。」


「えー。ママが書けばいいじゃん。」


この会話を夫が聞いたら、どう思うだろう。なんだか私だけが四苦八苦していることが馬鹿らしくなる。
父と娘との関係性まで母親が体裁を整えるのも違う気がしたし、何もかも面倒になって放棄したくなった。

「やめたやめた!!じゃあ何もしなくていいわよもう。」


苛々し、買ったばかりの夫チョコを開け、子の目の前でバリバリ食べてしまった。


「え!ママ何してんの!?」

「だって、あなたからお金をもらった訳じゃないし、選んだのも買ってきたのもママなんだから、どうしようと勝手でしょ!」

子は、チョコレートを貪る母にドン引きした様子で立ちすくむ。その表情を見て、心が少し落ち着いた。というよりも、どこかスカッとする自分がいた。清々したのだ。
チョコの味は、美味しくも感じずただただ甘いだけだった。500円でたった5粒しか入っていないそれは、1分も経たぬ間に私の胃袋の中に吸収されて跡形もなく無くなった。






バレンタイン準備

すっかり忘れていた今年のバレンタイン。義父と実父と弟の分。
義父には、いつもデパ地下の有名店のチョコレートを5000円~1万円の予算で送っていたのだが、今年は夫いわく節約の年。
価格をもう少し落とした方が・・と思い相談すると、すんなりと千円札2枚渡された。
義父のチョコはすなわち三女の胃袋行きだったこれまで。夫は大奮発していたのだけれど、喧嘩中の今となってはお手頃価格のチョコで良いということなのだろう。しかし、この仲違いはいつまで続くのだろうか・・・

私の実家にも同じく2千円の予算で送ることにした。これは、主に実母行き。父も弟もチョコレートが苦手なのだ。コロナを理由に実家へ行くことが激減した今、何となくの罪悪感がある。本当ならもっと色を付けたいのだけれど、自分の虎の子からは2千円が限界だ。

ショッピングモールのバレンタインコーナーは例年の賑わいがなく、ぽつぽつと客はいるものの店に寄れば買わなければならない雰囲気。
いつもなら、多くの客の中の一人だったので、試食こそしてもすぐに店を離れることも可能だったのだが、店員が待ち構えているので妙なプレッシャーを感じる。
高級チョコレート専門店のショーウィンドウを横目で見ると、宝石のような色とりどりで凝ったチョコレートの粒がこれまた宝石箱のような美しくデザインされたハート型の缶に詰まっている。値段は5千円・・これまで義父に送っていたこともあるブランドのチョコレートだ。そこを素通りし、比較的安価な店へ。
せめて、予算以上に見えるようにとたくさん粒が入ったチョコレートを選んだ。缶ではなく箱になってしまうけれど、中身を充実させれば外見はそれなりになってしまうのは致し方ない。

結局3店舗回り、私のバレンタイン準備は終わった。購入者には、一粒ずつ店から試食チョコが貰えた。今年はコロナで店頭での爪楊枝試食は無しなのだろう。
有難く貰い、自宅に戻り暖かいブラックコーヒーとチョコで一服する。
そうして気付く。すっかり夫チョコを忘れていたということにー。また出直すしかない。面倒なのでスルーしたいのはやまやまだけれど、無ければ機嫌が悪くなるので準備しなくては。
また、子からパパへのチョコレートも催促しなくては。

バレンタイン、コロナを機会にもう辞めてしまいたいのが本音だ。



三角コーナーと私の腹

仕事のことを考えていたからか、そのせいで寝不足がたたったからか、体調を崩してしまった。
軽い発作のようなものから眩暈、昨夜は夕飯を作ることが出来ず、夫が午後から在宅だったこともあり、テイクアウトにしてもらうことになった。
夫は自ら原チャリで出掛け、自分で取りに行くと2枚になるというピザを調達。それでも1枚にしたら2000円以上ーそれにチキンだとかサラダやデザートまでつけるのだから、3000円程。
スーパーの冷凍ピザなら数百円で済むのに・・というけち臭いことをつい考えてしまう。
布団で横になっていると、夫と子の楽しそうな声。ピザの感想を言い合っている。普段は口を利かない親子でも、美味しいものを前にすると饒舌になるのだろう。
そして、ついさっきまで具合悪かったはずなのに、腹がぐーっと音を立てる。無性にピザを食べたい衝動に駆られるが、寝込んでいるので自らピザを食べたいだなんて言えやしない。体調不良で油脂分たっぷりのピザを食べたいだなんてまるで仮病っぽいし、それまで横になっていたのに食べ物が現れた瞬間、立ち上がるのも白々しく思えた。
だが、尿意を感じ、トイレへ立つ。リビングを通ると、ピザが2枚程残っていた。夫も子もすっかり冷え切ったピザを前に手を伸ばす感じでもない。

「これ、貰ってもいい?なんだかお腹空いちゃった。」

そう言って、悪びれず残り物のピザをつまめたらいいのに・・・
実際は、それが出来ない。そして、家族も私に食欲の有無を聞いてくることもない。具合が悪いのだから何も入らないだろう前提の空気の中、それに手を伸ばす勇気がどうしても出なかった。
トイレから戻ると、珍しく夫が後片付けをしてくれていた。

「ちょっと良くなったから、やろうか?」

そう言って、夫が立つ流しへ向かう。そのまま残ったピザをこっそり食べてしまおうかと思ったからだ。
だが、三角コーナーに先程まで残っていたピザ2枚が放り投げられた瞬間、腹からぐーっと音が鳴った。夫も聞こえていたはず。


「・・・」

「じゃあ、お願い。」


夫は、私の腹について何を言う訳でもなく、すぐにキッチンから離れて冷蔵庫のビールを取りに行った。私は、三角コーナーにあるピザを見ながら皿を洗う。その後、食べたくもない非常食の粥を食べたのだが、脳みそと舌はピザに洗脳されていたので、まったくお美味しさを感じられなかった。



仕事について考える

ー老後資金くらい何とかして下さいよ。

夫から投げ掛けられた言葉が頭の中をぐるぐる回って離れず、昨夜は寝付きも悪いうえ、悪夢まで見てしまった。
山の中、置き去りにされる夢だ。
夫と子と車に乗って山に登り、夫から降りろと言われてその通りにすると、そのまま二人を乗せた車は物凄いスピードで私の元を去るという夢。
薄暗い山の中、獣の声があちらこちらからする中、泣きながら森の中を彷徨う。まるで、小さな子どものように。

はっと目が覚めると、まだ深夜4時。心臓が早鐘のように打ち、それからの安堵感。夢で良かったーと胸を撫でおろしたのも束の間、やはりあの夫の言葉が脳裏をよぎり、心も体も重くなる。
そのまま再び眠りにつくことが出来ず、携帯の電卓機能を使って計算をした。

政府が発表している夫婦で必要な老後資金は、2000万円という。これは、通常の日常生活を送るうえでのもので、介護費や医療費、娯楽費は込みではない。だが、この基本となる資金だけでも、一人当たり1000万円が必要なのだ。
定年の60~だとすれば、私はアラフォー・・・いや、もうアラフィフに片足を突っ込んでいるので、10数年で1000万を貯蓄する必要がある。
年間、70万円前後の貯蓄。月で割ると、6万円弱だ。パートをすれば叶わない金額ではないので、夫はそれを見込んだからこそそんな台詞を吐いたのかもしれなかった。
6万円に、自分の医療費や携帯など、日常生活に掛かる金と多少は家に入れる金を合わせれば、10万以上稼ぐことを夫が希望するのはおかしな話ではない。いや、かなりまともだ。おかしいのは、私の方なのだ。

10万以上稼げて、尚且つ持病に響かない仕事。工場やコンビニやスーパーなどの立ち仕事は、持病的に医師からNGとされている。体力を使わないとすれば、頭を使うしかない。競争率の高い事務職・・・
自分のスキルを差し置いて、なかなか強気なことを考えていると思う。だが、長時間働くのなら、座り仕事でないと駄目なのだ。









老後資金

「これ、あなたにぴったりじゃない?」

夫から見せられた、スマホ越しの求人。内容はともかくとして、私が想像していた内容よりもだいぶハード。
まず、ほぼフルタイム。平日5日間、朝から夕方までみっちり。
正直、ブランクも相当あるし持病のこともあるしで、週2~3程度の4時間勤務で一先ずのところは・・と思っていたのだが、そんな考えは甘かったらしい。私が内心思っていたことは夫には伝わっていないのだけれど、夫としてはここまで妻に働いて欲しいのだという本音が分かり、気分が沈む。
自分に自信がない。以前、少しの期間だが、短期でバイトをしたことがあったけれど、あの時はまだ若かった。
私がだんまりを決め込んでいると、

「贅沢言ってないで、どんどん応募しないと。自分の老後資金くらいはなんとかして下さいよ。」

ーえ?どういうこと・・

頭をガツンと殴られたような衝撃を受けた。離婚?ということ??
夫は薄ら笑いを浮かべながら、そのまま自室へ戻って行った。
共働きをしている家庭ならば、当たり前の話なのだろう。夫婦でローンを組み、子どもの教育費をなんとかし、更に老後資金もなんとかする。私のように、すべて夫におんぶに抱っこでなあなあの家庭の方が、今の時代には珍しいのかもしれない。











重いペダルと立ち話

子の下着類を買いに、ショッピングモールへ行った。
広告の品だったので、靴下は100円。定価だと500円以上するスクールソックス。
中学になり、私服はそれほど必要ではなくなったものの、肌着類はこれまで通り。いや、消耗が早い気がする。
特に靴下はすぐに穴が空く。
ついでに自分の部屋着も探す。毎日のように着ていたスウェットは、もう何年も着ているのでヨレヨレでウエストゴムも伸び切っている。
ワンコインのワゴンに、そうは見えないスウェット上下があったので、手に取る。お買い得だ。

私の隣に女性が立つ。なかなかMサイズがなく、LLだとかSだとか。商品の下の方に手を伸ばしてタグを見ると、Mサイズ。
欲しい色だったので、嬉しくなって引っ張ると、だらしなくスウェットの袖が伸びる。隣の女性も同じものを手に取っていたのだ。

「あ、ごめんなさい!」

思わず声に出すと、目が合った瞬間に驚く。お互いマスクだけれどその目元で誰だか分かる。素敵ママだった。

「やだ!久しぶり。」

少々困惑した表情で素敵ママが声を掛けて来た。私も、こんな店ーといっては失礼だけれど、素敵ママが買うような服などなさそうなので驚いた。
この店は、安価で定評のある店だ。セレクトショップで買い揃えていそうな彼女には似合わない。
何となく気まずくなって、言葉を失う。だが、彼女の方が沈黙に居たたまれない様子だった。

「元気だった?学校でも会わないね。まあコロナで行事も殆どないけど。」

そこからなぜか、来年の役員が決まっていないのだという話になり、今年役員を引き受けていた彼女は、引き継ぎ相手を探しているらしい。

「誰か、いい人いないかな。どう?やってみない?」

冗談じゃない。この距離感で頼む相手を間違っている。曖昧な笑顔でのらりくらりかわそうとするが、なかなか彼女も手強い。
押して押して押しまくる。私は辟易しつつも、そんな彼女のペースに飲まれてたまるもんかとマスクの下で歯を食いしばる。
どうにか断って、その場を後にした。彼女のことだから、なんだかんだで後任を見付けられるに決まっている。
私との共通の会話がそれだけしか無かったのだと気付いたのは、帰りの坂道で自転車を漕ぐペダルに重みを感じた時のことだった。









子の塾代とか・・

子のピアノだが、結論からいうと続行することになった。
最近、スマホはまあ相変わらずやっているけれど、以前よりその使用時間は半分に減った。その分、ピアノを触るようになった。
親としては、その分勉強にーといってもらいたいところでもあるけれど、スマホよりはまだピアノの方がましなので良しとしている。
夫にそれを伝えると、ピアノなんて売ってしまえと言っていたことなどすっかり忘れたようで、すんなり月謝を払うことを許してくれた。
だが、もうすぐ中二になる子の学力レベルは、正直微妙なところ。部活が忙しいせいもあるけれど、なんだか身が入っていないように感じる。
実際、成績もぱっとせず、一体どの高校に行けるのか・・・
皆、受験の情報は塾で得ていると聞く。これは、以前素敵ママから聞いた話だ。なので、遅くとも中二の段階で塾通いする子が増えるらしい。
あれもこれもで子の頭がパンクしないか心配だ。そして、塾通いは費用の問題もある。夫から言われた、塾代はパートで充てるという以前の話も脳裏をよぎる。
無い袖は振れない。なのでまずは、収入源確保が先なのだ。





先のビジョン

夫から、再び働き口を探せというプレッシャーを受けている。
私の持病のこともあり、去年は倒れたこともあったのでなあなあになっていたのだが、病人の癖に真昼間からワイン1本空けていたという事実は、夫を呆れさせるのに十分過ぎる材料だった。
内職も良い案件がなかなかなく、探すことに時間が掛かり過ぎ、いざこれはと思ったところで力尽きてしまう。外に出てパートをする方が、日々を効率的に過ごせるのではなかろうか。

しかし、ネットやチラシの求人を見ても、ピンと来ない。ぼんやりとPC画面越しの就職活動をしていると、夫から、ハローワークへ行くように勧められた。正直、話がどんどん進んでいくことに戸惑いを覚えるが、夫としては家でぐうだらしているように見える嫁にやるせなさを感じているのかもしれない。
言われたのが、


「持病があっても働いている人はそこらにいるし、このまま更年期とか親の介護とかで色々理由をつけて一生働かないつもりなのか?」


という言葉。これにはグサリと来た。真を突いていたからだ。
将来のビジョンがない自分の弱さを突き付けられたのだ。夫に不平不満を持ちながらも、突き詰めると、そんな夫に言われてからようやく動き出そうとしている自分に反吐が出る。
長らく社会から隔離された生活は自分で物を考えなくなくなり、またそれでも生活出来ているというぬるま湯の中で、私は救いようのないふにゃふにゃの豆腐人間になってしまっていた。
これでいいのか?自分。自問自答し、どうなりたいかを考える。








契約終了

ライター内職は、このコロナ禍で単価も安くなり、それまでサクサク作業出来ていた案件も減少し、とっつきにくい案件が増加。
また、これまで細々とでも依頼してくれていたクライアントから、今回限りで作業依頼は終了という知らせがメールで届いた。
このクライアントとは、一度きりだけれど携帯で話したこともあったので、私の中での存在感は大きく、また心の拠り所でもあった。
勿論、対面する仕事と比較すれば、その関係性は希薄である。
だが、一度聞いたあの声の主は本物の人間だったしぬくもりを感じられたので、そういう相手とのやり取りは、その後はメールのみの関係性だったとしても特別なものだった。
もう、このアドレス宛にメール送信をすることもないのだと思うと、なんだかぽっかりと穴が空いたような感じだ。
それまで出勤していた働く人々が、在宅を余儀なくされ、しかも事務所まで無くなったらこんな心境に陥るのだろうか。いや、それ以上の喪失感を感じているに決まっているけれど・・
相手からは求められていないけれど、このまま終わりにすることが出来ず、お礼の挨拶メールを送信して最後とした。勿論、返信など来なかったけれど・・・ただの自己満足だ。

コロナ禍により仕事の形は多様性を帯び、都内に拘らなくてよくなった代わりに緑溢れる空気も景色も良い場所に移住し、月に数回都内に出る生活も増えたと聞く。
気ままに自分の裁量で仕事が出来る環境。
だが、縛られない生活は、責任が伴う。自分で自分を律することは、難しい。



答えの出ない未来

結局納得しない義母に、再び夫はスマホで明細の写真を撮り義母のスマホに送ったようだ。義母はというと、その「証拠」を目にしたら大人しくなったようで、私にも謝っておいて欲しいと夫に告げたという。

「母さん、ボケたのかな。」

ぼそっと夫がつぶやいた言葉に、胸がざわりとした。確かに、認知症の始まりは金に煩くなったり怒りっぽくなったりという兆候があるという。だが、その兆候は義父にあったはずだ。

「二人が同時にボケたらそれはそれで寂しくなくていいかもな。」


呑気な顔で夫が言うけれど、義母がぽろりと私にこぼした言葉を思い出し、そんな悠長にはしていられないのではないかと思う。
夫には、いずれ起業する時の資金にと生前贈与をしてくれた義両親だけれども・・残った金は今の家のリフォームに充てたら贅沢は出来ないのだと言っていた。それに、まだ独身の三女にいくらか残してやりたいとも言っていた。老人ホームだとか介護費用についての云々の話は一切出なかったのだ。
そういった具体的な話し合いをする時が来ているのではないだろうか?私は嫁の立場なので、出しゃばったことは出来ないけれど、他の兄弟はどう考えているのだろう?
私自身も、自分の親兄弟のことがあるので夫の家族のことまで気が回らないのが本音だ。しかし、あの気の強い三姉妹からはいずれ、何もかも押し付けられるような気がしてならないのだ。
にっちもさっちも行かなくなった時、初めて、

ー長男の嫁なんだから、よろしくね。

と、義両親を差し出されるような気がしてならないのだ。そして、案外親思いの夫も、自分の手は汚さずとも嫁の手を汚して長男としての務めを果たそうとするのではないかー・・漠然とだが、そんな不安がいつでも私に付きまとうのだ。


ずっと昔に義父が子に言った言葉がふいに脳裏に過る。

ーお前は一人っ子なんだからな。この家の墓も名前も大事にして貰わんとな。そういう相手を見付けないとな。

子は、義父の時代遅れの物言いに呆気に取られていたけれど、私は子の母親として荷が重かった。兄弟を産んでやれなかったこと、男の子を授かれなかったこと、ダメな嫁認定された気がしてひどく落ち込んだのだ。
なので、せめてもの長男の嫁としての仕事は、義両親の介護なのではないかと思う気持ちも一方にある。となると、同居。だが、三女が結婚しない限りその同居は現実味が無い。

答えの出ない将来を妄想し、消耗する。時間の浪費だけれど、最近ではそんなことばかり考えている。







金銭トラブル・・・

義母から電話があった。夫にまた金を振り込んだというのだが、きちんと入金されているか確認して欲しいと言う。
ついこの間、生前贈与だと言ってくれた分とは別らしく、数百万追加の金らしい。
夫に尋ねると、そんな金は知らないの一点張り。ついに直接電話で確認し合っていたようだが、夫も受話器越しに苛ついた声で、

「だーかーら、ちゃんと聞いて。銀行に行って記帳して来たけど、そんな金入ってなかったって!」

何となく後味の悪い雰囲気で電話を終えたのが昨日のこと。そして今日、夫不在時、再び電話が掛かって来たのだ。

「あの子はそう言うんだけどね、ちゃんと入れたのよ。あの子の口座に。お父さんには内緒だから、あんまり大きな声では言えないけど・・私のへそくりなのよ。」

義母は長らく専業主婦だったけれど、現在税理士パートをしており、数字に強い。義実家の金の管理は勿論のこと、義父に代わって投資も行っていたりとなかなかの切れ者なのだ。そんな義母が言うのだから、本当のことなのだろう。

夫に、再度義母から連絡があったことと、その内容を伝えた。
長い溜息をつくと、

「だからさ、本当に入金されてないんだよ。この間のこと言ってるんじゃないの?」

「お義母さん、皆に内緒のお金だからあんまり大ごとにしたくないみたい。気を悪くするかもしれないけど、入金されていないのならいないでその証拠を見せてくれって・・」


明らかに、夫は苛ついた表情をした。だが、私がそうされる筋合いなどない。そもそも夫と義母の問題なのに、なぜ私がこんなに神経をすり減らさなければならないのか。

夫に、義母が入金したという日付けを伝えた。通帳を記帳してそのコピーを送って欲しいとのことなのだ。夫は舌打ちをすると、面倒臭そうにPCを開き、ネットバンキングを開く。パスワードを入力して画面を開くと、明細の一部をプリントアウトした。

「ほら、何もないだろう?」

確かに、義母が言う日付には何の記帳もされていない。その前後の日付には、引き出しだったり引き落としだったりと明細がきっちり記帳されていた。

「勘違いしてんじゃねーの?他の兄弟にでも振り込んだんじゃね?」

義姉らとは、やはり揉めている最中なので確認出来ない。仕方なく、夫から貰った明細を手に再び義母に電話を掛けた。

「え?本当に?おかしいわね・・確かに振り込んだのよ。だったら一体誰に振り込んだっていうのかしら?口座番号はね・・・」

確かに、義母の口から出る口座番号は、夫のものと同一だ。

「あの、振り込んだ時の証拠のようなものはありますか?」


つい口からついて出た台詞に、しまったと思った時は既に遅く、少しの沈黙の後で義母がワントーン低い声で、


「あなた、私のこと疑ってるの?」

気を悪くさせてしまったことをひたすら謝ったのだけれど、しこりを残したまま通話を終えることになってしまった。
疑っている訳ではないが、夫を納得させるには必要な材料だったのだ。こちらは証拠を出したのだから、向こうにだって・・と思うけれど、向こうからしたら、立場は上だという認識があるのだろう。親としての立場ー、金を援助してやろうとしている立場ー。なので、私の発言は彼女のプライドをひどく傷付けたに違いない。

親兄弟であっても、金銭絡むと関係は悪化する。そして、義両親からしたら、夫に渡した金は妻である私にも渡したという認識なのだ。実際は、夫がいくら懐に入れているのかも知らなければ家の財産や給与明細だって知らされていないというのに・・・
釈然としない思いを抱えたまま、夫に再び今回のやり取りを伝えるのは非常に気が重い案件だ。









母子の闇

日曜の夜、H田さんのお宅を訪問する。休日にのこのこ伺うのは気が引けたが、こういう問題は後伸ばしにする程厄介なことになる。
善は急げだ。

「はーい。」

出て来たのは、若い女性。すぐにH田さんの娘さんらしいことが分かった。今時の女子大生という風で、上下スウェットというゆるい恰好の割りにはバッチリ付けまつげまで施したアイメイク。ふんわりとシャボン玉のようないい香りが漂う。

「自治会のものですが、お母様いらっしゃいますか?」

「あ、ちょっと待って下さい。」

姿を消すと、奥から彼女達のやり取りが聞こえる。H田さんの声がひと際大きい。

「何よ~こんな時間に。誰?え?何?聞いて来てよ。今裸なんだから!」

どうやら風呂に入って出て来たところらしく、なんとも間が悪かった。こうなるともう、悪い答えしか返ってこないことを覚悟する。
娘さんに詳細を話すと、

「あー、私、一緒に行きましょうか?何を伝えればいいんですかぁ?」

見た目のきつそうな感じとは違い、すんなりとこちらの懐に入るところが、さすがH田さんの娘さんという感じだ。狼狽えつつも、例の件を伝える。そして、そのまま彼女同行で住人のお宅に向かうことになった。

「うちの娘、イギリス文学専攻してるからちょっとは話せるわよ~」

姿は見せないが、奥の部屋からH田さんの声が聞こえた。ならば、最初から娘に頼めば良かったのにーという心の声にふたを閉じる。

外国人宅に向かう途中、沈黙の気まずさに耐えきれず、ついこちらから話題を持ち掛ける。そんな私の心中などお構いなしに、歩きスマホをしながら答える彼女にはやはりH田さんの血の流れを感じずにはいられなかった。
と同時に、我が子の体にも私の血が流れていることを実感する。

なんとか場を繋ぎ、ようやく外国人宅に到着した。チャイムを鳴らすと、住人の代わりに犬の鳴き声が聞こえてくる。そして、H田さんにどう交渉するのか相談していないことに気付く。一番大事なこと。それをすっ飛ばしてここまで来てしまったことに冷や汗をかく。

「で、犬は禁止って言えばいいんですよね?」

「あぁ・・はい。」

と答え終えないうちに、住人が出て来た。マッチョな感じの金髪白人男性で、冬だというのにタンクトップ。そして二の腕のタトゥーが目に入り、怖気づく。
しかし、H田さんの娘さんは全く物怖じせずに、ガンガン住人に話し掛ける。また、その流暢な英語力にただただ驚かされるばかり。そして再び、なぜH田さんは娘さんを同行し自分が交渉に行かなかったのか?と疑問が湧く。

身振り手振りのジェスチャーで、娘さんは彼に伝える。その足元で、犬がワンワン吠えている。強面な住人は、だがこちらの話を冷静に聞いてくれ、しかも私でも分かる言葉で謝罪してくれた。

「これでママも気が収まるでしょ。」

解決はしたかというと、そうでもない。その住人が飼い犬をどうこうするという話も出なかったようだし、引っ越すという話もない。ただ、こちらの意向を伝えただけ。だが、娘さんはそれでいいのだと言う。

「あの人は、ただトラブルを見付けたいだけだから。趣味みたいなものだから。」

聞いてはいけない言葉を耳にし、何と返したらよいのか分からず困惑する。ただ、お礼の言葉をひたすら返した。
とにかく、H田さんの依頼をこなしたことで肩の荷は下りた。
そしてどの母娘にも、大小なりとも闇はあるのだということを気付かされた。





copyright (c) 隣の芝生 all rights reserved.

プロフィール

selinee

Author:selinee
FC2ブログへようこそ!

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR