義母から電話があった。夫にまた金を振り込んだというのだが、きちんと入金されているか確認して欲しいと言う。
ついこの間、生前贈与だと言ってくれた分とは別らしく、数百万追加の金らしい。
夫に尋ねると、そんな金は知らないの一点張り。ついに直接電話で確認し合っていたようだが、夫も受話器越しに苛ついた声で、
「だーかーら、ちゃんと聞いて。銀行に行って記帳して来たけど、そんな金入ってなかったって!」
何となく後味の悪い雰囲気で電話を終えたのが昨日のこと。そして今日、夫不在時、再び電話が掛かって来たのだ。
「あの子はそう言うんだけどね、ちゃんと入れたのよ。あの子の口座に。お父さんには内緒だから、あんまり大きな声では言えないけど・・私のへそくりなのよ。」
義母は長らく専業主婦だったけれど、現在税理士パートをしており、数字に強い。義実家の金の管理は勿論のこと、義父に代わって投資も行っていたりとなかなかの切れ者なのだ。そんな義母が言うのだから、本当のことなのだろう。
夫に、再度義母から連絡があったことと、その内容を伝えた。
長い溜息をつくと、
「だからさ、本当に入金されてないんだよ。この間のこと言ってるんじゃないの?」
「お義母さん、皆に内緒のお金だからあんまり大ごとにしたくないみたい。気を悪くするかもしれないけど、入金されていないのならいないでその証拠を見せてくれって・・」
明らかに、夫は苛ついた表情をした。だが、私がそうされる筋合いなどない。そもそも夫と義母の問題なのに、なぜ私がこんなに神経をすり減らさなければならないのか。
夫に、義母が入金したという日付けを伝えた。通帳を記帳してそのコピーを送って欲しいとのことなのだ。夫は舌打ちをすると、面倒臭そうにPCを開き、ネットバンキングを開く。パスワードを入力して画面を開くと、明細の一部をプリントアウトした。
「ほら、何もないだろう?」
確かに、義母が言う日付には何の記帳もされていない。その前後の日付には、引き出しだったり引き落としだったりと明細がきっちり記帳されていた。
「勘違いしてんじゃねーの?他の兄弟にでも振り込んだんじゃね?」
義姉らとは、やはり揉めている最中なので確認出来ない。仕方なく、夫から貰った明細を手に再び義母に電話を掛けた。
「え?本当に?おかしいわね・・確かに振り込んだのよ。だったら一体誰に振り込んだっていうのかしら?口座番号はね・・・」
確かに、義母の口から出る口座番号は、夫のものと同一だ。
「あの、振り込んだ時の証拠のようなものはありますか?」
つい口からついて出た台詞に、しまったと思った時は既に遅く、少しの沈黙の後で義母がワントーン低い声で、
「あなた、私のこと疑ってるの?」
気を悪くさせてしまったことをひたすら謝ったのだけれど、しこりを残したまま通話を終えることになってしまった。
疑っている訳ではないが、夫を納得させるには必要な材料だったのだ。こちらは証拠を出したのだから、向こうにだって・・と思うけれど、向こうからしたら、立場は上だという認識があるのだろう。親としての立場ー、金を援助してやろうとしている立場ー。なので、私の発言は彼女のプライドをひどく傷付けたに違いない。
親兄弟であっても、金銭絡むと関係は悪化する。そして、義両親からしたら、夫に渡した金は妻である私にも渡したという認識なのだ。実際は、夫がいくら懐に入れているのかも知らなければ家の財産や給与明細だって知らされていないというのに・・・
釈然としない思いを抱えたまま、夫に再び今回のやり取りを伝えるのは非常に気が重い案件だ。
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