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二度目

明日は面接。書類選考が通って面接に臨むのは二回目。なので、以前のような緊張感はなかったはずなのに、いざ前日ともなるとその会社をネットでつい何度もリサーチしてしまう。
パート従業員の数も多いので、急な休みにもうまく対応してくれるだろう。
何より、土日休みの残業無しという好条件。仕事内容は、多少の引っ掛かりはあるものの、何とかなる気がしている。
口コミは見ない方がいいのだが、つい見てしまう。そして、デメリット部分ばかりがクローズアップされて鬱になる。

「ママ、明日面接?」


子に聞かれ、シーっと人差し指を口元に当てる。自室にいる夫に聞かれたくない。面接の日が、夫の出勤日であったことに安堵する。
しかし、先週の義実家訪問の疲れがまだ取れない。正直、この疲れを引きずりながら働くことになるのかと思うと、ますます気が重くなってしまった。




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アルバイト代

年齢を思えば、おむつを使用することは特段珍しいことではないのかもしれない。
それでも、あの溌剌としていた義母がーと思うと、ショックだった。見てはいけないものを見た気がして、籠の中身は知らないままに義両親に接した。
トイレへは、義父が連れて行くので、私が手伝うことといえば掃除や洗濯、それに料理。だが、洗濯は既に三女と義父が朝に済ませたらしく、なので料理を作り置きすることにした。
冷蔵庫を開けると、だが使えそうな食材があまりない。事前に電話で確認し、買い物をして来るべきだったと悔やむ。
車の運転免許を持っていないので、自転車を借りて近くのスーパーへ行った。
野菜や肉、魚を買い込む。日持ちしそうな煮物や副菜を作ろうと決めた。だが、料理上手の義母の口に合うか、また口うるさいグルメな三女に出すのはプレッシャーだった。なので、こっそり「素」系のものを買うことにした。メジャーなメーカーの素ではない、ちょっと聞いたことのないメーカーのもの。正直、値は張ったが、仕方がない。家計財布から出した。後々、夫に請求することにした。

リビングでテレビを観ている義両親を後目に、キッチンに立つ。切って、素を入れて煮込むだけ。切って、素を入れて炒めるだけ。また切って、素をいれて和えるだけ。素が入っていたパッケージは生ごみと共に捨てた。証拠隠滅だ。

「タッパー、ありませんか?」

あぁ、こんなにすまんね。ありがとう。この棚にあるよ。」


義父から大量のタッパーを受け取り、次々に作ったものを入れる。合計5品作った。2食分にも満たないかもしれないが、これが私の限界だった。
そして、サービスとして、鍋一杯にハヤシライスを作っておいた。今夜の夕飯だ。

三女が帰宅する前に、義両親宅を後にする。

「あ、ちょっと待って下さいな。」

義父が私を呼び止め、奥の部屋に入る。再び、手に封筒を持ちこちらにやって来た。

「これ、気持ちだから受け取って。今日はありがとう。」


「いや、そんな受け取れません。」

「いいよいいよ、助かったんだから。」


「カズヒロさんに叱られます。受け取れません。」

「あいつには内緒にしとけばいいんだから、あなたのアルバイト代ってことで。」


そう言って、無理やり鞄に封筒を押し込められ、もう拒否することは出来なかった。
帰り、駅のホームで電車を待つ間、封筒の中身を確認すると、1万円も入っていた。やはり、受け取ってしまったこをと後悔する。そして、義両親にとって私はやはり他人なのだと思い知る。喜んで使えるわけがないし、やはりこれは折を見て返そうと思う。
バッグの中の封筒の重みに、気も重くなってしまった帰り道だった。






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おむつショック

義実家へは、電車やバスを乗り継いで2時間弱。このコロナ禍で交通機関を使うのは気が引ける。
頼めば、最寄り駅まで在宅仕事をしている三女が迎えに来てくれるのだろうが、車中で2人きりになる方が苦痛なので、敢えてバスを使うつもりだ。というか、自ら頼めない。

義実家へ到着すると、その日は三女も出勤日だったらしく留守だった。義両親のみ。
例の犬型ロボットはリビングに中座していたが、電源を切っているのか固まったまま一方向を見つめていた。
義母は、ベッドの上におり、義父が甲斐甲斐しくキッチンで洗い物の続きをしようとしていた。

「やります。」

「あぁ、すまんね。」

キッチンは、義母が元気だった頃は立ち入らせて貰えなかったものの、綺麗に磨き上げられ整理整頓されていた印象があったのだけれど、見る影もなくシンク内は水垢だらけ、調理器具や食器もあちこちに散乱していた。
一体、三女は何をしているのだろうか?義母が散々甘やかしていたツケがこのキッチン内に表れていた。
お湯を沸かし、緑茶を淹れる。その緑茶の場所すら聞かなければ分からないことに、嫁としても甘やかされていた自分を恥じた。

「ちょっと、トイレ。」

身を起こすのを手伝おうとし、義父に制止された。よろよろと老体を打つかのように義母を支えてトイレへ向かう二人の背中は、もはや老々介護の始まりだった。義母がトイレへ入ったのを確認すると、義父がベッドの際にある籠から何かを取り出し、再び義母のところへ行った。籠の中を覗くと、それはおむつだったのだ。
正直、ショックだった。



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空っぽの宝箱

全国で騒いでいた皆既月食。
その晩、我が家は夫もいたし子もいたけれど、誰もそのことについて話題を出すこともなく、まして外に出て空を眺めることなどしなかった。
私自身も、正直いって興味が薄く、天体ショーだからとかではなく、世間が騒ぐ関心ごとをスルーしがちだ。だから話題性に乏しく、雑談のような会話も続かず、ママ友もいないのかもしれない。

その翌日、自宅のドアフォンが鳴った。針金さんが、友達の家庭菜園でたくさんもらったキウイのお裾分けだ。有難いが、貰ってばかりは悪いので何かの形で返さなければと、受け取った瞬間に少しだけ気が重くなった。

「主人とバルコニーから眺めてたの。うっすらだけど、見えてね。主人、大興奮。望遠鏡にカメラにあれこれ抱えて大騒ぎだったわ。うるさくなかったかしらと心配になって。大丈夫だった?」

針金さんは、笑うと目尻にしわがくっきりと出来る。それは、老化というよりも彼女のキャラクターを魅力的にする一つの材料だ。


「うん、全然大丈夫。」

あの、ずんぐりむっくりな男性が、針金さんを通して聞くと、チャーミングに思えるから不思議だ。

「まるで、子どもよ。主人、星とか月とか大好きでね。若い頃は、しょっちゅう流星群を観にテント張ったり、私もそれに付き合って。楽しかったな。」

若かりし針金さんとご主人の姿が目に浮かぶ。キラキラの過去は、宝石箱に入れ、時々取り出しては眺め、郷愁に浸る。素敵な、二人だけの共有して来た歴史。それは、活力になり、また、「今」を肯定する。ここまでやってきたという、自信と安堵。
そしてそれは今も尚続いており、この先も続くのだろう。

次は、12年後。我が子はその時26歳。家を出ているかもしれない。結婚だってしているかもしれない。
人生の時間の流れを、夫婦は共有していくのだ。数々の出来事は、夫婦というフィルターを通して美化されていく。私も、そんな出来事の積み重ねを大事に宝物箱に入れて共有する仲間が欲しいと思った。そして、それは夫でなくてももう構わないとさえ。

ふと、元カレの奥さんのブログを検索した。
私の意志に反して、元カレの面影を探すことは出来なかった。
ブログは、削除されていた。








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こんな日がずっと続けばいいのに・・・

晴天。夏の空に近い青色を見上げ、いそいそとした足取りで例の公園へ向かう。
出勤なので、心置きなく外出出来る。
一社だけれど書類選考が通ったのだ。また落ちるかもしれないが、私の中ではひとつの「猶予」が出来た気分。

玄関掃除をしていると、針金さん宅のドアの開く音がしたので、鍵穴から覗いたら針金さん。急いで支度して出て来たという訳だ。まるで、ストーカーだけれど、最近の悪天候と夫在宅で会うことが出来なかったジレンマを一刻も早く解消したかったのだ。

「こんにちは!」


「あ、こんにちは。」


しかし、例の仔猫はいなかった。しばらく仔猫を待つ為、二人並んでベンチに腰を掛けた。こっちが私の本来の目的だ。

「こないだね、自治会の会合に出たの。猫ちゃんのこと、言われちゃった。」

私達のことを住民が見掛けてクレームしたのだろうか?クレームをした人間が誰なのかまで会長は教えてくれなかったらしいけれど、規則だからと厳しく言われたらしい。


「だから、もう餌はあげられないの。でもね、お水くらいならいいよね?」


彼女のトートには、いつものように水の入ったペットボトルと小皿、それにブラシも入っていた。
私はなんて言葉を掛けたら良いのか分からずに、おろおろとするばかりだった。クレームをした人間を突き止めて、ぎゃふんと言わせたいー実際、そんなこと出来るわけもないのに、針金さんにこんな顔をさせた相手が憎かった。


結局、1時間待っても仔猫は来なかった。

「もしかして、もう餌貰えないって分かったのかしら。猫って頭いいから。残念だけど、もう今日でここに来るのも最後にした方がいいのかもしれないわね。」


ーそれは、困る!いや、そんなの嫌だ。

「明日になれば、また猫ちゃん来ますって。私達が今がっかりしているように、明日猫ちゃんが私達が来ないことで失望したら可哀想ですよ。まだあんなに小さいのに!」

柄にもなく熱くなる私に、針金さんは力なく笑った。

「それに、ここずっと暑いですから。お水がないのは致命的です!水分不足は生命にもかかわります!未来のある猫ちゃんなのに、そんなことになったら・・」


最後の方は声が震え、気付けば泣いていた。それは、猫への涙ではない、パニックに陥ったのだ。この憩いの時間を失うかもしれないことへの焦りと悲しみが入り混じった感情。それに気付いていないだろう彼女は、


「あらあら、そんな泣かないで。そうね、明日も来ましょう。取り敢えずお水だけ持って。」


そう言って、持参していた小皿に水をたっぷり注ぐと、立ち上がる。


「今日は、ここにこれを置いておきましょう。後から猫ちゃん来るかもしれないから。あなた、そんな泣かないで。大丈夫、猫ちゃんは強いんだから。ああいったって、彼女は野生よ。」


あの猫が雌なのだということを、初めて知った。それくらい、正直いって私は猫自体に興味がない。少しの罪悪感を抱えつつ、それでも次の約束を取り付けたことに安堵し、胸の痛みは和らいだ。
あぁ、私は病気かもしれない。









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女王様気質

夫が在宅かもしれないということで、実母からの電話は、直接私の携帯に掛かって来ることが殆ど。
ショートメールで、ワクチンの予約が取れたことを伝えたのが先日。何の返信もなく、だが放置していた。正直、お礼のメールくらいあってもいいのでは?と思ったが、義実家のバタバタでそれどころではなかった。


「もしもし!ワクチンの予約のことだけど、集団接種は怖いわ。私の掛かりつけ医の病院で予約取り直して欲しいんだけど!」

女王様気質の母は、こちらの面倒などつゆ知らず自分の欲求をまくしたてた。

「一度予約したら、キャンセルしてまた予約取れるって保障はないんじゃない?もしうまく取れなかったとして、保持していた枠が再度取れるとは限らないっていうか・・」


「大丈夫よ、姉さんのところはうまくやれたって。」


結局、いつもそうなのだ。私は押しに弱い。それからは、副反応が怖いだの最近の父の愚痴などを延々と訴える。その愚痴は、なぜか親戚にまで広がりー勿論、父方の親戚だけれども、彼らと過去に揉めた出来事をまるで昨日のことのように語る。
母の中では、何十年前のまま時が止まっているのだろう。
トラブル続きだったとしても、刺激があったのだ。今、母の刺激といえば、健康のこと。直近でいえばワクチン接種なのだ。
毎日のように、副反応の情報を拾い集め、怯えつつも楽しそうにしている。

「ワクチン打ってどうにかなったら、あんたお父さんと弟のことお願いね。」

喜々として語るその様子に、実際のところ母からは、自分は副反応など起きっこないという根拠のない自信が透けて見えた。












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一人の晩餐

子は、もうすぐ中間テスト。なので、塾で勉強漬けの日々。軽く軽食を食べてから、夫が在宅ならば車で塾まで送迎。そうでなければ、私が一緒に自転車で塾の行き帰りを共にする。
コロナ禍ということもあり、残業もぐっと減った夫。なので、お迎えの時間には帰宅していることが多く、車を出してくれる。
なんだかんだで子のことを溺愛しているのだ。反抗されても、コミュニケーションが取れる場所は確保しておきたいのだろう。
塾の送迎ならば、子もNOとは言えないのだ。

週に何度か、一人で夕飯を食べることにも慣れた。夫が出勤で子が塾の時は、子を送った後でゆっくり食べる。ふと、老後の生活が頭をかすめる。
夫は、友達が多い人だ。子が塾へ行けば、夫婦二人で顔を突き合わせて食卓を囲むのかと思っていたのに、実際はそうではなく、料理だけ自室に運んで行ってしまう。誰かとオンラインで繋がっているようなので、パソコンを前に他人と食事をしているのだろう。
あんなに癖もあり性格に難があっても、外ではそれなりにうまくやる術を心得ているのだ。
それは、育ちも関係しているのかもしれない。
底知れぬ、自己肯定感が夫にはある。私にはないもの。

最初は、虚しさと怒り、それに加えて見えない相手への嫉妬心ー、いや、夫に対しての嫉妬心かもしれないー、があったものの、今ではこれで良かったのだと安堵している自分もいる。一人は、気楽だ。二人でいる沈黙よりも、一人でいる沈黙には納得がいくし、心も落ち着く。

黙々と箸を動かし、口にうつす。味気ない。ぼーっとテレビを観ながら租借し続けていると、どの料理も同じ味に思えて来る。作った人間と同じで、個性のない味。なんだか詰まらない気持ちになって、ご飯にマヨネーズとわさび醤油をたっぷり掛けて食べた。脳天に来るツンとした刺激が、私の感覚を呼び戻す。
こんな夜は、アルコールを欲してしまう。





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人生の岐路

夫は留守だ。
だがいつものように、羽を伸ばすどころではない。
今頃、どうしているか、順調なのか?まるで受験生を持つ母親だったらこんな気分だろう。
そわそわと落ち着きなくしていたら、気に入りの小皿を割ってしまった。縁起が悪い。
結果次第では、私達の人生も変わる。それは、好転するのかもしれないしそうでないかもしれない。
上手くいかなければ、長い闘いになるかもしれない。

夫の欠点を挙げればきりがないが、リスペクトする部分もある。私と違い、頭が切れる。性格に難はあっても、社会的には通用している、いや、それ以上かもしれない。
40代、転職するのなら最後とよく聞く。人生の大半は食う為に必要な仕事。その仕事を生き甲斐に出来る人は、一握り。そして、その一握りに仲間入りすべく、夫は昼夜問わず勉強を頑張っていた。
家族に八つ当たりしつつ、だが、仕事と勉強を両立させることがどんなにストレスのたまることだったのかを、私は知らない。
私が抱えるストレスを、夫が知らないのと同じように。


想像力を働かせてみよう。それはきっと、人間関係を円滑にさせる為に必要な、人間だけが持っている能力だ。







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  • 2021/05/24

自分の買い物

久しぶりに、自分の買い物をした。メルカリで。たまっているポイントでの購入なので、罪悪感は無い。
靴下に穴が空いており、それでも家の中、外で靴を脱ぐこともこのコロナ禍でなくなったことで、必要性を感じていなかったのだ。
だが、来週は義両親宅に行く。それも、今後頻繁かもしれない。
穴の開いた靴下を履いた嫁の世話になるなんて、惨めだろうーそんな想像と、またみすぼらしいと思われるのが嫌で新調することにしたのだ。

以前、百均で靴下を買ったこともあるのだが、安物買いの銭失いだった。すぐに穴が空くは、縮むわ。勿論、私の扱いが悪かったのかもしれないけれど。

たかが百円、されど百円。安くても満足のいく買い物がしたい。メルカリでは、未使用で靴下専門店のものが激安で売られていた。しかも、大量に。自分の分だけではなく子の分も購入しても、送料入れても安い。そして、可愛い。
ネットでの買い物は危険があるが、靴下はサイズさえ間違わなければ、伸縮性もあるしどうにでもなる。
久々に、心躍る買い物をした。と、同時に、久しく自分に金を掛けていないことに気付く。コロナ禍は、財布の紐が一段と固くなる。





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介護要員

義実家と和解し、夫はどこか晴れ晴れとした顔をしていた。

「あなた、暇な時に様子を見に行ってくれない?猫なんかより、そっちの方が大事でしょ。来週、どっかで。」

頼み方を知らないのだろうか?ただでさえ気が進まない義実家へ、夫の代わりに行くというのに。
だが、反論すれば、求職状況を聞かれぐうの音も出なくなる。夫は、それを知ってそんな言い方をするのだ。
仕事が決まらず、このまま義実家通いをし続けることになれば、なし崩し的に介護の役割は私に向けられるのだろうか。
同居は、三女が独身でいる限りなさそうだけれど。

来週の訪問、気が重い。子どもが4人もいて、他人の世話になる義母は内心どう思っているのだろうか?
そして、どこまで手伝えば良いのかも分からない。

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奮起

雨続きで、針金さんに会えない。
求人サイトを眺める日々。今週も、いくつか気になるところに応募したが、手応えはない。
面接まで行きついたあの会社は、もはや幻だったのかとさえ思う。
夫は出勤なので、家の中、久しぶりにくつろげる。すると、このまま働かない生活を手に入れられたらと妄想する。
実際は、早急に仕事を見付け、また義母の介護問題もあり、こんなにのんびり過ごす日々も、与えられた人生のうちでこれが最後なのかもしれないとさえ思う。
そうすると、この生活が惜しく、また愛着がわくのだ。

社会復帰に向けて、パソコンの勉強もしていたのに、もう数か月手つかずのまま。あの勢いは、いつの間にか消えてしまった。
情熱も意欲もない。
だが、食欲はある。
なんだか自分が無能のダメ人間に思える。人間ってやつは楽な方に流され流され、いつしかゴミだらけの砂浜に打ち上げられる生き物だ。
そうなりたくないから、皆、必死に泳ぐ。潮の流れに逆らって、南の方へー、自分の意志で。


顔を洗い、久しぶりに雑巾がけをした。気持ちをすっきりさせて、再び動く。
ハードルをいい意味で下げることに決める。鬱の波が来ないうちに、今一度、求人サイトに目を向ける。

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中止ではなく延期

体育祭が、延期になった。スポーツ大会もどきになるのかと思っていたのだが、延期。
中学の行事も、コロナのお陰でバタバタと延期だったり中止だったり。残念がっている親が多いかと思うが、私のように内心ほっとしている親も一部いると思う。
幼稚園や小学校のように、がっつり親が関わり、また行事参加も絶対ではないのしても、やはりあの保護者らが密集した空間は憂鬱で気が重い。心も体もくたくたに疲れ果ててしまう。
後日、写真販売で子の様子を知る、それだけで十分だ。部活も然り。
しかし、秋に延期とあるので、学校側は私達親に配慮したのだろう。3年の親は、中学生活最後の体育祭なので、延期を喜んでいるだろうし、また修学旅行もどうなるのかハラハラとした日々を過ごしているだろう。
来年の今頃はどうなっているのだろう。ワクチン接種が浸透した頃、日常生活を私達は取り戻しているのだろうか。

すっかり引きこもり生活を社会から正当化されることに慣れ切った今、元の生活に果たして戻れるのか、不安が募る。



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ベッドを囲んで

夫と三女は、義父を間に挟む形で義母の治療方針などについて話し合った。
リビングにベッドが置いてあることで、こちらも身構えたけれど、案外義母は元気だった。
勿論、まだ体は不自由だけれど、息子の顔を見れたことで元気になったようだ。ゆっくりだが会話もしっかりしていた。
夫はさすがにこれまで義実家に寄り付かなかったことを猛省したのか、突然、

「なんか食う?俺、作るわ。」

そう言って、冷蔵庫の中を漁り始めた。

「パスタ、ある?」

「あぁ、そこの棚にあるけど・・カズ、作れるの?」

三女が驚いた様子で聞く。

「あぁ、在宅で家にいること多いからな。趣味だよ。」


ーよく言うよ、こないだちょっと作っただけなのに・・

内心、面白くなかったけれど、夫は夫なりに義家族との隙間を埋めようと必死なのだ。
冷蔵庫には、運良く卵も生クリームもベーコンもチーズもあったようで、部屋中にカルボナーラの香りが漂う。


「本当は、もっといい材料使うんだけどな。」


そう言って適当な皿に盛り付け、義家族に出すと、義母はうっすらと涙を浮かべていた。

「美味しい、美味しいね。」

義母は、それでもまだ体調が万全ではなく半分も食べられなかったけれど、恐らく息子の料理なんて食べたことが無かったのだろう。顔色が一気にぱあっと明るくなる。
三女も、ようやく夫にくだけた感じで声を掛けた。

「で、どうなの?もう仕事は辞めたの?」

「まだだよ。今はまだ準備期間。」

「準備だけで終わったりして!まぁ、やると決めたのなら頑張りなさいよ。お姉ちゃん達ももう何とも思ってないから。皆、自分達の生活でいっぱいだからね。あんたのことに構ってられないって。」

憎まれ口を叩きながらも、どうやら和解したようだ。長女と次女の顔は見ていないので本当のところは分からないけれど、それでも夫は肩の荷が降りたような表情をしていた。

義父が、弱々しい笑みを浮かべていたのは気になるけれど、それよりも義母が久しぶりに声を上げて笑うのを聞いたことで、その不安はかき消された。




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再会

夫と共に義実家へ行って来た。
子が学校の日ー、すなわち、夫が代休の日。
土日でも良かったのだが、恐らく、義姉全員と顔を合わせたくなかったのだろう。
せめて三女だけなら、まだ対応出来ると踏んだのだろう。
夫の予想通り、チャイムを鳴らすと出て来たのは義父。その静けさから、家族3人しか在宅していないことが分かる。

「よく来てくれたね。」

義母が体調を崩してから、義父もそれと同じくらいに老け込んだ。老々介護ではないが、それに近いことをしているのだ。生活の殆どが義母のこと一色になり、しかもコロナ禍ということもあって、外との付き合いもこれまでのように出来なくなったのだろう。
以前は、仕事に趣味にと快活だった義両親がまるで私の両親のような隠居生活を強いられているのだ。

「ワン!」

ーあ・・

例のロボット犬だ。確か、チャコといった名前だったような。尻尾を振って玄関までやって来た。先日見た時は、良く出来ているしこういう形のペットもアリなのだと思ったのだが、この寒々とした家の中で虚しく吠える鳴き声は、不協和音と化す。冷たく、異質で、そして不気味だ。

「こんにちは。」

リビングに踏み入れると、驚いたことにベッドが占領していた。
横目で夫を見ると、ショックを隠し切れない、何とも言えない表情をしていた。
それまで使われていたファミリー用ソファーは隅の方に追いやられている。場にそぐわないベッドに腰掛ける義母。その光景は、事態の深刻さを物語る。
普段は寝ているのだろうか、私達が来たから頑張って起き上がったのだろうか。

「あ、お義母さん、楽になさって下さい。」

義母はぎこちない笑みを浮かべる。ただ、声は発しないことに不安をおぼえる。状況は、私達が想像する以上に悪いのだ。

タンタンタン・・と階段を降りる音が聞こえたと思った途端、

「おひさ。」

三女が顔を出した。

「おう。」

互いに目を合わせず、ギクシャクしながらも、ベッドに横たわる母の前では流石に自分の感情を押し殺し、、大人の対応で再会を果たした二人だった。



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秘密の花園

久しぶりにMさんからラインが来た。
例の映画の件は、のらりくらりと交わしているうちに誘われなくなった。と、同時に私の方では針金さんという魅力的な隣人が出来たことで、正直、無理してまでMさんとのお付き合いを続ける気力は無くなっていた現状。
それでも、こうしてラインが来れば、無視は出来ない。こんな私のことを必要としてくれている、気に掛けてくれているーというジレンマが働くのだ。

ー元気かな?どうしてるのかなと思って。

ただそれだけのメッセージだ。これにどう返したら良いのか、どんなリアクションを求められているのか、考えただけで疲れてしまう。
無視は出来ないので、当たり障りのないメッセージを送る。

ー毎日暑いですね!私の方は、変わらず淡々と過ごしていますよ。変化といえば、最近仔猫ちゃんお世話をしています^^


すぐに既読になり、

ーえ?猫飼ったの!?


ーいえ、近所の野良猫ちゃんです。可愛いので癒されています。

ーどこ?私も見に行きたい!


面倒なことになってしまった。針金さんとの時間が楽し過ぎることで、つい自慢したくなったのだ。Mさんに邪魔されたくないー、咄嗟に嘘を付く。


ーお世話といっても、連休明けからどこかに消えてしまって。残念ですが、別の場所に住処を変えてしまったみたい。


既読になると、

ーふーん。そうなんだ。

それだけ返し、そのトークは終了となった。気分を害してしまったのか?嘘がばれたのか?一応、「またね!」のスタンプを返したが、何の反応も無かった。

嘘を付いたことに後味の悪さを感じながらも、針金さんとのあの場所は秘密の花園。誰にも邪魔されたくない、ただそれだけのことだ。











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ワクチンパニック

「N恵ちゃん、もう姉さん達のワクチン予約取ったらしいわよ。受付開始前から準備してすぐ動いてくれたんだってよ。」

実母から、ワクチン予約の催促電話。ストレートに頼んでくれたらこちらも気持ちよく動くのに、どうしてこうも回りくどいのだろう。ますます察してちゃんに磨きが掛かる母に辟易する。

「電話が繋がらないのよ!もう5月分のワクチン予約は終了したらしいし。N恵ちゃんは、姉さんが頼む前にクーポンが届いたのかいつ予約すればいいのか聞いてくれて、全部手配してくれたってよ。」

要するに、言われる前に動かなかった私を責めているのだ。正直、義両親のことで頭が一杯で、我が両親のことは抜けていた。
先日、母の日の電話で頼んでくれたのならこちらだって動いたのに、どうして今になって騒ぎ立てるのだろう。

「あんたに迷惑掛けたくないから、自分達で何とかするつもりだったの。でも、全然電話は繋がらないし、しかもあっという間に5月分のワクチン予約は終了するし。7月まで本当に受けられるのかしら?」

焦りと苛つきを、私にぶつける。弟はネットに疎く、バイトもあるので頼りにならなかったらしい。

「予約時間の3分前から電話掛けてたのよ。あなたに迷惑掛けたくないから。電話ですぐに予約が取れると思ってたから、わざわざ頼まなかったの。」

今度は焦りによる不安感を全面に押し出してのお願いモード。

「分かった。次回の予約日時教えて。それと、そのクーポン、写メ送れる?」

「写メ?どうやって送ればいいの?」

じゃあ、口頭でその番号教えて。後、他に必要そうな情報も。
見通しがつき、ようやく落ち着いた母。電話を切った後、これで予約が取れなかったらと妙にプレッシャーを感じた。





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親としての意識

子から手渡された、部活動の部費や保険代などの徴収用紙。こういうものを貰うと、子はテニス部なのだと思い出す。
去年、イベントはあったものの、公式試合などはなかったので子の活躍を目にすることは一切なかった。足の痛みで一時は退部ーも考えたが、なんとか思いとどまり、現在に至る。
学年が上がり、先日の保護者会で顧問も言っていたが、今年も活動の見通しが立たないらしい。
一応、希望的観測で試合があればーの話、保護者が応援に行ける可能性の可否についても同様、どうなるか分からない。
学校によっては、部活動休止のところもあるし、また制限というところもあり、子の学校は「制限」という形で週に何日か活動している。


「昨日、先輩熱出たらしいけど、部活来てたよ。」

子からそんな話を聞けば、先日ニュースにもなった部活動クラスターを思い浮かべる。マスクをしていても変異株は感染するのだ。
それに、水筒のお茶を飲む時は、当たり前だがマスクを外す。さすがに幼児ではなく中学生だから、マスクを外したところで人に向かって咳をしたり話し掛けたりはしないと思うが、それでもいつ感染するのではないかとハラハラしてしまう。


「いいよ、自分でやるから!」


学校に毎日提出しなくてはらなない、検温表。子は、自分で体温を測り記入をしたがるけれど、ウザがられようが、それをいちいちチェックするのは親の役目だと思っている。
感染しないーは、感染させないと同義語だ。
ここのところ、夫も子も調子がいい。だが、油断大敵。気を付け過ぎるくらいが、丁度いい。



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Mom!マウンティング

タイムラインを何気なく流すと、カーネーションのオンパレード。
母の日翌日から、あちこちでマウンティング合戦が繰り広げられていたようだ。
数少ない、私のライン友達。
小学校や子供会などでの役員仕事で繋がった友達は、知人や顔見知り程度であり、「友達」というカテゴライズに違和感をおぼえる。
ふと、未読数二桁になっているグループラインを覗く。卒対ラインだ。
このグループをいい加減抜けようと思いつつ、まだ抜けられないのは「情報」を欲しているからだ。
中学校での何気ない情報ー、本部役員が関わっているこのグループラインでは、親しいママ友のいない私にとって、唯一得られる情報が多く交差するのだ。
とはいえ、最近ではめっきり動いていなかったのだけれど。
トーク画面を開くと、ここでもマウンティング。スネ夫ママが例のごとく皆に向けて発信したらしい。

ー見てみて!反抗期バカ息子から、こんなの貰った!

喜びを隠し切れないのだろう。K君から貰ったという母の日プレゼントは、一輪のカーネーションと牛丼のセット。そういえば、そんなサービスをしている牛丼店があったことを思い出す。

ーえ~、いいないいな。うちの息子、スルーなんだけど!

ーそれが普通だって!

スネ夫ママを励ますラインや、対抗するラインも。女子は女子らしく、可愛らしいアレンジメントとヘアクリップだとかタオルハンカチ、またエコバッグや、今風だと手作り動画とか。

ーさっすが女子は行き届いてるね!

スネ夫ママは、女子ママと同じ土俵に立つ気はないらしい。中二男子といえば、大体の家庭では、息子は絶賛反抗期。
「中二の息子から母の日を貰った」ことを自慢したいだけなのだ。

ーえ?これ、N君から貰ったの?素敵過ぎる!!!

ボスママの子、あの気弱なN君の母の日プレゼントは凄かった。何より、お母さんへの愛情が伝わる作品。
それは、母の肖像画だったのだ。そういえば、スネ夫ママによく虐められている気弱な子だったっけ。運動もからしきダメだった。だが、こんな才能があるとはー。

N君のプレゼントは、勿論、金は掛かっていない。だが、時間と労力、それに何より心が籠っていた。肖像画は、水彩画だったのだけれど、優しい色彩で描かれており、それはまるでN君が彼女から受け取っている愛情をそのまま代弁しているようだった。

ーすごい!N君、美大目指しなよ!

ーいいなあ!似顔絵。最後に貰ったのいつだろ~。今だから、貰うと逆に嬉しいよね!

ーこれは泣かされるね~。我が子にも見習って欲しい!

私も、彼女と仲が良かったら、同じく称賛のコメントを送っていたに違いない。K君の母の日プレゼントにコメントしなかったのは、私とスネ夫ママだけだった。

ボスママのことは大嫌いだけれど、K君にとっては素敵なママなのだろう。それを感じさせる母の日プレゼント。マウンティング大会は、ボスママの圧勝となった。






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一喜一憂

針金さんに会えた。
あんなにモヤモヤしていた気持ちが、彼女に会った瞬間、すーっと消えて行った。
いつもと同じ時間帯に彼女が、しかも先に公園にいたことで、避けられていたわけではないのだと知り、胸のしこりが無くなった。

「こんにちは。」

「あ!こんにちは。昨日は連絡に気付かなくてごめんなさいね。家にいたんですけど、ちょっと色々してて。」

ーええ、知ってます。ご主人とアンサンブルしてましたよね!

と口にしそうになり噤む。そんなことを言えば、ストーカー隣人扱いまっしぐらだ。だが、彼女の行動はお隣だからこそよく分かる。以前のお隣さんとは仲良くなれそうもなかったしー(そもそも素敵ママのマブダチという時点で、私と親しくなるなんてあり得ない)虐待疑いなどあったのでそこは注意深く気にするようにしていたけれど、こうして意味もなく、バルコニーに出てはお隣の声を拾うのは、
なんだか悪いことをしているような罪悪感がある。

不思議と、私一人だと姿を見せなかった仔猫が針金さんの足元でじゃれついている。人間に好かれる人間は、動物にも好かれるし、人間に好かれない人間は動物にも好かれないのかーと一瞬落ち込んだけれど、仔猫をあやす彼女を見ているうちに、そんな詰まらないことを考えている自分が嫌になった。

「GWは、息子が帰ってきてね、久しぶりだったから楽しくて。朝まで家族で飲んだりもして。もしかして声とか漏れてたかしら?そうだったら御免なさいね。」


「いえいえ!全然。こちらも煩いことはあるしお互い様です!」


「あなたのお宅からは、物音ひとつ聞こえないから、夫婦二人なのに夫の声がまた大きくて。耳が遠いのかしら。私もつい一緒に大きな声になってしまうの。普段はそんなことないのに。」

そう言って少女のようないたずらな顔をして笑う針金さんに、ご主人への愛を感じて無性に寂しくなる。それは、嫉妬心といったら大袈裟なのかもしれないが、ある種に分けたらそういう類いのものに違いない。それを証拠に、なんだか胸の奥がチクリとしたのだ。


まるで、これまでの埋め合わせかのように、いつも以上の時間二人で公園に佇んだ。仔猫が去ってからも、ベンチで彼女の他愛のない話を聞く。時間がこのまま止まればいいのにー、そう思えた。












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夫からの圧

昨日とうって変わっての肌寒さ。体をおかしくしてしまいそうだ。
雨が降らないうちにと、少し早めに仔猫のいる公園へ行こうと支度をしていたら、在宅仕事をしている夫に声を掛けられた。

「また、買い物?仕事は決まったの?」

ギクっとし、首をすくめる。手にしているエコバッグには、以前針金さんが持って来ていた猫用おやつとペットボトルや皿。
針金さんが来ていなかった時の為に、用意したのだ。

「何それ?ちょっと貸して。」

エコバッグを取り上げられ、中身を見られた。

「ん?え?どういうこと?何で猫の餌持ってるの?」

やれやれと首を振り、意味が分からないというジェスチャー、そして不快感をあらわにした表情で、夫は私に詰め寄った。

「まさか、野良猫に餌とかやってんの?ありえないだろう。誰かに見られたら・・っていうか、今そんなことしてる場合?あー、本当、あなたのことが分からないわ。ていうか、仕事はどうなってんの?」

「・・・」

何も言い返せなかった。
結局、その日は外出は諦め、自宅で就活だ。パソコンを開き、求人サイトを眺める。
眺めるが、これといったものはなくただただ目の前の情報はかみ砕かれることなく上滑りに私の頭上を過ぎて行った。
夫の言うことはもっともだ。子は通塾し始め、今月もきっちり数万円の引き落とし。そして、夫は迫る試験に向けて猛勉強。これに合格すれば、本当に今の仕事を辞めることになる。義実家は相変わらず夫の脱サラに猛反対だが、これまでだって夫は末っ子長男の我儘で自分の思い通りに事を運んで来たのだ。今更、親兄弟に反対されたところで、自分の意志を変えることなどないだろう。
自営となれば、場合によっては数年赤字。貯金を取り崩す生活になる。それを見越しての、少しでも今蓄えておかなければという夫の思いが、妻に通じていないことに苛つくのも当然だ。
だが、私にだって言い分はある。そもそもこの家の資産を知らないのだ。夫の給与も。
無知は、不透明な未来に鈍感だ。

「仕事は探してる。でも、正社員は厳しい。書類選考すら通らない。だから最初はパートの掛け持ちとか単発で凌ぐしかないかと思っていて、それで探し始めたんだけど。ブランクがあるせいで通らないの。清掃や早朝深夜OKの仕事ならあるけど、あなた、それでもいい?」

本当に聞きたいことは、言葉にならない。

「探し方が悪いんだ。主婦が夜中とか、勘弁してくれよ。本当に言い訳ばっかっだな。本気で探せばあるはずなのにやる気がないんだよ。求人サイトだっていくつもあるだろう?」

夫はうんざりした様子で、リモート会議始まるからと自室へ籠ってしまった。
一人取り残されたリビングで、鬱々と画面をスクロールし続ける。開けた窓からは、美しいピアノの音色が流れて来る。

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  • 2021/05/12

会いたい、会えない、空振り

今日も、針金さんに会えなかった。


だが、自宅にはいたようだ。バルコニーに出て様子を伺うと、隣からほのかに聞こえるピアノの音。それに交じり、ギターの音も聞こえたのだ。
ご主人とアンサンブルでもしているのだろうか?時々交じる、男女の笑い声。
仲睦まじい、二人のシルエットを思い出す。
仔猫のことは、気にならないのだろうか?それとも、他の時間帯にあの公園にいるのか?もしかして、避けられてる?
あんなに心が通ったかのように思えた隣人が、一気に遠ざかったかのように思える。距離を縮め過ぎたのだろうか?
意を決して、ラインをしてみた。

ーこんにちは!お久しぶりです!連休中、猫ちゃんに会いましたか?私はいつもの時間に行くように(毎日ではありませんが・・)したのですが、なかなか会えなくて。ちょっと心配しています。

あくまでも、針金さんではなく、心は仔猫にあるのだと強調するような文面にして、相手に重く思われないよう注意した。ストーカー扱いされたら最後だ。

なかなか既読にならない。隣からは、笑い声が聞こえる。スマホなどいちいちチェックしていないのだろう。それくらいに夫婦仲が充実しているのだ。
いつまで経っても既読にならないライン画面になぜか苛つく。一時間程してからもう一度ダメ元でメッセージを送る。

ー猫ちゃん、自治会の人達に見付かってなければいいのですが・・心配なので、今日公園見てきますね!もし良かったらご一緒にどうですか?

結局、既読になり返事が来たのは夕飯も終わった夜更け。


ーこんばんは。ライン、今見ました~時間ある時、また見に行ってみますね^^

やんわりと拒否されているような、もやもやした気持ちに支配された。













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虚しさとモヤモヤと

母の日を過ぎて、翌日。
気分は塞いでいる。
去年はカレーを作ってくれたこともあり、やはり期待していたのだ。

昨日は、普通の日曜日だった。いつものように家族の食事を作り、洗濯をし掃除をし、夫や子はリビングでくつろぎ、穏やかな休日。
だが、私の心の中はけっして穏やかではなかった。
流れるCMや番組では、母の日のワードが何度も何度も、また、新聞の折込チラシだって、母の日はOO~と、豪華なステーキ肉やカーネーションがレイアウトされており、目にしたくなくとも目に入って来た。

そんな時、いつもなら当日にお礼の電話なんてないのだが、実母から携帯に電話。


「あんた、ありがとう。届いたわよ。」

休日で私の背後に婿がいることを気にしてなのか、当たり障りのない会話。

「あんたは、OOから何か貰ったの?」

「う・・ん。ちゃんとしたものは貰ったことない。去年はカレー作ってくれたけど。」


「そういうこと、ちゃんと教えないと駄目なんじゃないの?普通、女の子ならやるけどね。あんた、育て方間違ったんじゃないの?ちゃんと愛情持って育ててたら、そんな風にならないと思うけどね。」

言われたくないー、私なりに愛情はたっぷり注いでいるつもりだ。母の電話により一層、もやもやが募った。










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母の合否

今日は、母の日だ。正直、憂鬱な日だ。
我が子にどう思われているかの合否発表、そんな一日になりそうだ。
ちなみに、実母は母として自身のことを「合格」だと思っているに違いない。嫁に行ってまで気を遣いプレゼントを贈る娘である私。
いまいちなリアクションの年もあるけれど、それでもめげずに毎年、感謝の気持ちを表しているのだ。
今年は、金にプラスして洒落たマグカップと紅茶のセットをプレゼントした。コロナ禍で外に出れない分、家の中で喫茶気分を味わって欲しい、そんな思いだ。
困ったのは、義母に対してのプレゼントだ。義母はまだ病み上がりで、母の日のプレゼントというよりもお見舞いを渡すべきなのでは?と思ったからだ。快気祝いの方が印象が良いけれど、まだまだ自宅療養なので「快気」しているわけではない。
多趣味で社交的だった義母。恐らく義母の好みは義姉らがよく分かっているだろうし、私が選んだものなど嬉しくないだろう。
夫に相談すると、夫はようやく義実家との関係について前向きになったのか、

「俺が選ぶ。」


と言い出した。なので、今年に限っては夫に丸投げだ。こんなことは結婚以来、初めて。いつだって夫は金だけ渡して私に百貨店へ出向かせたというのに。
夫も、病気になってしまった母親に対して、これまでとは違う感情がはたらいているに違いない。


ひとつ、心の負担が減ると、自分自身の母の日に集中してしまう。
さて、合格か不合格か。思春期の我が子の気持ちを再確認する、そんな長い一日が始まる。



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前進

義母が退院し、しばらくは自宅療養になるとのこと。三女からの電話だ。
その知らせを受け、なんだか胸がざわついた。長男の嫁の出番なのではないかと?
だが現在、夫は義実家と距離を置いている。そこへ他人の私がずかずかと首を突っ込むのも夫は面白くないだろう。
三女からしたら、いくら同居しているからといって、このまま介護の流れになり全負担が自身に降り掛かることを黙っていられない。
そうなる前に、先手先手で動こうと、まずは私に直接電話を掛けたのだ。


「私だって、在宅っていったって仕事しているし。日中、お母さんのお世話をするのはきついのよ。一応、自分で歩くことは出来るけど、階段の上り下りなんて無理。お父さんだって、もう年だから自分の世話で手一杯。何とかしてよ。」


だが実際、私は免許もないし、電車やバスを乗り継いで義実家へ行き、手伝いをすることはかなりハードだ。家のことだってある。


「OOだって、部活で遅いんでしょう?OOさん、今仕事してるわけじゃないんでしょう?日中暇なら、ちょっとは手伝ってよ!」

尖った声に、身構える。こうなると、これ以上何を言っても彼女からしたら「関わりたくない言い訳」に聞こえるだろう。

「分かりました。行きます。ちょっと日程調整してからになるのですぐにとはいきませんが。」

すると、三女はいくらか落ち着いたのか、

「あら、そう?じゃあお願いね。また来る日が決まったら連絡ちょうだい!」

ガチャ切りだ。なんでだか、私の周囲はガチャ切りする人間が多い気がする。私の性格が彼女らをそうさせているのだろうか?
在宅していた夫に、今度の件を伝えた。
夫は、少し複雑そうな顔をした後、


「俺も行く。」

予想外の言葉に驚く。てっきり、私一人で行かせるのだろうと思っていたから。夫も、これを機に出向かなければ、この先ずっと義家族とのしこりが残り、更には絶縁になってしまうという不安もあるのだろう。なんだかんだで義実家好き、シスコンなのだ。
夫と三女が顔を合わせることに、こちらまでが緊張するけれど、ようやく一歩前進したように思えた。







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流れに身を任せる

期待外れ。結局、昨日は針金さんに会えなかった。仔猫にも、会えなかった。

自宅に戻り、PCでラインから彼女のアイコンをクリックし、トーク画面を開く。彼女のアイコンは、猫。
お子さんは既に大きいので、私達世代のように、子どもの写真をアイコンになどしないのだろう。
この猫が、以前飼っていた猫だろうか?既に彼女はペットロスを乗り越えたようだけれど、時たま見せる仔猫への愛情のある眼差しの中、少しの切なさが入り混じっているのは、やはりまだ引きずっているのだろうかとも思う。
メッセージを書き込んで、送信しようとして躊躇する。
まだ、彼女やそのご主人は連休中かもしれない。また、離れて住む息子さんが帰ってきて家族水入らずかも・・
そんな風に、あれこれ妄想すると、キーボードを叩く指はdeleteボタンに自然と運ぶ。

自然に任せよう。お隣なのだ。急ぐ必要はないし、これまでの人間関係の中であまりにもスムーズにことが運んでいることに浮かれて足元をすくわれないようにしよう。ゆっくりゆっくり、二人の関係を深めていけばいい。縁があれば続くし、なければ途切れる。ただそれだけのことだ。

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今日の予定

連休中、気になるのはあの仔猫ー、いや、針金さん。
夫も子も在宅だと、何となく外に出ることが憚られる。それに、この連休を挟んで、針金さんとの絆が途切れてしまうことが怖かった。
世の働く人々は、11連休の人もいるのだろうが、夫は7連休で2日のうち1日出社の1日在宅、そして土日休みというスケジュール。
なので、今日は外に出ることにしようと思う。
夫と子を送り出すと、なんだか久しぶりの開放感。
勿論、仕事探しを辞めた訳ではなく、ちらほらとネットで求人のチェックはしている。だが、緊急事態宣言下、今求人を出しているところに不安もある。
なんだかんだ理由をつけて、引き延ばす。
そうだ、針金さんに相談してみよう。仕事のこと。何となくだが、彼女には「経験」がありそうな匂いがする。
そうと決まれば、さっさと家事を片付けてあの場所へ行こう。充実した目的があると、なんだか体も軽く億劫な家事労働さえ日々の暮らしのモチベーションに繋がるスパイスにすらなるのだ。

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新たな趣味

昨日のカルボナーラの私達の反応に、すっかり機嫌を良くした夫。
夫の欠点は数々あるが、彼も人間。少しくらいの長所だってある。案外、単純なところだ。普段、疑い深い癖に、自分にとってポジティブなことだと真っ直ぐ受け取る。まだ付き合っていた頃には、そんなところが可愛く思えた。

早速、パスタ用の鉄のフライパンを購入。普通のフライパンと何が違うのか分からないけれど、調理器具を一流のものにすること、それは料理の基本だと言う。しばらくパスタが続くのかーと少々げんなりもするけれど、どうせ夫のことだ。すぐに飽きるだろう。
コロナ禍で自粛中、なかなか仲間とツーリングに行けないストレス、それに、義家族とうまくいっていないことや仕事のこと、勉強の息抜きに手頃な趣味を見付けたということだ。
フライパンに、岩塩。パスタも専門店で購入したものらしい。そして、ポルチーニ茸。千円以上のきのこ。

正直、まだ月が始まったばかりだというのに、食費がかなり嵩んでいる。やりくり費については、夫から一定金額を貰いその中でやりくりしているのだが、明らかに今月は赤になりそうだ。
追加の催促をすることに躊躇いを感じるが、さすがに夫も自分が使った金額は把握しているだろうし、オーバーしても嫌な顔をしたりしないだろうと信じたい。

形から入る夫だけれど、正直、バイクのアクセサリーや高級時計を収集されるよりもよほど家族の為にもなる。また、夫が飽きたら私が使えばいいのだと思えば、この散財に対して腹も立たないのだ。




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  • 2021/05/05

幸福な家族のカタチ

夫も子も在宅の連休。悩まされるのは、やはり毎度の食事。
こんな時期だから、外食も出来ない。テイクアウトを子が希望したが、夫が却下。家レベルの食事にわざわざ金を掛けられないーというところだろうか?
針金さんのところは、ご主人の趣味が料理だと聞いた。しかも、今は在宅仕事メインなので、ほぼ3食ご主人が作るのだそうだ。

「昼ごはんもですか?」

「そうなの。昼休みはきっかり一時間なんだけどね。10分程度でパパっとチャーハンとかラーメンとか作ってくれて。私の分も。それが彼の気分転換なんですって。」

そんな会話をした先日を思い出すと、心底羨ましい。夫も、料理くらいしてくれたらと毎度のことながら思っていた。そんな私の日頃の思いが神様に通じたのか、突然、夫がパスタを作ると言い出した。思い付いたら、即行動なのか、さっさと車で買い出しに出掛けてしまった。帰宅し、昼食の準備に取り掛かった。

「え?パパ、料理するの?」

子も、心底驚いた風。
夫は自らスーパーで買ってきた食材をテーブルに並べた。パスタは、カルボナーラ。料理初心者でいきなり難易度の高いメニューを作ろうとしている夫。しかもフィットチーネとパルミジャーノチーズの塊をゴリゴリと削り、かなり本格的。
卵も、茶色の4つ入りという割高商品。そして、生クリーム。材料だけ見れば、プロ仕様。
最初から心に決めていたのは、どんなに不味くても、オーバーなくらいに美味しい演技をしようということ。これを機に、夫は料理に目覚めるかもしれないのだ。
パスタを茹でる間、生卵を割り、カルボナーラの素を作る。もったりとした濃厚なソースが出来上がる。そして、フライパンで茹で上がったパスタと絡める。片手にスマホで動画を観ながらだったので、たどたどしい動きに子が笑う。
私も笑ってしまう。そして、これが幸せな家族のカタチなのだとしみじみする。

夫が盛り付けたカルボナーラは、想像通り、だまだらけ。卵がうまくパスタに絡まず、ボロボロのスクランブルエッグ状態。
その、お世辞にも見栄えが良いとは言えないそれに、パルミジャーノチーズをゴリゴリと削る。その削る機械も、夫がこの為に購入したもののようだった。


「いただきます!」


一口食べて、かなりしょっぱく、口内につばが広がった。子も、一口食べてすぐ水をがぶ飲み。夫は、一瞬微妙な表情をしたが、何ともない風を装い、無言でパスタを啜っている。


「すごい!美味しいよ。ありがとう。」


子にも目配せする。

「うん、ちょっとしょっぱい気もするけど、チーズの味が本格的だね。」

「確かに、ちょっと塩っけが強いな。」

「いや、美味しいよ。初めて作ったとは思えない。カルボナーラって本当に難しいメニューなんだから!」

勇気付けるよう、言葉を掛ける。夫は、満更でもないような表情だ。
私は、素直に嬉しかった。気まぐれだったとしても、こうして家族の為に休日に料理を作ろうと思い立ち、行動にうつしてくれた夫を見直したし、嫌いなところは多々あるけれど、こういう瞬間があるから家族のままでいられるのだなーとぼんやりとした頭で思った。














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電話義務

実家とは疎遠になりつつ、コロナになってからは週に1度はこちらから電話を掛けるようにしている。
掛ける度に、面倒そうなリアクションを取られるが、調子が乗って来るとこちらから電話を切るタイミングがなかなか取れず、2時間近く話さなくてはならない羽目になるので、時間がたっぷりとれて尚且つ、夫不在時に掛けるしかない。
今週は、夫がほぼ在宅だったこともあり掛けることが出来なかった。それに気付いたのは、直接携帯に実母から掛かって来た時だった。

「もしもし。」

第一発目で、不機嫌そうな声。


なぜ、不機嫌なのか?母の苛つきは受話器越しにも伝わる。何かあったのだろうか?
聞いているうちに、つい先日伯母と電話をしたらしく、ちょっとしたマウントを取られたのだと分かり、その当てつけはやはりその根源となっている実の娘に向けられるのだ。
母親を幸せに出来ない娘である私に対してのアタリが強くなる。
実家べったりの従姉妹。仕事を始めたことで、全面的に孫を預け、週に3度は伯母の家で夕飯をとる毎日らしく、それは大変なことなのだけれど、賑やかで楽しく、このコロナ禍に引きこもりを余儀なくされても生き甲斐のようなものを与えられ溌剌と過ごす伯母に嫉妬しているようだった。
なので、ついぽろっと義母のことを話してしまった。

「え?入院?後遺症とか大丈夫なの!?」

電話口で大興奮の母の声は、なんだか嬉しそうにも聞こえる。

「じゃあ、仕事も辞めたの?退院しても、もう動き回るのは無理そうね~」

認知症の前兆については伝えなかったけれど、義母が病気ーそれも重大なものに掛かったことはいくらか実母を勇気づけたようだ。

「だいたい、あちこち動き回り過ぎだったのよ!自分の年齢を考えないとね。私はちゃんと健康管理してるわよ。毎日のように病院にだって言ってるし!」

喜々として語る母は、すっかりご機嫌が直ったようで、電話の終わりには最初の不機嫌さはすっかり消えて、

「そうそう、OOは元気?」

孫のことにも気を掛けるだけの余裕が出来たようだった。やれやれという気持ちで受話器を置くと、やはり2時間近く話していたようだ。喉はカラカラ、どっと疲労感が押し寄せた。












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メルカリウィーク

連休になり、特に予定もなく自粛の日々。ぽっかりと空いた時間、一体何をしたらいいのか分からず持て余す。
自分一人ならば、だらっとソファーにでも寝転んでぐうだら出来るけれど、夫も子もリビングを占領していると、どうしたって何かすることを探さなければならないような、妙なプレッシャーに縛られる。
なので、久々の断捨離。クローゼット中の子のサイズアウトした衣類を片っ端からかき集め、捨てるものとメルカリに売るものに分ける。
メルカリに売るものを、写真撮影。すると、夫がポリ袋に入れた自分の服を持ってきた。

「俺のもやっといて。これ、全部要らないから。」

ポリ袋2つに入っている服の山。在宅仕事がメインになった今、服を着る機会も激減し、家の中では年中スウェット。着心地重視にシフトしている。なので、これまで買った服が不要になったのだ。


「結構高値で売れると思うから。ネットで定価調べてうまい価格付けて。」

丸投げされた。そして、夫専用のメルカリパスワードを教えられた。

「あなたの方は、どれくらい売れてるの?」

夫からしたら、微々たる金額にしかなっていないそれを見せるよう言われ、しぶしぶ見せた。

「面倒だし、俺のメルカリの方で一括したらいいよ。そこにあるのも全部。」

夫は親切心からなのか意地悪からなのか分からない、最悪な提案をして来た。要するに、今から出品しようとしている子の不要服の売り上げも自分のものにしようとしているのだ。だが、子の衣類は元と言えば夫の稼いだ金で買ったもの。なので、道理は通っている。これまで気付かれなかっただけのことなのだ。
それでも損をしたような、ただ働きを命じられているような気になり、すっかりやる気が失せてしまった。

「じゃ、よろしく。」

夫は鼻歌を歌いながら、私にすべての面倒ごとを押し付けた。GWのメルカリ売り上げ、一体いくらになるだろう?せめて何割かはこちらに還元して欲しい。







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