にほんブログ村 主婦日記ブログ ひきこもり主婦へ
にほんブログ村 主婦日記ブログ 専業主婦へ
にほんブログ村 子育てブログ 一人っ子へ

氷河期世代の苦悩

感染爆発ー
感動的なオリンピックのドラマの裏では、じわじわとウイルスが猛威を振るっている。
マスコミは、メダル獲得の称賛ニュースをしたかと思えば、深刻に増えていく感染数の発表と忙しく、視聴者のこちらも、なかなか感情が追い付いていかない。
夫は、あれだけワクチン反対派だった癖に、常軌を逸した感染数の発表に心揺れたのか、集団接種の予約画面を開いているのをちらっと見てしまった。

ー結局、打つんだ。

内心、あぁやっぱりと思いつつ、表情に出さず、こちらからお願いを仕掛ける。

「やっぱり、一緒にワクチン打たない?アストラゼネカの件もあるし。」

アストラゼネカ製ワクチンの接種対象が、40代以上に臨時接種を対象に検討しているというニュース。氷河期で苦しんだ私達に、更に追い打ちを掛ける政府。働き盛りでまだ子どもを育て上げられていないこの世代に与えられる、不安感満載の選択肢。
時代と政府に実験台にされる氷河期世代。

とにかく、まだモデルナワクチンが打てるうちにワクチン接種をしてしまいたい。うだうだ言っている暇はないのだ。

「あなたがそんなに心配するなら、打ってもいいけど。」

あの目を離せない柔道の名シーン、なかなか決まらなかった寝技が決まったあの瞬間が目に浮かんだ。







関連記事

夏季休業

あれから針金さんより、お礼のラインが来た。
数回やり取りをした後、

ー明日、公園行ってみようかな。


彼女の方がそんなことを言って来たので、すっかり嬉しくなり私はOKのスタンプを押した。
そして翌日、意気揚々と、トートに水と餌、自分用のアイスコーヒーのマグも入れて、公園に向かった。
とにかく、暑い。灼熱の太陽。こんな暑くても、行きかう親子は虫かごと網を手に歩いていたりするのだから、我が子は既にそういった子育て黄金期をとうに終えていることに心底胸を撫でおろす。
公園が見えて来たー思わず早足になっていた歩みを止める。遠目でも分かる、何人もの親子。
公園では、何個も自宅用のミニプールを繋げて、幼い子供たちが水浴びをしている。ざっと、母親だけで5人はいた。立派な「群れ」だ。
思わず、拒絶反応。あの中に入る勇気はない。それに、猫がいるかいないかも分からない状況で、あの場に留まったら不審者に思われる。子どももいない年齢のいった女が、この暑さの中何もない公園で何の用があるのか?いくら想像力がある人が想像を働かせても、マイナスのものしか生まれないだろう。

帰宅し、針金さんにラインをする。

ーさっき公園に行ったけれど、小さな子ども達がプールをしていたので、帰って来ました。


夕方になって、ようやく返信が来た。この世代は、ラインを頻繁にチェックしないようだ。


ー来てたんだ!私、いたよ~。プールには、丸君もいたよ。気付かなかった?

丸君とは、例の母親の息子だ。母親らは日傘を刺していたので顔まで見えず、例の母親にはまったく気付かなかった。同じく、針金さんもママの群れに馴染んでいたのかまるで気付かなかった。


そして、あの親子にママ友がしっかりいたことに悔しい気持ちが湧いた。なぜだか、自分と同じ匂いがしていたことでライバル心を持っていたが、そもそも生きる土俵が違っていたのだ。
プール遊びが続くうちは、あの公園に行けそうもない。針金さんがいたとしてもだ。なぜなら、あの母親とその仲間の視線を浴びることに耐えられないから。
針金さんとの関係は、夏季休業といった感じだ。






関連記事

株上がったり下がったり

針金さんに、お裾分けをしようと思い、バルコニーから在宅の気配を感じたので、勢いでチャイムを鳴らす。
夫宛のお中元にあった、缶詰セット。夫はあまり好みではないようなので、日持ちもするし良いだろうとショッパーに入れた。

「はーい。」

男性の声、まさかのご主人登場におろおろとする。


「こんにちは、お忙しいところすみません。奥様、いらっしゃいますか?」

「あ~、ごめんなさいね、今留守で。」


在宅の気配といっても、女性らしい声はテレビの音声だったのかもしれない。だが、ご主人の視線が私の手にぶら下がっているショッパーにいったことで引き返せなくなってしまった。

「あの、これ詰まらないものですが、良かったらどうぞ。」

「あぁ、こりゃあどうもどうも!!ありがとうございます!」

とても愛想の良いご主人だ。頭皮は薄く、太っているし背は低いうえに毛むくじゃらだけれど、この愛想の良さを目の前にしたら容姿のことなんてどうでもよくなる。


「では。」


そう言って、自宅に戻ろうとすると、

「あぁ、ちょっと待ってくださいな。」


ご主人はいったん、リビングの方へ消えてしまい、玄関に取り残される。少しして、皿に盛った桃に爪楊枝を刺したものを差し出して、

「どうぞどうぞ。今、食べようと思っていたんですがね、一人なのにこんなに食べきれないので。」


どうリアクションして良いか分からず、戸惑いつつマスク越しなので表情は彼に伝わらないらしい。桃ー、しかも、その毛むくじゃらの指で桃の皮をどう剥いたのだろう?皿の上では、艶々光った桃が、食べやすい大きさにカットされ並べられているのだが、このコロナ禍で他人に差し出せる神経を少し疑う。さっきまで好印象だったご主人の株が一気に下がる。


「ごめんなさい!私、桃アレルギーなんです。」


「は!そうでしたか!そりゃすみません。」


頭をポリポリ掻きつつ、桃の乗った皿を引っ込める。悪い人ではないのだけれど、ちょっと常識が無いのかなと思ってしまった。
自宅に戻り、ほっとする。難を逃れたという感じ。後は、針金さんからのレスポンスを待つのみだ。










関連記事

おうち観戦

東京開催のオリンピックは、タイムリーで試合を観られることもあり、テレビを点ければそれ一色。
夫は、アスリート達に敬意を示すどころか、野次ばかり飛ばすのでほとほと嫌になる。

「あー、何やってんだよ!油断し過ぎだろ。」

「おいおいおいおい!勿体ね~。なんでそこ打つかなぁ。」

かと思えば、まるで評論家のように、彼らのミスをねちねちと突っつき、こうすればいいのだと分析めいた発言をする。それが、的外れもいいところで、スポーツに詳しくない私からしても違和感満載なのだ。
ビール片手に突き出た腹で、何を言っているのかと思う。だったら、お前がやってみせろよと。

夫はリビングで観戦したりしなかったりで、在宅仕事からのそのまま自室で仲間とオンラインをしながら観戦することも多い。
正直、そっちでやってくれたら私は落ち着いて観戦に集中出来るので有難い。つまみとビールを用意してさえいれば、文句を言われることもないからだ。


子は、スマホばかり見ていて、オリンピックに興味が薄い。一応、リビングにいても、視線はテレビではなくスマホ。友達とラインをやっているのかいないのか分からないけれど、金メダルを争う戦いすら、スマホ優先だ。ロックを掛けられてから、子が誰とラインでやり取りしているのか分からないし、夏休みに入ってから尚、スマホ時間が増えているのが気に掛かる。


バルコニーで洗濯物を取り入れていると、お隣から男性の大きな歓声。

「よくやった!!よくやったーー!!」


ガハハハと大きな笑い声から、


「乾杯ー!!」


針金さんの、弾むような声が聞こえた。夫婦でおうち観戦しているのだろう。楽しそうで、私もその輪に入りたい気分。
夫は自室、子はリビングにいても心はスマホの向こう。
一方、我が家は私一人で観戦している。先日は、柔道の延長戦からの苦しいシーンからの金メダル獲得に、思わず小さく声が上がったが、私の家族は一つ屋根の下にいるというのに、その喜びを共有することすら出来ない事実に情けなさすらおぼえる。

普段、喧嘩ばかりの仲の悪い兄弟や、会話のない夫婦が、オリンピックを機にコミュニケーションが増えているという話を先日のラジオで聞いた。普通はそうだよね、と思う。
我が家は、いつでも悲しい例外に当てはまるのだ。







関連記事

バースデー

7月は、私の誕生月だ。
新婚の時こそ、夫は仕事帰りにケーキやシャンパンなど買って来てくれたけれど、子を産んでからはめっきりそういった気遣いもない。
子は、自分の誕生日のアピールはするけれど、親の誕生日まで気が回らない。母の日や父の日だってそうなのだ。世間がいくら騒いでいても頑なにスルースキルを磨き、どこ吹く風。

実は、家族も度々目にする、居間に飾られたカレンダーの自分の誕生日に、小さなケーキのシールを付けていたのだ。
さすがに、「ママの誕生日」なんて記入するのは大人気ないし、そこまでアピールしてスルーされた時のショックを思うと、こうして控えめにアピールするしかなかったのだ。

一番に、子が気付いた。

「あれ?ここなんでケーキのシールが付いているの?」

言われなくてもピンと来て欲しかったのが本音だが、今がチャンスとばかりに口を開く。


「誕生日、私の。」


すると子は、思い掛けないリアクションをした。


「あ!そうか。忘れてた。じゃあこの日はご馳走だね!焼肉にしよう~、あとはケーキ。」


夫は不在だったが、子が記憶に留めたことで期待は募った。だが、この日は誕生日の10日前だったのだ。
私の期待は泡となる。10日間の間に、子は部活や塾や自分の生活のことで頭が一杯で、母親の誕生日を記憶しておくスペースなど入る余地はなくなったのだ。
自分の誕生日くらい、楽をしたいー。夫に勇気をもって、話す。

「今日、私の誕生日だから、夕飯はカレーでもいい?」

ーあ!そうか。じゃあちょっといい店でテイクアウトでもするか!

なんて期待していたのだが、


「カレー?そういう気分じゃないんだよな。」


夫の物言いに苛っとしつつ、黙っていると、


「俺が作るわ。」


そう言って、冷蔵庫を覗いて材料を取り出す。ナスを取り出し、揚げ焼きし、玉ねぎをみじん切りにしたかと思えば、トマトソースを作り出した。

「実は、ケーキはもう買ってある。」


そう言いながら、冷蔵庫からいつの間に買ったホールケーキを取り出し、テーブルに置く。感激のあまり、私は写真を撮る。
皿にパスタを盛り、サラダもなく一品だけだったが心は踊る。
早く食べたい気持ちを抑えつつ、ケーキにろうそくを立てる。年の数だけなんて気恥ずかしいながらも、何十年ぶりに自分が主役になったようで嬉しく、興奮と感動がそこにあった。

ろうそくの火を消そうとするその瞬間、夢は消えた。
夢だったのだ。

もうしばらく見ていたかった。せめて、料理を一口くらい食べてから目覚めたかった。いや、せめて、ろうそくを吹き消してから・・・


結局、本当の誕生日、カレーではいくらなんでも特別感がないので、ちょっと良い牛肉を使ってハヤシライスで手抜きした。
毎年と同様、期待外れの誕生日。だが、家族皆がこうして健康に、私の誕生日を過ごせること。
感謝しなくてはと思い直した。













関連記事

何処かへ

針金さんと、連絡が取れない。
夏休みに入り、夫と子が在宅していることで、身の回りの世話を彼らの都合に合わせてしなくてはならず、いつもの時間に公園へ行けないことが数日続いた。
なので、ようやく待ちに待った、夫は出勤、子は部活の日、家事もそこそこに公園へ出向いた。
1時間過ぎても、彼女は現れない。猫も来ない。この暑さで、どこかに避難しているのだろうか?
実は、公園に行けない日、針金さんにラインをしていたのだ。

ーごめんなさい、今日は都合が悪くて公園に行けません。猫ちゃんのこと、よろしくお願いします。

これに対し、OKのスタンプが来たきり。気になってその日の夜に、


ー猫ちゃん、この暑さですが大丈夫でしたか?


送信したが、未読。
次の日も、義実家へ行く予定があり行けなかったのでラインをした。


ー今日も、夫の実家に行かなくてはなりません。猫ちゃんのこと、よろしくお願いします。


朝いちでラインをしたのだが、返信は昼を過ぎた頃。昨日同様、OKのスタンプのみ。
胸騒ぎがし、夕方にラインするが、未読スルー。翌朝、既読になっていたが、そのまま。そして今日に至ったのだ。
怒っているのだろうか?まさかー。彼女を怒らせるようなことなどしてはいないはず。でも、なぜこんなにあっさりとしたレスポンスなのか。
悶々としながらも、1時間過ぎて汗だくのなか、もう限界。帰宅することにした。自宅に戻り、アイスコーヒーを一気飲みした後、バルコニーに出て隣の様子を伺う。物音ひとつ聞こえない。在宅なのか留守なのか、在宅だとしてもこの暑さで冷房を付けて部屋を閉め切っているのだとしたら生活音は聞こえない。
思い切って、お裾分けといって訪問しようか。まだ、以前のいただきもののお返しをしていないし、先日届いた夫宛のお中元の中から良さげなものをピックアップすることにしようと思う。






関連記事

目の敵

感染数が、爆発的に増えている。
予想通り、オリンピック開会時の二千人は的中。
夫も、最近では再び神経質になっている。
部活や塾帰りの子に対しては、玄関で除菌スプレーを吹き掛ける。どうせ、すぐにシャワーを浴びるからと言っていても、室内にコロナ菌が入ることが許せないのだ。
在宅仕事が多くなり、自身が外出する機会がぐっと減ったことで更にその傾向は強くなっている。

夫自身、先日は資格スクールの通学日だったのだけれど、除菌スプレーやシートを数種類持って行き、更に弁当を作って欲しいと言われた。あんなに外で豪遊するのが好きだった夫。いい機会とうなぎランチでも食べて来るのかと思いきや、まさかの弁当催促にげんなりした。

「ったく、最近の若者は常識がないわ。」


同スクールには、20代~の若者もいるらしいが、その中の一人が息苦しいと鼻だけマスクから出していたのを注意したそうだ。
すると、

「僕、喘息なんで。」

その一言を返され、周囲の空気が気まずくなったらしい。夫は苛つきながらも、

「あいつ、適応障害だろう?試験も落とされるぜ。」

夫が敵対心するイコール、恐らく優秀な人材なのだろう。ライバル心剥き出しの時の夫は、今の職場でもそうだけれど、相手のどうでもいいところを突っついてこき下ろす。
内心、夫の方が落ちるのではないかと思う。いや、落ちてくれと思う。そうすれば、起業の話はいったん白紙に戻るだろうし、このコロナ禍で新しいことを始めるなんてやはりそう甘くないし不安要素が多いのだ。

「そういえば、あなたの勉強は進んでる?」


ボケっとしていたら、突っ込まれるのでいちいち気が休まらない。簿記の内容がまったく頭に入らない。数字アレルギーだった自分を思い出す。やはり、就職活動をした方がいいような気がしている。










関連記事
  • category:

  • 2021/07/25

顔で笑って心で泣いて

従妹の妊娠を知ったのに、何もアクションを起こさないのはかえっておかしいかと思い、勇気を出してラインを送った。

ーお母さんから聞いたよ。おめでただって?おめでとう!

キャラクターがくす玉を割るスタンプを押す。しかし、私の心はこのスタンプとだいぶ掛け離れたところにある。もう長らく忘れ掛けていた負の感情を、ぐっと押し殺すことの困難さを思い出す。既読になかなかならなかったので、ラインを見る暇もないのだとPCを閉じた。
そして、やり取りせずに済んだことに安堵した。義務感からのメッセージなのだ。送信のノルマを終えたらもうこれ以上頑張る必要は無い。またあの沼のような闇に引きずられるのは御免だ。


子を一人っ子にしたこと、後悔が無いとは言い切れない。私がもっと捨て身で頑張れば、夫の気持ちも変わったかもしれない。頑張る前に諦めた。傷付きたくないから諦めた。拒絶されることに疲弊していた。そして、最後は自分のプライドを捨てきれなかった。

それでも、毎年のように夫宛に来る職場からの年賀状写真に目を背け、子がリビングで一人、スマホを触っているのを見る度に、もう一人子どもがこのリビングにいたら、どうだっただろう?と妄想してしまう自分自身に苦しめられた。
「姉」という自分では決めることが出来ない立場が、今の我が子の成長にどう影響したのか。どうやっても、プラスの妄想をしてしまうのだ。それは、現在の我が子を否定することになってしまうというのにー

突然、ガラケーが鳴った。ビクっとして着信画面を見ると、従姉妹からだ。

ー1,2,3、、、、7,8コール目でプツリと切れた。無理だ。相手からの電話に応えることが出来ない。こんな状態ではとても無理。嘘でも、まるで何も気にしていない風を装うことが出来るまでは、彼女に祝福の声を届けられそうもなかった。






関連記事

お台場閉鎖からのオリンピック開催

お台場のパレットタウンが閉鎖されるとニュースで観た。
もうしばらく行っていないお台場には、引きこもり主婦の私にも思い出がある。
まだ、若かりし頃、元カレとデートした場所だ。何となく、イベントの時は横浜かお台場という流れだったように思う。

元カレの奥さんのブログが削除されてから、彼の現在を知る由はない。過去の思い出にただ浸るだけのことだ。
ゆりかもめに乗り、例のガラスのりんごのドラマでも使われた砂浜を散歩したり、ヴィーナスフォートをウィンドウショッピングしたり。
楽しかった、キラキラの思い出が蘇る。
ノリで似顔絵を描いてもらって、彼の部屋に飾ったけれどー、さすがにあれはとうの昔に捨てられたのだろうと思うと、思い出は脳内の中だけで生きることを実感する。
観覧車も、10年限定と言われつつ延長されて、でもそれももう無くなるのか。元カレは音楽好きだったので、Zeep Tokyoにも行った。あるアーティストのライブで、実は私はあまり好みではなかったのだけれど、楽しいふりをして一緒に口ずさんだことも懐かしい。彼のことが本当に好きだったから、そういった演技すら楽しかったし苦ではなかった。

お台場閉館からの、オリンピック開催。

寂しくも、時代は巡っていく。当たり前だけれど、私達は歳を取る。
変化を素直に受け入れられ対応していけることが、成熟した大人の条件だ。











関連記事

節約アイス

こう暑いと、アイスをいくら常備していてもすぐに冷凍庫の中は空っぽ。
主に、部活帰りの子と在宅で涼しい部屋にいる癖に夫が二人そろってバカスカと消費する。
激安スーパーでアイスを大量に買いたいのはやまやまだけれど、自転車で行って帰って来るうちにその殆どが溶けてしまうし、夫と一緒に買い出しの時には、なんとなくそういった嗜好品を自ら買い物かごに入れることを躊躇してしまう。

夫は、コンビニでハーゲンダッツを買う。自分の為だけに。気が向けば、子の分も買ってくることもあるけれど、食べたい時にふらりと出掛けて買うので、その時間帯は夜間で子が寝た後だったり、学校で子が留守の時。

「あなた、ダイエットした方がいいでしょ。」

私よりも、ダイエットを気遣った方が良いのはお前の方だろうーそう思いながらも、もう夫の優しさに期待することもなくなった今では、ただただ無感情だ。

やりくり費は、果物やお菓子などを買うと一気に激減。頭を使って、月予算を守る必要がある。夫が先日、気分で作ったたらこパスタの生クリームの残りが半分程残っており、勿体ない。賞味期限ももう切れているが、捨てるのにはバチが当たりそうな気がし、思い立ったのがアイス作りだ。

冷蔵庫を見ると、完璧。まるでハーゲンダッツのような、リッチなアイスクリームが、牛乳や卵、それに砂糖と生クリームで出来るというのだ。
ジップロックに入れて、揉む。冷凍庫に入れる。再び、揉む。冷凍庫ーこれを繰り返すと、何となくだが固まってアイスっぽい。
早速、先程味見してみた。

ー美味しい!!

久しぶりのスイーツ作り。

部活から帰宅した子にも勧めてみる。ちらっとジップロックの袋の中身を見ると、


「え・・要らない。」

そう言って、常備しているアイスに手を伸ばした。母親の手作りよりも、市販のものに手が伸びるようになったのはいつからだろう。
昔は、喜んで一緒に食べたし、作ったりもしたのに。
手作りは、手間暇を掛けた、最高の贅沢品。そう思えたのも過去のこと。今となっては、ただの節約アイスとなってしまった。
だが、家族に対してではない、自分だけの為の手作りもまた、贅沢なことなのかもしれない。




関連記事

本当の財産

義父から聞いていた、三女が出勤の日、タッパーを持って義実家へ行った。
しかし、チャイムを鳴らすと義父がインターフォン越しに、

「あぁ、鍵は空いているから、そのまま入って来て下さいよ。」

なので、遠慮がちにドアを開ける。この家に嫁いでからこれまで、勝手に義実家のドアを開けたことなどないのだ。
ドアを開けてびっくり、たくさんの靴。ローヒールの女性用?の靴が何足も。そして、奥の部屋から笑い声が聞こえる。義姉?にしては声が低くも感じる。

「あら、こんにちは。あなたがお嫁さん?」

義母のベッドを取り囲むように、3人の女性が。義母と同世代だ。皆、綺麗に化粧を施し、また身なりもハイカラ。
義母は、先日の義母と同じ人物とは思えないくらいに血色の良い顔、そして生き生きとした表情で、

「ワタシノ、テニスノオトモダチー」

まだ、喋りは完全ではないけれど、ゆっくりと私に説明をする。義母の長らく続いていた趣味の一つでもあるテニス仲間が来ていたのだ。
義母のベッドの脇にあるサイドテーブルには、いつの間にやら色々なものが飾られている。お花は勿論のこと、手作りのような編みぐるみや色紙まで。ちらっと見たが、色紙は婦人会メンバーからのもののようでざっと10人以上から寄せ書きがされていた。

義母のテニス仲間の取り分けお喋り好きそうな夫人が私に微笑み掛けながら、

「お嫁さんも大変ね。わざわざ遠くから。近くに住んでいたら良かったのにね。」

悪気は無いのだろうが、見方によっては嫌味にすら聞こえる。義父がそれを制するかのように、


「いやいや、OOさんも小姑がまだ行き遅れでいるんだから、遠慮してるんだよ。」


三女のことを引き合いに、全面的に庇ってくれるのが有難かった。
タッパーを紙袋から取り出すと、義母の友達が寄って来て覗く。先日の義姉らの行動とまるで同じなので、デジャブのようだ。
もう一人の仲間が、

「ちょっと、あなたやめなさいよ。そんな覗き込んでみっともない。お嫁さんにも悪いわよ。」


「あら、ごめんなさい!」


義母が笑うと、皆も笑う。義母は相変わらず言葉は少ないが、とても楽しそうだ。そして、彼女らとずっと昔から信頼関係を結んで来たことが伺えた。何でも言い合える仲間。ママ友なのか趣味友なのか、テニス仲間といってもどういう経緯で親しくなったのか知らないけれど、彼女らの歴史に義父も立ち入れないような絆がある。そしてその絆を前にした義父は何とも幸福そうな顔をしている。

ふと、義母の葬式には多くの人が参列するのだろうな、と思った。そして、それが羨ましくも思った。
財産は、金ではない。勿論、金があるに越したことはないけれど、人徳だったり人との繋がりーそれこそが財産なのだという現実を目の前で突き付けられた気分だったのだ。






関連記事

昼飯問題

子が夏休みに入り、頭を悩ますがのが昼飯問題。どこの親もそうだろうけれど、コロナ禍の休校時代を思い出す。
夫の在宅が多くなったことで、食事作りのリハビリはそれなりに出来ていても、夫と子の好き嫌いは違うし、また食べ盛りのメニューは夫のダイエット食と別個にしなくてはならない。

夫はここ数年で体重が増え、とうとう糖尿病予備軍だ。

糖質制限は、面倒臭い。カロリー計算はまだ何となくしかしていないけれど、いよいよ本格的な糖尿病になってしまえば大変なことになる。
あれこれ考えて、折角カロリーの低い食事を出しても、やれ薄味だの物足りないだので、結局夕飯を食べた後にお口直しといわんばかりにスナック菓子やカップ麺を食べているのだから頭にくる。
一方、子は部活動もしているので、中学生の新陳代謝の良さを思えばそれなりのカロリーを費やした食事を考えなければならない。
そこに加えて、義実家の作り置き。
とにかく、一度の買い物の量が増えた。休日、夫が車を出してくれる時に買いだめをしても、すぐに冷蔵庫は空っぽになる。なので、この暑い中、自転車でスーパーをはしごせざるを得ない。

明日、義実家訪問の予定だ。夫は在宅。子は午前中部活で午後はフリー。昼食が必要。なので、ミニハンバーグをたくさん作って、義実家には煮込みハンバーグ、夫と子の昼食にはロコモコ丼で決まりだ。
ただ、段々とレパートリーも減って来た。ネットレシピを駆使しつつも、そろそろ限界。南蛮漬けなどはもう何週目だろう。
ネタが尽きたところで、義実家への足も遠のいてしまいそうだ。



関連記事

連れ塾

「塾、辞めたい。」

子がそんなことを言いだしたのは、実は先月から。
それでも、まだ入ったばかりなのだからとだましだまし通わせていた。
個別の担当講師は、男性。しかも、塾長。入塾の時の面談で、私も少し威圧的なのが気にはなっていた。
彼との相性が良くないのだろうか?
だが、塾長ならば若い大学生のような講師よりも経験値が高く、またノウハウに長けているのではないだろうかと、一方で安心感もあったのだ。

夫に相談する前に、子の言い分を聞こうー、そう思い、何が嫌になったのか尋ねる。
しかし、具体的にこれといったことはなく、何となく合わないの一点張りなのだ。

「担当の先生が合わないのなら、変えてもらうことは出来るんじゃない?」


「そんなの、気まずいって。」

ママは分かっていないーそんな表情で唇を噛み締める子。だが、まだ三か月足らずで投げ出すのもどうかと思う。
ただ、中間テストの結果はいまいちだったことを思うと、その成果は表れていないとも思う。

「でも、塾辞めてどうするの?一人で勉強するの?」

「個別じゃなくて、駅前の集団の方に行ってみたい。」

子が次に行きたいと言ったのが、まさかの集団。大手塾で、知り合いも多いと言う。

「先輩、そこ通って第一志望受かったんだよ!うちの部の子、みんなそこの夏期講習通ってる。」


「・・・」


皆がいるから私も行くーという志には賛同しかねる。単に、今の塾に仲良しがいないから?それで違う塾に変更したいのか?
子の塾の送迎に付き合っている際、確かに、子以外は塾の隣のコンビニで友達同士買い食いをしてお喋りを楽しんだりしていたのを見たけれど、それは目的と掛け離れた行為だ。しかも、このコロナ禍。買い食いなんてもってのほかだ。

「みんなが通ってるから通いたいって、そんなのパパに通る訳ないでしょう?勉強は、みんなでするものじゃなく一人でするものだよ?」


「ママには分からないよ。友達付き合いがどんなに大切なものかって。」


「・・・」


子は、大きな音を立てて自室のドアを閉めた。私が、おかしいのだろうか?





関連記事

出遅れ

昨日は、再び大手町での集団接種の予約が取れる日だった。
夫は、相変わらずワクチン接種についてはネガティブな考えだ。
副反応諸々のことを思うと、勝手に接種してダウンしたところで、家事を率先してやってくれるか不安が残る。
もんもんとしつつも、だが、持病のこともあるのでさっさと打って安心したい。確率の問題で、やはりデルタ株が蔓延しつつありオリンピックを控えていることから、接種する方が安全だと思えるのだ。

在宅の夫が仕事を終え、自室から出て来た。

「ねえ、やっぱり私はワクチン打ちたいんだけど・・」


反対されるかもー、そう思い、恐る恐る尋ねる。すると、


「え?打ちたいなら打てば。」


拍子抜けするくらい、あっさりOK。時計の針を見ると、17:54分。
大慌てでPCを開く。立ち上がったのが、58分。夫のお下がりでもう古いPCなので、起動に時間が掛かるのだ。
苛々しつつ、防衛省のHPを検索したり、予約ページを探したりする。見付けた時の時間はもう見ていないが、予約ボタンを押してもアクセスが込み入っており入れない。

出遅れた。何度も何度もアクセスする。

ー繋がった!!

やっとの思いで繋がると、一日だけ△の枠が。日時を確認する為、壁掛けしているカレンダーを見に行く。デスクに戻り、△の枠ボタンを押す。

ーあれ?

全画面に戻る。更新すると、先程まで△だった枠が×印に変わっている。ものの30秒足らずだ。
完全に出遅れた。
こういうものは、事前に準備をして臨まなければならないことをひしひしと実感した。




関連記事

HPV

自治体より突然届いた予防接種のお知らせ。我が子宛てのものだ。
内容は、HPVワクチン予防接種で、小6~高校1年生対象である。先日、夫ともコロナワクチンのことで揉めた後なので、再び頭を悩ます問題が追加された。
HPVワクチンは、任意の接種なので、受けるも受けないも各家庭と個人の自由。その自由が自己責任にも繋がるので、慎重に決めなければならない。

私自身、接種したことのないワクチンなので不安がある。子宮頸がん疑いがあった私自身、その遺伝を子が継いでいたとしたら受けるべきなのかもしれないとも思う。そして、性交渉を持つ前に打ならないワクチンー、まだ子にその兆候はないし、あるべきではないけれど、接種するのなら計画的に早めに打つべきなのかという思いがある。

また、4価は公費だが、効果の高い9価は自費。そのどちらを選択すべきなのかも悩む。効果は高いが、承認されたばかりで4価よりも安全性が低いようにも思う。
また、効果が8年という短い期間なのも、考え物だ。

そして、以前ニュースの特番で観た、副作用に苦しむ女の子達を思い出すと、抵抗感が拭えない。突然、我が子がワクチンを接種した日から登校出来なくなるー、そのようなことがあれば、一生後悔してもしきれない。
その一方で、コロナワクチンの副反応を大々的に放映するマスコミの情報をすべて鵜呑みにするのも危険ではある。
一部のリスクをクローズアップし過ぎて、逆に大きなリスクを負うことになるかもしれないのだ。

結局、どうしたらよいのか答えが出ない。いくつもある選択の自由は、時に身動きが取れない状況に追い込まれる。
コロナワクチン同様、受けるか受けないか、受けさせるべきかべきでないか、再び、家族会議をしなくてはならない。


にほんブログ村 主婦日記ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 主婦日記ブログ ひきこもり主婦へ
にほんブログ村

にほんブログ村 主婦日記ブログ 専業主婦へ
にほんブログ村

にほんブログ村 子育てブログ 一人っ子へ
にほんブログ村
関連記事

絶賛、中二病

子の面談だった。三者面談なので、子も少なからず緊張していたようだ。
まだ中学2年、なので受験年ではない分、いくらかプレッシャーは少ないはずだ。
担任の話によると、学校生活は特に問題ないとのことでほっとする。だが同時に、子の印象が薄過ぎるのではないかとも思う。
「問題なし」という言葉は、良くも悪くも地味で目立たない生徒に対する常套句だ。

子とのやり取りも今一つ盛り上がりに欠けており、私が子の分まで気を遣うはめになった。
担任が、子に色々尋ねてもリアクションが薄いのだ。

「はぁ、別に・・」

こんな受け答えだ。しかも、ふらふらと上半身を揺すったりして落ち着きがなく、受け答え以前に態度の方が気になってしまった。しまいには、机に肩肘を付いている。
担任は、困ったような笑みを浮かべつつ、私に向き直る。

「成績は、このような感じです。」

中間テストの結果は知っているが、説明を受けるといまいちの結果だったようだ。塾の成果も出ているのかいないのか何とも言えない。

「夏に入りますし、やり方など見直した方がいいですね。」


遠回しに、今のやり方を否定されているようだ。子は、そんな担任のアドバイスを聞いているのかいないのか、窓の外を眺めている。

きっかり15分で終了し、挨拶をして廊下に出た。既に次の親子が待っており、会釈する。次の生徒は女子生徒。だが、子とその子は視線も合わさず何となく気まずそうだった。中学生ともなると、グループ以外の子とは挨拶もしないのだろうか。いや、中学生ではなくいい年の母親世代だってそうだったか。

外に出てから、子に説教をした。

「分かった分かった!」

面倒臭そうに眉間にしわを寄せ、

「部にちょっと寄ってから帰るから!」

そう言って、テニスコートの方へ駆けて行った。絶賛、中二病。いつかは過ぎると分かっていても、ついため息をついてしまう。








にほんブログ村 主婦日記ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 主婦日記ブログ ひきこもり主婦へ
にほんブログ村

にほんブログ村 主婦日記ブログ 専業主婦へ
にほんブログ村

にほんブログ村 子育てブログ 一人っ子へ
にほんブログ村
関連記事

アレルギー反応

リサイクルショップに入ると、驚く程の価格帯で様々な種類の服や靴、バッグが販売されていた。
ちょっといいなと思ったブラウスが、なんと200円。百貨店にあるようなブランド物であっても500円。
新品ではないけれど、使用感もさほどない。
千円札を握りしめ、店内をうろうろする。これもあれもと欲しくなる。パンツやロングスカートも300円。
目を引いたのは、今流行の夏用ロングスカート。サラリとしており、涼しそう。カラーはグレイ。トップスを黒か白にすれば、面談でも綺麗めなので通用するだろう。
どうせ買うのなら、普段使いも出来る服が良い。
試着室もあるので、商品を持って早速着替えた。

ーいいじゃない。

これが、350円だなんて安過ぎる。既に日本から撤退した海外のアパレルブランドのものだからだろうか?ウキウキとその他ストライプのシフォンカットソーも購入。二つ合わせて消費税込みでも千円でお釣りが来た。
メルカリでの購入は、試着が出来ないのでNG。リサイクルショップの良い点は試着OKというところ。レジで会計を済ませ、持ってきたエコバッグに入れた。


しばらくして、くしゃみが止まらなくなった。そして、腰回りが痒い。痒くて痒くてたまらない。
すぐにスーパーのトイレに入り、腰回りを見ると、見事に蕁麻疹。アレルギー反応だろうか、とにかく痒くて気持ちが悪く、さっきまでの浮足立った気持ちはすぐにしぼんでしまった。

洗えばどうにかなるだろう。思い直し、面談の日に備えた。



にほんブログ村 主婦日記ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 主婦日記ブログ ひきこもり主婦へ
にほんブログ村

にほんブログ村 主婦日記ブログ 専業主婦へ
にほんブログ村

にほんブログ村 子育てブログ 一人っ子へ
にほんブログ村



関連記事

洋服が欲しい

三者面談が明日にある。
懇談会程ではないけれど、憂鬱だ。そして、子がいる前で一体何を話せというのか?
教師の方だって、生徒を前に親に対して本人について明け透けに伝えるとは思えない。
結局、当たり障りのない内容に始終するのではないかと思うと、これも不毛な時間だ。
それでも、何を着て行こうかクローゼットの中身を引っ張り出してはあれこれ悩む。
普段のように、ジーパンにシャツという訳にいかない。子の通う中学校の保護者は、何度か行事や懇談会のような場で見た限り、割ときちんとした服装で来校しているのだ。
スネ夫ママやボスママなんて、軽くスーツ的な服装だ。とはいっても、リクルートスーツというよりもパンツスーツのようなカジュアルにも着回せそうなもので、ジーパンにジャケットを合わせてコットンパールネックレスなどのコーディネートも出来そうな素材のようだたけれど。

結局、くたびれたヨレヨレの服ばかり、きちんとしたものはセレモニースーツや面接の時に着用したリクルートスーツのようなものしかない。アンサンブル的なものがあったかと思ったのだけれど、見当たらない。そういえば、毛玉や伸びが気になり捨ててしまったのだっけ。以前、同窓会で着用したものにしようかと思ったりしつつ、なんと太ってしまったのかお腹がきつ過ぎてギブアップ。
そういえば、もうどれだけ新しい服を買っていないのだろう・・、いや、まったく買っていないことに気付く。ネットショップを巡回しているうちに、購買欲がむずむずと湧いてきた。私のクローゼットにある服は、ジーパンとボーダーシャツやパーカー以外についてはどれも時代遅れのデザインに思える。

これ、素敵ー。ポチってしまいたいー、だが、我慢。勿体ない。
そして最近、近所に出来た新しいリサイクルショップを思い浮かべる。リサイクル品は、ハウスダストのアレルギーが酷い私にとっては敏感に反応が出てしまうので避けていたのだけれど、ちょっと覗いてみようか。
善は急げ、義父からいただいたお金のうちの千円札を握りしめ、出掛けることにする。



にほんブログ村 主婦日記ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 主婦日記ブログ ひきこもり主婦へ
にほんブログ村

にほんブログ村 主婦日記ブログ 専業主婦へ
にほんブログ村

にほんブログ村 子育てブログ 一人っ子へ
にほんブログ村

関連記事

隙間風

実母に改めて電話を掛けた。引っ越しの件について、詳細を聞きたかったからだ。勿論、夫の出勤日。
珍しく、1,2コールで母が出た。

「あら、あんた。掛けようと思ってたわよ。」

いつものように、勿体ぶった感じはない。むしろ、喜々とした声。

「あんた、大変よ!!大変!」

興奮しきっており、要件をなかなか言わない。いつものことだが、落ち着くまでじっと待つ。こういう時、こちらからあれこれ尋ねても逆効果なのだ。


「N恵ちゃん!やったわよ、おめでた!」


ーえ?


まるで受け止める準備の無かった内容に、一瞬、周囲の音という音が消えた。受話器の向こうの聞き慣れた声が遠ざかる。
意識を失うような、体も心もふわっとどこかに持ってかれるような不思議な感覚。それでいて、胸の奥がちりりと痛む。

「今、妊娠4か月らしいわよ。安定するまで言えなかったんだって。だって、あの子ずっと二人目作りたくて治療してたでしょう?姉さんから聞いてたのよ。お金も掛かるし、女の子一人だって十分可愛いしもういいじゃないって私も言ってたんだけどね。やっぱり諦めきれなかったんでしょうね。でも、姉さん、体も壊してるしもう孫の世話は出来ないって言ってるからね。これから一体どうするんだろう。」

「へぇ。そうなんだ。大変だね。」

「でもさ、こんな時期に妊娠だなんてね。コロナもどうなるか分からないし、そもそもこれから大人になる子ども達は大変よ。あんたのところは一人で良かったわよ。孫が何人もいたら、先を考えると頭も痛くなるわ。」


ー関係、ないじゃん。

所詮、母が言う「頭の痛さ」とは、周囲に大変アピールをして労ってもらう為の材料に過ぎない。本当のところ、孫のことなんてどうも思っていない。コロナのワクチンを接種したことで多少は気持ちに余裕が出来たのだろうが、それまでは大変だった。そもそも、孫よりも息子、娘よりも息子なのだ。だから、弟はいまだ自立出来ないで実家に依存しきっている。
以前、はっきり私にこう言ったのだ。

「もしもOOの体に何か異常があっても、私は臓器提供なんて出来ないわ。悪いけど、孫は所詮、孫なのよ。子どもじゃないからそこまで体張れないわよ。」


この言葉がずっと心に残っている。なので、頭が痛いと言われても、口先だけの発言に思えるのだ。

受話器を置いた後で、結局、引っ越しの詳細を聞き忘れたことに気付いたが、電話を掛け直すだけの余力は無かった。
そして、もう長らく忘れていた感情に引きずり込まれる。とっくに諦めたはずなのに。
従姉妹とは、同じ血が通っているからだろうか?まったく似ても似つかない従姉妹であっても、血の繋がりが同じ土俵に立たせるのだ。そして、そこでは羨む気持ちと嫉妬心がぐるぐると渦巻く。瞼を閉じると、情景が浮かぶのだ。

幸せな家庭ー

4人家族。素敵なマイホームに妻想いで子煩悩の夫。再び、小さく柔らかい生き物を愛おしそうに抱く従姉妹。そして、待望の妹の誕生を喜ぶ従姪。
我が子にも、兄弟がいたらどうなってただろうー、そしてそれを思い浮かべると切なくなる。
そして、ついこの間の口約束が虚しく思い出される。


「OOのところも一人っ子だし。将来、お互いを姉妹だと思ってくれたらいいよね!今はコロナでなかなか会えないけどさ。うちの子のことも年の離れた妹だと思ってくれたら嬉しいな。うちの子は、家ではOOのことお姉ちゃんだと思ってるんだよ?」

必死に治療しながら、本当の兄弟を仕込みながら、そんな風な言葉を口にしていたN恵は今、一体どんな心境なのだろう?
もう既に、彼女は違う土俵に立っている。

心に隙間風が吹いている。何をどう詰めたらこの隙間は無くなるのか、誰か、教えて欲しい。










にほんブログ村 主婦日記ブログ ひきこもり主婦へ
にほんブログ村







関連記事

泥棒猫

久しぶりの夏空。一気に気温が上昇。
シーツなどの大物をバルコニーで干しているだけで、汗びっしょりだ。
午前中の約束通り、おやつの時間頃に例の公園へ行く。おやつの時間なので、バッグにちょっとしたお菓子も忍ばせて。
すると、針金さんとあの親子が既におり、気持ちはズンと重くなる。

「あ、来た来た!」

私に気付く針金さんが挨拶をしてくれ、あの母親は会釈のみ。何とも感じが悪い。私は声を張って挨拶を返す。必要以上に大きな声に、自分でも驚いた。

「今日は暑いでしょう?可哀想だからたくさんお水を持ってきたの。これも。」


そう言って、霧吹きのようなものを猫に掛ける。猫は嫌がっているようだけれど、水しぶきを浴びた後は気持ちよさげな顔をしていた。

「あ、それでさっきの続きなんですけどー」


母親が、私が来る前までしていたのだろう、会話の続きを始める。私にはちんぷんかんぷんで、それもまた嫌な気分だ。この母親、ママ友がいないんじゃないのか?普通、もっと大きな公園で子ども同士遊ばせられるような場所へ行ったり、また自分と同じ世代の母親と絡むのが自然なのだと思う。それなのに、なぜ私達にーいや、針金さんに執着するのだろう?
それは、会話する大人がここでしか見付からないから、ここが彼女の居場所になりつつあるから。
だとしたら、更に警戒心が湧く。
いるべき場所にいられない、馴染めない親子ー。そしてそれはかつての私だ。
なんだか深刻そうな雰囲気もあり、二人に近付けなかった。なので、猫と子どもに近付く。

「おはよう。猫ちゃんも暑いよね。僕は暑くない?」

話し掛けたくもないが、黙っているのもおかしいので適当な言葉を掛ける。だが、男の子は私をちらっと見ると、逃げるように母親の方へ行ってしまった。


「なに~、どうしたの?猫ちゃんと遊んでおいで。」


「・・・」

すごく気まずい。私も引きつり笑顔を浮かべながら、男の子に手招きをする。だが、より一層、私を怖がるかのように母親のスカートの影に隠れてしまった。

「まあ、そういうところもあるってことでね。一応、紹介しておくね。」

「あ、じゃあ、ライン交換とかして貰えたら助かります!」

「あ。はいはい。じゃあっと・・ごめん、これどうするんだっけ?」

「あ、このバーコードを開いて、」

二人がライン交換をしているのを後目に、猫を前にしつつますますどんよりとした気分に陥っていた。紹介?って何なのだろう?それにライン交換をしたことで、一気に私以上の速度で針金さんとの距離を詰めるだろう彼女が疎ましかった。
私と針金さんとの穏やかな日常に、突如乱入。針金さんに依存し、私に対しては塩対応。彼女の真意が分からない。

「あれ?猫ちゃんはどこに行ったのかしら?」

猫を目の前にして、私の神経はすべて二人の動向にあった為、猫の行方が分からない。
だが、目の前で見ていなかっただなんて明らかに変なので、

「あっちの茂みに行っちゃった。他の猫ちゃんがいたから。お友達かな。」

「え?他の猫ちゃん?」

「うん・・」


ー泥棒猫がね、連れてったよ。


連れてかれそうなのは、まさに針金さんだ。













関連記事

空振りからのホームラン

午前中、天気も良かったので意気込んで例の公園へ。
1時間程粘ったが、猫も針金さんも来ない。ただひたすら、炎天下の中待ち続けて疲れ果てた。時間の浪費だ。
誰もいない公園のはずが、たばこをふかした男性が一人。私と同世代。
一体、こんな平日に何をしているのか?
ただ、身なりはきちんとしていたので、恐らく在宅仕事で一服休憩なのだろう。
視線が合い、なんとなく気まずくなって公園を出た。あちらはあちらで、一人で公園にいる私を変な女だと思っているに違いない。
手ぶらで帰宅すると、なんと針金さんと玄関でばったり会った。

「あら、おはよう!」

「あ、おはよう。」

「猫ちゃん、いた?」

「いや、いなくて。暑いからどこかに避難してるのかも。」

「そうかもね。ちょっと私これから銀行ついでに見て来るわね。いなかったら、午後も暇だからちょっと見に行ってみる。」

「私も!何時くらい?」


「おやつの時間かな。」


約束が出来たことで、俄然、家事スイッチが入る。3時までに掃除洗濯、そして夕飯の下拵え。
嬉しい約束があることで、生活に張りが出る。









関連記事

節約レジャー

休日は、夫と買い出し。梅雨時なので、車があると助かる。極力、まとめ買いをして、私だけで買い物に行く時はちょっとしたものを買うように心掛けている。
節約に目覚めた夫は、もやしや豆腐などの安い食材をアホみたいに多く買い物かごに放り込む。
だが、結局使い切れず捨てるはめになったもやしや、毎日のように同じ食材を口にしていると、舌も飽き飽きしてくるのだろう。
突然、肉コーナーへ行くとバカ高い国産牛肉をぽいぽいと放り込んだ。

ー!

「ボーナス出たからな。これくらいいいだろう。」


時々だが、食費やテイクアウト代は、キャッシュレス決済も取り入れている。
とはいっても、それは夫が出す時。夫のスマホから決済しているのだ。私はガラケーなので、基本は夫から給料日に手渡しされているやりくり費。時々足りない時は、夫に申請。

だが最近は、義父からのお礼金で財布は潤っている。子の好きな菓子や果物などの嗜好品は義父から貰った金で賄うし、また義実家へ料理を作る際はその材料を買うのだが、材料が余れば必然的に我が家の食卓に上がることも多い。なので、食費は前よりも減ったのだがその内容は豊かだ。しかし、全体的には子の塾代や医療費などでオーバーしている現状ではある。
全体を把握しきれていないので、さほど危機感はないのだけれど。


「今日は、パパが作るぞ!」

料理熱はすっかり冷めたのかと思ったが、高級食材を前に再熱したようだ。とはいっても、ただ焼くだけのステーキ。鉄板焼きのようにホットプレートで焼いたのだが、あんなにたくさん買ったと思った肉は、プレートに並べると案外少なく感じた。
なので、半面に、もやしやキャベツなどの野菜とウインナーを焼く。松坂牛は、子がとても美味しいとパクパク食べていたこともあり、なんだか遠慮してしまい手が伸びずにいたら、瞬く間に無くなった。私が食べたのは、一切れのみ。

「あー、お腹いっぱい。」

夫も子も満足そうだったが、私はまだ小腹が空いており、冷蔵庫に余っている3袋入りの焼きそば1袋を鉄板に空けた。

「おい、まだ食うの?食いすぎ。」


夫は呆れたように私を見たが、肉一切れと野菜炒めとウインナーでは物足りなかったのだ。だが、結局焼きそばにも手を付ける二人。


「今度こそ、お腹いっぱい。」


子が、はち切れそうだと言わんばかりに腹を撫でる。私もようやく満足し、一切れだったが松坂牛の味を思い出し幸福感に満たされた。
美味しいものを前にすると、笑顔になる。逆に、貧相なものばかり食べていると、家庭の空気も悪くなる。
何事も、家庭円満にはメリハリが必要だということだ。

「外食したと思えば、安いもんだよな。」

確かに、外食すれば、酒代込みで2万は掛かる内容だ。

「次は、うなぎ食べたい!」


遠慮なく、こう言える我が子。それでいいのだ。









関連記事

コインランドリーでひと休み

夫在宅の日、義両親宅へ。この日が指定で良かった。そうでなければ、簿記の勉強を夫の前でしなければならないからだ。
購入したテキストをパラりとめくってはみたが、1ページももたずにウトウトしてしまう。そして、すぐに動画を観たりして現実逃避。やる気がわかない。

この日もたくさんのタッパーに数日分のおかずを詰めていった。酢の効いたものをリクエストされていたので、ネットでそれらしいものをいくつかピックアップして。
春雨サラダやピクルス、なすとシシトウ、鶏ももの南蛮漬け。即席の白菜漬物ーこれは市販の漬物の素を使ったー、かつおの角煮やさばの味噌煮など。
これだけ作るのは大変だけれど、在宅の夫のランチにもなるし、またその日の夕飯にもなるのだから一石二鳥。作るまでのメニュー決めには頭を悩ますし、買い物も6人分と考えると大変だけれど、たまにのことだから頑張れる。それに、1万円を貰っている以上、栄養バランスを考え食材をケチることなど出来ないのだ。


義両親宅で、掃除もする。洗濯は、義父がやってくれているけれど梅雨時もあってなかなか乾かず大変だと言うので、近くのコインランドリーへ行った。自転車で行くのは大変だけれど、外に出られる分気楽だ。しかも、そのランドリーはカフェのようになっており、イートインスペースがあるのだ。なので、ちょっと贅沢をして自販機でアイスコーヒーを買って、のんびり出来る。雑誌もたくさん置いてあるので読み放題。

その日は、常備菜を届けることとコインランドリー(勿論、代金は義父より渡されている)のみで、簡単に掃除機を掛けたのみ。
2階にある三女の部屋をちらっと覗くと、女性の部屋とは思えないくらいの散乱っぷりに驚いた。だが、勝手に掃除などしようもんなら大変なことになるだろうから、そのままスルーした。
ぐちゃぐちゃのベッドの上には、脱ぎ散らかした部屋着や洋服、それに、PCデスクの上には仕事関係の書類などに交じり、中途半端に食い散らかされた菓子や飲み掛けのペットボトルが置かれており、捨ててしまいたい衝動に駆られつつ見てみないふりをした。


「今日も、お世話様。はい、どうぞ。」


いつものように封筒を渡される。義母はこの日、殆ど眠っていた為話していない。私が来たことも知らずにいるのだと思う。
有難く封筒をいただいたうえ、食べきれないからと、ご近所からお裾分けされたという桃までいただいた。
普段、果物など高くて買えないので有難い。
義実家の食卓は、義母が元気だった時はとても豪勢で品数も多かったはず。なので、私が作るものは比較すれば貧相だろうけれど、義父はとても美味しいと言ってくれる。それに、健康的だとも。

「正直、この年になるとそんなに食えないんだよ。お母さんが作る料理は、娘や孫のことを考えてという感じでボリュームもすごかったからね。これくらいが、丁度いい。」


義父なりに、私を気遣ってくれているのだろう。それが、嬉しかった。








関連記事

上昇志向

夫のデスクには資格関連の書籍も積んであるが、その他、株や投資などの金関連の本もわんさかある。
これからは、米国株だと言い出し、新たな投資も始めているようだがその詳細は分からない。
増やすことに貪欲な夫だが、先々を見据えた上で金を遣うことに抵抗はないらしい。資格試験を受ける為、スクールに通い出した夫。基本、通信やリモートで対応しているが、月に1度程度は通いもある。そこで、多くの受講生と会い、刺激を受けているようだ。

「あなたみたいな主婦もいたよ。これからどうなるかも分からない世の中だからね。自発的に行動するかどうかで、将来が決まってくるからな。」

お説教がまた始まったー、こういう時、私は貝になる。耳をぴたっと閉じるイメージ。確かに私はその主婦のようなバイタリティはない。だが、いざ私がそういう妻だったら、夫とはうまくいかないような気がする。それは、義姉らにも言われたことだ。


「OOさんだから、カズはうまくいくのよ。お人形みたいに何でも言うこと聞いてくれるから。」

酔っ払いながら、そんな言い方をした義姉に夫は薄ら笑いを浮かべるだけで何も言わなかった。それが、夫の答えだ。
そして、私もそれでいいと思っている。その方が楽だし、そもそも私は主体的に動く性分ではない。だが、時に、私と正反対の女と比べる癖がある夫に苛立つ気持ちがないとは言い切れない。

「上昇志向?そういうの持った方がいいぜ。子どもは親の背中を見て育つんだからな。取り敢えず、簿記頑張れよ。」


みようによっては、なんだかんだで夫は私の自立を応援してくれているといってもいいのかもしれない。簿記のテキスト代や受験料は、負担してくれるのだから。
それでも、もやもやする。やらされてる感が否めないからだ。







関連記事
  • category:

  • 2021/07/09

書店散歩

久しぶりの本屋。本や雑誌を読みたければ、だいたい図書館に行っていた。
コロナ禍になってからは、滅多足を運ぶことがない。気に入りの図書館も、スネ夫ママやボスママが司書パートをしているのを知ってから遠のいた。
夫から、簿記3級を取れと言われ、参考書を買いに来たのだ。さすがに問題集は図書館で借りるわけにはいかない。

資格取得コーナーへ。簿記だけではなく、あらゆる分野の資格が並ぶ。こんなに種類があっても、私はそのどれも保持していない。
簿記のテキストを手に取る。背筋がしゃんとする。なんだか、しっかりしなくてはという気になる。
ちらっと、以前購入したMOUSのテキストが目に入る。結局、最後までやり遂げることが出来なかった。興味が持てないのだ。

ぱらりとページを繰る。MOUS以上にまったく興味が持てそうもない。数字の羅列に頭がくらくらする。
予め、ネットのランキングで☆が多かったテキストを手に取り、雑誌コーナーへ。

立ち読みを1時間以上もしてしまった。
雑誌は、面白い。料理や節約、断捨離や健康、それにファッションや暮らし。あらゆるジャンルに興味がわく。内容も、すっと頭に入って来る。

ただの立ち読みが、気分転換になった。自宅でネットの情報を収集するのとは違って、やはり紙は紙の良さがある。






関連記事

今日の写真

ロック

部活の保護者集まりが延期となり、
ほっとしている。
今週が予定だったのだが、試合の見通しが立たない為だ。子には悪いが、親の出番がないことが嬉しい。
こんな時、母親失格だと思うけれど、私なりに、ある時は体調を崩すまで頑張ってやってきたのだ。

そういえばーと、子のスマホチェックをしばらくしていないことに気付き、部屋の机に置かれているそれに手を取る。
ネットでの制限は掛けているものの、やはりラインでのトラブルや例の男子生徒とどうなっているのかも気になる。
親子であってもプライバシーは守るべきだと思うけれど、それよりも子が危険な橋を渡る方が怖い。罪悪感をおぼえつつ、指でタップする。


ーあれ?


もう一度、タップする。


ーえ?


それまで、指でタップすればすぐにホーム画面に到達していたのに、ロックが掛かっている。その現実に、頭を殴られたような衝撃をおぼえた。
しかも、指紋認証。暗証番号だったら、誕生日など思い付くナンバーを入力してみることも出来たけれど、指紋だともう手の打ちようがない。
困った。そして、突然なぜ子がこのような行為に及んだのか?私がスマホを隠れてチェックしていることに気付いたのか?
そもそも、ロックを掛けなければならない事情があるのか?


生理前で頭痛気味だった頭だが、更に痛くなった。




関連記事

今日の写真




今日の写真






関連記事

エビデンス連発

例にももれず、我が家のポストにもワクチン接種券が届いた。
実際の予約は、7月中旬といったところだろうか。
てっきり接種するつもりだろうと思っていた夫が、突然言い出したことに戸惑っている。

「変異株には効かないワクチンだろう?それに半年しか効果がないんじゃ意味ねーよ。」

夫はどうでもいいけれど、子も受けたくないと言い出した。子も接種券配布対象年齢に入っているのだ。
予約は7月下旬頃。

「えー。痛そうだし嫌だよ。それに子どもは重症化しないんじゃないの?打つ方が副反応怖いしな。」


「だよな。」

私は接種するつもりでいた。いや、今もそのつもりである。だが、家族でこうもワクチンに対しての温度差があるとは思わなかった。

「長期的エビデンスが無いものを、むやみに信じて。あなた、テレビを鵜呑みにして自分の体を提供出来る自信は一体どこから来るわけ?」


「でも、オリンピック後に感染爆発したら、その時にワクチン打ってなかったって後悔したって遅いんだよ?」

夫や子は、顔を見合わせて笑う。私なりに、家族のことを考えての発言を嘲笑されたことに怒りをおぼえる。


「あのな、普通は何年もの治験を重ねて認証されるべきワクチンがだよ、あっさり認証なんて怖くねえの?特に、OOは女のだぞ?あなた、女の子の親としての自覚あるわけ?不妊にならないエビデンスがどこにあるの?え?デマ?何十年経ってから結果が出ることにデマって、そっちがデマじゃない?いわば、未知のワクチンを無知で打つことに恐怖はないの?あんたすげえな。怖いもんしらずだわ。だいたい、マスコミや政府が接種後死亡のニュースなんて報道して誰得なわけ?因果関係ある死亡者がまだ500人にも満たないってこと、そんなん氷山の一角だから。」


夫は、一気に捲し立てた。こうなると、私は何も言えないし言っても聞き入れてすら貰えない。だが、今回の件に関しては、夫の妻というよりも子の母としての立場ー、それが勝って引くわけにいかなかった。

「でも、感染爆発した時に有効率90%以上のワクチンを接種済かどうかで、生活の制限も変わって来るよ。デルタ株にだって有効だし。修正免疫が得られる可能性を示す論文だって出てるんだから!」


子は、私達の言い合いを間近に見たことが殆どない為、驚きを隠せないようだった。だが、私はどう思われても、子を守らなければならない。


「今、私達が出来ることって、ワクチンを打つことくらいしか出来ないんだよ?治験?いいよ、私は実験台になったって。それが将来的にOO達にとってのエビデンスになるのなら。」

最後は感情的になり過ぎて泣いてしまった。夫は、ため息をつきながら自室へ籠ってしまった。

「ママ?私、どうしよう・・」

子が、困り果てた表情で私に問う。


「ママは受けて欲しい。パパは受けない方がいいって言ってる。じゃああなたは?難しいかもしれないけれど、もう自分で選択しなくてはならない年齢なのかもしれないね。」


そう答えるしかなかった。















関連記事
  • category:

  • 2021/07/05

リアル引っ越し話

母から、引っ越しを考えていると連絡があった。以前からその話はあったのだけれど、父が病気になったり、またこのコロナ禍でうやむやになっていたのだ。その話はもう無かったことになっていたのだが、また再浮上。

「ここずっと、要らないものとか整理して捨ててたからね。それに、あんたが昔使ってた部屋も物置だけど使わないまま勿体ないし。部屋数減らせば、家賃だって随分安くなるのよ。」

母は、喜々として語るけれど、内心は電話越しで表情が見えない分、分からない。
この年で引越しとはー・・だが、私も将来のことを考えると、弟が一人残された時にその家賃を支払える余裕などないことなど仕事内容から分かる。その日暮らしに近い仕事なのだ。現時点で辞めたいなど言わずに続いているけれど、正社員ではないし、人間関係でまた色々あればクビになることもある。先のことは、分からない。

「ワンルームでも、いいかなって思ってる。掃除も楽だし。」

ーえ?大人3人でワンルーム!?

母の衝撃的な発言に絶句する。というか、そこまで支払いに困っているということか?だが、プライドの高い母は、金に困っての選択ではないと主張する。ゆくゆく弟が一人で住む際、手入れが楽なワンルームが良いとのことなのだ。無理がある。

「で、いつ・・」

具体的な引っ越しの日取りを聞こうとしたところ、夫が私を呼んだ。その声で、受話器越しの母が固まるのが分かる。

「あら、あんた旦那休みだったの?ならまた今度、いない時にあんたから掛けて。」

そう言い残し、一番聞きたいことを聞けずに電話は終わった。


「誰から?」

夫に聞かれ、素直に母からだと答えたけれど、その内容については伏せておいた。なんとなく、いまだ落ち着かない実家のことを夫に馬鹿にされるような気がして言えなかったのだ。



関連記事
copyright (c) 隣の芝生 all rights reserved.

プロフィール

selinee

Author:selinee
FC2ブログへようこそ!

月別アーカイブ

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR