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大晦日

なんだかんだで大晦日。
しかし、昨夜から喉が痛く、鼻水がだらだら止まらない。また、夜中は熱が上がったような火照りを感じ、悪寒もあった。
もしかして、夫と子の風邪がうつったのか?それともー、まさか?
病院も開いてないし、様子を見るしかない。抗原検査のキットでは陰性だったのが救いだけれど。
巷でも、徐々に感染数が増えており、またバイトを始めたことでこんな私でも外に出る機会が増えたことでイコール、感染リスクは高まった。
一応、仕事前には皆検温などの感染対策はしているものの、それがどこまで確実な対策になっているのかは分からないのだ。

年末、シフトが入らないことで例年通りそれなりのメニューを考えていたのだけれど、買い出しにも行っていないし無理だ。
大晦日は、天ぷらにそば。だが、天ぷらは最悪テイクアウトして貰うことにして、元旦の朝はどうしようか。
夫に買い出しを頼むのも微妙だし。
なんとか手抜き出来るようなものを買いにいけるうちに動いて、最悪紅白など観れない年末になるかもしれない。
お節なんか作る気にならないし、最低限の雑煮の準備。
頭がぼーっとして、正直夫と子だけ義実家訪問して貰い、私は一人で年末年始を過ごしたいくらいだ。
仕事を始めたことで、やはり家のことが疎かになる。体調管理含めて。

年末年始の買い出しや料理、年賀状を出したり、お年賀、お年玉の準備など・・主婦に年末年始の休みは結局のところ無い現実だ。














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突然・・

「年内は、シフトは入らなくていいですから。」


突然、職場からのシフト変更依頼の電話に、ほっとする半面、おや?っという不信感。
大晦日もシフトが入っていたのは主婦として気が重いながらも、少しは稼ぎたいし、一日3~4時間なのでなんとか頑張ろうと気合を入れていたところなのだ。
それが、突然の変更。会社都合というやつなのかなんなのか?理由を聞けば良かったけれど、その時は仕事に行きたくない気持ちが大きく、むしろ変更になりラッキーという感じだったのだけれど。

これからも、こんな風に突然のシフト変更依頼があるのだろうか?その為に予定を開けていたとして、急にキャンセルではいいように使われているというか、もやっとする。


しかし、これでゆっくりと出来ていない大掃除に正月準備が出来る。
夫の機嫌を取ることも出来るし、何より、普通の主婦らしい年末を迎えられることに安堵する。

今月の給料はー計算しなくても大体は分かるけれど、スイーツくらい買えたらいい。



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大掃除と苛々

清掃バイトをすることで、家の掃除が疎かになっているのは事実。夫からも、チクリと言われた。

「あなた、仕事で得たノウハウ、もっと家で発揮して下さいよ。」

夫が私に対して敬語を使う時は、要注意。苛々マックスといったところ。しかし、体が思うように動かない。早朝バイトの日は、ただでさえ睡眠不足のなか、みっちり体全部を使って働く。寒い中、作業着の中は汗だく。だが、手は手袋をして作業をしていても荒れ放題。
何度も手洗いをしているし消毒をしていることもあり、指先の殆どがささくれやぱっくり割れで辛い。

疲れて昼に仕事から帰宅しても、夫と子はリビングでぐうだらスマホをいじり寛いでいるだけ。そして、昼ごはんの催促だ。
一度、ファーストフードを買って帰ったが、子は喜んだものの夫は気に入らないのか手を付けず、カップラーメンを食べ始めた。
そういうこともあり、作らなくてはという強迫観念に追い詰められる。


午後は、大掃除に取り掛かる。しかし、本当に疲れ果てており、仕事の時のような働きは出来ずどれも適当になってしまう。しかも苛々が募り、とうとう子に八つ当たりをしてしまった。

「自分の部屋くらい片付けて!!ママ、働いてるんだから協力して!」

ヒステリックに叫ぶ私を見つめ返し、大きくため息。口答えはなくても精一杯の反抗なのだ。

「まだ私、病み上がりなのに。」

そして、一言もっともらしい言い訳を呟く。こういうところだ。夫の性格を受け継いでいる。
水回りー、キッチンにトイレに風呂掃除。このどれか一つくらい夫がしてくれたら楽なのに。私がバイトを始めても、この二人は生活を変えようともしないし合わせようともしない。こんな風にしてしまったのは、他でもない私自身なのかもしれないけれど。







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ある男性

年末に向けて、レジャー施設は賑わいを見せる。
職場でもある大型ショッピングモールでも、既に年末休みの家族らが年始の準備や余暇の充実に浮足立っているのが目に見えて分かる。
相変わらず仕事前は気が重く、最中はミスのないよう必死だけれど、とうとう同僚の男性に邪魔にされた。

「ぼーっとしてんじゃねぇよ。」

その日担当だった清掃用具が見当たらず、右往左往していたところだった。まだ、新人なのだーという甘えは許されないのか、その男性は初日から私が挨拶をしても返してくれることもなく仏頂面。そういう人なのだろうと思っていたのに、他の人とは談笑していたりもするので心が折れた。
これまで、女性からあからさまに嫌な対応を取られたことはあっても、男性からはそんな経験も少なく、またドスの効いた声であんな風に言われると、心臓が爆発しそうで恐ろしい。
シフトに彼の名前を目にするだけで、バクバクとパニック症状寸前にまで追い詰められるのだ。
彼は、独身なのだろうか?年齢は私と同世代に見える。勿論、バイトだ。
色々と彼の生活背景を想像し、自分とは世界が違う人間なのだと思う一方で、だが、同じシフトに入った時の数時間は場所も時間も共有しなくてはならない。それが、物凄く苦痛で、ストレスだ。
年内は、彼は休みを取っているので一安心。だが、いつ同じ日のシフトに入るのか気になって仕方がない。
やはり、辞めたい。







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不合格

なんだかんだで期待していたのだろう、不合格を知り、体の中の魂が抜けるというかやっぱりなという気持ち。
やっぱり、私は私で私以上でなく、私が知っている私。物心ついた頃から馴染んでいる冴えない私。
そこに奇跡はなく現実が転がっているだけ。

3級なんて、子どもでも受かる。夫からはそう言われたし、それでも合格するわけじゃないという予防線を張っていたつもりなのに、心の隅っこではチラリとまぐれで合格してるイメージをちょいちょい持っていたものだから、思ったよりダメージを受けている。

清掃の仕事は、やっぱり私には合わない。初日で無理だと心も体も拒否反応。今は、辞める正当な理由を探しているのだ。
夫の仕事、事務作業を手伝うとなれば、最低限簿記の知識は必要で、その為の3級の試験だったのに自ら勉強に身が入れきれず手放してしまった。そのポジションに吉田さんかもしれない別の誰かが置かれることになったとしても、私にどうこう言う権利は無いのだ。
全ては自分が蒔いた種。

わずかであっても、使っていたテキスト類。少しは身近に感じていたはずのそれらが、急に他人行儀にこちらを見ている。
お前じゃないんだよ、と言われているようなそんな感じで。

しかし性懲りもなく、もう一度、頑張るかーなんて気持ちも薄っすらあったりもする。
自分に自信を持ちたいのだ。その為にも、公的な公認が要る。






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男性ばかり

初仕事の前、結局、夫と子にはお願いして病院で検査をして貰った。もしもオミクロンなんてことになっていたら大事だからだ。
いくら私がバイトの分際であっても、それがマナーというものだし常識だ。家族に発熱者がいることを隠したとして、もし自分にうつっていたらいずれはばれる。
人としてー、それはNG行動。

結果、夫も子も陰性だった。それが分かると、二人とも「ほらね?」というような、大袈裟なんだよといった風だった。

「鼻、痛かったー。やって損したよ。」

「ごめんね、でも職場に迷惑掛けられないから。」


職場は、自分が思い描いていたものとだいぶ違っていた。
まず、共に働く人達がほぼ男性ということ。しかも、中年男性・・話が合う訳もないしどう接したらよいのか分からない。
それに、力仕事も案外多く、そういった時は彼らが率先してやってくれるのだが、私も同じ時給なのだからと頑張ったところで足手まといになる。
必要以上の会話もなく、言われたことを黙々とやるのみ。それは気楽な半面、なんだか自分が機械のパーツになったようで、心をどこにやったら良いのか戸惑うばかりだった。
人となるべく接したくないと思いながら、一方で暖かなコミュニケーションを求めている自分。

そして年末年始のシフトも何日か入っている。しかも中途半端な時間。義実家訪問の日ともかぶっており、夫をうまく説得しなくてはならない。
私だけ欠席か、別日に私達家族は訪問するかー。恐らく、夫は仕事を休んでくれと言いそうだけれど。
まだ始まったばかりなのに、悩みどころは多い。







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辞めたい

バイト、私には無理そうだ。
直感的に、これは続かないと思った。力仕事が多いし想像以上。
それに、雰囲気がきつい。言葉にしにくいが、ハブられているということではないが、肌に合わない。
これまでもいくつか合わない仕事はして来たつもりだが、初日はそんなものだと割り切って頑張っているうちに慣れて来て、いつの間にどうにかなっていた。
だが、今回は違う。無理ーの一言。

自宅に戻り、熱いシャワーを浴びて切り替えたつもりなのに全然切り替わらない。クリスマスディナーの準備にもなかなか取り掛かることが出来ず、胸に重い鉛が乗っかっている、そんな感じ。

既に、退職の申し出テンプレートをネットで探す始末。辞めるのなら早い方が相手方にも迷惑を掛けないのだと、そんなもっともらしい理由を付けて。


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イブの朝

外はまだ暗く寒い。
イブの朝ー。今年は平日がイブなのが救いだ。私だけではない、皆、働いている。
そして、今日が初仕事という人もいるに違いない。例えば、クリスマスケーキやチキンを売る単発の仕事だとか。
そんなどうでもいい想像をして、一人じゃないのだから大丈夫だと自分に暗示を掛ける。
仕事が終わり、シャワーを浴びたら、クリスマス料理の準備をしよう。予め、材料は既に買ってある。
だが、疲れている自分を想定して、皆にはばれない様手抜きディナーだ。

どうか、一日無事に過ごせますように。





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不安症

仕事のイメトレとして、家の中の掃除をしている。
が、夫も子も高熱を出し、取り敢えず自宅で抗原検査。結果は陰性。
病院へ行き、PCRを受けた方がいいのではと言っても、二人とも聞いてくれない。夫はそもそも在宅仕事だし、子も学校を休んでいる。
なので、あと一日経っても熱が引かなければ病院へ行くからとわからんじんなことを言うのだ。
私は初仕事を控えている身だ。自分にうつったらまずい。いや、もしかしたら保菌しているかもしれない。
そういう怖さがあるのだから、二人には身の潔白を証明して欲しいのだ。

「大丈夫大丈夫。寝てれば治る。」

夫は、心底動くのが億劫そうだ。車の運転を自らして病院へ行くことを嫌がるのだ。

「あなたが連れて行ってくれればいいけど、無理だろう?」

どうしようもないことを言う。子の方は、熱はあるが夫程に症状は重くない。なので、このまま終業式までに治るかもしれない。


「抗原検査したんだから、ママは心配性だね。」

正直、簡易キットは信用出来ない。病院で正確な検査をして欲しい。そう思うのは不安症なのだろうか?




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重圧

実家とも義実家とも気まずい関係となったわけだが、いったんそれは置いて、新しい仕事のことに集中するのみ。
共に働く仲間とうまくやれるだろうか?不安が過る。ただ、清掃なので黙々と体を動かすのみ、私の苦手とする雑談タイムなんて皆無かもしれないし、そもそも働く仲間が同世代とは限らない。
それでも、新しい環境に身を置くのは怖い。何もかも初めまして、分からないことばかりの中、人に聞き、なるべく迷惑が掛からないよう仕事を覚えていかなくてはならない。

子の熱は、下がらない。今日も学校を休んだのだけれど、在宅中の夫にもうつってしまったようで、微熱ながらに仕事をしている。
食欲もわかず、朝も昼もお粥とりんごのみ。このまま高熱になり、二人とも臥せってしまったら、それでも仕事に行くべきかどうか悩む。
長らく専業だったので忘れていたけれど、こうして仕事でない日も仕事のことを考える。この時間は勿論、無休だ。
バイトといっても、それに伴う責任。それは重くなまった心身に圧し掛かる。




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検査・・

子が、発熱した。そして義実家訪問時、姪や甥が咳をしていたことを思い出した。
彼らと関わるとろくなことがない。
37度と微熱ながら、鼻水と喉の痛みは酷いらしく辛そうにしている。インフルの予防接種は打ったから大丈夫。それより頭を過るのはコロナ感染。
長女のところは開業医なので、いくら感染しないよう気を付けていても、私達よりそのリスクは高い。そして、大学生の姪や甥もバイトをしたりと行動範囲が広い分、更にリスクは高い。
そんな中、ここ最近の感染数減少で油断していたのも事実。子は、義実家宅で皆とケーキも食べていた。次女が持参した有名パティシエが作るケーキだったものだから断る理由など無かったのだ。

取り敢えず学校は休ませ、病院に行く前に抗原検査。簡易キットの封を開け、綿棒を取り出す。

「自分でやるから!!」

私にされるのを嫌がり、自分で綿棒を手にするけれど、説明書通り鼻の奥まで突っ込んでくれない。


「もっと奥にしないと正しい結果出ないから!」

「分かってるって!」

そう言いながらも、突っ込みが甘い。甘過ぎる。もっと思い切り、ググっと奥に勢いよく突っ込まなければ駄目なのだ。
しかし、鼻を突っついている最中に盛大にくしゃみをしてしまい、中途半端に終わってしまった。

コロナだったらどうしようか。金曜は、初出勤なのだ。濃厚接触者になれば、休みの届を出さなくてはならない。
なんて間の悪いーようやく決まったバイトが駄目になる。働きたくても、家族がいるとどうしても思い通りにならない。
子は既に大きいし、ただの風邪くらいなら留守番だってさせられるけれど・・コロナだとそうはいかない。





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丸いナイフ

ふと、私は彼女らの捌け口になっているのだろうと思う。
義姉らからの厳しい追及を受けながら、どこか他人事に空から眺めている自分もいた。
某人気ドラマの、あのラーメン屋に嫁いだ嫁のような、そんな感覚。酒も入っていないのに、頭がぼんやりとする。
もうどうにでもなれという具合に、流れに身を任せてしまいたい。

「私が意見出したところで、それは通るのでしょうか?」

するりと口を出た台詞は、場を凍り付かせた。長女の眉がピクリと上がった気がした。
私がこれまで人形のように振舞っていたから、うまくいっていたのではないか?もし、彼女らと同等の気の強さーだったり隙のない嫁であったら、果たしてどうだっただろう?彼女らのプライドをずたずたにするくらいに、出来た嫁だったら?マウンティング出来ない程、全ての上で有能だったら?
3人は、思った通り反論し始めた。想定外だった嫁の一言に憤慨し、自らを正当化させる。

「私の意見なんてありません。皆さんに従うまでです。」

こちらに選択を委ねたところでそれが通るとも思わないし、もし通ったとしても、先のいざこざの責任はすべて負わせたい。敢えて、夫に直接聞かない義姉らの思惑通りになんてさせてたまるかー柔らかな言葉で、私の先端部分すべてを向けた。




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お人形さん

義実家訪問は、久しぶりで家族3人で出向いた。
夫もようやく姉達と元の仲を取り戻したのだ。私は再び蚊帳の外ー、バトンタッチするように、今度は私自身が実母と絶縁状態。
どうせ正月も訪問するのだからーと思うけれど、夫的にはそれまでのぎくしゃくを取り戻したいのだろう。それに、彼自身の試験も終わり、開放感もあるのだろう。今後の展望も、彼にとっては明るいものなのだ。

「あー、麻婆豆腐?昨日食べちゃった。」

三女からの軽いジャブを苦笑いで返す。義父は、そんな三女を窘めるのに、夫は庇ってくれやしない。

「あー、あなた、電話でリクエスト聞いてから作ればよかったのに。」

そんな風に言われ、むしゃくしゃする。

「冷凍すれば?」

「豆腐、冷凍するとまずいって。あり得ないから。」

「一日くらい冷蔵庫で明日食べれば?」


作った本人を目の前に、三人娘はああだこうだ無神経にやり取りする。そんな光景を目を細めて眺める義母は、ちょっとボケてしまったのだろうか?以前なら、毅然と叱り飛ばしてくれていたのに。それともこれが本当の姿なのか?どんな不出来な娘であっても可愛いく、どんなに出来た嫁であっても憎い。それとも、私のやり方に不満があるのだろうか?こうなった時、同居の話の一つも持ってこない息子と嫁ー、いや、嫁だと思っているのかもしれない。

子は、従姉妹たちとスマホゲームをして私は手持無沙汰。到着してまだ15分も経たないうちに帰りたくなる。しかし、今回は夫の運転で来たので酒が入らないだけ在宅時間は短くなると、それを励みにただ時が過ぎるのをじっと待つ。

義母の体調は一進一退だけれど落ち着いて見えた。夫は、義兄らと楽しそうに歓談しており、私は三人娘に取り囲まれた。
夫の仕事のこと、これから義両親はどうするのか?家購入は考えているのか?同居を考えているのか?だとしたら、三女は家を出るつもりなのだと言う。マンション購入の頭金くらいは用意してあるという。具体的に、どういったマンションなのか、単身用なのかそれともいい人がいて結婚する見通しがあるのか?こちらも聞きたいことは山程あるが、素直に聞いたらボコボコにされそうだ。

「私には、分かりません。カズヒロさんの方で色々と考えているかと思います。」


本当のことだ。なのに、次女はあから様に不機嫌そうな表情をし、また三女はやれやれと首を振る。


「あなた、お人形さんなの?自分の意思はないわけ?カズと結婚した時から思ってたけど、何考えてるのか全然分からない。ちょっと、腹を割って話しましょう。」

長女にきつく言われ、身を固くする。お人形さんーという言葉がぐるぐると頭を回る。あんた達だって、私と同じ立場に立てばそうなるんだーそう叫びたい気持ちをぐっと堪える。






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七面倒くさいことばかり

実家の引っ越し当日。この師走の忙しい中、なぜこの時期にしたのだろうと疑問が湧く。
母に追い出されてから、こちらからも連絡はせず向こうからも何もない。大きなしこりを抱えたまま、だが弟にラインをする。
男だからか、姉からの連絡がうざったいのか、いつでもレスポンスが遅い弟。だが、自分の用件に限ってはしつこく催促するところもあり、そういう部分が母と重なる。

ー引っ越し、済んだら連絡して。

ーお父さん、大丈夫?

ー何か困ったことがあれば、連絡して。

母と揉めたこと、弟は知っているはず。あの人が黙っていられるわけがないし、バイトから帰宅した弟の首根っこを捕まえて、私の悪口オンパレードなのは見なくても分かる。そして、弟も母の肩を持つのだ。
大きくため息を付いていたら、珍しく夫がそんな私の様子を気に掛けたのか、

「どうした?」

尋ねて来た。弱っている時は、こんな夫にでもついもたれかかりたくなる。

「今日、実家の引っ越しなんだけど・・」


「ふーん。そんなことよりトイレットペーパー変えた?なんか肌触り悪いんだけど。元のヤツに戻しておいて。」

「・・・」

期待した私が馬鹿だった。夫にとって私の実家はトイレットペーパー以下。自分の尻の拭き心地の方が重要事項なのだ。
そして、実家の引っ越し当日に義実家用の常備菜を作ることに違和感をおぼえる。いや、違和感というよりも罪悪感のような不快感のようなうまい言葉が浮かばないけれど、ネガティブな感情。

むかつくので、手の込んだものは作らない。簡単な煮物と和え物、それに素を使った麻婆豆腐。何もかもが面倒臭いしややこしいのだから、口に入れるものくらいシンプルでいいのだ。








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イブのシンデレラ

初仕事、それがクリスマスイブになってしまいなんだか落ち込む。
いや、仕事があるだけ喜ばしいことなのだろうけれど、それでも気が進まないのが本音。
世間がお祭り気分で楽しく過ごす日、キラキラとしたイルミネーションの中、私は地味に清掃の仕事をする。
いや、勿論そういった仕事をしている人の存在によってそのキラキラがあることは百も承知だ。だが、こちら側とあちら側ー、一本の線から自分がこちらにいるというか、これまでもこちら側の気持ちだったのに、その隔たりがより一層色濃くなったようなそんな薄暗い気持ちになるのだ。


イブに仕事が入ると家族に伝えると、やはり夫は難色を示した。夕飯はどうするのか?何時から何時まで仕事なのか?買い物は済んでいるのか?ケーキは?チキンは?と子どものようなことを聞いてくる夫に苛々した気持ちを抑えながら、彼が満足する回答を返した。


イブといっても、昼で上がるシフトだったのが幸いだ。これが夕方から夜だったらと思うと家庭崩壊。子もコロナ禍ということもあるのかまだ中学生だからなのか、イブだけれど家で過ごすことになっている。あと数年して恋人が出来れば勿論家にいないだろう。来年は受験ー、となると、今年が家族でゆったり過ごす最後のイブになるのかもしれない。
とはいっても、夫はどうせリモートでいつもの仲間達とクリスマス会兼忘年会をするのだろう。それでもリビングに私や子がいるのといないのとでは気分が違うのだ。夫は王様気質だから。

シンデレラのように、清掃バイトが終わったら魔法を掛けられドレスに着替え、舞踏会に行く妄想をする。アホらしいが、そんな妄想でわずかの間、現実逃避したっていいじゃないかと自分を慰めるのだ。



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毒と餓鬼

「歩み寄るって?具体的に何?家電じゃなくわざわざ携帯に掛けて来たり、カズヒロさんが仕事って時だけ遊びに来たり、たまに会っても目を合わせもしないし話し掛けもしないのはお母さんも一緒でしょう?N恵のとこは、伯母さんが最初から努力してたよ。義理の息子と仲良くなろうって、積極的に家に呼んだりN恵が留守でも家に遊びに行ったりして。バレンタインだって、旦那さんに毎年チョコレートやプレゼントあげてたって言うし、誕生日だってやってたって。だから旦那さんだって、N恵抜きで子ども連れてふらっと遊びに行くことも出来るようになったし近くに住もうって決断もしたんじゃないの?相手を変えようったってそうはいかない。自分が変わろうとしないと相手だって変わらないし、いつだって腹に一物でそれが透けて見えるから、カズヒロさんだってお母さんが思うのと同じくらい苦手意識持つんじゃないの?」

「は?バレンタイン?誕生日?そんなの知らないわよ。なんで私がそんなことしなくちゃならないのよ。こっちだってやって貰ったことないのに。そりゃあ、相手がやってくれたらお返しは何倍にもして返すわよ。そんなことより私はあの人にいつだって気を遣いながら話し掛けて来たわよ。いやね、私、人生これまで生きて来た中で一番気を遣った人間かもしれない。あんなとっつきにくくてやりにくい相手初めてよ。大勢の男どもと働いて来たけど、ぜーんぜん気を遣わないしむしろ楽しく付き合ってきたわ。だから、あの人が問題なのよ。」

何十年も前にちょろっとやったパートごときで接触した、母が言う男ども。それは職場の人間なのか客なのか分からないけれど、そんな大昔のことを持ち出され、あれから自分はまったく変化がないとでもいうのか?むしろ、仕事を辞めて狭い世界ー私もその一人だが、その狭い世界でどんどんと偏屈になっていき、しまいに女友達だって一人もいない、そんな状況の中で錆びつき歪んだコミュニケーション能力を疑いもせず、さも今もまだ自分が万能選手だと思っていること、それ自体がイタ過ぎる。


「あー、うんざり。あんたと話してると疲れるわ。もういい、帰って!」

顔を真っ赤にして、目の前に置いてある私が食べた後の食器をシンクに投げ入れた。目は血走り、これ以上何を言っても無駄なのだとその表情を見て思う。私が子どもの頃から知っている、怒りのど真ん中にいる時の母。
ヒステリックな母を前に、まだ何も手伝っていないのだからーと言い掛けてもシャットダウン。そして家を追い出された。
父は、最後まで寝室から出て来ることはなかった。私達のやり取りを聞いていたのかいないのか、寝ていたのか知らないけれど、その存在感は年々薄くなり過ぎている。
母は毒だ。そして、そんな母をまだ受け入れられる程大人になり切れていない自分は餓鬼だ。

家に戻り、気を失うようにソファーに倒れ込みそのままひと眠りしてしまった。起きると既に夕方で外は薄暗く、だがいつの間にか雨はやんでいた。ぼやけた頭に午前中の記憶が蘇り、激しい後悔に襲われる。また、やってしまった。我慢して聞いていれば良かった。いったん口にした言葉は戻らないし、記憶力の良い母が忘れる訳もなく、私達親子の溝は再び深いものとなる。
母も、もう年だ。いつ何が起こったって仕方がない。これが、最後の別れになるかもしれない。そうなった時、私は後悔するだろう。
だが、それも仕方がない。たとえ血が繋がろうと、相性というものはある。私と母は、とても近くて遠くてしんどい関係性なのだ。
ここ数年、表向きには穏やかだった付かず離れずの関係性に亀裂が入り、胸に重い鉛を抱えて年越しをしなければならないことを思うとただただしんどい。













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爆発

実家の引っ越し手伝いへ行って来た。
約束の昨日は、とても寒くしかも雪予報だった為、延期したい気持ちを引き摺りながら実家へ。
ドアを開けると、玄関から家の中はごちゃごちゃといくつもの段ボールや粗大ごみ的なものが積み重なっており、今大地震が来たら生き埋めになるのではと思うくらい。
弟は、年末繁忙期の短期バイトに出ているということで、家には母、それに父。父は体調が悪いのか奥の部屋で横になっていた。
母は、張り切っているのか頭に三角巾、それに割烹着を着用しせっせと動いていた。

すぐに作業にうつろうとエプロンを付けるよりも早くお茶を出され、話す気満々の母。子が下校する前には帰宅したいので、やるべきことをさっさと終わらせたいのに、まあいいじゃないのと和菓子まで差し出す。出されたものを拒否すれば機嫌が悪くなるので、仕方なく手を付けた。


「忙しいのに悪いわね。そうそう・・N恵、そろそろよ。」

従姉妹の出産話から始まり、そこから親戚のあれこれ。なかなか作業に移らないしお喋りが止まらない。そして、保証人の件については互いに口に出さず。肝心なことに触れない私達。だが、思いのほか母が楽し気に引っ越し準備をしていたのが意外だった。今のところよりも狭くて家賃も低いところに越すのだから、もっとナーバスになっているのかと思っていたのだ。
しかし、そのままで済むわけが無かった。N恵の話から、N恵の夫の話になった途端、矛先がこちらに向かった。

「それにしても、あんたの旦那、本当に来ないとはね。」

引っ越しの手伝いに来ない夫のことを非難する。そして、やはり私のバイトの話。段々とヒートアップし、しまいには怒り出した。

「あんたの旦那がここにいたら、ガツンと言ってやりたいわよ!そんな奴のところに嫁に出した訳じゃないってね。一生金に困らないっていうから嫁がせたのに。それに、普通は嫁の実家が引っ越すっていったら手伝いに来るもんじゃないの?まさかスルーとはね。それに比べて、N恵のとこの旦那は孝行息子だよ。姉さんが入院した時も毎日見舞いに行って、通院の送迎も仕事休んで行くしね。しょっちゅう旅行に連れてってくれるって言うし、姉さんも実の息子のように可愛いって。あんたの旦那みたいに愛想悪くないから。」

夫の欠点については、実母以上に分かっているつもりだ。だからこそ、いちいち口に出して言われることは苦痛でしかなかった。自分自身の胸の内で思っていることを母が代弁してくれているーだなんて思えない。それは、夫をけなされたというよりも、そんな夫を選んだ私をけなされている、そんな風に思えるからだ。

「私は歩み寄っているつもりよ?なのにこの何十年、あの人はこっちに歩み寄ろうともしないし、たまに来れば憮然とした態度でこっちに気を遣わせて。あー、失敗したわ。やっぱりこの結婚、反対すべきだった!」


口に放り込んだ和菓子の味が苦い。苦い。苦い。限界、限界、限界。
とうとう爆発してしまった。
















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制服を前に憂

採用担当者から連絡があり、具体的なシフト調整。そして、やはり自分に務まるのかと不安が過る。
夫からは、もう一つくらい掛け持ち出来るのではと思われている。それは、このバイトが週3~4日の3時間程度だからだ。
また、シフトによっては早朝の時もあるのだと言う。驚いたことに、それが6時~。通勤時間含めて、朝5時台に家を出る必要がある。
夫と子の朝食はどうしたらよいのか?
リハビリ程度にーと、日中の数時間やってみて慣れてきたら増やすか別のバイトを探すかしようと思っていたのだが、果たしてうまくいくかどうか。

「年末年始は休めるの?」

夫から当たり前のように聞かれ、言葉に詰まる。まだその件については確認していないし、したら落ちるのではと思ったので、確実に決まれば聞こうと思っていたのだ。
思い切って、担当者に年末年始はシフトが入ることもあるのか聞いてみると、

「ええ。年末年始も映画館は営業してますので。」

なぜそんなことを聞くのか?というニュアンスで返された。


「休みとか、取れますか?」


「えーと、それは他の方との調整次第ですかね。皆さん、年末年始お休みされたい方も多くいらっしゃるので。」

たった3時間といっても、大晦日や元旦にシフトが入れば家族はいい顔をしないだろう。もしも元旦に早朝シフトが入れば、夫と子と二人きりの正月だ。なんといっても、私自体がその光景を想像するとげんなりする。正月くらいのんびり自宅で過ごしたい。大晦日の夜更かしも出来やしない。


先走り過ぎたーと後悔する気持ちに反して、制服が届いた。それを着て働く自分をイメージすると、更に気分が重くなる。
勢いでよくよく考えず応募してしまったバイト。吉と出るか凶と出るか、今は分からない。



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頭が忙しくてパンク寸前

夫から、今週どこかで義実家の様子を見に行って欲しいと頼まれた。今週は、バイト先から詳細について連絡があり、内容によってはすぐに出勤ということもある。
また、実家の引っ越しの手伝いもあり、更には中学の進学説明会なるものも予定されており気忙しい。なので、来週まで待ってくれやしないかと答えたのだが、聞き入れてくれない。

「5日あるうちで、引っ越しと説明会除けば3日はあるじゃん。バイトだって、フルタイムでもないんだろう?予定がかぶったとしても、数時間で済むことなんだから。もうちょっと時間のやりくり考えればいいんだよ。要領悪過ぎ。」

渋々、行くことにしたのだけれど釈然としない。夫だって、実家のことを何もしてくれないではないか。いや、百歩譲って無理だとしても、一声あればまた違う。実現しないにしても、手伝おうか?の一言、それが夫には無い。

今日、バイト先から連絡がなければ、せめて今後の予定を立てたいのでとシフト的にいつ入る可能性があるのか聞こうと思う。待ちの状況が長ければ、身動きとるにも取りにくい。



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  • 2021/12/13

私の市場価値

実家から、翌週引っ越しの手伝いは何時に来るのかと連絡があった。すっかり忘れていたのは、自分の体調不良に加えバイトが決まったから。
まだバイト先からシフトなどの詳細は知らされておらず待ちの状況。ふと、あれは採用の電話だったのか?と不安がよぎる。

「ごめん、その日一応行く予定だけど、もしかして行けなくなるかも。」

実母は、予定変更を異様に嫌がる。実の娘であっても、一度嫁に出た人間は外部の空気をまとう。その空気を迎え入れるのには準備が必要なのだ。準備といっても目に見えるものではない、心づもりだ。

「なんか予定でも入るの?」

明らかに不機嫌そうな声。しかし、隠していても仕方がないので理由を告げた。すると、血相を変えてー電話越しで表情は見えなくてもその声色で分かるーまくしたてた。


「はぁ!?このコロナ禍に働く!?ちょっとどうかしてるんじゃないの?しかも掃除?勘弁してよ。そんなの。ちょっとあんたの旦那、嫁をそんな風に働かせるなんて、あり得ない。そんなところに嫁にやった訳じゃない!」

自分の娘ー。母の理想とかけ離れた仕事。それに対する嫌悪感なのか何なのか、しかしそんな職業差別的な態度をとる母の方に余程の嫌悪感をおぼえる。


「運動がてら、軽い掃除だよ。そんな汚れたところ掃除するわけじゃないし。気分転換だから。」

そう甘くはない。ただ、そう言わないと母の逆上が止まらないし、その勢いで夫に直接怒りの電話でもされたらかなわない。あくまでも、気分転換。そう告げることで落ち着かせようとこちらも必死だった。

「やめてよ。あんたまだ40でしょう?もっと他探しなさいよ。いくらでもあるでしょう。正社員は無理かもしれないけど、デパートの洋服売り場とか。」

母は、私のことを全く理解していない。接客だなんてー、しかも百貨店の接客なんて私に務まる訳がないのだ。こんなコミュ障の私がそれなりの客にそれなりの対応がスムーズにこなせるわけがない。


「とにかく、もう決まったから。合わなければすぐに辞めるよ。」

「辞めた方がいい、絶対に。あんた、もっと自分を高く売りなさいよ。」


本当に、母は私のことを分かっていない。
私の市場価値ー、それを評価してくれたところが一つでもあったことが奇跡なのに。










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転塾先のアイツの面影

夏頃、通塾していた個別が合わないと言い出した子を説得しつつ、通信と併用してだらだら通わせていたけれどやはり思うように成績が上がらなかったことで、いったん辞めさせた。
強い引き留めがあったものの、そこは頑として譲らない夫。電話口で私がおろおろしていたら電話を代わり、超威圧的態度でこちらの言い分を押し通し、塾長も黙らせた。こういう時、頼りにもなるのだ。

夏休みが終わり、ぼちぼち友達が通っているという集団塾へ通っているのだが、果たして成績は上がったのかと言われれば、現状維持ということろ。
正直、がっかり。塾の面談でそれとなく上がらない理由を聞けば、

ーこの時期、現状維持でも大変です。周りも同じく頑張っているので。

という、お決まりなのだろう回答。しかし、塾へ通っていなければ成績はガクンと落ちると言い切る塾側に何となくの不信感。
そんな中、子がポロリとスネ夫ママの子の名前を出したのだ。久しぶりに聞くその名前に鳥肌が立った。最悪なことにK君は子が転塾した集団塾の生徒だったのだ。しかも、一番上のクラスでその中でも一握りのトップ生。
毎回、塾内のテスト結果が張り出される度、彼はトップ3に入っているそうで、子も知った名前がそこにあることに興奮をしていた。だが、特にお互い話したりすることもないし、すれ違ってもあちらは子のことなど眼中になさそうだ。

この胸のもやもやは何だろう。よくないことだけれど、大嫌いな母親の息子が順調な学校生活に+成績優秀ということに腹が立つ。そして、子にもっと頑張れとーど真ん中クラスのぬるま湯に浸かり切っている様に苛々も募るのだ。


「ママ、仕事始めるのはOOの塾代の為なんだから、ちゃんと結果出して貰わないと。」

つい、圧を掛けてしまうのだ。



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りんごの芯

ピンポンー

玄関の鍵穴を覗くと、針金さん。何だろうとドアを開けると、紙袋を差し出された。

「りんご、要らない?友達からたくさん送られて来て。貰ってくれたら助かるんだけど。」

有難く頂戴し、だが何となくすぐにドアを閉めるのも悪い気がして話を振る。とはいっても、最近急に寒くなったねくらいの世間話で、こういう時に気が利いた雑談ひとつ出来ない自分が不甲斐ない。

「こないだ、あなた見掛けたんだけど。急いでいるようだったから声掛けなかったけど、スーツだったでしょう?お仕事始めたの?」

ドキっとした。そしてそれは恐らく清掃バイトの面接に行くところを目撃されたのだろう。オブラートに包みながらも、


「あ、あれ?面接だったの。」

「面接?合格した?」

「うん、お陰様で。」

嘘ではない。丁度、昨日に清掃業者から補欠採用の連絡があったのだ。針金さんから聞かれたタイミングも良かった。


「このコロナ禍にすごいね。何のお仕事?」

さらりと聞くが、遠慮のない突っ込みに少しの違和感を抱く。


「あー、ええと、普通の仕事だよ。」


普通の仕事って、一体なんだ。自分でもおかしな返しをしてしまったことに困惑する。それに、普通ではない仕事っていうのも何なのだろう。そういう言葉で括ってしまったことに後悔する。

「オフィスワーク?接客?それとも・・」


こちらがなかなか口を割らないので、更には具体的カテゴリーで回答を求めようとする針金さんに、この人、こんな人だったっけと更なる違和感。

「体を動かす仕事かな。ごめんなさい、ちょっとこれから出掛けるので。りんご、ありがとうございます。」


ヒントだけ与えて、ドアを閉めた。なんて言うか、自分でもよく分からないけれど本能的に彼女に対して警戒心を抱いたのだ。
そして、いつも自分はそうなのだと気付く。仲良くなれそうだと踏み込むと、相手の一挙一動に振り回されながらも期待したり落胆したり、そして最後に自ら蓋をして離れていく。相手に嫌な部分があるとしたら、相手からした自分だって同様だ。それでも、居心地の良い関係性にたどり着く前に息切れし、仕舞いには一人を寂しがりながらも、その状況に落ち着いたりもする。
身勝手なのだ。


紙袋に入っているりんごを一つ取り出し、表面を流水で洗い流すとガブリと齧った。サクっとした歯応えを感じるとともに、甘酸っぱい香りが口から鼻孔に抜ける。
三分の一程齧って、最後まで食べきれずに捨ててしまった。三角コーナーに置き去りにされたりんごは、針金さんなのか私なのか。結局、いつだって芯まで辿り着けないままなのだ。











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補欠要員

雨だからだろうか、起きた時から激しい頭痛。それに倦怠感。
なんとか夫と子を送り出し、自分は朝食もそのままに再び布団にくるまった。
断片的に夢を見ていたような気がするが、次第に電話の着信音が聞こえる。現実と夢との境目を行ったり来たりしながらも、それが現実など気付いて飛び起き、テーブルの上にある携帯を取るが、手から滑り落ちる。それでも鳴りやまない着信音に、画面表示も確認せず応答ボタンを押すと、聞き覚えのあるようなないような男性の声。
それは、先日応募したはずの清掃業者からだった。

簡単に言うと、補欠採用のような話。採用者が数人いたのだけれど、そのうちの一人が辞退したとのことで空きが出たらしいのだ。
まだ、具体的にいつ来てくれという指示は出来ないけれど、キープとして待っていてくれというだいぶ身勝手な申し出だった。
それでも、寝起きのぼけた頭では嬉しい感情が湧いた。こんな私でも、採用されたーそれが補欠であっても。
どん底から、再び地上に引き上げられた、そんな感覚。
快諾した途端、再び激しい頭痛と立ち眩みがしたので、布団に戻る。興奮からか、二度寝は出来ずにただ横になるだけ。
そして、ここ数日の体調不良に不安が募る。果たして、大丈夫なのだろうかと。
そして、年末年始に仕事が入るのかどうかを確認すべきだった。こういう自分の脇の甘さが嫌になる。



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年内は・・

体の調子も悪いし、年内の就活はもう辞めようかーと気分も塞いでいる。
まさか落ちることなんてないと思っていたバイトを落とされ、ただでさえ小さい自信の火種が完全に消えてしまった。
一度消えた火を再び燃え上がらせるのには、どれだけの労力が要るか。ここ数か月、私なりに頑張ってきた。
履歴書もたくさん書いて送ったし、面接も少ないながらも当たって砕けろの精神で受けて来たのだ。

虎の子をふと開けてみたら、残りもうわずか。なんだかんだで消えてしまった。ただ自分のことではなく実家や子に使っただけなのだけれど・・

ここのところ内職で得る稼ぎもコロナ禍ということもあり激減。これまで5万円は稼げていたのに頑張っても半分以下に落ちてしまった。
今月は、実家の引っ越しもある。そこでいくらか娘として出さないとならない。従姉妹が保証人になった手前、それくらいはしないとーという罪悪感。宝くじでも買ってみようかと、当たる保障もないのに現実味の無い夢を見た。





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根拠のないおごり

採用だったら連絡ーの一時間前。
そわそわ家事も手に付かず、携帯ばかり気にしてしまう。ただ、こんな時に限って持病の具合悪く、発作まではいかないけれど無理をするとその前兆のような具合になるので、横になったりを繰り返していた。
頭が鈍りのように重く、冷や汗まで出て来た。本格的に横になろうと布団を敷き携帯を枕元に置いて寝た。いつの間に意識を失い、目が覚めた頃にはタイムリミットを1時間以上も過ぎており、慌てて携帯を手に取るが、着信画面に変化はなかった。少ししてようやく、自分が採用されなかった事実に気付いた。

清掃の仕事は大変だ。だがどこかで、清掃なら採用されるはずーという根拠のないおごりがあったのも事実。正直、最後の砦というか、資格が無くても年老いても、清掃バイトなら求人も多いしこんな自分でも重宝されるのではないかと思っていたのだ。

再びごろりと布団に仰向けになると、言いようもない虚無感が私を襲った。社会に必要とされていないことは薄々と感じていたはずなのに、こうして現実を突き付けられると、自分でも想定以上のショックを受けたのだ。




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おばさんのリクルートスーツ

始めて社会人になる為に購入したリクルートスーツ。
これを無理やり着用し、何度か面接を受けて来た。
だがネット情報だと、おばさんがリクルートスーツはイタイらしい。確かに、サイズ感はパツパツだし何となく古ぼけた感がある。
昔も今もリクルートスーツは変わらないと思っていたが、やはり20年以上昔のものはそれなりに「古さ」を感じる。
決定的なのは、先日の面接でだましだまし着用していたスーツが完全に破れたことだ。とうとうバリっと破れてしまい、もう手縫いでは対応出来ない。
脇のほころびが気になりだした時点で、新しく、面接用にスーツを買おうとショッピングモールへ行ってみたけれど、どれもこれも1万以上した。つい、パートが始まって何日働いたらそのスーツ代になるのだろうと頭で考えると、すっかり買う気を無くしてこれまでやって来た。

脇の部分に充て布をして使い続けても、着心地の悪さが変わるわけでもなく、ちょっと手を挙げる動作をしたり、普通にしていてもツッパリ感がある。
面接がなかなか受からないのも、こんなところでケチってるからではないか?と思い始めた。
今回、清掃のバイトに落ちたらーやはりこんな貧乏くさいスーツのせいだと思う。落ちたら、次回の為にスーツを買いたい。
メルカリでも探しているのだけれど、やはり試着出来ないのが怖い。
夫にお願いしようか。しかし、新しいスーツを買えば、採用へのプレッシャーが更に重く圧し掛かる。



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遊びのない家

週末ー、エントランスで針金さん夫婦に会った。私の方は珍しく、夫とホームセンターに行くところだった。
針金さんのご主人が、大きなもみの木を抱えており、その後ろに針金さん。ツリーを買ったのだろうか?それにしても、本物っぽいので驚いた。

「こんにちは。」

「どうもどうも。」

「これからお出掛け?」

相変わらず、夫は不愛想。針金さんのご主人がにこにこ挨拶をしてもそれに返したのかどうか分からない程の会釈を軽くするくらいで、そのままスタスタと駐車場に向かってしまった。

「これからO×ストアにいくところ。」

「私達も今そこに行ってたの。これ、買いに。」


そうやってもみの木を指す。どうやらそれは本物らしかった。

「すごい!本物だ。」

「彼女がね、好きなんですよ。毎年買わされます。」

ご主人はそう言いつつ、なんだか嬉しそう。夫婦の温かいやり取りになんだか居たたまれなくなり、


「あ、夫が待ってるんで、また。」

そそくさとその場を後にした。あの居心地の悪さは何か?もうひと昔前のこと、仲の良かった女友達に初めて彼氏をファミレスで紹介された時のような、気まずいような目のやり場に困るようなあの感覚だ。


「遅いな、まったく。」

運転席の夫は、ご機嫌斜め。挨拶もロクに出来ない癖に自分の利益に関わることー職場だとかのオフィシャルな場では気持ちの悪いくらいの愛想良さ。金にならないご愛想は振りまかない主義なのだろう。


トイレットペーパーにシャンプーやリンス。日用雑費でいっぱいの籠。針金さん家のような「遊び」が我が家にないのが現実だ。

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ストレス性けいれん

面接当日、結局スーツで行くことにした。清掃が仕事なので、それ相応の動きやすい小綺麗なオフィスカジュアル的な服にすればよかったのかもと、今になっては思う。氷河期時代を知る私にとって、スーツは鉄板なのだ。ただ、このスーツは何十年前のリクルートスーツ。ボロもいいところ。先日の面接で脇が破れたのを手縫いで胡麻化し着用した。

朝から緊張で落ち着かず、しかも目の痙攣が止まらなくなった。気にすればする程止まらない。鏡を見ると、片目に違和感。時折ぴくぴく動いているのが良く分かる。

指定されたビルに向かう。小さな事務所といった感じのそこには看板が立てかけており、求人に記載されていた清掃業者の社名が掲げられていた。

面接官は、年輩の男性一人。パイプ椅子が置かれ、小さなデスクを挟んで面接が行われた。これまでの面接と違い、志望動機だとか自己紹介を求められることもなく、こちらが差し出した履歴書に沿っていくつか簡単な質問を投げられたくらい。

ー固定シフトではなく、その月毎に希望を聞いて組む形になりますが、大丈夫か?

ーグループで分担し作業を行うことに抵抗はないか?(黙々と一人で行う仕事だと思い、応募する人も多いのだそう)

ー再度確認だけれど、トイレなどの汚物を扱うことに抵抗はないか?


何度も聞かれると、余程、汚い場所の清掃を求められるのかと若干ナーバスな気持ちになった。そして、再び目元に違和感を感じると、痙攣が始まった。
面接官と話している間も、瞼の動きが気になり集中出来ない。気にすればする程、自分の意思とは関係なく動く瞼。丸っきりコントロール出来ない。
話ながらも、面接官が私の目元を気にしているように感じ、心臓がバクバク音を立てた。
なんとか終了し、ビルを後にした。痙攣は止まらない。

面接官は、数日後に採用ならば電話をすると言っていた。電話が無ければ不採用ということだ。結果は正直半々。なるようにしかならないのだ。





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もう一人のムスメ

N恵からラインがあった。もうすぐ二人目予定日の彼女。ライン越しに幸せオーラが漂う。
適当にスタンプを押して放置しようかと思ったが、スタンプが既読になった途端、ライン通話の表示。彼女も産休で暇なのだろうか。

ーもしもし?もう暇で暇で!まあこんな時間がたっぷりなのも今のうちだからだらだらさせてもらうけどね。OOは毎日こんな生活で羨ましいよ。

いちいち一言多い。私が清掃バイトの面接を控えていることを彼女は知らないし、言うつもりもない。

ー二人目だから、案外早く生まれるかも。

ー今回、予定日前に計画出産することにしたんだ。ここで産むの~

彼女の産院は、噂に良く聞くセレブ御用達の病院。HPで見たが、まるでホテル。食事も豪華だし何より一人一部屋のラグジュアリールーム。産後はエステのサービスもあるという。

ーだってさ、女にとって人生命がけの勝負だよ?人生、2回きりしかないんだから、そりゃあ贅沢させてもらうよ。

やはり、「2」という数字にばかり気を取られる。2人目ー2回目ー。私は1人で1回だからか。
精一杯の抵抗で、彼女と話しながら録画済のドラマを流してそれを観る。なので、話は断片的にしか入って来ない。

ーねえ?聞いてる??

上の空を見抜かれたのか、ちょっと苛ついたN恵の声にハッとする。


ーだーかーら、叔母さんの保証人になったからさ。そっちも色々大変そうだし。叔母さんには小さい頃から可愛がって貰ってるしね。


実家の今度の賃貸保証人の件だ。母がN恵に頼んだのだろうか?それともー


ーえ?お母さんから頼まれたの?


ーううん。ママから。なんか色々ママに愚痴ったらしいよ。詳細は私からは言えないけど、直接話した方がいいんじゃない?本当の娘はOOなんだから。

ショックだった。母は、私に相談もせずにN恵を保証人に立てたのだ。そして弟にも腹が立った。こうなる前に、一言相談があってもいいんじゃないか?てっきり外部に委託するのかと思っていたからだ。しかし、一番は私が長女として不甲斐ない事実を従姉妹から突き付けられたことがきつかった。

もう一人のムスメは私よーと言われたような、そんな気がしたのだ。






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グレイヘアへの移行

油断すると、白髪まみれ。ここ近年、その割合はぐっと増えたのだが、コロナ禍ということで人との対面が減ったことにより白髪染めの面倒さがよりいっそう強くなった。なので、必要に迫られた時に染めるというスタンス。よって現在、私の頭のてっぺんは白いのだが、バイト面接の時だけは洗い流せるタイプの手軽なスティックタイプの白髪染めを使っている。髪も痛まないし、何よりその時だけでいいので気が楽だ。
子も、最初のうちはおばあちゃんみたいと言ってきたけれど、見慣れてきたら何も言わなくなった。夫は、金が掛からなくなっただけ良いと思うのだろうか、特に感想は無い。恐らく一緒に行動を共にする機会ー、職場の人に妻を紹介的なことがあれば、身なりをきちんとするべきだと言及するに違いないのだろうけれど・・・

グレイヘアは、金が掛からないという目的もそうだけれど、何より一番は、定期的に行っていた白髪染め行為をしなくてよいという気楽さ。美容院へ行かず家で染める作業は、とても面倒。市販の白髪染めを購入し、説明書に沿ってクリームを調合する。髪をブロッキングしたりタオルの用意、垂れないよう常に気を配りつつ、ムラが出来ないように鏡を見ながら手早く作業を進めなくてはならない。
使える手は2本だけなので、合わせ鏡をしたくても無理。いったん染めては手袋を外して合わせ鏡で見たりして、また再び手袋を付けるー、こういう些細な作業が非常に煩わしい。
だからといって、苦手な美容院に行くのは嫌だ。もう何年もセルフカットをしているので、それがばれることも恥ずかしい。コロナ禍という理由を付けてセルフだったと誤魔化せばよいのかもしれないけれど、何より、美容師とのやり取りー世間話をするも沈黙もどちらも疲れ果ててしまい、その上金をとられ、更に出来上がったヘアスタイルに満足いくことの方が稀なのだ。

エンジェルというよりも、河童に近い。まるで白い皿を乗せているような感じの今が辛抱どころ。これを過ぎれば全体的なシルバーになる。今は、一足早くグレイへアを自分らしいお洒落として楽しんでいる私と同世代の女性、それよりも若い女優やモデルなどのグレイヘアの記事を読み漁り、モチベーションを上げている最中だ。







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