にほんブログ村 主婦日記ブログ ひきこもり主婦へ
にほんブログ村 主婦日記ブログ 専業主婦へ
にほんブログ村 子育てブログ 一人っ子へ

年収を知るチャンス

微々たるものかもしれないが、医療費控除を毎年受けている。例年、夫がそういった手続きはしてくれていたが、今年は自分の事業が忙しくそんな暇は無かったのか、突然私に丸投げして来た。

「ただ打ち込むだけだから、あなたでも出来るでしょう?」

医療費の明細は私がまとめて持っているので、所定のフォームに打ち込むだけなのだろうけれど、国税庁のHPを眺めながらの四苦八苦。こういった手続きは相変わらず苦手だ。もしも間違えていたら―と思うとドキドキしてその都度調べながらなのでなかなか前に進まないのだ。だが、病院名や金額を打ち込む単純作業は嫌いではない。

以前、ライター内職をしていた時、確定申告が必要ですよと親切な方がコメントで教えてくれたことがあり、しかしその詳細な手続き内容を見てとてもじゃないけど自分には無理かもと思い、申告せずとも済むぎりぎりの金額まで稼いでそれ以上頑張ることを辞めた。
今思えば、諦めずしっかり勉強していれば、道も開けたかもしれない。だがあの時は、それ以上に夫に内職がばれて面倒なことになるかもという危惧もあり、にっちもさっちもいかなくなったのだ。在宅ワークが当たり前になった今となっては、あの頃のような単価の案件を目にすることもなくなり、結局のところ「それ以上」なんて私の夢想に過ぎないのだろうけれど。

合っているのかどうか分からないまま、確定申告の画面に進み、医療費控除について分かりやすい親切なブログなどを参照しながら進んでいく。クリック、クリック、スクロール。ぼんやりした頭で機械的に数字を打ち込む。果たしてこれが正しいのか振り返ることもせず。しかし、源泉徴収を打ち込む欄で手が止まる。夫の源泉徴収が必要だ。

「途中まで入力したんだけど、源泉徴収貰えないかな?」

夫は、面倒臭そうな顔をして私のPC画面を覗き込み、少し考えてから、


「やっぱり俺がやるからいいわ。」

そう言って、私からパソコンを取り上げた。しばらく自室にこもっていたが、10分も経たないうちに外に出て、私に明細の束を向けた。

「これは持っておいて。」


「え?もういいの?」


「ああ。もういい。こっちでやっといたから。」


要するに、源泉徴収を見せたくなかったのだ。つまりは年収。またこのチャンスを逃してしまい悔しい。



関連記事

10分の1の顔

「ママ、戦争始まったの?」

子から尋ねられ、なんと答えたら良いのか分からなかった。戦争ではない、一方的な侵攻。
アメリカとの安保を信じ、核を手放しこの状況。どの国も助けてくれない。これを未来の日本に重ねてしまうのは悲観的過ぎるのだろうか?

「なんでこんなことになったの?」

「日本はこれからどうなるの?」

「経済制裁するって、何をどんな風に?」


矢継ぎ早に聞かれ、だが瞬時に答えることが出来ず、戸惑っているところに夫が嚙み砕いて説明する。スポーツには詳しくない夫は、時事や経済には詳しい。私でも分かるように子に説明するのだが、子からしたらますます母親は頼りない存在に思うのだろう。
ママは何も分かってないのねと。
リビングでは、もう私がいないかのように父娘との間で今後の展望について語り合いが始まり、私の入る隙も無かった。


「日経平均が下がったらどうなるの?」


「中国は今どういう立場なの?」


「日本も核保有した方がいいんじゃないの?」


子は、思うままに発言する。それが多少、的外れなものであっても。


「隣のクラスに、ロシアのハーフの子がいるんだけど、その子、大丈夫かな?私は話したことないけど、ずっと学校休んでるんだよね。」


「何が原因で休んでるのかは分からないぞ。コロナ関連で休んでるのかもしれないし。推測で噂を広めたりは良くないぞ。」


珍しく真っ当なことを娘に告げる夫に、時々ふとどちらが本当の夫なのだろうと思う時があるのだ。本当に、10あったらそのうちの1、それくらいの確率で、夫は冷静沈着でいい夫、父になったりならなかったりする。その塩梅が十年以上経っても分からない。


「ママも、少しは新聞読まないとね。」


突然夫にそう言われ、やっぱり夫は夫なのだとがっかりしたのだけれど。










関連記事
  • category:

  • 2022/02/27

懸念と杞憂

お隣の状況を知ってしまってから、何かした方がいいのか思い悩む。
夫にそれとなく相談すると、

「え?コロナになったって?差し入れなんてかえって負担になるだけだからやめとけよ。家族でもあるまいし。」

夫からしたら針金さん宅と特段交流している訳ではないし、私程身近な存在でもないのだから仕方のないことなのかもしれないが、それでも心配する素振りを見せることも出来ないのかと残念な気持ちになった。
三女が先日感染しーこれは軽症で済んで義両親に奇跡的に感染することもなかったのだけれど、その際、隔離生活を強いられた義家族に積極的に食料や日用雑貨をポチって送っていたのだから、お隣さんにそこまではせずともちょっと気に掛けるくらいの気持ちはないのだろうか、血も涙もない人間なのかと失望する。

「ポカリとか、負担にならないものを持って行こうかなって思うんだけど。」


「やめとけって。そんなのネットで自分で頼めるだろうし、あなたが気持ちいいだけのことだろう。中途半端なおせっかいが一番相手にとって迷惑なんだよ。やるなら徹底的にやる、やらないならやらない。後で礼をしなくちゃならない手間とかあなた分かってる?本当、非常識だな。」

常識とか非常識だとかじゃない、思い遣りではないのか?困っている人がいて、今自分が少しでも余裕があり助けられる立場にあるのなら、相手が少しでも楽になれる手助けをすること、それがそんなにいけないことなのか?

ムカついたので、夫に黙って家にある備蓄品を袋に詰めた。レトルトお粥、ポカリ、それにカップスープなど。それを玄関のドアに引っ掛けてこようと思い、ドアを開けた。だが、真向いにあるお隣のドアを目にし、その必要は無いことを悟った。
お隣のドアには、既にたくさんの袋が引っ掛けて在り、ドリンク類やみかんやりんご、それにレトルト品やヨーグルトやゼリーなどがたくさんと封筒ー恐らく手紙が入っているのか?が袋から飛び出しており、誰かは分からないけれど、恐らく何人かのご近所さんが心配して差し入れをしていたのだ。
私の紙袋まで掛けるスペースは既に無い状態だった。それは、針金さんの人脈を示していた。自ら助けを求めたのかどうか分からないけれど、ピンチの時、こうして手を差し伸べてくれるご近所友達がいて、それはこれまで私一人が独占していたものだと思っていたのだけれど、そうではない。いつの間に私以外のコミュニティで生き生きと暮らしていた彼女、この地に越してまだ一年足らずの彼女なのに、既に私よりも貴重な人生の財産を得ているのだ。

「だから、あなたも分からない人だな。」

夫は玄関先で紙袋を持ち突っ立ってる私に言い放つ。

「いや、渡さない。やめたの。」

夫は拍子抜けした顔をし、そしてすぐに私に興味をなくし自分のことに戻って行った。











関連記事

お隣として

お隣に、アマゾンの段ボールが山積みのまま放置されている。以前も宅配ポストに新聞などが大量に挟まって心配したこともあったのだけれど、今回は我が家共有部分まではみ出す程で、夫も邪魔だと悪態を付いていた。
私は隣のよしみで心配もあり、最近は色々とこちらも気忙しく疎遠になっていたけれどラインのともだち登録をしている仲なので、ちょっと挨拶がてら安否の確認を取ってみた。

ーこんにちは。お久しぶりです、お元気ですか?ー

想定通り、未読のまま。針金さんは、レスポンスが遅い。なので気長に待つことにした。
翌日もまた昨日に見掛けた段ボールの上に更にまた段ボールが詰まれていた。二人とも留守なのだろうか?
バルコニーからも何の音も聞こえてこない。

そして夜、夫も仕事でいないし子も寝てしまって一人時間。暇なのでPCを立ち上げてライン画面を開くと針金さんからメッセージ。ほっとして開いたら、思い掛けない事実。

ー私も主人もコロナ陽性になってしまいました。

突然の報告に、どうしたらよいのかこちらまでパニックになる。とにかく状態が悪いのかどうか?動けるのかどうか?

ーそれは大変ですね、何かお手伝いできることがあればお申し付け下さい。

ー熱が40℃近くあります。喉の痛みで水分も取り辛いです。でも大丈夫です、数日寝ていれば治りますので。

大丈夫という言葉を信じて放置していていいのか?それとももっと突っ込んで何か助けになることをしたらよいのか?
自分が彼女の立場だったら・・・助けて欲しいと思うか?逆に気を遣わせてしまうかもしれない。
頭が混乱し、正しい判断が今も尚出来ずにいる。






関連記事

雪解けにはまだ早い

実家のことはあれからずっと気に掛けていた。父から電話があってすぐに、なけなしの金でレトルト類や缶詰、チンすれば食べられる既成品だがおかず類を段ボールに詰めて送付していたのだ。
すぐにレスポンスがあるだろうと思っていたのに、なかなかないのでモヤモヤしながらも日々自分の生活ー夫と吉田さんとのことなどで頭の隅っこの方に追いやられていたのだ。
なので、メールBOXに弟のアドレスを目にした時、遠ざかっていた実家との距離がぐっと縮まった。
メールには、

ー色々お気遣いありがとうございます 家族一同ー

それだけ。
なんていうか、棘を感じるその一文。本当に感謝していたら電話一本くらいあってもいいのでは?いや、そうでなくてもこの言い回しだ。敢えての他人行儀な感じ。これは母が指示したのか?と思わせる言葉遣いだった。
返信しようか迷ってやめた。しかし、それでも実家のことは気になっている。家の中はどうなのか?母から電話で一言お礼、簡単でいいから和解を感じさせる対応があればこちらだって何事もなかったように振舞おうと準備万端なのに。
膠着状態をここでもなお続行する気な実母に、私の心も固くなる。
雪解けにはまだ早い。






関連記事

再・募集

学校から、PTA役員の再募集のプリントが配布された。
中学校最後の役員イコール、もうこれでお役御免と思いきや、こうして再び通知が来るとモヤモヤするのが私の性格。
いったん「出来ない」とアンケートで返事を出したものの、罪悪感が芽生えるのだ。そして、出来ないと返答してもお構いなしにこういった通知を押し付けてくるのがPTAの嫌なところ。表向き「任意」であって、結局のところは「義務」なのだ。

※決まらなければ、電話をお掛けすることもあります

とあり、携帯番号を記入する欄がある。一番楽だと噂されているベルマークや図書委員などの役員は既に決まってしまったようで、人気の無い学年や校外、それに広報などの役だけが残っているのも最悪だった。
一番なりたくないのは、学年委員。これは、最高学年だからこそやりたくない役。卒業関係の催しの企画だとかも任される。1.2年の学年委員だったら、通年の業務を行うだけなのにそれにプラスαの業務が付いて回るということなのだ。
なりたくないと思えば思う程、なってしまいそうで怖い。
取り敢えず携帯番号だけ記入し、希望する役に〇は付けずに再提出した。







関連記事

心健やかに

来月、ようやくシフトに入れて貰えることになった。
正直、いいように使われている感はあるけれど、これを断ったら完全にクビになると思い二つ返事でOKした。
丁度、生理期間にバッチリ当たると後から気付いてげんなりしたが、そんなの働く女にとっては通常業務の一環。
張り切って、週5勤務。だが、その殆どは2~3時間のみ現場に行き清掃するのみ。そのうちの1つはとあるマンションの清掃だが私1人で行うらしい。1人は気楽だけれど、それが初めてだと何かトラブルがあったらどうしようかとナーバスになる。
あまり考えないよう、なるようになるさと自分を奮い立たせる。

仕事に向けて、なまった体を整えるべくラジオ体操やストレッチなどをする。気分が落ちていた最近だけれど、先の予定ーしかも金になる予定があるということは心を健やかにさせる。
本音はもっと安定した仕事に就きたい。ここはあくまでも通りすがりの職場なのだ。平行し、これからの時期増える求人もチェックしつつ身の振り方を考えようと思う。







関連記事

二重生活

「これ、アイロン掛けといて。」

無地やボーダー、それにチェックのマスク。グレーや淡いブルーなど大人が付けても違和感のない柄マスク。
外出の時は不織布マスクを付けていた夫だが、突然それらを引っ張り出して来た。
吉田さんから以前プレゼントされたものだ。
なんで私がアイロンを?苛々する。洗濯する度にしわくちゃになるこの面倒臭い素材。そして、不織布でないとウイルスを通すというのにこんな布切れ一枚で夫がコロナになったらどう責任を取ってくれるのか?

しかし、そんな憤りを表情には出さず、淡々と丁寧にアイロンを掛ける。普通、妻がいる男性に渡すか?と彼女の非常識さに対する怒りはこれからの不安に変わり、マスクの柄がぼやけて見えた。

出勤日、夫は不織布マスクの上にそれを付けた。二重マスクだ。私はそれを目にし、二重生活を楽しく送ろうとしている夫を恨めしく思った。


関連記事
  • category:

  • 2022/02/21

家仕事30%

この土日も、夫は事務所。朝早く出て、帰りも遅い。
夕飯は食べたり食べなかったり。これはコロナ前と一緒だけれど、テイクアウトして事務所で食べて来たりするようになりつつある。
せめて連絡をーとお願いすると、二つ返事でOK。何か後ろめたいことでもあるのかとつい勘ぐってしまう。
まだ吉田さんはいないはずで、犬塚さんと開業準備をしているのだろうけれど、本当にそうなのかは分からない。

ー夕飯、食ってくるわ。


食材が無駄にならない時間帯に連絡をくれることで、冷蔵庫の減りも遅くなった。弁当を作ろうとしても、要らないと言われることも。犬塚さんは殆どテイクアウトだそうで、それに付き合うこともあるのだという。

ー出前頼むにも1件じゃちょっとな。

あれ程店員らに対して横柄な態度を取り続けていた夫なのに、まるで生まれ変わったのか?誰に対して「いい人」を演じているのだろう?


「パパいないけど、何食べたい?」

「うーん、なんでもいいや。」


子も、スマホに夢中で食に興味が無いのかどうでもいい風に答える。なんだか頭に来て、その日はレトルトのハヤシライスにした。丁度、震災用の賞味期限切れに近いものがあったのだ。


「美味しい!」


だが、こちらの意に反して子が大喜びだったりするのだから、ますますやる気を失うのだ。
楽して喜ばれるのならいくらでも。そう思う一方で、空のタッパーが積み上げられている棚を見て虚しさが襲う。
義父はちゃんと食べれているのだろうかと。



関連記事
  • category:

  • 2022/02/20

張り合い無くして

外に出ること。
それは、張り合いがあるということだ。
清掃パートをするようになり、仕事内容も職場の雰囲気も好きではないし馴染めないけれど、決められた時間に外に出ることは張り合いになっていたようだ。
無期限のような休業は、腑に落ちない。だが、自らまいた種だ。
そしてその気持ちに拍車を掛けたのは、義実家訪問した際、三女から「もう来なくていい」と言われたことだったのだ。

行くまでは面倒。夫に様子を見るよう頼まれ、しぶしぶだったはずなのに、義父の私を見てほっとしたような表情を見たり、空っぽの冷蔵庫を買って来たものや作ってきた常備菜を入れ込んでパンパンにすることは、まるで私の乾いた欲望を満たすような何とも言えない充足感だったのだ。
それに、交通機関を使うことは案外気分転換にもなっていた。このコロナ禍で、必要以外、自分の街を出ることなどないのだ。この閉鎖的な空間、代わり映えのない自らが住む街から別の場所へ向かうことは、鳥かごに入れられた鳥がいっとき空を自由に羽ばたくような、そんな感覚に等しい。
メイクをし、それなりの服に着替える。清掃パートではすぐに作業着に着替える為、ほぼ家着同然の服装で家を出るが、義実家訪問についてはニットを着る。ニットを着るという行為は、私にとって格別な儀式。だいたいがボーダーカットソーやスウェット素材のトップス、とにかく動きやすく洗濯し易い生地の服なのだけれど、ふわふわのニットを着るだけでなんだかちょっとだけ気分が上がる。なので、あの日もクローゼットの奥に掛けてあるベージュのニットを身にまとった。それに、一粒コットンパールのネックレス。300円ショップで購入したものだけれど、どんな服にも合わせやすくまた雑に扱えるので、病院や学校での面談の時などスタメン的存在。

義実家に行くだけなのに、こんな風にめかしこんで何を考えているのかと笑われるかもしれないけれど、こういう気持ちこそが生活の張り合いなのだ。私にとっては。
それが突然、三女の言葉で取り上げられた。私の少し浮ついた心を一刀両断するかのように。

夫は新しい事務所と自宅を行ったり来たりの日々。そして、向こうにいる時間が圧倒的に増えつつある。子も、矯正治療や塾の送迎は要らないと言い出した。親と共に行動するのが嫌な年頃なのは分かるけれど、なんだか悲しい。
再び、求人サイトを眺めてため息を吐く日々だ。










関連記事

焼け酒おやつ

仕事が無い現在、私の存在意義は家族の為に奔走するしかない。
家に籠っていると、良くないことばかり考えて気分も滅入る。特に、夫が在宅ワークの時は、ぼーっとしている訳にもいかず居場所が無いのだ。
正直気は進まないながらも、義実家へ義両親の様子を見に行くことにした。その為に常備菜になるようなおかずも数点タッパーに詰めて持って行った。
例のごとく、義父は喜んでくれたのだけれど義母は反応が薄かった。なんていうか、表情も乏しい。ちょっと話し掛けてみたものの小さく頷くくらいで以前のちゃきちゃきしていた義母と同一人物とは思えない。病気の後遺症もあるのだろうけれど、コロナ禍と相まって鬱のような症状が出ているのだと義父から聞いた。

「精神科に通ってるんだ。カズヒロには言わなくていいから。心配掛けてもよくない。」

義父はそう言っていたけれど、黙っていていいものか悩む。三女はこの日は出勤だったので、義父とお茶をしたりと義母が寝ている間に団欒めいたこともした。
以前は義父のことが苦手だった。二人目催促をされたり、また長男の嫁というプレッシャーを与えられたり、いざ二人きりになっても何を話せばいいのか無言になり気まずい思いをしていた。それが、義母がこんなことになってから距離が縮まった。彼から頼られるのを感じるし、またそうされて嫌な気がしない、むしろ嬉しく思う気持ちもあるのだった。


「ただいまー。」


なので、突然リビングのドアが開き三女が現れた時はびっくりした。何も悪いことなどしていないのに、つい立ち上がって「すみません、お邪魔しています」だなんて台詞が条件反射で出るのだ。


「来てたんだ。あー、疲れた!」

挨拶もそこそこに冷蔵庫からビールを取り出しグイっと飲む。なんだか嫌な予感がしたのと同時に、


「パパもOOさんに甘え過ぎ。ちょっと自立しないと。料理くらい勉強しなくちゃ。手先を使わないとボケるんだからさ、ママの介護だって前よりだいぶ楽になってるんだから。」

そして、私に向かうと改まった口調でこう言った。


「なんだか色々迷惑掛けましたね。もうこっちのことは大丈夫ですから。今はカズヒロが大変な時でしょう?妻として夫のサポートに徹して下さいよ。」

妙な敬語。なんだか分からないけれど三女の怒りがピークだということは分かる。なので、空気を読んで義実家を後にした。
最寄り駅に到着し、これまでは三女が車で駅前まで送ってくれたのにバスを使った為に時間も金も掛かることに気付き、なんだか苛々が募った。そして、あの無礼な態度。いったい何様?何か職場で嫌なことがあったから八つ当たり?いや、恋人と破局したとか?そうだったらいいのにとどす黒い感情が湧く。どうにもこうにも怒りが収まらず、私もコンビニでサワーをロング缶1本買って、人通りのない公園のベンチに座り昼間から煽った。9%ということとすきっ腹で疲れもあったのか、目の前がふわふわして脳みそがぐにゃりと小難しいことを考えられるだけの力が無くなっていく。あっという間に1本無くなり、追加でもう1本ー同じコンビニで買うのは恥ずかしいので、隣接している同業他社のコンビニでショート2缶を買いついでに奮発してチキンも買った。

3本目を空ける頃には、家に帰るのも億劫になり、しかもあり得ないことにベンチでうとうとしてしまい子の塾の面談があることをすっかり忘れてそれに気付いたのは子から私の携帯に電話があってからだ。携帯の着信音が目覚ましになり飛び起きた。
夫が苛ついた様子で受話器越しに何をやってんだという口調だったので、まだ酔いの残っている私は適当に嘘を付いた。

「ちょっと気分が悪くて。休んでいたところ。めまいが酷いからおさまったら電車に乗るから。」


持病が悪化したかもと言えば、夫は静かになった。これで夕飯作りも免除だ。何か適当に買って帰ろうと決めたら、三本目のサワーが途端に美味しく感じられた。











関連記事

同じ名前

ふらりと入った書店。
何気なく目にした女性誌の表紙に、私と同姓同名の舞台女優の名。
吸い寄せられるように手に取り、ページを繰る。インタビュー記事だ。
彼女は、私より少しだけ年下。だが、結婚して子どももいる。子どもは男子複数で女子はいない。
バタバタの子育てがひと段落し、数年前より仕事に専念するようになったのだ。
いったん結婚したら業界を離れたのか、家事育児に比重を置いていた彼女。その彼女が最近では再び頭角を現し始めたのだ。

ー第二の人生なんですー

よく耳にするこの台詞。第二の人生。第一の人生を悔いなく全うした者のみが使える魔法の言葉。
この言葉を使える者は限られており、また選ばれし者だ。

同じ名前、ただそれだけなのにまるでもう一人の自分を見ているように錯覚する。顔も形も性格もすべて違う、育って来た環境も今現在の環境もすべて。なのに、名前の一致だけでなぜこうも胸がざわざわするのだろう。
このざわざわは一体何なのか?羨望でも嫉妬でもない、もう一人の自分、もしかしたらの自分。
実際の自分は、パワハラ気味の夫に反抗期真っ盛りの一人娘、そして清掃パートをしているどこにでもいる主婦なのに。
キラキラと舞台の上で輝くもう一人の同じ名前を持つ彼女。
スポットライトは舞台の上だけじゃない、なんて強がりめいたことを思う。





関連記事

これからのことー。

シフトの件で電話をした。担当者となかなか繋がらず、こちらが掛ければ留守だったり、向こうから掛かってくればたまたまトイレだったりでタイミングが合わない。
こういう時は、ろくなことが無いのが常。
ようやく話が出来る状態になったものの、担当者の忙しそうな口調を耳にすると、電話口で委縮してしまう。

「あの、もう隔離期間も過ぎたのでシフトに入れて貰えませんか?」

「あー、今月はね・・人が足りてますね。先週がちょっと大変で、あなたがお休みすると聞いて緊急で募集掛けてたんですよ。すぐに決まってその方が入っているものだから。」

私が休んだ穴埋めとして募集を掛けたらすぐに人が入ったらしい。要するに、今更な話なのだ。

「また電話を掛けてください。もし空きがあれば入って貰いますし。こちらとしても入って貰いたい時に入って貰えないと困るんですよ。」

雇う側としてはもっともな話だ。こちらの都合で休んでおきながら、再びまたこちらの都合で入れる程甘くない。コロナ禍だからこそ、求人を出せば引く手あまた、すぐに求職者は集まる。
もう辞めようかと思っていたバイトだけれど、いざ向こうからおはらい箱のような対応を受けると途端に続けたいような気になる。またいちから仕事探しをして履歴書を書いて面接をしてーのステップを踏む労力を考えると、それはもう果てしの無い作業にすら思える。

取り敢えず、大人しく電話を切り、これからのことを考える。
これからのことー。考えたくないけれど、考えなくてはならないのだ。






関連記事

史上最悪

最悪だ。

夫の新事業、犬塚さんと二人なのかと思えばもう一人。事務員として女性を雇うと言う話を聞いたのは昨夜のこと。
そしてその女性とはあの吉田さん。

今は頭が混乱してまとまらない。まだ続いていたのかという気持ちと、将来の不安がぐっと現実的になる。こんなことなら簿記をもっと勉強し、資格取得し、私が経理を任されるくらいに頑張れば良かった。私のポジションだった。夫だって最初は私に任せる予定だった。だからあんなにうるさく勉強しろと言っていた。選択権はあった。十分に時間もあった。なのに自ら手を離した。

私は、馬鹿だ。



関連記事
  • category:

  • 2022/02/14

セルフカット

私はもう長らくセルフカットをしている。節約の為もあるけれど、あの美容院での時間が憂鬱だからだ。
弱腰の客と思われるのか、まるでどっちが客なのかと思うような対応をよくされる。なので美容院ジプシーだったのだけれど、最後にカットに行った時の美容師の対応があまりにも酷く、それが引き金になりそこからはずっとセルフカットだ。

ーちゃんと手入れしないと。トリートメント、安いの使ってない?ー

ーその写真のイメージ通りにはならないよ。だってあなたの髪質と違うし顔の形だって違うんだからー

ーもしかして自分で切った?これは酷いね。手直しするにも限界あるよー

駄目出しされるし、あとは気まずい沈黙。そして大抵のところ両サイドの客と楽し気にお喋りしていて私のことなど放置なのだ。

そういった美容院の呪縛から逃れられたのはいいけれど、やはりセルフカットは面倒だ。それに加えてセルフカラーも面倒だった。こちらはなかなか気合の要る作業なので、コロナ禍を機にグレイヘアを目指すことになった。河童のようだった白い部分は少しだけ伸びて、黒い部分が今流行りのインナーカラーに見えなくもない。

鋏を入れることはもう慣れたけれど、左右なかなかバランス良く仕上がらない。両方とも右側にくるんと跳ねてしまいなんだかだらしない。それにアホ毛。これは加齢と共に増えている。椿油を塗ったりしていたがおさまらない。
うまく切り上げないとどんどん短くなって収集付かなくなるので、仕上がりに満足していないが終わりとした。さっぱりはしたものの、野暮ったい。全体的に厚ぼったい。だが、以前梳きすぎて髪の薄い人になってしまった。中途半端なグレイヘアで更に髪が薄いとなんともみすぼらしく、子にも夫にも不評だった。あの時は、夫は買い物の時ですら私に近付こうとしなかったのだ。

鏡を前にする。60近い女性がその中にいる。


関連記事

来週のカレンダー

夫に仕事再開を伝えたことで気分は重い。だからか昨夜はあの女が夢に出て来た。そういえばスネ夫ママに何となく似ている。
どうも、あの手の女が苦手であちらからも嫌われるらしい。

月曜に電話をして、突然明日から入ってくれと言われることも想定しなければならない。仕事があるのは有難いことだけれど、やはり億劫な気持ちが大きい。あの男にも会いたくない。
仕事内容は、今のところヘビーなものに遭遇していない。たまたま運が良いからなのか、古株のパートさんいわく、「あなた運がいいわね。」と言われたことを思い出す。酷い時は目も当てられないというのだ。トイレ掃除に抵抗がないといったらウソになるけれど、普段から自宅で夫のとびちった汚物を掃除しているのでー酷い時には酔っ払って粗相したものもー、若いバイトの子と比べれば免疫はついていると思っている。

そして来週は子の面談も控えていた。カレンダーを見ると私の持病の病院に塾の面談だ。とてつもなく忙しい。シフトの電話をもう一週間延ばそうかなんて考えが頭を過った。






関連記事

妻はプーさん

義実家からバレンタインのチョコレートが夫宛に届いた。
こちらからも、義父や義兄らに送付手続きは済んでいるが、14日指定にしたので何となく気まずい。
夫は届くとすぐに義姉らにお礼の電話。だが、今回は義母からはない。また体調が悪化したとのことだった。

「あなた、来週もバイト休むの?暇ならちょっと見に行ってよ。」

バイトを休んだのはさぼりではなく、濃厚接触者かもしれないからなのに、夫はそんなことなどとうに忘れているらしい。しかも、来週辺りから丁度2週間経過するのでシフトに入れるかどうか電話をしようと思っていたのだ。
しかし、義父のことは気掛かりだ。夫以上に私の料理を喜んで食べてくれる。そして虎の子の件もある。行くのなら返すべきかどうか。返すことが失礼にあたる気もする。いや、失礼ではないか?このまま受け取ってしまいたい気持ちに正当性を付ける為そんな風に考えてしまうのだった。

「バイト、今月は何日行くの?もしかして今月はあなたの月収俺の日給にもならないかもね。俺、今はダブルワークのようなもんだし。」

嫌味を言われ、イラっとした。だが事実だ。夫は性格に難があっても結果を出している。それは、家族を養っているという結果だ。

「取り敢えず、月曜にシフト聞いてみる。それからでいいよね、あなたの家に行くのは。」

「あ、うちの親達にはバイトしてるって言うなよ。」

「え?なんで?」

「心配するだろ。あなたはプーさんのままってことで。」

「・・・」

どういう意味だろうか?もう一度聞こうとして思いとどまる。夫は私が清掃バイトをしていることを家族に知られたくないのだ。脱サラをして尚、これまで専業だった妻が働くことになったといえば、義家族からしたら金に困っているのではないかという疑惑が湧くからだろう。折角義姉らと和解したのだ。また拗れたくないのだろう。

それにしても、プーさんという言い方に腹が立った。夫からしたら茶化した言い方なのかもしれないけれど、子馬鹿にされた気分。今は休業であっても、またバイトを再開するとなれば大変なのだ。
汗を流して働いているのにまだのんびり遊んでいると義実家に思われながら訪問するのはモヤモヤする。



関連記事
  • category:

  • 2022/02/11

リアルタイムの醍醐味

今日は雪日和。警報級だという。
籠る気満々で、昨日のうちに買い物も済ませて来た。
バイトを休んでいて良かったと思う反面、このまま尻切れトンボ的に辞めることになるような気もしている。

冬期オリンピックも波乱の幕開け。
私はスポーツは殆どしないし興味もないのだけれど、こうして国を上げてのスポーツは魅せられる。
ただ、夫はまったく無関心。たまたまリビングで居合わせても、すぐにチャンネルを変えるのだ。
日本中をこれ程までに混乱させた先日のスキージャンプ団体やフィギュア等も、まったくもって無関心。
子も夫のそれを受け継いでいるのか、あまり興味を持たずスマホばかり見ている。
私一人、テレビを観て熱くなっているのだ。

この間の団体戦は、本当はリアルタイムで観たかった。なのに、夫にチャンネル権を奪われた。
しかし、文句など言えなかった。その日は在宅仕事だったうえ、新事業に向けてオンラインで何やら打ち合わせをしており、夕飯の時刻が遅れたのだ。ついさっきまでデスクに向かっていた人からリモコンを取り上げる訳にいかない。仕方なく、ネットニュースで情報を得て、翌朝テレビで観ることになった。
リアルタイムでしか味わえない臨場感。今日のフィギュアは観れそうなのでとても楽しみだ。





関連記事

円滑な関係

バレンタインは、既に私の中で浮足立つものでもなんでもない。歳暮中元と変わらない、彼らとの関係性を円滑にする為だけのものである。
彼らとは、夫であり義父であり、また実父である。
特に、父からの電話を受けてからというもの、実家のことが気になって仕方がない。松葉杖をついて料理の出来ない母を前に、家の中はどうなっているのか。弟は何もしないし父も出来ない。掃除や洗濯はどうしているのか?
現状を知り、今も尚実家に来ない娘に対し、母は勿論父はどう思っているのかー。弟は、自分ばかりに押し付けてと怒り心頭だろうか?
様々な思いが頭を駆け巡っては身動き取れない現状にやきもきしている。


ひとまず、チョコレートを贈ろう。それから考えよう。
義父にも、夫からそれ用の金は貰っているけれど、虎の子を返すつもりでセーターでも付けようかと考えている。







関連記事

サービス終了、ありがとう

ふとした時に訪問していたサイトがいつの間に閉鎖されていた。
このサイトは、結婚し子を妊娠した頃に登録したものだ。いわゆるお悩み掲示板のようなもので、女性限定とされるもの。
個人情報の登録必須なので比較的安全なサイトだった。
まだネットがそこまで世の中に浸透されていなかった頃だった。スマホはなくてガラケー時代だ。

毎日見るわけでもない、一か月に一度の時もあれば、一日に何度も見たり、なんていうか港のような存在でそのサイトを開いて女性特有のあるある相談を眺めているだけで癒されることがしばしばあった。
結婚して仕事を辞めた時、妊娠してつわりで苦しんだ時、何度もいつつわりが終わるのかを検索した。また、お腹の子が小さめと言われた時、不安になり同じような相談者を検索し、勝手に安心材料を探したものだ。
夫婦関係、レスになった時も、何度も同じ悩みを検索し、私だけじゃないのだと心慰めた。二人目を悩んでいた時も同じく。
そして、ママ友関係で悩んだ時。実母との関係や義家族との関係。孤独感に潰されそうな時も。この14年、数多くの悩みが次々と休む間もなく生まれたけれど、それと同時にこのサイトでも同じように多くの人達が悩み、相談し、そして時に暖かなフォローを貰い、元気になっていき・・
ネットの見えない世界なのに、「心」がそこには宿っていたのだ。それは勿論、ポジティブなものもあればそうでないものもあるけれど。ただ血の通った生身の人間達の心が存在していた。
私はもっぱらロム専だったのだけれど。

女性限定掲示板には、匿名だからこそ言いたい放題やりたい放題炎上し放題のものも数多くあり、きっと自分のブログもどこかの掲示板では吊し上げにされているだろうことは承知しており、またそういうものだと思っている。
だが、このサイトは炎上こそすれども、それを止める人達が多く、また管理元があまりにもネガティブなコメントは削除してくれたりだったので安心感があった。
優等生的サイトである。

そんなサイトが無くなって、なんだか体の一部がもがれた感じ。大袈裟かもしれないけれど、子を妊娠した時からの付き合いだから、もう14年続いていたのだ。一方的であっても、このサイトが閉鎖するなんて想像すらしていなかったのだ。

最後、一言くらいコメントを残しておけば良かったなと悔やまれる。
空いてしまった穴ぼこを埋めるべく、他のサイトを彷徨ってみたけれど性に合うものが見付からなかった。
ふと、母子手帳ケースを整理したら、そのサイトに登録した証明ハガキが挟んでおり、パスワードなどが記されていた。もうそれは見事にボロボロ、捨てようとしたけれど、少し迷って再び手帳に挟んでおいた。



関連記事

意識の違い

夫に無料で受けられるPCR検査を受けて欲しいと頼んでみたが、拒否された。
不安はないのか聞くと、症状も出てないのに面倒だと言う。だがもし感染していて無症状だったら、私や子も濃厚接触者になる。
子は学校に行かなくてはならないし、私も父と実家へ行く約束をしたのでひとまず不安を取り除きたい。

「そんな症状も出てないのに行って、そこでコロナ貰って来たらどうすんの?」

そう返された。

「でも、もし感染してたらって思うとやっぱり怖いんだけど。」

「あなた、バイト休んでるじゃん。関係なくない?」

「違う、OOは学校や塾行ってるんだから、迷惑掛けるかもってこと。」

「俺は、症状が出た人だけに検査すりゃあいいと思うけどね。抗原キットだって本当に必要なとこに渡らないってのも気に入らない。しかも、町医者も検査せずにみなし陽性にしたりしてるんだから。そこら辺適当だし、迷惑掛ける掛けないだって誰がどうのこうのもう判別つかない状況なんだから、そこまで神経質になる必要ないんじゃないの?」

そう言い切って、大あくびしながらソファーに寝転びスマホに目を落とした。

「毎日毎日、仕事と開業準備で疲れてるの。たまの休みくらい自分のやりたいようにさせてくれよ。」

コロナ離婚する人達の気持ちが分かる。






関連記事
  • category:

  • 2022/02/07

みなし陽性者

実家から連絡があったと思えば、今度は義実家。
夫が節分の日に行った時には特に変わりはなかったのだが、大変なことが起きた。
三女が発熱し、検査の結果「陽性」ということが判明したとのこと。つまりは、夫は濃厚接触者にあたるのかどうか?という不安。
三女は基本、週1程度職場に行き普段は在宅ワーク。殆どが自室で過ごすのだけれど、食事は義両親と一緒だし、また風呂やトイレも一緒。
高齢の親にうつっているかどうかそれも気掛かりだ。義兄ー長女の夫のところですぐに検査を受け、義父も義母もセーフ。だがこれだって今のところはということ。二階建てなので、今は完全に生活を上と下で分けている。幸い、三女は熱と喉の痛み程度で、自分で身の回りのことは出来るくらいの症状だという。

「あなた、あの日食事したって何食べたの?」

「恵方巻だよ、寿司屋で買って来たやつみんなで食べた。」

「お酒、飲んでないよね?」

「飲むわけねーじゃん。運転してるのに、あなた何言ってんの?それに、恵方巻だから大丈夫だろ。マスク外してたのはその時だけだし。」

吉方向を向いて黙々と食べたと訴える夫。だが、それでも心配だ。オミクロンはマスク越しだって感染する程だという。
夫はまだ発熱などの症状は見られないけれど、1週間は油断出来ない。それまではみなし陽性者だと覚悟していた方がいい。
子も休校になりそうでならないし、バイト先にシフトに入れて貰おうかと考えていたところだったが。また先延ばしだ。


関連記事

親子関係の再構築

父からの電話。
嫌な胸騒ぎで通話ボタンを押すと、珍しく動揺した声。母が倒れたという。
引っ越し準備の際、もめてからというもの一切連絡を取っていなかったのだ。
父からの電話なんて滅多にないから、一瞬、生死にかかわるくらい危険な状態なのかと思ったのだ。だが、実際は骨折だ。
しかも入院はしておらず自宅療養だということだ。今は弟が病院に連れて行っているところだという。その隙に電話を掛けて来たらしかった。

「お前には知らせるなって言ってるんだけど、もし何かあればそういうわけにいかないだろう?俺も最近また調子が悪いんだ。」

ここずっと、感情の抑揚が見られない父だったのだが、急に不安定になったのか弱々しく私を頼っているようだった。

「でも、お母さんは私に会いたくないんじゃない?」


「いや、そんなことはないと思うよ。年を取ると、俺もだけど頑固になるの。思ってもみないこと口走ってしまったり、それでもそれを訂正出来ないの。だからここはお前が大人になって・・」

家事が出来ない父。弟も料理なんて作れない。なら買ってくればいいだけの話なのだが、父的に先々何年生きられるか分からない中、娘と妻が仲違いしたままなのは嫌なのだろう。そして、今回の怪我が和解するきっかけだと思い、意を決して電話を掛けて来たのだろう。
父は母の言いなりで、私のことは二の次なのは分かっている。それは、所帯が別で自分の面倒を直接的に看てくれるのは母だからだ。その母を敵に回す訳にいかないし、また恩義も感じているのだろう。
突っぱねてしまうことは簡単だ。だが、私は結局父の想いを受け入れてしまう。母の欲求を満たしてしまう。心の奥でまだ子どもの頃の私が泣いているのだ。愛して欲しいと。

血の繋がった親子関係。それは、目に見えない心と心の繋がり。そして、いくつもの糸で紡がれている。その糸は、絆や愛情という名のカラフルなものもあれば、違和感や寂しさ、怒りや反発などのどす黒いものも混在している。出来上がった布は、遠目で見れば見れないこともないけれど、どこかしっくりしない。目を凝らせばところどころ穴やほつれがあるし、よれていたりもする。今の自分を形成する基礎の部分がそれなのだ。
すべてを解きカラフルな糸だけ残し、もう一度だけ紡いでみることは労力が掛かる。だが、もしそれが出来たならどうだろうと想像してみる。人生は一度きりなのだ。そして、人生の中の人間関係において一番を占めるのが親子関係のような気がする。この世を去る時、それが満足出来ているかどうかでその人生の満足度が決まる、そんな気がするのだ。
後悔は、出来ないことではない。しないことなのだ。







関連記事

節分行事

節分といえば、恵方巻。
夫は代休だったのだけれど、義実家へ義母の様子を見に行くと出て行き、そのまま夕飯も食べて来るからと連絡があったのが午後のこと。
夕飯を作らなくて良くなりラッキーと、たまにはスーパーの総菜なんていいじゃないかと思い、店へ行った。
人が群がっているコーナーに近付くと、そこは恵方巻売り場。そうか、今日は節分。そんなことにすら気付かない最近は子が成長した証。
幼稚園や小学校の時は、こうした行事を親子で楽しんだものだけれど、今は豆まきすら興味を示さなくなった。

恵方巻は、1本700円~高いもので1000円以上。今はハーフサイズなるものもあり、それらは具材を選ばなければワンコインで買える。
たまにの母子二人の夕飯だからと、子の好物であるサーモン太巻きをカゴに入れた。ハーフなのに700円もするそれは、まぐろも一緒に巻き込んでいるからだろう。私もーと思いつつ、二人で1400円は贅沢過ぎると思い、サラダ巻を買った。これは300円ちょっと。
ツナときゅうりがメインのこの太巻きは、家でも作れそうだけれど作らなくていいことに意義がある。主婦なんてそんなもんだ。
太巻き2本だと寂し過ぎるので、これに温かいうどんでもつけよう。味付き揚げと冷凍うどんを買う。

子が帰宅し、テーブルの上の太巻きを見付けてはしゃいだ声を出す。

「あ、今日は恵方巻の日だ!」

隣にひっそりと豆も置いて、季節感を味わう。

今年の方角を見ながら、二人でいただきますをした。無言で頬張る。

「あー、美味しかった!」

「まだ食べ終わってないよ、喋ったら駄目。」

「そっちも食べたい。ママ、交換しよ。」


子が、半分残ったサーモンまぐろ巻が乗った皿を私に向けた。子の気遣いだ。豆まきに興味を示さなくなっても普段は反抗的な態度をとっても、基本、優しい子なのだ。
有難く交換し、二人で続きをモクモクと食べた。


「締めはうどんか。」

温かいうどんに身も心も癒される。
恵方巻を食べて、まもなくのささやかな幸せ。こうして家族一緒に食卓を囲めることに感謝しなくてはならない。



関連記事

ジェントルマン

コロナ禍でなかなか決まらなかった物件もようやく決まり、どこか浮足だっている夫。職場に辞意も伝え、身も心も次のステップへと向いているようだ。
そしてついに昨夜、共に働くことになる男性をオンライン上だが紹介された。一応、夫も私を立ててくれているのかと思い嬉しく思った。意外だったのは、夫よりもずっと年上らしいこと。画面上でもそれはすぐに分かった。白髪でスレンダーなジェントルマン。
犬塚(仮名)さんというのだが、ツーリング仲間でもなければ学生時代の仲間でもない。職場ではないけれど仕事関係で知り合った人だという

これまで仕事のことは介入するなといわんばかりの態度だったし、口を挟めば途端に機嫌が悪くなると思い見て見ぬふりをしていたのだが、共同経営者を実際この目で見てしまってから、色々と知りたい欲求が高まる。例えば、仕事の分担についてだとか、収入はどのように折半するのかーだとか。代表取締役はどちらなのかさえ知らされていない。
軽く挨拶しただけなので、彼が妻帯者なのかどうかも分からぬままだ。一番怖いのは、妙なセミナーとかで出会った人では?という疑惑。夫は以前、その手のセミナーに通い詰めていたことがあるのだ。その時は、仕事上スキルアップとして大切なことなのだと何も分からぬ妻に自慢げに話していたことを思い出す。

「犬塚さん、いい人そうだね。どこで知り合ったの?」

「まあ、仕事関係だよ。」

それとなく聞いても、ぼんやりとした答えしか返ってこなかった。素性が分からないところに不安が募る。こんなことなら、簿記の資格を取って少しは夫の仕事に関われるようにしておけば良かった。敵を知るには敵の懐に入れなければ何も分からない。まだ敵だと決まった訳でもないけれど。

「今月から、ちょっと出ること多くなるから。」

これまで在宅仕事ということで、家にべったりだった夫。私がバイトをしばらく休むことになるのと入れ替わるように、家を空けるようになった。それは嬉しいことなのだが、忙しく動く夫の背中に胸騒ぎをおぼえる。家の干渉が少なくなるのに比例して、本当にこの家、つまりは家族に対する気持ちも薄れていくのではないかという不安だ。
軌道に乗っても乗らなくても、どちらにしても私は不安だ。





関連記事
  • category:

  • 2022/02/03

定年後の計画

夫の在宅にもさすがに慣れたが、やっぱり月に何度か、出勤の日は羽が伸びる。
自室にこもって仕事をしていても、いつトイレや休憩に出て来るか分からない分、リビングでゴロゴロなんて寛げないのだ。
そういう気持ちもあって、ようやくバイトを始めたのだけれど、しばらく休みを取ることについて夫には相談していなかった。
なので、数日家にいることでとうとう突っ込みが入った。

「あれ?今日も休み?」

ゴロゴロなんてせず、アイロンを掛けていた時だ。休みだけど、休んでいる訳ではない。なのに、なぜかばつが悪い。

「うん、子どもがいる人は出来るだけ出勤減らして欲しいってお願いされたの。」

予め用意していた嘘を付く。自ら欠勤の願いを出たなんて知ったら、また何を言われるか。

「掛け持ちでもしたら?」

ーはい?

確かに、今のバイト。夫からしたら働いているうちにも入らないのだと思う。夫の希望は、フルタイム。本当なら正社員。だが私の就活でのポンコツ具合に呆れ果て、もう雇ってくれるところがあるのならこの際条件なんてどうでもいいーと私が思う以上に思っていたから、仕事が決まった時に渋い顔をされつつ反対されなかったのだろう。

「今時、ダブルやトリプルワークしてる主婦なんてわんさかいるぞ。俺だって、定年後も稼ぐ為にこそ今の仕事辞めるっていうのに。」

「・・・」

ますます今のバイトを辞めようと思っているなんて、伝えることなど出来ない。









関連記事
  • category:

  • 2022/02/02

欠勤

子の学校で感染者が出たという連絡が来た。幸い、同じ学年ではないのでほっとしつつも、濃厚接触とされる下級生とは部活で絡んでいる。後輩は部活も休んでいるというけれど、まだ感染がはっきりしていない頃は出ていたはずだ。もしかしたら時間差で子も濃厚接触者と認定されるかもしれない。
そうなると、私もバイトは休んだ方がいいのだろうか?そもそも、同じ部活ということでもしかしての可能性もある。
色々考えていたら不安になり、怖くなって来た。少し迷って、職場に連絡をした。

「それは心配ですね、いいですよ。しばらく休んでいただいて、また状況が変わったら連絡下さい。」

あっけなく電話が切れた。なんていうか、別に私がいなくてもいてもどちらでも構わない、そんな感じ。一か月経って、少しはアテにされているのだと自負していたが、それはただの傲慢だったようだ。実際は、毒にも薬にもならない、別に今日辞めても構わない、そんな人材。
ついついネガティブに考えてしまうけれど、それは違うのだと頭を振る。迷惑を掛けてはならない。取り敢えず数日様子を見て、子に影響がなければシフトに入れて貰おう。
そう決断すると、気持ちがすっと楽になる。そして、なんだかんだ欠勤扱いにしても明日から休みだと思うと、なんだかわくわくするのだった。


関連記事
copyright (c) 隣の芝生 all rights reserved.

プロフィール

selinee

Author:selinee
FC2ブログへようこそ!

月別アーカイブ

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR