スポンサーリンク
昔から噂に聞いていたバリウム検査。いよいよこれをする年齢に来たのだと思うと、人生もいよいよ後半に差し掛かっているのだと実感させられる。まだ若い頃、検診でバリウム必須だった上司らは、検診から戻るといかにバリウムで散々な目に合ったかを武勇伝のように語っていた。
病院に到着し、検査服を渡され着替える。緊張感が一気に増す。
検査技師に導かれ、レントゲン部屋に入る。技師は男性。私より少し若いくらいの年の功。
手慣れた感じに誘導する。ネットで見ていた機械の台に乗るよう指示される。近くのテーブル上に、例の発泡剤と小さなカップに入った水、そして恐らくバリウムらしきもの。思っていたよりも量が多い。
考える暇もなく、技師は手に発泡剤と水を持ち、私に手渡す。
「初めてですか?」
「はい、初めてです。」
バリウム未体験ということで、少々の失敗を許してくれるのかもと淡い期待を抱く。
「この粉末はすぐに泡になります。一気に飲んでいただかないと口内で泡だらけになり飲むことが難しくなりますので、勢いよくお願いします。」
「分かりました。」
意を決し、プロの言葉を信じて発泡剤を一気に口の中に入れ少量の水と共に飲みこもうとした瞬間、先に粉末が喉に入りむせた。
むせた瞬間、口内にある粉末が唾液と混じりブクブク泡を立てる。まずいー、慌てて飲み込もうとするが無理だという声で条件反射のように口から吹いた。
目も当てられない。技師の顔を見る勇気がなく、ただひたすら謝ると、追加の発泡剤を渡された。
「じゃあ、もう一度。いいですか、焦らずに。でも勢いよくお願いします。」
焦らずに勢いよく・・どういうことなのか分からないけれど、とにかく落ち着いてということだろう。二度目の失敗は許さないというプレッシャーの中、どうにか頑張り飲み込むことが出来た。
続いてバリウム。カップを渡されおそるおそる一口飲む。なんだこれ、まずい。心なしかヨーグルトのような香りがあるが、どろどろしていて飲みにくい。
「はい、いいですよ。」
終わりかと思ったが、
「では、その調子で一気に頑張って飲んでしまいましょう!」
やはりこのカップの中身は空にしないとならないのかと落胆しつつ、ごくごくと飲む。なかなか減らない。だが、技師が隣でじっと私にプレッシャーを掛けてくることに耐え切れず、頑張って飲み干した。
途端に、げっぷをしたい衝動に駆られる。胃の中が風船でパンパンになり破裂しそうになり喉元まで上がって来た、そんな感じ。
ここで出したらもう一度飲まなくてはならない、それだけはなんとも避けたい。涙目で堪える。
「我慢して下さいねー。では、回って下さい。」
技師に指示されながら、右回り、左回り、棒で体を支えながら私を乗せた台はあり得ない角度に上昇する。再び喉元まで空気が上がり暴れ始める。それを抑えるように顎を引き、ひたすら耐える。
顔を真っ赤にしながら、途中で何度も右と左が分からなくなり指摘されながらも。
どれくらい回転したのだろう。お疲れさまでしたの声と共に盛大のげっぷが検査室に響いた。
こうして私の初めてのバリウム体験は幕を閉じた。
スポンサーリンク
- 関連記事
-