スポンサーリンク
N恵と長電話をした。
いつものように近況報告から始まって、その後はそれぞれの親の話と愚痴。
仲良さげに見えるN恵親子でも、やはり母と娘というだけあって色々と表面的には分からない問題を抱えており、持ちつ持たれつが時に苦しくなることもあるのだと言う。
子育てにおいては、伯母がすぐそこに住んでいることで手伝ってくれたり精神的にも肉体的にも楽ではあるけれど、そんな元気な伯母も数年前に身体を壊して通院が始まってからは、気軽にあれこれ頼めなくなったようだ。むしろ、通院の時は送迎をしたり、買い物を手伝ったりと、N恵の方が伯母を助ける比重がここ最近は増え、それに加えて自らの子育ても今一番大変な時なものだから、余裕が無くなりつつあると言う。つい最近は、長女の口答えにカッっとなり、怒鳴り散らしてしまったと悔やんでいた。
「ねえ、そっちはもし親が認知になったらどうするつもり?介護のこととかお金のこととか、どうしていくか色々聞いてる?」
「え、そんなことはこっちから聞けないよ。親子でもタブーっていうか、触れ辛い問題だし。うちは弟も同居してるし、お金の面もN恵のところみたいに余裕無いし、そうなったらそうなった時に考えるしかないっていうか・・」
「えー、そうなの?それって危険過ぎない?そうなった時って、明日かもしれないんだよ?私、今度腹を割って聞いてみようかと思ってて。現状、全面的に私が介護するのは無理。子ども、まだ小さいし。それに、やっぱり落ち着いたら仕事したいし。子育て終わって、次は介護なんて、無理。」
あんなに仲良さげな親子なのに、意外だった。そして、N恵が実は腹の中でそんな風に伯母のことを思っていることを伯母が知ったらどんな気持ちだろうと思うと、少し苦しくなった。
私と母との関係とは違って、本当に仲良しなのだ。てっきりN恵は伯母のことを最期のその時まで自分の手で看るのだろうと思っていた。
「気持ち的は看たいよ。でもさ、現実問題として、それが出来るかどうかってこと。無理だよ。こっちにだって生活があるし。そこはお金でなんとかなるならそうするしかないよ。」
「施設に入れることに、抵抗は無いの?」
「あるよ。それはある。でもそれは理想論だよ。実際に寝た切りになった親を引き取ってどこまで面倒みられるかっていったら、家族の理解も必要だし。旦那にだって親はいるんだから、その手前うちの親だけがっつり看ますって訳にもいかないしね。」
「伯母さん、なんか可哀想。」
つい口からこぼれた台詞に、N恵は過剰反応した。
「可哀想?なんで?じゃあ共倒れになることうちの親が望んでると思う!?私も親になって分かったけどさ、一番は子どもに迷惑だけは掛けたくないんだよね。子どもにお荷物に思われたら終わり、特にうちの親はその意識が強いから。OOって本当に綺麗ごとばっかりだよね。」
「・・・・・」
「OOのとこだって、叔母さん可哀想。いつも愚痴ってるってよ。もっと近くに住んでくれれば良かった。娘なんて嫁に行ったら他人も同然ってね。それに、旦那さんだって全然顔見せないんでしょ?もう何年も会ってないし気にも掛けてくれないって言ってたよ。何かあっても娘夫婦には頼れないねって悲しそうだった。」
母が、私のいないところで悲劇のヒロインよろしく、N恵や伯母に愚痴ってる様子がリアルに浮かんだ。そして、それをそのまま鵜呑みにしているN恵は本当のところを分かっていない。母は自分に都合悪いことなんていくら血の繋がった姉や姪にだって言わない。いつだって有利に立ちたいからだ。金に困って賃貸ということも言わない。そもそも引っ越した詳細を教えても無い。便利なとこに引っ越したというだけで、私の実家の土地勘に鈍い二人にはどんな場所に引っ越したかなんて分からず、ただ母の話を鵜呑みにするだけ。弟の為にせっせと貯金をしているーということにしているのだ。なので、つつましやかな暮らしを送っているのだとN恵達は思っている。資産は、家や車など目に見えるものだけではない、母は現金主義なのだと思っているのだ。
スポンサーリンク
- 関連記事
-