雑巾シャツ

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生まれた時から、足を鎖で縛られた象は、突然鎖を外されたところで逃げ出す法も分からず、ただその場に立ち尽くすと聞いたことがある。
私も夫と結婚し、独身時代のような自由は奪われたが、しかし安定を手に入れたのも事実。夫の方から離婚を申し出られたら最後だが、そうでもない限り死ぬまでずっと連れ添い、食うものや住む処に困らず、安穏と暮らして行き年を重ねていくのだろうとぼんやりした頭で思う。
ツーリング仲間と忘年会から新年会で忙しそうな夫、仕事納めと共に年越しツーリングに行きたいと言い出したのだ。年末年始は家族で過ごすものーそう思っていた。義実家に行くのは憂鬱だがそれは嫁の仕事ー、夫は家族サービスが仕事。例え実務的に家事育児を手伝わずとも、ただそこに居るだけでサービスでもあるのだ、子にとっては・・
しかし、夫はそう考えていなかったらしい。それまでは特に外に出る趣味もなかったから家にいただけー
「ツーリングって・・他の人は帰省とかしないの?そんな家庭持ってない人がやるようなことー」
話終わらないうちに、大きな溜息を大げさにつく夫。
「毎日毎日毎日しんどくても仕事頑張って、たまの休みくらい好きにさせてくれよ!グチグチケチ付けられたらたまらない。皆、嫁子供は喜んで送り出してくれるって。実家でのんびりでもしてくればいいだろう?」
「ー・・実家って・・あなたの実家には行かなくていいの?」
「そんな何日も行く訳じゃないよ。2日には帰って来るんだからさ、初日の出見たらすぐ戻るって!3日にでも行けばいいだろう?」
「パパのいないお正月なんてー、OOが可哀想。仕事なら言い聞かせられるのに、遊びを優先するなんてー」
「は!?遊び!?違うだろう。ゴルフの接待と同じだよ。仕事関係と行くんだからさ。仕事を円滑にする為にはこういう交流が必要だって分からない?だから家にずっといる人間と話していると疲れる。視野が狭いわな。自分軸でしか物事を考えられないんだから。OOに変なこと言うなよ、俺は仕事で留守なんだ!分かった?子供に嘘言われたらたまらんよ。」
それからは冷戦状態だ。夫はへそを曲げ、私も沈黙を守っている。子だけがどうしたのかと言わんばかりに困り顔。居た堪れなくなったのか、大晦日と元旦を留守にする侘びなのか分からないが、今日は朝から子を近くの遊園地に連れて行った。私は誘われなかったし、そんな状態でレジャー施設に行く気分にもなれず、いつものように淡々と家事をすることに専念している。
子はきっと、帰りには好きなおもちゃでも買って貰い言いくるめられるんだろう。つい一昨日サンタからプレゼントを貰ったばかりだというのにー。ただの父親の都合で物のありがたみを分からない子に育っては堪らない。
イライラする気持ちをどうにも抑えられず、夫の脱ぎっぱなしのシャツで洗面台を拭いた。夫が汚した洗面台ーびちゃびちゃにぬかるんだ汚いそれを夫の何万もするシャツでゴシゴシとー
いくらか気が晴れ、そのシャツを洗濯カゴに放り込む。
こんなことでしか憂さ晴らし出来ない自分ー、経済的自立さえしていればもっと言いたいことが言えるのかもしれない。でも今の私に出来る精一杯の反抗がそれだったのだ。


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- category: 夫
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- 2014/12/27